Japanese
ARABAKI ROCK FEST.11延期開催決定!被災地の子供達の為のコンピ・アルバムも限定販売決定!
2011.06.06 12:20
東日本大震災の影響に伴い、開催延期となっていたARABAKI ROCK FEST.11の延期開催日程が決定!!
オフィシャル・ホームページも Re:START!!
【ARABAKI ROCK FEST.11】
2011年8月27日(土) 28日(日) ※雨天決行
みちのく公園北地区エコキャンプみちのく(宮城県柴田郡川崎町)
出演アーティスト再発表!
■8/27 sat
阿部芙蓉美(★)/eastern youth/泉谷しげる/uhnellys/EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX
envy/OGRE YOU ASSHOLE/片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ/川内太鼓
KIMONOS/Caravan/クラムボン/group_inou/くるり/毛皮のマリーズ/Cocco
THE COLLECTORS/COMBOPIANO-1/斉藤和義/坂本サトル/SAKEROCK/サンボマスター
Signals(★)/女王蜂/真空ホロウ/スチャダラパー/世界の終わり/SOUL FLOWER UNION
曽我部恵一/タテタカコ/つじあやの/Dezille Brothers(椎名純平、竹内朋康、鈴木渉、白根佳尚、SWING-O a.k.a.45)
東京スカパラダイスオーケストラ/トクマルシューゴ/七尾旅人/noodles /ねごと
畠山美由紀「我が美しき故郷よ」/THE BACK HORN/ハナレグミ/Theピーズ/ザ・ビートモーターズ
the pillows/藤原美幸(秋田民謡)/PONTIACS/真心ブラザーズ/夢弦会(津軽三味線)
yanokami(矢野顕子×レイ・ハラカミ)/THEラブ人間/渡watary
みちのくプロレスand more・・・
■8/28sun
ASIAN KUNG-FU GENERATION/ARABAKI BLUES produced by JUNZI IKEHATA
MEMBER:池畑潤二(ROCK'N'ROLL GYPSIES/HEATWAVE) ,花田裕之(ROCK'N'ROLL GYPSIES),
浅井健一(PONTIACS/SHERBETS) ,チバユウスケ(The Birthday) ,百々和宏(MO'SOME TONEBENDER),
ヤマジカズヒデ(dip) ,井上富雄,渡辺圭一(HEATWAVE) ,クハラカズユキ(The Birthday),ヤノ(POLYSICS)
andymori/エレファントカシマシ/Eric Chenaux(CA)/オワリカラ/9mm Parabellum Bullet
GTGGTR祭/黒猫チェルシー/Ken Yokoyama/子供ばんど/小林太郎/salyu × salyu
SION/高木正勝/つしまみれguest:ウルフルケイスケ/the telephones/10-FEET/堂島孝平
怒髪天/仲井戸麗市「津軽まほろばSESSION」/長澤知之/Nothing's Carved In Stone
NATSUMEN/The Birthday/the HIATUS/BOWWOW/元ちとせ
he/HiGE/藤原美幸(秋田民謡)/a flood of circle/Heavenstamp/POLYSICS
前野健太とDAVID BOWIEたち/マキシマムザホルモン/雅-MIYAVI-/夢弦会(津軽三味線)
MO'SOME TONEBENDER/MONOBRIGHT/山本隆太トリオ/LITE/LITTLE CREATURES
レキシ/みちのくプロレスand more・・・
※五十音順
※出演者の変更・キャンセルに伴うチケットの払戻しは行いませんので、予めご了承ください。
※ (★)印=キャンプファイヤーライブ出演
(22:00以降出演/キャンプファイヤーライブは、2日通し券とキャンプサイト券の両方をお持ちの方がご参加頂けます。)
東日本大震災支援コンピレーションアルバム企画決定!!
東日本大震災支援コンピレーションアルバム
『ナニニモ負ケズ/Naninimo Makezu ~songs for children from ARABAKI~』
東日本大震災において被災した子供達を支援するプロジェクト。
ARABAKI ROCK FEST.にゆかりのある国内外のアーティストを中心に、
未来を支える子供達に捧げたコンピレーションアルバム。
このプロジェクトの収益は、子供達の為の義援金として寄付いたします。
●2011年8月27日(土)・28日(日) ARABAKI ROCK FEST.11会場内にて販売
<開催期間限定販売>※参加アーティスト等の詳細は後日発
6/26(日)10:00am~チケット一般発売開始!
入場券: 2日通し券¥14,000 2日通し4人券¥48,000 8月27日券¥8,000 8月28日券¥8,000
キャンプサイト券: ¥4,000 [テント・タープ各1張4名までの料金]
【プレイガイド】ローソンチケット、チケットぴあ、イープラス、CNプレイガイド、岩盤他にて発売
total information >> https://arabaki.com/
関連アーティスト
ASIAN KUNG-FU GENERATION, Cocco, LITE, MO'SOME TONEBENDER, Nothing's Carved In Stone, OGRE YOU ASSHOLE, SEKAI NO OWARI, THE BACK HORN, The Birthday, Theピーズ, a flood of circle, andymori, eastern youth, envy, the HIATUS, the pillows, the telephones, くるり, つしまみれ, ねごと, エレファントカシマシ, オワリカラ, クラムボン, サンボマスター, ソウル・フラワー・ユニオン, ハナレグミ, マキシマム ザ ホルモン, モノブライト, 怒髪天, 斉藤和義, 曽我部恵一, 東京スカパラダイスオーケストラ, 毛皮のマリーズ, 浅井健一, 真心ブラザーズ, 髭, 黒猫CHELSEARelated NEWS
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髭 (82)
黒猫CHELSEA (156)
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全33曲の歴代シングルが紡がれ、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが日本のロック史に残してきた功績を改めて体感することができる、メジャー・デビュー20周年記念盤。再録された「遥か彼方」で幕を開け、地を這うようなイントロのベース・ラインがノスタルジアと高揚感を運んでくる。20年経っても歌い続けるバンドの熱量が確かな軌跡として反映されている一方で、リスナーは各楽曲の歌詞に登場する"君"に当時の自分や大切な人を投影させ、懐かしさに浸るだろう。暗いムードが漂う情勢や、やるせない日常からも目を逸らさず、今を生きて、愛を鳴らし続けてきたアジカン。これからも変わらない4人だけの音を世界中に響かせてほしい。(山本 剛久之)
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アジカン×アニメ"NARUTO-ナルト-"シリーズとしては、「ブラッドサーキュレーター」に続く3弾目。ここで"前世からの因縁"を意味する"宿縁"というキーワードを挙げたのは、今の自分の行動があとの世代に与える影響や人間のいい意味での変化について、後藤正文(Vo/Gt)が懲りずに希望を託しているからだと思う。王道ギター・ロック・チューンだが、コードがロング・トーンであることで降りしきる雨=現在の世界を思わせるのはリアルだ。また、後藤&喜多建介(Gt/Vo)の共作で喜多Voの「ウェザーリポート」は、近さを感じるミックスが離れていくふたりという珍しいテーマを自然に聴かせ、『サーフ ブンガク カマクラ』の続編という「日坂ダウンヒル」は、ローファイ・ヒップホップ調。各々今年のアジカンの動向を示唆しているのかも。(石角 友香)
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すでに後藤正文(Vo/Gt)がポッドキャストなどで開陳しているのでサブテキストとして書くが、このシングルの4曲目「柳小路パラレルユニバース」は、『サーフ ブンガク カマクラ』の"続きの駅"として作られていた曲だ。アジカンの青春を想起させる力みのないパワー・ポップが、森見登美彦作品の舞台である京都に移植されたのが、今回の表題曲「出町柳パラレルユニバース」というわけだ。こちらにはアウトロにサイケデリックなギター・フレーズが追加され、アニメ"四畳半タイムマシンブルース"の世界観も。WEEZERのカバーにはAAAMYYY(Tempalay)が参加、喜多建介(Gt/Vo)とのツイン・ヴォーカル(!)の「追浜フィーリンダウン」と、肩の力が抜けたアジカンの素が楽しい。(石角 友香)
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進化を続けるアジカンの10thアルバム。三船雅也(ROTH BART BARON)とのハーモニーが圧倒的な爽快感を生むリード曲や、切なくも温かいサウンドに乗せた美しい言葉が沁みる「フラワーズ」、ラップとの融合が新しい「星の夜、ひかりの街(feat. Rachel & OMSB)」、"胸の奥で歌ってよ"という言葉とともに壮大なコーラスが響く今のライヴ・シーンを映したような1曲「Be Alright」など、青春を彷彿させる初期楽曲の青さと、近年の洗練された円熟味が合わさった14曲が収録。アジカンらしさを核としながらも、多彩なアレンジやコラボで新たな広がりを見せている。また多様性やネット社会に切り込む歌詞も奥深い。この惑星に生きるすべての人にとっての明るい未来を祈る1枚。(中尾 佳奈)
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1年2ヶ月ぶりの新作は、両A面シングル。「ダイアローグ」も「触れたい 確かめたい」も、このコロナ禍による社会を映したような曲で、今改めて大事なものを突きつけられる感覚があるが、実は昨年行った欧州ツアーの際に、ロンドンでレコーディングをした曲だという。ダイアローグ=対話や、人や社会の礎になるものを童話のように、また詩的に描いた「ダイアローグ」。シンプルなメッセージが、細やかなディテールを含んだふくよかなギター・サウンドで織り成され、普遍的なダイナミズムを放つ。また「触れたい 確かめたい」では、塩塚モエカ(羊文学)がゲストVoで参加。後藤正文との歌のアンサンブルで、センチメンタルな記憶や残像を刺激する曲になった。またCD版のみリモート制作による「ネクスト」を収録。(吉羽 さおり)
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3年半ぶりのオリジナル・アルバムは、シンプルなバンド・アンサンブルの魅力と底力が発揮されたパワー・ポップが満載。驚くのは、バンドのルーツのひとつでもあるWEEZERのRivers Cuomo(Vo/Gt)が2曲作曲していること。だが、Riversの曲も消化し、むしろバンドのDNAを感じさせながら、全体的にグッとBPMを落とし、各楽器の音の鳴りや音場の豊かさで全編に一貫性を持たせていることが、アルバムであることの意義を実感させる。表題曲や「ボーイズ&ガールズ」に代表される、ここからもう一度歩き出そうとする意志とそれを表現するサウンドの親和性を存分に味わいたい。ホリエアツシ(ストレイテナー/Vo/Gt/Pf)らが手掛けた曲を含むEPも合わせた15曲すべてをぜひ聴いてほしい。(石角 友香)
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「生者のマーチ」もそうだったが、今回の「ボーイズ&ガールズ」も徹底して、4人の音しか鳴っていない。それは立ち止まるとか振り返るとかではなく、歩きながら自分の中身を見つめるよう背中を押してくれる。情報量過多で"衝撃"という引っかき傷を作る音楽の真逆にあるのではなく、アジカンの新曲は自発的な発電を促しているのだ。サウンドはWEEZERなど初期の影響源を再解釈しているようでもあり、でも曖昧さはなく、ビートもグルーヴもリフもしっかり地に足をつけているのが新鮮。2曲目の「祝日」はシャッフルのリズムが珍しくアジカンを"男っぽいバンド"という形容で表したくなった。それはギター・アンサンブルの特異性にある。深呼吸して、しぶとく生きよう。そんな後藤正文(Vo/Gt)の声が聴こえるようだ。(石角 友香)
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2ndアルバム『ソルファ』収録時から12年。この再レコーディング版のイントロが鳴った瞬間、蘇ったのは"Wonder Future"ツアーの国際フォーラムでのライヴだった。そして、さらにそのあと、ヨーロッパや南米ツアーで確信した"楽曲は届くところには届いている"という思いの反映。細部のアレンジが更新されたことも、楽器の録り音ひとつひとつも、音が鳴る空間が著しくワイド・オープンになったことも、すべてが経験から得た気持ちを反映しているのだ。リスナーの年齢やアジカンと出会った時期によってこの曲の捉え方も違うだろう。個人的には、いよいよ閉塞感のどん詰まりにあった日本において、『ソルファ』は音楽で"それでも行くんだよ"というベクトルを指し示す作品だった。思えばアジカンは言い続けているのだ、そのことを。(石角 友香)
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行定勲監督の映画"ピンクとグレー"のために『Wonder Future』のツアー中という、多忙さの中で書き下ろされたのが今回の「Right Now」。一聴でアジカンとわかるリフと8ビート。映画の世界観にも通じる東京・渋谷界隈の情景や匂い、自分と他者の境界線の曖昧さと裏返しの自意識過剰。後半にガラッと曲調もテンポもキーも飛翔するように変化する展開が窓を大きく開けるような印象も。そしてこの構成も映画の内容とリンクしている。カップリングには『Wonder Future』のツアーからライヴ音源として「Eternal Sunshine / 永遠の陽光」、「深呼吸」、「Wonder Future / ワンダーフューチャー」の3曲を収録。2015年の経験を血肉にして2016年を走り出すアジカンが、新たな代表曲になり得る大きな一打を繰り出した。(石角 友香)
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ゴッチがブログに"震災後、2度目の人生を生きている心持ち"という意味のことをときどき書いているが、現実の音像、そして作品に昇華されたのが今作なのだと思う。シングル『Easter』同様、FOO FIGHTERSのプライベート・スタジオで全曲レコーディングされたこのアルバムの重量とソリッドさが矛盾なく存在するどでかい音像は、イヤフォンで聴いてもつま先まで痺れるようだ。まず肉体に訴えかけてくる。そしてもはや対岸の火事ではなくなった人間同士の断絶などの現実を冷静に描く歌詞の多さ。しかしアルバム・タイトルが示唆するように未来は"ワンダー・フューチャー"なのだ。楽観も絶望もない、励ましもセンチメントもない。ただ生きる意思を鳴らしたらこうなんだ、そんな潔さに満ちている。(石角 友香)
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このコンピの充実度は毎年計り知れないが、今回はASIANKUNG-FU GENERATIONの新曲「スタンダード」を聴くだけでも相当、価値ある1枚。ゴッチ自身が"これは先の都知事選についての歌"と明言しているが、何も変わらないと諦めたら非難の対象と同化してしまう。愚直なまでに続けること、そしてバンドのイメージを引き受けるとはどういうことか?まで応えた1曲だ。文字数の半分をAKG新曲に費やしてしまったが、今年はユニコーンやスカパラなどベテランから、KANA-BOON、グッドモーニングアメリカら新鋭、くるりやストレイテナーらAKG同世代まで縦横無尽な出演者が揃うわけで、このコンピも自ずとその厚みや充実感を体感できる。お得感で言えばくるりの未音源化楽曲や、ストレイテナーの新曲収録も嬉しい。(石角 友香)
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吉村秀樹が亡くなってから1年と1日目にリリースされるトリビュート盤第4弾。あがた森魚(ブッチャーズの射守矢や小松も参加)、the 原爆オナニーズらベテラン、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやTHE BACK HORNといったシーンの中核を担う存在、+/−ら海外の盟友、それでも世界が続くならといった若手まで顔を揃えた今回は、シリーズの中でも最も吉村の影響の広範さを証明。ギター・サウンドとフィードバックだけで胸に熱いものがこみ上げるAKGやenvy、合成ボイスや読経のようなリズム感で再構築したASA-CHANG&巡礼や、ピアノをフィーチャーし、生死の狭間を行くようなサイケデリックな祈りの歌へ昇華したGREAT3など、バンド/アーティストがリスペクトの姿勢を究極まで研ぎ澄ましている。(石角 友香)
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全曲メジャー・キー、生ドラムを使わない圧の少ないサウンド・プロダクションが、まず聴き手の構えた気分を解きほぐす。"まぁ座りなよ"とでも言われてる気分とでも言おうか。スクラッチが90sのUSインディーやローファイ感を想起させる「Wonderland/不思議の国」もあればオーソドックスなR&Rが新鮮なタイトル・チューンもあるし、ホリエアツシがギター、ピアノ、コーラスで参加した「Great Escape from Reality/偉大なる逃避行」はエクスペリメンタルでありつつ、潔く音を引いた聴感が心地よい。そしてアルバムのラストに配置された「Lost/喪失」が、アルバムの中にあることで、また違う聴こえ方をするのも興味深い。日常の中にある旅もどうしようもない諦念も怒りも、声高じゃない分、より細胞に染みわたる。(石角 友香)
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シングルのカップリングやアルバム未収録曲の編集盤である『フィードバックファイル』第2弾。アルバムやシングルの表題が音楽的なイノベーションを前向きに背負う位置づけにあるとすれば、このシリーズは必然的に普遍的で無防備な楽曲が揃うことになるのではないだろうか。中でも今回、胸に深く刻まれるのは震災直後、やむにやまれぬ心情でゴッチが命を削りだして書いた曲。記号にしてはいけない3.11、アーカイヴできないあの頃の気持ちが否応なしに思い出される「ひかり」や、この2年のライヴの重要曲「夜を越えて」の存在感。また、昨年のハマスタ・ライヴ日に配信された新曲「ローリングストーン」「スローダウン」に窺える11年目への姿勢。移ろう日々の中でも常に携えていたい気持ちを呼び起こす名盤だ。(石角 友香)
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1曲目の「遙か彼方」での太いベース・ラインが鳴った瞬間の臨場感たるや!メンバー4人での緊張感のあるテイクには、初期のナンバーが持つ心の底から奮い立つようなアジカンならではの音楽の駆動力が、今のアレンジで鳴らされている。また、三原重夫(Perc)、上田禎(Key/Gt)、岩崎愛(Cho)を迎えた7人編成での「新世紀のラブソング」など、オリジナル録音の再現ではない新たな解釈は、合奏の歓びが(もちろん、シビアさも含めて)横溢。奇しくも最新曲「今を生きて」のタイトルが象徴的だが、ライヴ・レコーディングとはまさにそれ。そしてその臨場感を削がず、美化せず、ただクオリティの高い音像として定着してくれたことに感謝したい。メンバーはもちろん、楽器やアンプやエフェクターの息遣いが聴こえる。(石角 友香)
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ASIAN KUNG-FU GENERATIONが主催するNANO-MUGEN CIRCUIT 2013に出演する全アーティストの楽曲を収録したコンピレーション・アルバムがリリース。アジカンの楽曲「Loser」は、BECKの同名曲の日本語カヴァーだ。歌詞は日本語訳ではなく、原曲が綴る"負け犬"を、後藤正文が2012年の日本版として新たに描いている。その中には"海辺で燃え続ける夢の切り札""膨張する正義"など、最初から最後まで意味深なワードが並ぶ。後藤のポエトリー・リーディング風のラップはそれを軽やかに届けるが、内にこもる怒りはBECKのそれを彷彿させる。全15アーティストの提示したい色が明瞭に出た楽曲たち。現代の日本に鳴り響く芯のある音楽を、この1枚で楽しめるはずだ。 (沖 さやこ)
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アルバム『ランドマーク』から約半年のインターバルでリリースされたシングルは、映画『横道世之介』の書き下ろし主題歌。長崎から上京したばかりのお人よしの大学生である主人公とそれを取り巻く青春物語である『横道世之介』ワールドに寄り添うあたたかいナンバーだ。喜びや哀しみが漂う日常的な風景が描かれた歌詞と、気張らず軽やかに鳴り響くサウンドは、人間が持っている自然体の力強さを感じさせる。後藤正文のファルセットは大切な人に優しく手を振るようなやわらかさで、聴いているこちらも自然と笑顔になっていた。"生きている"という事実を素直に喜びたくなる。タップ・ダンスのようにたくましく躍動的に耳を刺激するピアノの音色が印象的なc/w「ケモノノケモノ」も必聴。(沖 さやこ)
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3.11以降、社会的な発言や行動をとってきた後藤正文が放つ言語、そしてバンド・サウンドの現在が注目される本作は、まさにこの間、彼らが体験してきた逡巡や希望や疑問が、シンプルで純度の高い表現で結晶した力強い内容。浮遊感とトライヴァルなビートが交錯する「AとZ」、アジカンらしさを2012年にアップ・デートしたような「それでは、また明日」、後藤のスポークン・ワーズが諦観と希望を行き来する樣がリアルな「マシンガンと形容詞」後戻りできない事実を認めつつ、だからこそ日常の愛おしさが際立つ「アネモネの咲く春に」など全12曲。表現に正解も不正解もないが、今年発表される作品として、何かしらの感銘や反応をリスナーに起こす作品。(石角 友香)
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鳴らす足音。息を吹き込み、力強く叩きながら、鳴らされる沢山の楽器。一歩ずつ前進する、前へ前へと突き進む姿を、行進する吹奏楽団と形容した本作は、迷ったけれど、苦しいけれど、それでも前へ進んでいこうと強く決意し歩み出した者の歌だ。そして今、後藤正文(Vo&Gt)が、どうあろうとしているのかがよく分かる。"希望を掲げよう""ささやかな光を"というように、希望を灯そうという想いが能動的な言葉たちから読み取れる。歩みを止め、躊躇することはいくらでも出来る、その迷いや弱さを消せぬことは認めた上で、"それでも僕らは息をしよう"と歌う。そうやって前進していく言葉たちは、一度も振り返らず、一度も後退しないまま、最後まで"行け"と想いを貫き通す。後藤の言葉、その伝えようとする想いは、僕らの心目がけて一歩踏み出した。(島根 希実)
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アジカン企画&主催の夏フェス"NANO-MUGEN FES."も今回で9回目(ツアー形式だった「NANO-MUGEN CIRCUIT2010」を含めると10回目)。WEEZERやMANIC STREET PREACHERSをヘッドライナーに、BOOM BOOM SATELLITES、the HIATUS、若手注目バンドねごと、モーモールルギャバンなど、洋邦共に相変わらずの豪華ラインナップ。出演バンドの楽曲が1曲ずつ収録されているコンピレーション・アルバムは、今作で5作目。そして、今回収録されているアジカンの新曲は2曲。チャットモンチーの橋本絵莉子(Vo&Gt)を迎えた「All right part2」は、後藤と橋本の気だるい歌い方と熱が迸る歌詞のコントラストが鮮やかで、高揚感に溢れたギター・リフとメロディも力強く鳴り響く。ユーモラスなあいうえお作文、男性の言葉で歌う橋本の艶とレア感も思わずニヤついてしまう。東日本大震災時の東京を描いた「ひかり」は、人間の醜い部分や絶望感にも目を逸らさず、物語が淡々と綴られている。言葉をなぞる後藤の歌に込められた優しさと強さは、当時の東京を克明に呼び起こしてゆく。生きることが困難な時もあるだろう。だが"オーライ"と口ずさめば、ほんの少し救われる気がする。音楽の持つ力を信じたい――改めて強くそう思った。(沖 さやこ)
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Track.1「新世紀のラブソング」、Track.2「マジックディスク」で幕を開けるこのアルバムは、新しい時代をポップにしていこうという意志によって貫かれている。「新世紀のラブソング」や「迷子犬と雨のビート」でみせたように様々な新機軸がありながらも、従来のアジカン・サウンドがまた新たな次元に到達している。これまで以上に軽やかなフィーリングがとても新鮮だ。2000年代の閉塞感から抜け出し、新たな10年をどう塗り替えていくか。それは結局、個々の生活の中に、個々の思いの中にしかない。その意志の強さが徹頭徹尾貫かれる『マジックディスク』。音楽が持つ魔法の力をもう一度信じよう。きっと10年後にこのアルバムが2010年代の日本のポップ・ミュージックにとってターニング・ポイントのひとつになっているはずだ。(佐々木 健治)
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4月に公開される映画『ソラニン』の主題歌となるニュー・シングル。昨年リリースされたシングル「新世紀のラブソング」は、これまでのアジカンの言語感覚をもう一歩推し進める形で新たなスタンダードを提示する挑戦的な曲だったが、今回はこれぞまさにアジカンと言うべき王道のスタイル。起承転結のはっきりした展開で、アジカンらしいフックの効いたメロディがドライヴしていく。今回は、『ソラニン』の原作者浅野いにおが手がけた歌詞にメロディをつけるというコラボレーションという形態をとっている。新機軸に挑むことと王道と呼べるスタイルで楽曲を更新していくことが両輪となって、アジカンというバンドをさらに前進させ続けるという事実を示す一曲。カップリングには、映画用に新たにミックスされた「ムスタング」を収録。(佐々木 健治)
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1年2ヶ月の創作活動を経た後にリリースされるアジカンのニュー・シングルは、二つのメイン・メロディが交錯し、歌うというよりは呟きを発する前半から、1オクターブを自在に操りながらも、朗々と力強いメッセージを発する後藤の歌が、曲を聴いた何時間後も頭に残って離れることがない。これまでのアジカンらしさは決して失われていないながらも、確実に新機軸を打ち出しており、まだまだ音楽に対する意欲が彼らの中で漲っていることを感じる。そしてそこには、様々なバンドが通過する迷走感は微塵もなく、ファンの期待に応えながらも新しい感動を投げかける、とっても素晴らしい曲なのだ。カップリングの「白に染めろ」も、力強さに満ち溢れたナンバーだ。12月からは全国ツアーが始まるが、新世紀を迎えた彼らの勇姿を、とくとこの目に焼き付けたい。(杉浦 薫)
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曲の幕開けを告げる、琉球音楽のメロディから強烈に心に突き刺さる。この人の声はやっぱり、一聴でCoccoだと認識させるインパクトを持っている。その唯一無味な個性を支えるのは、5thアルバム『ザンサイアン』以来4年ぶりとなる根岸孝旨との共同作業で作り上げたバンドサウンド。"生まり島 忘れんなよ 踊れ踊れ 輪になれー"。日々の喧騒の中で忘れがちになってしまう、自分の出自。家族、故郷、大切な人や心の在りかた・・・。あなたが生まれた原点は、どこにある?そんなメッセージも汲みとらせるスピリチュアルなリリックを、人間の本能に訴えかけるエネルギーに満ち満ちた強靭な音色が伝える。カップリング「やぎの散歩」は、若干14才の映画監督・中村颯悟作品『やぎの冒険』への書き下ろし楽曲。(道明 利友)
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雑誌「パピルス」にて連載されていたエッセイに、書き下ろしエッセイなどを加えた最新エッセイ集『Coccoさんの台所』から生まれた4曲を収録した、1年10ヶ月ぶりの最新作。春夏秋冬、それぞれの季節への想いを歌った4 曲で四季を表現している。「絹ずれ」は、ダイナミックなロック・サウンド、「the end of Summer」は全英詞で夏の終わりの切なさを静かに歌う。「バイバイパンプキンパイ」では、オーガニックなアコースティック・サウンドに合わせ、前向きな歌詞を歌う。そして、美しいサウンド・スケープを見せる「愛について」でしめくくる。Coccoらしい深く自分を抉り出すような歌詞を散りばめながらも、柔らかく、ポジティヴなフィーリングが特徴的な楽曲集となっている。(佐々木 健治)
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インスト、マスロックと聞いて眉間にシワが寄るイメージを百万光年先にブン投げるほど痛快な、LITEの3年5ヶ月ぶりのアルバム。タイトルやアートワークにもあるように難解なルービック・キューブを笑いながら即座にクリアする少年性みたいな、突き抜けた楽しさやユーモアすら感じる。PCでできる創作も人間の脳や身体性には到底、敵わないのだ。唸るしかない音そのもののタフさ、生っぽいのに一切のノイズのなさがキャッチーなオープニング・ナンバー「Else」から、自然と楽しくなってしまう。まさに音が細胞を活性化させる。SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビ(Tp)が参加した哀愁漂うLITE流スカあり、根本 潤が"音的"なヴォーカルで参加した「Zero」も楽しい。BATTLESのプロデューサーによるミックスも好相性。(石角 友香)
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絵画におけるインスタレーション、つまりどの絵を選びどんな配置でどんな空間で見せるか、と同じ意志で音をまとめられた4枚目のフル・アルバム。『For all the inoccence』「Past, Present, Future」で導入され始めたシンセなどのエレクトロな要素は、今のLITEにとっては生楽器と変わらぬ扱いだ。変な言い方だが自然(Nature)がナチュラルに複雑な要素から成立しているのと同様に。高速ギター・アルペジオが生き物のようにチェイスするキラー・チューン「Bond」、五臓六腑を揺るがすベース・ライン+ローズ+生ピアノのブロックがユニークな「Fog Up」、LITE流ファンク解体全書的な「Hunger」など多彩な10曲。でも出自はマスロックという端正さも魅力。「Between Us」などはJames Blake好きにもオススメしたい。(石角 友香)
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海外でも活動を行う、日本の4人組インスト・ロック・バンド、LITEのミニ・アルバム。ギター、ベース、ドラム、シンセサイザーがスクラムを組んで突進していくかのごとき、アグレッシヴなバンド・アンサンブルが聴ける。寄らば斬られそうな鋭さで刻まれるキメのフレーズが耳に残る。そして何よりも注目すべきはニューヨークのポスト・ロック・バンドMICE PARADEのCarolineを迎えたバンド初のヴォーカル・トラックである「time machine」と「arch」だろう。アグレッシヴな演奏とは違うスピードでゆったりとたゆたうように流れていくCarolineの透明感のある歌声が、この作品に収められたインスト曲にはないやわらかい空間を生み出している。(小澤 剛)
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「人間と動物の関係性」――なんとも壮大なコンセプトのもとに形となったLITEの3rdアルバム『For All The Innocense』。次第に音の増えていく「Another World」は、音の積み重なりを越えた広義な意味での広がりとパターンを変えながらの反復が、重みのある緊張感を構築している。基軸にロックが据えられているが、随所にオリエンタルなサウンドやアフリカンな要素が散りばめられ、一方でジャズや70年代プログレが被さり、トライバルで無国籍な厚みが目立つ。非常に有機的に融合された音はいきいきと蠢き、螺旋を描くように立体的な音像を結ぶ。生物同士がしのぎを削りながらも、対峙しあう姿そのものだ。私たちもこの音の中に含まれていることを思う。(山田 美央)
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東京を中心に活動しているインスト・ポストロック・バンド、L ITE がまた一皮むけた!プロデュースにJohn McEntireを迎えて、シカゴのSOMA STUDIOでレコーディングされたミニ・アルバムが到着。シンセなどを取り入れた前作の『Turns Red EP』から感じていたが、あらゆる音楽を取り込んで新たな世界観を形成していっている。従来のゴリゴリに尖ったサウンドにパーカッションやコーラスが融合し、深みのある音と音の結合力についつい酔いしれてしまう仕上がりだ。全体を通して、静かな幕開けから意外な結末を迎える、言葉のない物語のような音世界に圧倒。ちなみにジャケットのマラカスは実際にレコーディングで使用されたもの、とのこと。(花塚 寿美礼)
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4月の"地獄盤"に続く"天国盤"はモーサム史上最強のハードコア・ファンタジーだ。その中で彼らはこれまでになく明確にそろそろ本気でヤバい地球についてや、ロックンロール・バンドを続けている根本的なモチベーションについて......を歌っている。もしかしたら順番が逆かもしれないが。藤田勇の現行のさまざまなインディー・ミュージックと呼応するセンスが溢れるのは冒頭の2曲。浮遊するシンセと谷底から鳴るような重低音の対比 が天国どころかバッド・トリップ気味の音像を描く「longlong long」、生命感を帯びた「nuts」。そしてフューチャリスティックなR&Rを経て武井靖典(Ba)渾身の叫び調ヴォーカルが涼しげな演奏と凄まじい対比を描くラストの「Kick Out ELVIS」に至るとき、本作が表現する切実さに気づくことだろう。(石角 友香)
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自由のために何だってやる、自分の責任において......それがパンクだと思っている自分にとって、モーサムは今や世界でも希少種のパンク・バンドだ。曲ができすぎたという理由で2回に分けてリリースする、今回は地獄盤。藤田勇がギターに転向して以降のタガの外れた、でもしっかりユーモアも含んだカオティック・ワールドが"HELL"の名のもとにより濃く集結した印象。ラウドで圧は高いがジャンク感はなく研ぎ澄まされた冒頭の3曲に続いて、武井靖典作曲のヒップホップとダブ要素の強い「カルチャー」、武井がヴォーカルをとる妖しげなエレクトロ・ディスコ「イミテイションシティ」、百々和宏が書く少年の日記のような痛みを伴う「ジャムパンちょうだい」など、時代に擦り寄ることの真反対を行きながら自ずと時代を映している。(石角 友香)
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否応なしに誰も経験したことのない環境に放り込まれたこの約2年、いや、その前から不変の姿勢で自分たちがやるべきことを探り、試し続けてきたなかで見つけた"答え"なのだろうか。過去を初めて振り返り、その音を最新型に更新したセルフ・カバー盤、配信/有観客ライヴを経ての待望のオリジナル・アルバムだ。オープニングの「Deeper,Deeper」のヘヴィで厚く歪みが効いた音像から、感じてきたものを下敷きに、今を新たな出発地点としてさらに先へ突き進む、強力な気骨が響く。颯爽としたロック・チューン「Beautiful Life」、ドラマチックに胸の奥から聴き手を鼓舞する「Walk」などサウンドの幅は広いが、そのどれもを"ここから共に行こう"という想いがストレートに貫いており、身体の芯を熱くさせる。(稲垣 遥)
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配信シングル「NEW HORIZON」、「Dream in the Dark」を含む2枚組全20曲収録の今作は、ナッシングス初のセルフ・カバー・ベスト盤。ライヴで磨き込まれ、強度を増したサウンドでリテイクされた最新のナッシングスがパッケージされた。トレンドに左右されず、ギター・オリエンテッドなロック・ミュージックが生み出すダイナミズムや高揚感、きらびやかで痺れるような甘美さをアップデートしてきた彼ら。「NEW HORIZON」などはその最たる形だ。曲の展開図としてはアンセミックなシンガロングやアイディアたっぷりのフレーズ、インプロ的な醍醐味もあるアンサンブルなど面白さは尽きない。そして何よりその音に触れたときに弾けるような衝撃を持つ。今作ではバンドの放つその衝撃を何度も味わえる。(吉羽 さおり)
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自主レーベルを立ち上げ、フル作としては第1弾になる10thアルバム。エンジニアやスタジオなど環境を変えて挑んだ今作は、曲作りにもメンバー4人で一丸となって励んだそう。"音楽で何を伝えるべきか"に焦点を絞った内容は、バンド・サウンドがグッと高まった印象だ。とはいえ、プレイヤーの持ち味は失われておらず、むしろ存在感が際立って聴こえてくるマジックも感じられる。大きな場所で映える楽曲を揃えた前作を経て、今回はリスナーとの距離感を縮めた作風が並ぶ。最新の音色に目を配りつつ、人肌の温かみが漂っているのもNCISらしい。また、シンプルな音像に比例して歌詞もかなり直球になっているのもポイント。僕たちが鳴らす音楽が誰かの希望や救済になればいい。その祈りにも似た歌詞が胸に突き刺さる。(荒金 良介)
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新レーベル"Silver Sun Records"を立ち上げた彼らから2曲入りニュー・シングルが到着。表題曲は新たな船出を祝うのに相応しい楽曲だ。イントロから数秒で"名曲"の予感が漂い、聴き進めるうちにそれを確信した。個性の強い名手揃いの演奏陣を背に、王道感のあるメロディを堂々と歌い上げる村松 拓(Vo/Gt)の存在感が際立っている。もっと言えば、口ずさみたくなるポップな歌メロが素晴らしいのだ。カップリング曲は5thアルバム『REVOLT』(2013年)に収録され、ライヴでも人気が高い「Bog」の再録。原曲から大きくアレンジを変更しているわけではないが、各楽器の音色はクリアになり、楽曲の明度と深度の両方が高まっている点も特筆すべき。聴き応えありまくりの2曲だ。(荒金 良介)
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1年2ヶ月ぶりとなる9thアルバムはメンバーも語っていたとおり、冒頭の1、2曲目から新しくも揺ぎないNCIS節を威風堂々と響かせるスケール感のある曲調。今年結成10周年に辿り着き、何をやっても自分色に染め上げる手腕に驚くばかり。ベースが牽引するリズミックな「Directions We Know」における村松 拓(Vo/Gt)の歌声は新鮮だし、生形真一(Gt)の中毒性の高いギター・フレーズが印象的な「Stories」も実にユニーク。とはいえ、ものすごく突飛なことをしているというより、バンドが心底楽しんでプレイしている様が伝わってくるのがNCISの面白さ。そして、ラストを締めくくるアコギ弾き語り調の「青の雫」も感動的で、懐の深い音色に心を奪われる。作品トータルの流れも味わいたい傑作だ。(荒金 良介)
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今年発売したシングル『In Future』、『Adventures』の表題曲を含む8thアルバム。表題はメンバー4人の個性、バンドとしてのオリジナリティという意味で、もはや絶対的に揺るぎない色を提示できるという自信の表れだろう。シンセを大々的に取り入れたキャッチーな「Our Morn」はEDM風のアレンジもあり、ライヴで盛り上がりそうな楽曲だ。ほかにもアコギを効果的に用いた「華やぐ街に向かう君」は村松 拓(Vo/Gt)の男臭くも哀愁漂う歌声に引き込まれてしまう。「Honor is Gone」はまさかのSTATIC XやWHITE ZOMBIEが脳裏をよぎるNothing's Carved In Stone流ラウドロックで、こう来たか! と驚きを禁じ得ない。多彩なアイディアや新たな挑戦心を盛り込み、どの曲も威風堂々たる佇まいに満ちた素晴らしさ。(荒金 良介)
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カップリングももちろん必聴ではあるが、このテキストでは、キーボーディストのヒイズミマサユ機がゲスト参加している表題曲に注目したい。変拍子や転調を用いた緊迫感のある曲構成や、その緻密さを崩すことなくダイナミック且つタフなサウンドで以って鳴らしていくことを得意としてきたNothing's Carved In Stoneだが、Track.1「Adventures」は日本語詞のミディアム・バラード。このバンドには珍しい種類の曲ではあるが、そのおかげで普段は隠れがちだった繊細な歌心を垣間見ることができる。バンドを未来へ駆り立てるプリミティヴな欲求を歌った曲だからこそ、こうして飾らず伝えることを選んだのだろうか。いずれにせよ、紛れもなく名曲だ。(蜂須賀 ちなみ)
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"Strangers In Heaven Tour"のステージでリリースが発表されたニュー・シングル。シングルとしては6thアルバム『Strangers In Heaven』を挟んで約2年ぶりのリリースである。冒頭の唸るシンセ・ベースとアコースティック・ギターによるトリッキーなフレーズがこれまで以上にプログレッシヴな魅力をアピールする表題曲と、それに比べれば、まだストレートと言えるカップリングの「GOD HAND GAME」。ともにバンドが歌を支えるのではなく、4人が主張しあい、ぶつかりながらそれでもヒロイック且つアンセミックな歌として成立しているという意味ではまさに彼ららしい、唯一無二のスリルを味わうことができる。初回生産限定盤のみ前述したツアーのファイナル公演からライヴ音源3曲が加えられている。(山口 智男)
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早くも6枚目のオリジナル・アルバムをリリースするというこの表現欲。無から何かが湧き上がってくるようなプリミティヴかつスペイシーなオーヴァーチャーがこのアルバムを象徴しているようだ。なんともエモいメロと光の束が押し寄せるようなシングル曲「ツバメクリムゾン」に劣らぬ「Shimmer Song」。シーケンス的だがすべて人力で表現する「Crying Skull」はコピーしたいキッズ続出だろうし、UKインディーっぽいグラマラスなリフでありつつ、サウンドスケープはインダストリアルな「What's My Satisfaction」、最強のファンク/ダンス・チューン「Idols」、トライヴァルなのかすら不明な変則的なビートとドラムサウンドがユニークな「Brotherhood」など、どこを切っても意表を突かれる体験的な1枚。(石角 友香)
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なんてエモーショナルな音楽だろう......。スター級プレイヤーが揃ったこの4人ならではの驚くべき超絶テクニックもさることながら、村松拓の力強いヴォーカルの存在感がこのバンドの強みでもあると思う。そして、今回は日本語詞の楽曲も収録され、村松の低く安定感のある声は日本語との相性も良く、ヴォーカルそのものの良質さが更に際立っている。互いの個性をうまく昇華した大胆不敵な音の重なりは、まさに奇想天外。メインで活動しているバンドをそれぞれ持つ4人だが、NCISの活動は課外活動でなんか決してない。バンド名の意味が表すように、常に挑戦を止めず、自分自身の枠に囚われることなく新たな音を探し求める現在進行形の姿勢を断固支持する。これぞジャパニーズ・オルタナティヴ・ロックの最前線!(花塚 寿美礼)
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ストレイテナーの日向秀和、ELLEGARDENの生形真一が中心となって結成されたNothing's Carved In Stoneのセカンド・アルバムが6月9日(ロックの日)にリリースされる。まず、この2人が同じバンドで音を鳴らしている、それだけでも奇跡だろう。昨年末から行われたツアーのチケットもたちまち即完売の大盛況ぶりで、そのエネルギッシュなライヴには定評がある彼ら。7月からは全国ツアーが始まり、そのパフォーマンスにも期待したいところ。今作では各楽器が絶妙に調和しつつも、メンバーそれぞれの個性豊かなカラーが気持ち良く現れていて、重厚なサウンドのなかに卓越したテクニックが惜しげもなく発揮されている。確実に"音で魅せる"ことが出来る数少ないバンドのひとつでしょう!(花塚 寿美礼)
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3部作の最後を締めくくった『ペーパークラフト』から2年。久しぶりのセルフ・プロデュースで過去最長の制作期間を経て届けられたニュー・アルバム。9月リリースの12インチシングル『寝つけない』でも我々の心許ない足元をミニマルな音像とメロディで表現していたが、オウガの場合、恐怖を煽るディストピア思想とか、そうしたものを反映した攻撃的な音像になるわけもなく。コード展開や極めて少ない音数によって、一歩踏み出したかと思うと立ちすくんだり、甘美なメロディで逃避したり――つまり日常も世界も問題だらけの今、大方の人間がとりがちな行動をそのまま音楽にしてしまった感がある。飛び込みたいプールに至る階段さえ宙に浮いている、このアートワークが象徴するような世界が広がるのだ。(石角 友香)
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前作のUKフレイバーのAORも新鮮だったが、今作ではまばゆいサイケデリアというより、時間感覚が麻痺するような、淡々としているのに妙にドープな幻惑体験が待ち受けている。特に石橋英子がオルガンで参加している「これから」や「黒い窓」にそれらは顕著。THE DOORSからわかりやすいカオスを取り除き、聴感としての快感と不穏を両立するような。また、ベースもギターのアレンジもミニマルな反復がひたひたと迫る「素敵な予感」のタイトルが醸すイメージとのギャップも面白い。ちなみに100年後、恐らく私たちはこの世に存在しない。それは悲しいとか寂しいもないただの事実で、だからこそたった今の感覚は瑞々しい。このアルバムを聴いていると不思議とニュートラルな気持ちになる。音楽として自立した2012年の傑作。(石角 友香)
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どうしたオウガ!?(もちろんいい意味で)語りあり、フルートやらムーディなサックスなど管楽器をフォーカスしたり、甘美なコーラス・ワーク......本当に驚かされる快作。前作『浮かれている人』に続き、ゆらゆら帝国のレコーディング・プロデュース・チームを迎えた今作。ハイトーンで浮遊感ある出戸学(Vo/Gt)のヴォーカルは、以前に増して聴き手を異空間へトリップさせる。そして、曲間の繋ぎも雑踏の音が使用されていたりと面白い試みが成されている。絶妙なギリギリ感というか、一見歪んだパーツを集合させると心地よく聴こえてしまうオウガ・マジック。MGMTとの共演やUSツアーを経て表現の幅を広げたようだ。全体を通してミュージカルのような印象を受けた今作、やっぱり中毒性は非常に高し。改めて、彼らはすごい......!(花塚 寿美礼)
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丸い質感のバンド・アンサンブルと、出戸学の気だるく、たゆたうようなヴォーカルが創り出す、独特の奇妙なポップ・ワールド。OGRE YOU ASSHOLEの音楽には独特の空気感がある。US インディに強烈にインスパイアされたことが伺える、一筋縄ではいかないそのポップ・センス、漂うようなメロディ・ライン、確かなバンド・アンサンブル、そのどれもが魅力的でありながら、それだけでは説明できない「何か」がこのバンドには潜んでいる。OGRE YOU ASSHOLE が生み出す不可思議な磁場。独自のポップ・センスだけでなく、その得体の知れない「何か」すらパッケージしてしまったメジャー・デビュー・アルバム。(佐々木 健治)
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SEKAI NO OWARIの2014年第1弾シングル。タイトル・トラックは、"ぜんぶ雪のせいだ。"というキャッチ・コピーとともに、DJ LOVEがティーザー広告に登場したことでも話題となった"JR SKISKI"キャンペーンのCMソング。重厚なマーチにのせて歌われるキラキラした甘くファンタジックな世界観が存分にインサレートされた歌詞には、"君"に恋焦がれる"僕"の感情がギュッと詰め込まれている。カップリング曲「銀河街の悪夢」は足音や踏切の音などの効果音が情景を想像させ、現実を乗り越えようとする主人公の様子が目に浮かぶようである。総制作費5億円という破格のスケールで開催された"炎と森のカーニバル"の映像が収録される初回盤DVDも楽しみだ。(奥村 小雪)
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世界の終わり、初の映像作品は、昨年末に行われた渋谷C.C.Lemonホール公演の模様を収めたもの。いやはや、映像として見ると、凄まじいとさえ思う―。そして、"何故、今、世界の終わりはこれほど求められているのか"ということが良く分かる。今の子供たちが求めているのは、共感でも、励ましでもなくでもなく、世界を丸ごと作り変えてくれる新たな創造主なのだ。"清い"オーラが眩しく乱反射するような彼らのステージには、その楽曲同様に、全てを白く塗りつぶしてしまおうとでもいうようなパワーがある。世界の疎ましさを打ち消すため、自らを欺くために彼らが作った"白い世界"は、ライヴという生身の空間を通すと、今のこの現実の世界を必死で生き抜こうとする生々しい想いが浮かび上がってくる。そして分かるのだ、このバンドから目を背けてはいけないと。(島根 希実)
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結成25周年シングルの表題である「最後に残るもの」は菅波栄純(Gt)作詞作曲。バンドマンとしてもおそらくひとりの人間としても危ういときに"この手を掴んでくれたあなた"はファンやリスナーだったことを思わせる歌詞に、このバンドの真心が滲む。ごくシンプルな8ビートだが、Bメロのリズムの妙や楽器の抜き差しに実直なバンドが磨いてきた効果的なアレンジ力の高さが見て取れる。カップリングの「フェイクドラマ」は松田晋二(Dr)によるリアルが見えにくい時代だからこそ自分の体感や衝動を信じようという歌詞が山田将司(Vo)によるモダン・ヘヴィ・ロックにファンク要素も加わった曲構成で際立つ。2曲ともすべての楽器が見えそうな削ぎ落とされた生々しくも乾いた音像がこれまでの曲ともまた違うタフなエネルギーを発している。(石角 友香)
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今年結成25周年を迎えたTHE BACK HORNのアニバーサリー作品は太文字のロック・バンドである彼らの魂はそのままに、ジャズやカントリー、R&Bなどにアプローチし、オリジナルをリアレンジしたもの。「冬のミルク」や「罠」、「美しい名前」など、ライヴで生き残ってきたナンバーもありつつ、インディーズ楽曲やシングルB面曲などレア選曲なのも面白い。「ガーデン」のラテン・ビートとアトモスフェリックな音像の不気味さ、「幻日」のアラビックなフレーズ、「羽根~夜空を越えて~」の淡々とした進行があぶり出す曲の純度や、音数が減ったことで歌詞の鋭さが際立つなど、このバンドのひと筋縄でいかない側面が目立っている。本作のタイミングで書き下ろした新曲「Days」での恐ろしくシンプルな歌詞が表現するファンへの感謝も深く沁みる。(石角 友香)
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コロナ禍でライヴ活動が止まってしまった際、そのかけがえのなさを描いた「瑠璃色のキャンバス」からスタートした本作。次第にツアーも開催するなかで生まれた「希望を鳴らせ」や「ユートピア」といった新たなアンセムに加え、山田将司(Vo)がラテン音楽からインスピレーションを得て、松田晋二(Dr)がそこに妖しさや生々しさを言葉として書いた「深海魚」、4ビートのジャズのみならず、8にも16にもリズム・チェンジするスモーキーな「戯言」、素直なメロディと力強いボトムを持った岡峰光舟(Ba)の「夢路」、エレクトロ・サウンドやSEの使い方と黙示録的な歌詞が菅波栄純(Gt)らしい「ウロボロス」、神聖なムードや声のレイヤーに新鮮さを感じるラストの「JOY」まで、50分弱でこれほどまでに多様な世界観を体験させるこのバンドの柔軟性にも感動する。(石角 友香)
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13thアルバム『アントロギア』からの第2弾先行配信曲「ユートピア」は、THE BACK HORNの新たな代表曲になりそうな試行が投入された1曲。ヘヴィなベースのイントロから楽器の音が生々しく、そして輪郭が明快だ。ダンス・ミュージック的なグルーヴ感やエレクトロニックなSEが新鮮な聴感を残す。ブランニューなアレンジに乗る歌詞も突き抜けた前向きさを醸し、過去の彼らの作品名――"ヘッドフォンチルドレン"なども登場する包括的な視点が逞しい。不器用に誠実に生きてきたバンドとファンが、今こそその蓄積をこの不安な時代をサヴァイヴする糧とし、ディストピアから脱出し、自分たちなりの理想=ユートピアへ辿り着くための、嘘偽りのないユニークなアンセム誕生と言っていいだろう。(石角 友香)
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いい意味で身も蓋もないほどストレートな8ビートが、すでにこの曲を知っていたかのような錯覚を覚えるが、取り戻せない日々や人々、未だ存在する絶望をしっかり背景として描いているからこそ、希望を鳴らせという鼓舞が真実味を持って響く。近い将来のライヴで絶対シンガロングしたいサビそのものが希望だ。c/wは摩訶不思議な菅波栄純(Gt)流ミクスチャーが顕在した「疾風怒濤」。ラテン、ジャズ、ヒップホップ、トラップ、レゲエにメタル......と要素は多彩だが、リスナーにとってのTHE BACK HORNをサンタクロースになぞらえるほど、強さとユーモアを持ち得たことも証明する。CD版に付帯する映像には、今年3月のライヴ"「KYO-MEIワンマンツアー」カルペ・ディエム~今を掴め~"を完全収録。この時期の記録としても貴重だ。(石角 友香)
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新型コロナの影響でライヴ活動を自粛せざるを得なかった2020年。配信公演の8月の"スタジオ編"と9月の"ライブハウス編"をまとめた映像作品は、皮肉なことに、コロナ禍2年目を迎えてしまった今、不安も焦燥の種類も変化してきたなか、根本的に自分はどう生きたいのかというシンプルな命題に向き合わせてくれる。ふたつのライヴで被りは新曲「瑠璃色のキャンバス」とお馴染み「コバルトブルー」、「シンフォニア」の3曲。8ヶ月ぶりのライヴとなった"スタジオ編"は音を鳴らした瞬間、バンドに血液が巡るような衝撃が画面越しでも伝わるし、ライヴハウスが無人でも、山田将司(Vo)は冒頭から汗だくだ。隣り合わせの生と死を実感し、成長しつつ無垢の魂を曝け出す、TBHにしか伝えられない希望が作品の中で生きている。(石角 友香)
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5曲入りEPという形態ではあるが、THE BACK HORNにとっての"この気持ちもいつか忘れる"という物語が5曲で紡がれている印象も。そのスタンスがいい意味でバランスを取りすぎることなく、各楽曲でひとつのテーマや、それが導くイメージを音像やアレンジに落とし込んでいるのが面白い。すでにライヴでも定番になった「ハナレバナレ」の中間部での宇宙的な展開、ラウドでヘヴィ且つタイトな聴感が新しい「突風」、木琴の音色やポップス的なメロディが愛らしい「君を隠してあげよう」、世武裕子が歌うことで主人公の他者との関係を示唆する「輪郭 ~interlude~」、そしてバンドの素を思わせるオルタナティヴな「輪郭」。この楽曲では作詞に住野よるが参加。コラボの濃度を高めているように思える。(石角 友香)
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フル・アルバムとしては『運命開花』以来、約4年ぶりとなる本作。結成20周年の期間にインディーズ作品の再録や、ミニ・アルバム『情景泥棒』の制作、ツアーをハードに巡ってきた経験が昇華された、完成度と濃さを持つ作品だ。「心臓が止まるまでは」のSF的なサウンドトラック感やEDMの消化、和のメロディと壮大さが彼ららしいリード曲「太陽の花」、20年経過したうえでのミクスチャー感が冴える「フューチャー・ワールド」、青春の瑞々しさと切なさが溢れる「ソーダ水の泡沫」、物語性と空気感においてTHE BACK HORNの唯一無二の側面を際立たせる「ペトリコール」、一歩踏み出す穏やかな勇気をくれる終盤の「果てなき冒険者」など、メンバー個別のデモから発展させただけあっていずれも純度の高い全11曲。(石角 友香)
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すでにベスト・アルバムのリリースを機に再録されている「冬のミルク」や「無限の荒野」などはその音源だが、今回ついにインディーズ時代の2枚のアルバム『何処へ行く』、『甦る陽』、そしてシングル『風船』収録の全21曲が今の演奏とサウンドで蘇った。善良な人間と見せ掛けた内なる闇や獣性にシニカルな目線で切り込んでいく表現は、若さゆえの激烈さを孕んでいる。様々な試練も音楽をやる楽しさも経験してきた今のTHE BACK HORNの出自を改めて知るうえでも、またライヴで演奏され続けている曲が多いことからも、再度向き合いたい曲ばかりだ。近年のストリングスとのライヴで物語性が際立った「カラス」や、洋楽と並走していた日本のオルタナティヴ・ロックの貪欲さを思い起こさせる「新世界」など、全曲が濃厚。(石角 友香)
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前作『運命開花』もTHE BACK HORNならではの音楽言語で人間の深淵に手を突っ込み核心を引きずり出されるアルバムだったが、今回はミニ・アルバム、トータル7曲なだけに集中した濃厚な世界観に圧倒される。ヘヴィ/ラウドロック的な聴感でありつつ定石から逸脱した「Running Away」。ストレートなTHE BACK HORN節のようでアレンジの細部がこれまで以上に詰められた「儚き獣たち」や「閃光」。痛烈に今を皮肉る歌詞とラガマフィン調がユニークな「がんじがらめ」。記憶や情景という人間らしい感性が取引されているようなSF的なストーリーが「情景泥棒」と「情景泥棒~時空オデッセイ~」の2曲で展開するくだりは本作の核心。悪夢からの帰還とも取れるラストの「光の螺旋」まで一気に聴きたい。 (石角 友香)
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DISC-1は『覚醒』以降の13のシングル曲とアルバム・リード曲、そして新曲「グローリア」を収録。自分を見つめることで世界は対立項ではないことを音楽的にも実感させる名曲「世界中に花束を」、ファンクやラップへのTBHならではのアプローチがユニークな「コワレモノ」、今の力量で原点を見つめた「悪人」や「その先へ」に至るまでのいい緊張感。そして、そうしたバンドの生き方を踏まえたうえで聴こえてくる「WithYou」や「あなたが待ってる」の優しい説得力は破格。ある種素朴な新曲「グローリア」も新鮮だ。DISC-2は2008年以前の曲からファン投票で選ばれた上位14曲に加え、インディーズ時代からの定番曲「無限の荒野」、ストリングス・アレンジの「泣いている人」の新録も。「扉」、「枝」など隠れた名曲の多さにも驚く。(石角 友香)
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思わず拳が上がる曲とはこういう曲をいうのではないだろうか。表題曲は、久々のTHE BACK HORN節100パーセントの骨太なアッパー8ビート・チューン。山田将司(Vo)自身が孤独の中で光を見いだしたロック・スターや、音楽に今のバンドとオーディエンスの姿を重ね合わせるように"今夜だけは俺たちのもの/行こう行こう 途切れぬように"と歌うヴァースは力強くも優しい。Track.2「導火線」は菅波栄純(Gt)らしいおどろおどろしいイントロからAメロでは一転、ファンキーなカッティングと四つ打ちに驚きを隠せない、ライヴでぜひ聴きたい弾けた1曲。松田晋二(Dr)作詞、山田作曲のTrack.3「夏の残像」は、岡峰光舟(Ba)のメロディアスなベースが導く、匂い立つような夏の別れの情景を描き出すマイナー・スロー・チューン。彼ららしい優しさが染みる。(石角 友香)
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前作「With You」に続くミディアム・バラードでありつつ、音像はグッと柔らかな今回の「あなたが待ってる」。少しのタメが効いたピアノが物語の道筋を描くように流れながら曲を牽引し、各楽器も必要最低限のフレージングとクリーンなトーンが美しい。どこか初期のNorah Jonesを思わせるジャジーなムードもある。そこに力まず、素直に歌う山田将司(Vo)の"あなたが待ってると思うだけで/もうそれだけであったかい"というフレーズが、聴く人の数だけ様々なイメージを喚起する。共同プロデュースとして参加した宇多田ヒカルの控えめなコーラスも一瞬、個性を光らせるところが強く胸を打つ。カップリングの「始まりの歌」は一転、一筆書き的な勢いのあるバンド・アレンジ。バンドの表現方法として、さらなる可能性が確認できるシングルだ。(石角 友香)
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THE BACK HORNの美しいスロー/ミディアム・ナンバーはこれまでもジャンルを超越したところで聴き手を闇から救ってくれた。だが今回はもはや対象をファンに特定することすら無意味なほどの普遍性を湛えている。ピアノやストリングスの音に一切の虚飾がないこと、そして何より山田将司の素朴で素直な声の特性が、大切な人への感謝や覚悟、そして不変の愛を伝える心情を高い純度で届ける。何度も聴くほどに内側からあたたかさが満ちてくると同時に何とも切ない。「言葉にできなくて」のティーンエイジャーの悩める恋心と軽快なスカのリズムも意外ではあるが、これもバンドの軸にあるものだろう。さらに「世界中に花束を」のストリングスを交えて2015年に渋谷公会堂にて行われたライヴの音源も収録。(石角 友香)
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人間の矛盾や邪悪な部分にあえて手を突っ込んで引きずり出す初期のニュアンスを"投げっぱなし"じゃなく聴かせる。そのことにバンド自身が自覚的且つ客観性を持った強いアルバムが完成した。ジャジーなスウィング感を持ったTrack.1「暗闇でダンスを」の意表を突く幕開け、素のギター・ロック感が彼らには珍しいTrack.4「tonight」、メタリック且つサタニックなギター・ソロが禍々しいTrack.7「胡散」などから、1曲の中で大きく展開するTrack.9「悪人」への流れが非常に早い。山田将司のイノセントなヴォーカルが秘めた狂気を感じさせるTrack.11「君を守る」、そしてアルバムの冒頭とは打って変わって、愚直なまでにファストなビートが爆走する機関車のようなラストの「カナリア」。曲の持つ素性が1回聴いただけで刻まれるアレンジ力の高さにも圧倒される。(石角 友香)
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THE BACK HORNが00年代半ばから彼らを追いかけ続けてきたリスナーに与えた影響とは、すなわち"世代感"だった。世代感とは、大義名分を掲げることではなく、むしろ、"何も言い切ることができない"という揺らぎと真摯に向き合うことでしか描けない。THE BACK HORNは、正義と悪――その両極の狭間にある不安定な人間の感情と常に真摯に向き合い続けてきた。「ジョーカー」や「ヘッドフォンチルドレン」といった大名曲を改めて聴けばわかるだろう。そこには揺らぎ続ける僕らの生があった。23枚目となる本シングルにおいて彼らは、そんな自らの表現の本質に再び目を向けている。収録された3曲が、その通底するメッセージにおいて緩やかに繋がっている。それは、人間誰もが内包する普遍的な魂の在り処としての"悪意"と、"愛"である。(天野 史彬)
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前アルバム『パルス』から約2年振りにリリースされた待望の8thフル・アルバムの今作は彼らの集大成と言っても過言ではない。山田将司が歌う全ての言葉がどこまでも真っ直ぐ聴く者の意識を貫き、ひとつひとつが限界以上の熱量を放つ強靭な音は"鋭さ" と"柔らかさ"、両極端の色を同時に打ち出す。人間業とは思えないほどの圧倒的な神聖さを感じさせる要因は、確固たる信念を持った4人の心がこれまで以上に強く深くひとつになっているからに他ならないだろう。11 年の歴史でとうとうアサイラム="聖域" を開拓したTHE BACK HORN。アルバムの最後に収録されている「パレード」で高らかに掲げられた"ここから新しい旅を始めよう" という言葉の示す、この先の彼らが創造する世界は如何に――?(沖 さやこ)
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2月に歌詞集とPV集を発表したばかりのTHE BACK HORNから新曲が届けられた。歌詞集にも限定CDとして収録されていた「コウロギのバイオリン」という新曲が届けられたばかりだが、集大成的な長尺ナンバーだった「コウロギのバイオリン」とは違い今作は即効性の高い攻撃的なロック・ナンバーだ。今年2月から行われている豪華な対バン・ツアー"KYO-MEI大会" では早くも定番になりつつあるという。バンド自体700日振りのニュー・シングルとなる今作からは新たなスタートを切る気合いと決意が感じられる。メンバー4人それぞれが歌詞を担当するという試みも各々の世界観が伝わってきて興味深い。初回限定盤にはライヴ音源も収録されている。(遠藤 孝行)
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THE BACK HORNの歌詞はとても素朴ながらも、体の芯を掴まれる様な感触がある。誰もが感じているけど言えなかった事をストレートに投げかけられる様な誠実さがそこにはある様な気がするのだ。キャリア初となる歌詞集をリリースするTHE BACK HORN。インディーズの頃から今日までの楽曲125曲をメンバー監修のもとに作られたこの歌詞集には新曲「コウロギのバイオリン」が収録されている。バンド史上最長の8分を超えるこの楽曲は、絶望的な気持ちを表現する序盤から徐々に光が射す後半へと1つのストーリーになっていて、まさに彼らの今の集大成と言えるような内容になっている。喉を震わせて「はぐれた心を取り戻しに行く」と歌われる後半はとても感動的で、今後の彼らの決意が見えるようだ。(遠藤 孝行)
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ただ生身の自分でいることで繰り出せるパワーやその状態の清々しさをバンド・アンサンブルで表現した前回のシングル「さよなら最終兵器」も屈指の名曲だったが、その精神状態と地続きな"こんな思いひとつで、いつでもどんな時でもまっさらな自分に戻れるかもしれない"、そんな一筋の希望を感じさせるナンバーの登場だ。夜明け前のいちばん蒼が濃い時間、夜明けに向かって覚醒していくような、淡々としたミドルのテンポと少ない音数が少しずつ熱を帯びていく。チバユウスケは具体的に鼓舞する言葉は何も綴っていないが、寒風の中でこそ感じる温かさのようなものや自分の鼓動を感じる。カップリングはちょっとダルでワイルド。"ロックンロール以上に楽しいものなんてあるのかい?"、しかも割と真顔で言い放ってるフシがある。(石角 友香)
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こんなにドラスティックで芯の太いロックンロールを今の時代に真っ向からやれるのは、a flood of circleくらいじゃないか。そんな感想が思わず第一に出るくらい、雄々しく意気盛んなアルバムだ。結成15周年のアニバーサリー・イヤーだった2021年。コロナ禍ではあったが、そのなかでリリースもライヴも最大限にし尽くしてきた年の最後に届けたオール新曲の本作は、ボロボロになりながら、キラキラを振りまきながら、危険な香りもぷんぷんさせながら転がり続けてきたAFOCらしさ全開。リード曲「北極星のメロディー」を筆頭に、自分たちの鳴らす音楽が最高だという自信に満ちたムードがこぼれ出しているのだ。「クレイジー・ギャンブラーズ」の一節"最後は俺らが爆笑だぜ"も、痺れるくらいかっこいい。(稲垣 遥)
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新型コロナの感染拡大による混沌とした社会に、"2020"と名付けたアルバムではあるが、コロナの影響を受けて作られたものではない。今作には、どんな時代であろうとも、社会や自分自身との戦いの中で、ファイティング・ポーズを崩さずに転がり続けてきたバンドのスタンスが地続きのまま表現されている。暗闇の中で、"それが一体なんだっつーんだよ?"と唾を吐く「2020 Blues」をはじめ、本能のままに牙を向けと鼓舞する「Beast Mode」といったバンドの真骨頂と言える熱い楽曲のほか、「天使の歌が聴こえる」といったローテンポの楽曲ではメロディの美しさも冴える全12曲。ラスト・ソング「火の鳥」に辿り着いたとき、暗闇の先に希望が見えた。強い生命力を宿したロックンロール・アルバム。(秦 理絵)
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バンドの体制が整った今だからこそ生まれた、4人の生身の人間によるロックンロールの肉体的サウンドとグルーヴを追求した、アオキテツ(Gt)正式加入後初めて制作されたフル・アルバム。バンドの歴史が走馬灯のように駆け巡るAFOC節が効きながらも、質感はひたすらにフレッシュ。歌詞もストレートでパンチのあるワードが多く、1分台のロカビリー調の楽曲やパンク・ナンバーなど、繊細さや一抹のセンチメンタリズムは失わずとも陽のエネルギーに溢れている。"ハイテンションソング"なんてタイトルでありながら楽曲はシリアスめで歌詞はシニカルであるなど、随所にバンドの遊び心も感じられるところも爽快。"俺たち元気でバンドやってるよ"という手紙のような、体温が通った作品が完成した。(沖 さやこ)
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サポート・ギタリストのアオキテツが正式加入、2度目のセルフ・タイトル作品、UNISON SQUARE GARDENのソングライター兼ベーシストである田淵智也プロデュース楽曲と渡邊一丘(Dr)作詞作曲による楽曲の収録、イギリス人エンジニア Xavier Stephensonとの3度目となるタッグ、デモ制作過程の変化など、盛り沢山のトピックからもバンドのクリエイティヴィティやポジティヴなモードが窺える。どの楽曲もスケールの大きなサウンドスケープで、自由度が高くフレッシュ。新しいスタートを切って飛び出した瞬間のような未完成感だけでなく、バンドの深いところにある核心も感じさせる、新生AFOCのプロローグとしては申し分のない濃厚な内容では。今後さらに加速し、強度を高めていくことを確信させる。(沖 さやこ)
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a flood of circleの佐々木亮介(Vo/Gt)が、自身のルーツであるブルースやソウルを辿り初のソロ作品をリリース。ロックンロールやブルース発祥の地・メンフィスで本場の一流ミュージシャンとともに制作、レコーディング、マスタリングを行っている。サウンド・アプローチがバンドと異なるのはもちろんだが、驚いたのはメロディ・ライン。特にファルセットが取り入れられたTrack.2や、トーキング・ブルースが主体となったTrack.3はブラック・ミュージックというサウンドがもたらしたものでは。そこに英語だけでなく日本語も交ぜ込んで乗せるスマートな力技も心地いい。佐々木節の効いた名ミッド・ナンバーや、喋り言葉で思いの丈を弾き語りで叫ぶ曲など、どの楽曲も彼の熱源に触れるようだ。(沖 さやこ)
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オリジナル・フル・アルバムとしては約2年ぶり。ロンドンで出会った世界有数のエンジニアであるXavier Stephensonとタッグを組んだことで、バンドが元来持つ表情をさらに丁寧に紡いだ楽曲が揃った。音色ひとつひとつにオリジナリティがあることで楽曲の個性も際立っており、強さの中にある繊細さがひと際煌びやかである。これまで自分の決意を曲にしてきたソングライターの佐々木亮介(Vo/Gt)だが、今回はそれぞれの楽曲にメッセージを宛てた相手が存在しているとのこと。その結果、リスナーと手と手を取り合うような優しさがどの曲にも生まれた。そこに宿るのはこれまで様々な困難も乗り越えてきたバンドだからこその説得力。AFOCが情熱と愛を持って音楽と人に向き合っていることを改めて痛感した。(沖 さやこ)
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ロンドン・レコーディングの激ライヴ仕様ナンバー、軽やかなクリスマス・ソング、「オーロラソング」のクリスマス・アレンジ、山下達郎の「クリスマス・イブ」のカバーなどを含む豪華5曲入りシングルが、新イベント"A FLOOD OF CIRCUS 2016"開催日にリリース。表題曲はマイナー・コードが効いたロックンロール・チューンで、AFOCの既発曲では「Blood Red Shoes」などのカラーに近い。タイトルどおり随所でワルツを取り入れ、"空中ブランコ"、"フリーキーショー"など、イベントになぞらえた歌詞などのテーマ性も併せ持つ。哀愁と陰を燃やして転がすAFOCがお好きな方には"待ってました!"の楽曲では。5曲のバリエーション豊かなアプローチは、バンドの懐の広さを物語る。(沖 さやこ)
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結成10周年を記念したベスト・アルバム。何度かのメンバー・チェンジ、レーベル移籍など、フロントマンの佐々木亮介はこの10年間を"傷だらけの歴史"と言うが、彼らはどんなことがあろうとただただ誠実に自分たちのロックンロールと向かい合っていた。その歴史を走馬灯のように見せる17曲入りのDISC1は、彼らの代表曲を並べた文字通りのベスト・アルバム。どの曲も最終回のようなクライマックス感があり、改めてバンドの持つ力強さを思い知る。曲順もドラマティックだ。初回盤にはこれに2枚のディスクが追加。DISC2には新曲とレア音源が収録され、ライヴ定番曲「プシケ」も念願のスタジオ・レコーディング。DISC3には裏ベスト的な選曲+カバー曲を佐々木亮介の弾き語りで11曲収録されている。(沖 さやこ)
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ふと昔を振り返ってみると、よくあのときあの状況を耐えてたな、と自分自身に感心することがある。それと同時に、若くて幼い自分があれを乗り越えたというのに、今の自分は何をしているんだ?と、過去の自分から刺激を受けることも少なくない。『ベストライド』リリース以降、精力的なライヴ活動を行ってきたAFOCが、競演に強力なバンドを招いた東名阪ツーマン・ツアーを目前にリリースするシングル表題曲は、佐々木亮介(Vo/Gt)の自伝とも言える内容が綴られた、青さが燃え上がる楽曲。彼は駆け抜けてきた過去をすべて抱え、それに突き動かされながら、未来を切り開き続けている。今年29歳を迎える彼が歌うことで生まれる説得力。強い想いと飾らないストレートなサウンドが、聴き手の心に突き刺さり、種を植え花を咲かす。(沖 さやこ)
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この作品は始まりの鐘の音だ。ここまで彼らがまっすぐ歓喜の感情を、ここまで笑顔が溢れる音を、こちらに届けたことがあっただろうか。今年3月から新体制で動き出したAFOCが、僅か1ヶ月で作り上げたこの6曲は、バンドの現在のモードを如実に示している。転がり続ける彼らはしっかりと照準を定め、そのど真ん中目がけて走り出しているのだ。積み上げてきたものをすべて落とし込んだ集大成的アルバム『I'M FREE』、様々なアレンジに挑戦した冒険心溢れる『GOLDEN TIME』を経て、AFOCはその芯をさらに太く強固にソリッドしつつ、よりフラットに自由になっている。彼らがこれまで貫いてきたポリシーや掲げていた決意表明は、ここで未来を変えるパワーになった。AFOC、向かうところ敵なしである。(沖 さやこ)
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1年4ヶ月振り6枚目のアルバムは、新メンバーにDuran(Gt)を迎えて4人新体制で制作された記念すべき作品。2009年以降初めて正式にギタリストを迎え入れたという事実だけで、佐々木亮介(Vo/Gt)にとっていかに手が合う相手なのかということが理解できる。疾走感溢れるサウンドとルーズなコーラスがロック・バンドのカッコよさを最大限に表している「GO」、バンドの一体感がわかるグルーヴで迫る「スカイウォーカー」、全国47都道府県をすべて回った昨年のツアーの経験が色濃く落とし込まれたトーキング・ブルース「Black Eye Blues」を始め、尖った曲が多い中、ラスト「Party!!!」の多幸感がバンドのムードの良さを感じさせる。(岡本 貴之)
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どれだけの大言壮語も、馬鹿げた夢物語も、恥ずかしいくらいの繊細な告白も、すべて本音なのだからしょうがない。これが自分たちのブルースなのだから、これ以外に歌うことはない。ここ最近のAFOCからは、そんな清々しさと強さを感じる。このニュー・シングルも然り。彼ららしくアグレッシヴで、艶やかで、ちょっと切なく、しかし何よりも馬鹿馬鹿しさを忘れない(これが非常に大事)ロックンロール・チューン「Dancing Zombiez」を表題曲に置いた全4曲。ロック・クラシック「I Love Rock'n Roll」の日本語詞カヴァーや、ストリングスを取り入れたバラッド「月面のプール」など、本気で夢を見れば、本気で愛すれば、軽く現実なんて超えられることを証明するロックが満載。 (天野 史彬)
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現体制になって2作目、そしてレコード会社を移籍しての第1弾。ロックンロール=愛することかつ生きることを宣誓した前作『LOVE IS LIKEA ROCK'N'ROLL』と地続きだが、さらにお先真っ暗な現実とタフに、時に冷静に対峙するかのように、削ぎ落とした音像やアレンジが新鮮。佐々木のモノローグめいた地メロとシャッフルのリズムがクールな対比を見せるリード・トラック「理由なき反抗 (The Rebel Age)」、意識や身体をすっ飛ばして心拍だけを感じさせるような「Diver's High (VAVAVAVAVAVA)」、乾いた味わいと肩の力の抜けたカントリー・ブルース「The Cat Is Hard-Boiled」、零度から一気に沸点に達するラウドな「KINZOKU Bat」など緩急に富み一気に聴ける全7曲。(石角 友香)
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現在のメンバー編成になり初のフル・アルバム。"愛とロックンロールで未来をつかむ!"というコンセプトのもと制作されたそうだが、その実態は単純に言葉通りの軽快なものではなく、生死をテーマにしたロックンロールが痛烈に咆哮する迫真の作品だ。生きることへの不安、苦悩、痛み、絶望、孤独......それをかくれんぼやギャンブル、幽霊、恋愛などを題材にした物語で昇華する。何て小気味の良いユーモア、そして重厚なエンタテインメントだろうか。死ぬ気で生きている人間だからこそ奏でることが出来る躍動感と力強さ。その先にある希望と光を信じ、命を削るが如く音をかき鳴らす。作品を作り出すごとに輝きとスケールを増し、ソリッドになってゆくafoc。この勢いは誰も止めることは出来ない。(沖 さやこ)
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人間とは何か?という問題提起を投げかけたシングル「Human License」で自分のなかの普遍的なテーマと正面から向き合ったVo&Gtの佐々木亮介。今作はタイトルのように理性を保った人間性と本能むき出しの動物的一面、どちらの姿も見え隠れする世界観を圧倒的なパワーで表現していて、まさに楽器が凶暴な動物のように暴れているという表現が正しいソリッドなサウンドが冴えまくっている。ファースト・アルバム『BUFFALO SOUL』で感じたほとばしる初期衝動と通じる楽曲が多い。アルバム・リリース・ツアーが始まるので彼らの全身の血液が燃えあがる、そんな感覚に陥るライヴ・パフォーマンスも注目だ。またさらに化けた、a flood of circle。作品ごとの進化がすさまじい。(花塚 寿美礼)
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とことん、こいつらは止まることを知らない。前作『PARADOX PARADE』から約8カ月ぶりのリリースとなる本作はa flood of circle初のシングル。リリースの度に、加速し、破壊力を増していくメロディは、最早フラッド節の域に達したといっていいのではないだろうか。メジャーデビューとなった1st アルバム『BUFFALO SOUL』からプロデューサーとしてタッグを組むいしわたり淳二によって開花させられた、バンドの第2 期ともいえるサウンドはますます冴えわたっている。歌詞、メロディ、ギター・リフ、全てがとことんドラマティックでキャッチーであり、その全てをたたみかけされる切迫感の心地良さ。銃口を向けるような攻撃的ギター・ロックの緊張状態と、ブルースのこぶしの効いた泥臭いメロディの狭間に立たされる快感。あぁたまらない。(島根 希実)
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ギタリストの脱退というアクシデントがありながらも、豪華なゲスト・ギタリスト4人を迎えてわずか7 ヶ月というスパンで制作された今作。存在感のあるドラム、ブルースを基本とするへヴィで重厚なギター・サウンドと感情をむき出しにしたエモーショナルなヴォーカル。闇を見つめながらそれでも前に進む事を歌う歌詞がとても印象的。いしわたり淳二が全体のプロデュースとして参加し前作より力強さを増し、短時間で作ったとは思えないほどの完成度。2006年結成当初から実力を評価され早足でシーンを駆け上がって来た彼らにとって、このタイミングでのギタリストの脱退はとても大きな出来事だっただろう。それだからこそ、このアルバムはがむしゃらに前へ進もうとする彼らの姿が見えてとても感動的。 (遠藤 孝行)
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錚々たるメンバーが集結し、くるりの名曲をカヴァーした鶏びゅ~と・アルバム。それぞれが趣向をこらしたカヴァーを披露しているが、その中でも別次元の名演を披露しているのが松任谷由実「春風」。いっそのこと、シングル・カットしたらいいのに。トラディショナルなメロディ解釈が新鮮なハンバート・ハンバート「虹」も素晴らしい。9mm Parabellum Bullet の「青い空」は、原曲を知らなければ彼らのオリジナルだと言われても納得してしまいそうな出来映えだし、Andymori「 ロックンロール」もカッコイイ。曽我部恵一「さよならストレンジャー」の渋いフォーク・カヴァーも流石の味わい。あと、「言葉はさんかく こころは四角」での木村カエラの素朴な歌声が好きです。(佐々木 健治)
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才能のカタマリのようなデビュー・アルバム。まったく未整理でやけっぱちの感情をそのまま鳴らし、舌っ足らずで空回り気味に転がるANDYMORIのロックンロールは、なぜか聴いた者を圧倒的な勝利の感覚に酔いしれさせる。 まごうことなきTHE LIBERTINES直系のガレージ・パンク・サウンドは、凡百のフォロワー・バンドを蹴散らすに十分な天性のセンスで、目も眩むほどの輝きを放っている。手数の多いグルーヴィーなドラミング、軽やかなギター・リフ。何よりヴォーカル小山田の、一点の曇りもない歌声が、ANDYMORIを特別なものにしている。安いウィスキーを空けるだけで丸一日無駄にするような、どうしようもない日常を歌っているのに、それが小山田の声に乗るだけで負け犬気分は消え失せ、勝者の高揚感に満たされるのだ。新たなヒーローの誕生に、今はワクワクするばかりである。(榎山 朝彦)
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スポーツや芸術には"続けていく美学"がある。長く続ければ続けるほど、身体は衰え、想像することすら苦痛になっていくだろうと筆者は思っていた。来年結成30年を迎えるeastern youthの新作は、約20年以上に渡って活動を共にしてきた二宮友和(Ba)脱退後、新たに村岡ゆか(Ba)を迎えた新体制で制作され、さらに骨太な身体で、より想像力を蓄えた楽曲しか収録されていないことに心底驚かされた。2017年の彼らのアンセム・ソング「ソンゲントジユウ」、抑圧に抗う者の心境を叫んだ「同調回路」など社会的な側面にも触れた前半から、3ピースのアンサンブルに聴き惚れる「黄昏の駅前には何かある」や「旅の空」といった後半まですべてが、継続してきた29年間分の"歌"で築き上げられた"自由"で形成されている。(小田 淳治)
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このアルバムのレビューとして何を書くべきか非常に悩んだ。今作を聴いて震えるほど素晴らしい作品だと感じたし、それと同時にこの作品がeastern youthにしか描きえない情景を描ききった作品であると言える、それだけだからだ。Track.1の「グッドバイ」からTrack.10の「ゼロから全てが始まる」まで、全身から滴り落ちる汗の匂いと、触れれば火傷するかの如き熱と、生きている人間の血の匂いに満ちている。「目眩の街」「空に三日月帰り道」など、ここ数作の中で1番シンプルに感情を表現したと感じるほどにメロディが際立った楽曲が多い。生きていることが素晴らしいと感じることは少ないかもしれないが、生きている中にしか見出せない光を感じさせてくれる魂の1枚。(伊藤 啓太)
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21年目に突入したeastern youth が放つ、力強くも暖かさに満ちた『歩幅と太陽』。男気に溢れたエモーショナルなロックを放つ真摯な姿勢に揺るぎはない。その歌はこれまで以上に、どこか優しく温かさを感じさせる。年月を重ね、経験を重ねてきた彼らが今、歌うべきこと、伝えたいことを真っ直ぐな視線で歌っている。「壊れて消えそうな明日が/消えそうで消えない炎が/ 壊れたって良いんだぜ/消えたって良いんだぜ」(歩く速度の風景)。3ピースという最小ユニットが発する圧倒的な熱量をバックに、吉野がこんなことを歌うと、恐ろしいほどに熱く、説得力のある名曲になる。そして、その言葉にはこれまで以上に、優しさが滲み出ている。最前線に立ち続けている彼らの志、眼差しはまだまだ高いところを向いている。(佐々木 健治)
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これを待っていた!というファンにとっては、ついに!ということになるのかもしれないけど、その間、細美武士(Vo/Gt)がMONOEYESとしても精力的に活動していたことを考えると、あっという間だったようにも感じられる前作から2年半ぶりの新作。とても清々しいアルバムだ。ピアノやシンセサイザーのフレーズが印象的に使われ、曲によってはストリングスも加えてはいるけれど、奇をてらわずに5人のメンバーが奏でる抜き身のバンド・サウンドを、もうそのままとらえたという印象だ。メンバーは歴戦のミュージシャンたち。レコーディングでは迷いもためらいもなく、いつも以上に確信を持って音を鳴らしたに違いない。そのひとつひとつがエモーショナルなロック・ナンバーの数々に結実。全10曲40分という尺も潔い。(山口 智男)
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聴く者の気持ちを鷲掴みにするアンセミックな歌と熱度満点のバンド・アンサンブルという意味では、the HIATUSらしさは変わらない。しかし、全編で鳴るシンセ・サウンドはバンドが辿りついた新たなサウンドスケープを印象づける。約2年4ヶ月ぶりとなる4作目のアルバム。新章の幕開けをアピールした『Horse Riding EP』で一気に高まった期待に応える、いや、期待を上回る作品を、彼らは完成させた。『A World Of Pandemonium』を聴いた時も驚かされたが、その時とはまた違う驚きが待っている。特徴的なシンセ・サウンドが1つの世界観を作り上げる中、ギター、ベース、ドラム、キーボードそれぞれが主張しあいながら多面的にアルバムの魅力を作り出している。焦燥感をはじめ、さまざまな感情を歌うメロディも多彩だ。個人的には温もりあるメロディから感じられる成熟に惹かれる。(山口 智男)
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過去の思い出を並べた楽曲は、得てして安っぽくなりがちだ。本人にとって大切な過去であればあるほど、熟考した言葉と思いの重さの間に乖離が生じる。物語として美化してしまうのだろう。しかし、the pillowsの山中さわおは、飾ることなくさらけ出す。"キミ"との些細な日常を振り返り、"キミ"の存在、思い出が自らを永久に動かすエネルギーだと明かす。かつての自分は臆病だったと、さらりと歌う。いくつもの葛藤があったはずだ。しかし、傷ついた記憶と向き合ったからこそ、並べられた思い出は、聴く者にも体温をもったリアルな記憶として再生される。 "キミは誰かのものになったけど 今も僕を動かすエネルギー"――10年を超えるキャリアのバンドがたどり着いた愛の形だ。(山田 美央)
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今年結成20周年を迎えるTHE PILLOWSが、アメリカで良質なポップ・ソングを生み出し続けているSSW、Ben Kwellerとともに作り上げたシングル。タワーレコード30周年記念企画として実現したこの太平洋を跨ぐコラボレーション。軽快に弾むドラムが刻むリズムの上を、キャッチーなギターと颯爽と駆け抜けるキャッチーなメロディが足取りを軽くしてくれる。コーラス・ワークも見事に決まった、ポップ・ソングだ。同時発売された20周年記念シングル『雨上がりに見た幻』とともに、初の2 曲同時トップ10 入りを果たしたこの楽曲。互いのソングライティング能力が十二分に発揮された軽やかなポップ・ソングからは、この企画を楽しむ二組の様子が伝わってくる。(佐々木 健治)
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ライヴへの厳しい制限があった最中に会場限定CDを販売するなど、コロナ禍でも挑み続け"バカみたいに踊れる空間"を届けてきたテレフォンズの集大成的アルバムが完成。世の中のピリついたムードに反し、英語でのダラっとした会話から「Adventure Time」が始まると、次第に悩みや邪念は消え去り、ひたすら音楽に没頭しろと歌う「Feel bad」に後押しされ、気づけば何も考えずダンサブルなビートに身をゆだねている自分がいる。今までとはひと味違うサウンドがきらめく「Yellow Panda」やチャイナ感漂うクセの強い1曲「Whoa cha」など、中毒性抜群の楽曲が空っぽになった頭をぐるぐる回って離れない。息の詰まる日々から"Come on!!!"と誘い出し、非日常な世界へと導く渾身のダンス・ナンバー10曲。(中尾 佳奈)
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2018年よりライヴを中心に活動を再開していたthe telephonesが、約5年ぶりにリリースするフル・アルバム。今やそれぞれ他にも活動の場を持っている4人。全体的に曲の自由度が上がっている(「New Phase」は特に実験的)のは各々の度量が大きくなったからと思われるが、そのうえで、バンドの根底にあるUKロックからの影響が滲み出てきている点が興味深い。歌詞でも、プリミティヴな気持ちを大切にしつつ、新たな世界へ挑む姿勢が綴られている。それにしてもダンス・チューンをずっと演奏してきたバンドだけに、どの曲も気持ち良すぎるし、リズムのメリハリのつけ方がそこらのバンドとは全然違う。お家芸を正面切って披露する頼もしさも5年で腹を括れたからか。(蜂須賀 ちなみ)
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9月にはPOLYSICSとヨーロッパ・ツアーを行ったthe telephones。彼らと言えば"DISCO!!""踊れるロック"というイメージが真っ先に浮かぶが、基盤にあるのは踊れるロックの奥にあるUKロックからの影響だ。"DISCOの向こう側"へ我々を連れていってくれた彼らが今回突きつけてくれたのはバンドの根幹とも言えるその部分。曲名だけ見るとゴキゲンなナンバーだが、シリアスに鳴り響くシンセ、若干の倦怠感を醸し物悲しく鳴り響くギターは時折牙を剥き、空間を繋ぐベースもクールに響く。なのに思わず踊り出したくなる、歌い出したくなる、という美しい矛盾の手ほどきはまさしくDISCOを凌駕するスケール感だ。キャリアを重ねるごとに前進し続けるthe telephonesの現在位置を見せつける。(沖 さやこ)
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音楽への感謝という切実な思いを"踊るロック"に昇華していたテレフォンズが、いよいよ"踊るロック"からも自由になったことで、よりロックの自由を手に入れた。シングル以上にブッといグルーヴで聴かせる「Keep Your DISCO!!!」、AIR JAMリスナー世代若手代表的なファストな8ビート「Pa Pa Pa La Pa」、和テイストと汎アジアっぽいメロディの「Odoru〜朝が来ても〜」の新ヴァーション、はやりのシンセ・ポップの1枚上をいく「90's Drama Life」、そしてドラムのセイジの歌の初出しも嬉しい「Four Guys From Saitama City」などなど、メンバー4人の笑顔、バンドの状態の良さがダイレクトに伝わる全12曲。これまでの石毛の美意識が"泣きながら踊る"なら、今は"笑い泣きしながら踊る"イメージだ。 (石角 友香)
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the telephonesのフロント・マンにしてコンポーザーでもある石毛 輝の、前作から約1年半ぶりのセカンド・アルバムが完成した。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、ピアノ、シンセ等全てを手掛ける才能にも脱帽するが、何よりもメロディ・センスが素晴らしい。歌声は味付け程度に抑えられていて、主役はとにかく音。電子音と生楽器とのバランスが絶妙で、とても耳触りが良い。自ら録音したという自然音も随所で聴こえてきて、神秘的で癒しの効果を生み出している。クラシック・ミュージックのメロディの一節が流れてくるのも印象に残るが、あくまで楽曲の一部として上手く融合されているのがとても効果的だ。もっと聴いていたいと思わせるほどに良い意味であっさりと聴き終われるので、the telephonesが苦手という人にもぜひ聴いてほしい作品。(石塚 麻美)
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石毛輝といえば、髪を振り乱してつんざく高音のシャウト!the telephonesでは、フロアをかき乱す底抜けにハッピーなサウンドとは裏腹に、諦めや嫌世感を含んだ言葉を吐き捨てる。対照的に個人としての"石毛輝"による本作は、より柔和で主観的な内面が滲み出ている。トライバルなサウンドが広がる「Machu Pichu」に始まり、まさにタイトル通りの内省的な感情世界が展開されていく。キラキラとチープでアッパーなサウンドと、シンプルでアンニュイな作りの音がふわふわと重なり合い、明け透けに率直な歌詞が独特な厚みを生む。攻撃的で圧倒的な立ち振る舞いを見せるthe telephonesと、その影で守られてきたナイーブな少年の姿。the telrphonesで見せる闇と石毛輝の光。この二つは相反するようで、密接に結びついている。圧倒的なカリスマがふとした瞬間に見せる素顔。そこに人は惹かれるのだ。(山田 美央)
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とにかく「現時点でのthe telephones の持ち球全部見せました!」な豪華盤。ここには彼らが過去作で掲げてきたデカイ言葉の全てが当てはまる。「LoveとDISCO」があるし、「DANCE FLOOR MONSTERS」にも成り得る。何よりも、ナカコーの手によって彼らのロマンティックが全開となった『A.B.C.D.e.p.』でみせた、the telephones的涙線刺激ポイントが冴えまくっている。ここでいう涙線が刺激されるとは、疼くことであり、徐々に高ぶっていくということ。もうここにあるのは「CLASHED MIRROR BALL」という破壊的狂喜乱舞ではない。パンクの破壊力と常にマックスのテンションで、フロアを盛り上げ倒すだけではないのだ(勿論、彼らにはそれは不可欠であるが)。彼らはようやくミラーボールを回しだした。叫ぶのでなくシンガロングを、モッシュでもダイブでなくダンスを、ということ。(島根 希実)
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快進撃を続けるthe telephonesから元SUPERCARそしてご存知iLLとしても活躍するナカコー初プロデュースによるニューEPが届いた。本来のthe telephonesが持つアグレッシヴさやポップな感性はそのままに、サウンドがグッと引き締まっており且つとてもロマンティックな仕上がりだ。また音の輪郭がはっきりとしておりダンス・ミュージックとし捉えても完成度が高い。ナカコー初プロデュースという事も驚きだったが、この組み合わせは面白いしとてもいい化学反応を生み出したことに違いない。2009年もツアー、リリースと駆け抜けた彼らだがまだまだ勢いは止まらない。来月にはセルフ・プロデュースによるEPもリリース。この次作EPは生楽器を多用したものになるとのこと。こちらも楽しみだ。(遠藤 孝行)
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2008年、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、トップ・シーンまで駆け上がったTHE TELEPHONESがついにメジャー1stフルアルバムを発表。インディ時代の代表曲「Urban Disco」「HABANERO」を加えたこのアルバムは今年の日本のロック・シーンを代表する一枚になるだろう。ミラーボールとディスコをキーワードに、80'sシンセ・サウンドと切れのあるラウドなギターが暴れまわり、石毛輝のハイトーン・ヴォーカルは、シンプルだが、とても大切な言葉を僕たちに投げかける。凄まじい熱量が詰め込まれた、新たなポップ・スタンダード。Dance Floorを狂喜の笑顔で満たす「THE TELEPHONESの夏」がやってくる。(遠藤 孝行)
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今回、オリジナル・メンバーで制作したのは90年代オルタナティヴ・ロックをひとつのモチーフとしていたからで、森 信行が戻った、というのはニュアンスが違うと本作を聴いて感じた。オルタナ、60年代英国のロックンロールやブギーからラテンまで、3人のセッションを起点に完成していった13曲には当時の焼き切れるような試行錯誤は感じない。でも当時よりカオスも一発鳴らせば吹き飛ぶようなエネルギーもある。特に「世界はこのまま変わらない」(のあとに"君が居なければ"と続くのだけれど)の多言は不要なパワー、「ばらの花」の構造とアレンジがモロに下敷きになっている「朝顔」など、単にいい曲以上の現在の迫力を自らの歴史を使って証明しているんじゃないか? 加えて先人への愛も随所に聴こえるのでぜひ耳を澄ませてみて。(石角 友香)
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コロナ禍以前から、生活者として怒り心頭なことも呆れてしまうこともある。しかし、ストレートにそれを表現するには、キャリアも居場所も(くるりと京都という土地はやはり分かち難い)違うんじゃないかと作用したのだろう。まるで老獪な噺家のそれのようなユーモアだ。音楽的にはこれまでの彼らの持ち味をベースにしながら、ゲーム・ミュージックのようなニュアンスのSEが、いわゆる名曲感溢れるナンバーにも登場するし、円谷プロが今、特撮モノを作ったらこんな劇伴になるかもしれない「大阪万博」など、インストが並ぶのも面白いし、楽器の音は本物らしさが溢れつつ、音の配置が新しいアートのようでもある「I Love You」など、一流食材と道具を使った名前のない料理を出された感じ。味わえるかは我々次第だ。(石角 友香)
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「益荒男さん」、「大阪万博」と仰天の実験作を配信リリースしてきたくるり。久々のCDは、"ことでん"の愛称で親しまれている、香川県の高松琴平電気鉄道をモチーフに制作した楽曲と、2005年リリースの「赤い電車」をリアレンジした別バージョン。Homecomingsの畳野彩加(Vo/Gt)をフィーチャーした歌あり「コトコトことでん」は、ミニマムな打ち込みボサノヴァといったニュアンスで、界隈の魅力を昇華。同曲のインストや、出発メロディに、遠くへ行けない今、普段以上に旅情をかき立てられる。またホーンやローズを加え、フューチャー・ファンク調にリアレンジされた「赤い電車」は細部の音の抜き差しに注目。鉄道も音楽もまだ見ぬ世界を見せてくれるが、岸田 繁の両者に込めた愛情、バンドの遊び心に唸らされる。(石角 友香)
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10,000枚限定リリースのシングルは、表題曲を異なるアレンジで2パターン収録。BPM100、譜面に起こせばそれほど変わった曲ではない。しかし今のくるりが演奏すると、"今、必要なマインドセットはこういうことなんじゃないだろうか"と心揺さぶられる音像になる。テンポやコード感は「HOW TO GO」(2003年)を思わせ、最初のバージョンでの生の歪みが印象的でベースも含め重心の低さは通底する部分も。こちらのドラムは初顔合わせの屋敷豪太。Ver.2はシューゲイザーに近い音像で、ドラムはCliff Almond。15年近い歳月の末にもたらされたものはと言えば、慟哭や焦燥のアンサンブルが澄み渡る前進のエネルギーに変換されたことなのではないか。なおCDには昨年の"京都音楽博覧会"ライヴ音源も収録。(石角 友香)
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何度リピートしても現実の情景とリンクすることのない世界観である。クラシカルなオーケストレーションをフィーチャーしながら、アジア、東欧、時に中東など国や宗教を越えて人々が自由に行き来するイメージの冒頭の「2034」から、すでにくるり版"スチーム・パンク"は始まっている。しかも「Liberty&Gravity」のように1曲の中で時空を飛び越える壮大な音楽絵巻も登場するダイナミズムは劇中劇のよう。が、"最初のリバティ それは あなたと暮らした その暮らしで"というヴァースには、例えば「東京」から確かに続く岸田繁の人生と、ここまでの過程で鍛えられた精神を垣間見ることもできる。音楽的引用や思わず記憶の扉が開くメロディに溢れているこのアルバムは、存在そのものが音楽の未来を議論できる玉手箱だ。(石角 友香)
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一介のチンケな物書きの極私的な心情を交えレビューする。想像を遥かに超えた事態に思考は追いつかない。3.11以降の音楽の在り方を考え続けても答えを見出せない。音楽の救いなんてただの美談じゃないかと諦観してしまう瞬間もある。なんだか悶々としてしまうし、空虚感を懐いてしまう。しかし、それでも僕は音楽を欲している。あなたもそうだろう。"3.11"が歴史的な転換点と位置づけられるのは間違いない。そして表現者には、それ以前以降では明確に違う切実な命題を突きつけられたはずだ。それぞれ、あらゆる葛藤が延々続いていくと思うが、くるりの本作はそれ以降にあるべきひとつの指標を、図らずも提示してしまったように感じる。3.11以前に作られた楽曲集だが、感動的な旋律は優しく寄り添ってくれるから。(伊藤 洋輔)
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今年6月にリリースされ初のオリコン1位 を獲得したカップリング・ベスト『僕の住んでいた街』は アバンギャルドなくるりの魅力はもちろん、カップリング曲にも関わらずこんなに素晴らしい曲がたくさんあるという、彼らの偉大さを改めて見せつけられた作品だった。今までのアルバムはそれぞれムードを決定づけるサウンド・コンセプトがあったが、今作にはそれがないシンプルなプロダクションと飾らないストレートな歌詞という形になっている。言うならば素顔のままのア ルバムだ。ストレートになった歌詞は今までよりもさらに人と向き合った言葉が並び、とても考えさせられる。彼らにしか表現出来ない感情が溢れた素晴らしい曲が詰まった作品に仕上がっている。(遠藤 孝行)
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あぁーっ、よいよい!いきなりの祭ばやし的合いの手にまずビックリ(笑)。そんな新曲「東京レレレのレ」で幕を開ける、くるり初のカップリング・コンプリート・ベストアルバム。アコギ、厳かなピアノ、ささやくような歌声が印象的な「りんご飴」などの初期曲から、名曲「ワンダーフォーゲル」のシンセ・ポップなアレンジとの好対照ぶりに驚いた、「サマースナイパー」のホームメイド感たっぷりなサウンド。さらに、「すけべな女の子」はビートが疾走したかと思えば「さよなら春の日」は空を舞う花びらのように音色が揺れ・・・。アコースティック、轟音、エレクトロニカからジャズチックまでアプローチのレンジの広さにあらためて驚きつつ、それに軸を通す"歌ごころ"はやっぱりくるりだなと、あらためて感服!(道明 利友)
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GAPの40周年記念シングルとして発表されたこのシングル。A4の雑誌サイズという形態でCDショップだけでなく、書店やコンビニにまで置いてあるという展開も凄いが、この二組でシンプルなロックンロールに取り組むという何とも贅沢な選択の結果産まれた楽曲がとにかく素晴らしい。リズミカルなマーチング・ソングのようなポップ・ソングは、GAPというブランド・イメージから喚起された瑞々しさを放っている。力強いベースとギター・リフが引っ張るミドル・テンポは、青空の下を歩く力強さそのもの。ただただ聴けば、また一日を始めるフレッシュな活力となる最高のポップ・ソング。どれほどの意味があるのか分からないけれど、松任谷由実ではなくユーミンというポップ・アイコンに降りてきているところも、やっぱりいい。(佐々木 健治)
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サポート・メンバーとして海外ツアーにも帯同したまいこ(Dr)を正式メンバーに迎えての新生つしまみれ第1弾が完成。初っ端から「宇宙エレベーター」、「東京ジェリーフィッシュ」と、まり(Vo/Gt)の独特な視点から生み出されるエキセントリックな世界と『SHOCKING』(2012年)以降プロデューサーを務める中村宗一郎との相乗効果ありまくりな耽溺性のある楽曲が並ぶ。お得意の喋り口調のヴォーカルが炸裂する「ハローワールド」、「パンクさん」(『脳みそショートケーキ』収録曲)の続編的楽曲「パンクさん2」と、パンキッシュな魅力も感じさせつつ、素直に胸の内を聴かせる「ひとつ」が心に沁みる。新たに結成されたしげる(ex-嘘つきバービー/Dr)との新バンド"つしまげる"のアルバムも同時発売。(岡本 貴之)
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"80歳まで3ピース"の新たなる宣言と言える痛快な新曲「スピーディーワンダー」に始まり、つしまみれ入門編と呼ぶにふさわしい20曲が凝縮された初のベスト・アルバム。コード感がグッとくる名曲「エアコンのリモコン」はリアレンジ版。キテレツなようで実はスキルを秘めた「おじいちゃんのズボン」や「脳みそショートケーキ」や「おちゃっすか」や、音楽的な深みを感じる「ダーウィン」、曲調も歌詞もストレートな「ストロボ」、終わった恋も愛した気持ちも抱えながら自分の一歩を歩き出すような「愛の夢」など、つしまみれの音楽的なレンジの広さと、女性の赤裸々な部分をやりすぎ一歩手前で面白さに転化するセンスが満載。発表された時代はシャッフルされているが、それもまた聴く楽しみのひとつ。(石角 友香)
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これはヤバい。つしまみれ史上、最も毒々しく、危険極まりない作品である。しかし誤解がないように書いておくと、別に曲が複雑になったり、素っ頓狂なフレーズが出てくるわけではない。むしろ、パンク、J-POP、グランジ、ギター・ポップといった音楽性が、3ピースのバンド・スタイルでストレートに展開された、音楽的には過去最高にシンプルな作品と言えるだろう。だが、それ故にヤバいのだ。余計な装飾が一切排除されているからこそ、その音と言葉に潜む狂気が、まるで原液100パーセントのシロップのようにドロっとした純度を持って、耳に残る。ここには、一口舐めるだけで悶絶してしまうレベルの毒気が満ちているのだ。結成14年、自身のレーベルを立ち上げて3作目。もはや誰も辿り着けない境地に立っている。(天野 史彬)
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2019年7月20日をもって、12年にわたる活動に終止符を打つことを発表したねごとのベスト盤。メンバー選曲の35曲には、デビュー当初、雨の日限定で、ライヴで演奏していた未発表曲「雨」や、新曲「LAST SCENE」も収録された。マジカルで柔らかな風のようなサウンドの「雨」は、ねごとの美しい音楽はどんなときもそばにいると伝えるような、4人からのはなむけの言葉(歌)に聴こえてくる。また「LAST SCENE」はクールなエレクトロ・チューンで、ねごと目線で見るライヴの光景やリスナーとの関係性が窺える、明るくも切ない思いがよぎる曲だ。高校生のときに結成し、常に新たなサウンドや音楽的世界の広がりを追求し、先鋭的なポップ・ミュージックを生んできたねごとの歴史が詰まっている。(吉羽 さおり)
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約13ヶ月でフル・アルバム2枚、EP1枚、シングル2枚をリリースというバイタリティにも感心だが、注目すべきはその枚数ではなくすべての作品で音楽的な濃度を高めていることだ。タイプの異なるプロデューサー2名との制作や、趣向の異なるシングルを制作することで、自分たちの音楽性を見つめる機会が多かったことが影響しているのだろう。バンド・サウンドを主体にエレクトロ、シューゲイザー、ソウル・ミュージック、ダウン・ビートなどを感性の赴くままに取り込んだサウンドは洗練されているだけでなく非常にナチュラル。タイトルでもある"soak(=染み込む)"という言葉どおり、心の奥まで染みわたる繊細さと感傷性を孕んでいる。透明感のあるエモーショナルと静謐な色気はどこまでも美しい。(沖 さやこ)
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約2ヶ月ぶりの新作は、映画"トリガール!"の主題歌であるスピッツの「空も飛べるはず」のカバーと、同作の挿入歌として書き下ろされた新曲「ALL RIGHT」を収録。前3作で打ち立てたダンス・ミュージックから一転、彼女たちの原点となるバンド・サウンドを主体としたサウンドで、「空も飛べるはず」はグランジ感のあるギターなど、シックな演奏が蒼山幸子の歌声とメロディを引き立て、原曲へのリスペクトを感じさせるカバーになった。「ALL RIGHT」は爽やかな疾走感を持つ楽曲。初期の「カロン」や「sharp ♯」を彷彿とさせながらも当時以上に力強さやしなやかさが増しており、強気でパワフルな歌詞も軽やか且つ堂々と響く。ねごとは独自のロックのかたちを確立しつつあるのでは。(沖 さやこ)
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『アシンメトリ e.p.』、『ETERNALBEAT』で新境地へと歩み出したねごとが、その世界観をより磨いたシングルを完成させた。表題曲は前2作でもタッグを組んだBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之がプロデューサーとして参加。エレクトロにストリングスも用いたサウンド・アプローチは艶やかで、なにより蒼山幸子(Vo/Key)のヴォーカルと歌詞、メロディが存在感を放つ。ウェットな歌声はタイトルどおり花びらのような刹那的な美しさで、その情感により言葉が映えているところも印象的だ。Track.2はバンドの生音をダンス・ミュージック的に表現。スロー・テンポで隙間のあるサウンドスケープには奥行きがあり、歌詞に込められた切実な想いや願いも強く響く。両曲とも余韻に漂う色香が心地よい。(沖 さやこ)
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ねごとというバンドを語るうえで欠かせない"ドリーミー"と"内に秘めた熱さ"という芯を崩さない、むしろこれまでで最もその核心に近づいたアルバムと言えるのではないだろうか。今作では昨年リリースされた『アシンメトリ e.p.』で彼女たちが提示した"自然体でいられる、踊れる空間"をさらにディープに追求。心地いい空間を求めて丁寧に音を紡ぎ、重ねることで、繊細な感情表現ができたと言っていい。メロディも大きなフックがあるというよりはナチュラルで、そのぶん伸びやかなヴォーカルが光る。ドラムレスやシンセ・ベースなど楽曲に合うアプローチは、バンドにとっても大胆で革新的な音作り。音はもちろん歌詞からも1曲1曲から彼女たちの音楽にかける情熱を感じることができる。(沖 さやこ)
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約1年5ヶ月ぶりの新作は4曲入りEP。Track.1はBOOM BOOM SATELLITESの中野雅之が、Track.2はROVOの益子 樹がサウンド・プロデュースを担当。Track.3と4は中野と益子との制作を経たうえでのセルフ・プロデュースで、全曲が"自由に音にノれて踊れる、空間を大事にした音楽"をコンセプトに制作されている。各楽器でもこれまで彼女たちが実行してこなかった手法を積極的に取り入れ、藤咲 佑はシンセ・ベースに初挑戦。生音とプログラミングの差し引きもより大胆になり、蒼山幸子(Vo/Key)も自分の内面を曝け出す歌詞を書くなど、ねごとの未来を切り拓くためのチャレンジが存分に詰め込まれている。彼女たちの凛とした空気が如実に反映された、エモーショナルでクールな作品だ。(沖 さやこ)
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今年3月に3rdフル・アルバム『VISION』をリリースしたばかりのねごとが、わずか3ヶ月でシングルを発表。TVアニメ"銀魂゜"のエンディング・テーマであるTrack.1はグルーヴィで踊れるリズムの上に、遊び心溢れるシンセが瞬く、華やかで軽やかな楽曲。サビの歌詞も単語そのものを強く印象付けるアプローチで、そのシンプルな潔さからもバンドが自信を持って音楽を鳴らし、純粋に楽しんでいることがうかがえる。音像で立体的にドラマを描き、キャッチーなメロディをより輝かせることができるのは、現在の彼女たちだからだろう。Track.2では自らの原点のひとつであるNUMBER GIRLをねごと流に解釈したサウンドで魅せる。全員からとめどなく溢れだす音楽欲、ねごとは今が最も面白い。(沖 さやこ)
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まずタイトルからも自信の度合いが窺える。フル・アルバムとしては約2年ぶりとなる、セルフ・プロデュースのこの3rdアルバムで、ねごとは自分たちが鳴らしたい音楽をしっかり掴み、それを吸収して外へ放出することができた。レコーディングも順調だったとのことで、過去最高に華やかなコーラス・ワークを組み込んだり、各楽器のサウンドにもひと工夫加えるなど、純粋な好奇心と音楽愛が隅々に感じられる。アッパーでキャッチーな楽曲から、ピアノを前面に出したソフトなミディアム・テンポ・ナンバー、シューゲイザー的に4人の音圧で引き付ける楽曲など、ねごと流バンド・サウンドの可能性を広げ、堂々と示す意欲作。彼女たちがこの先に描くヴィジョンに期待せずにはいられない。(沖 さやこ)
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ミニ・アルバム『"Z"OOM』でリスタートを切ったと語る彼女たちが約半年ぶりにリリースする新作は"恋"が前面に出た「アンモナイト!」と「黄昏のラプソディ」の両A面シングル。「アンモナイト!」は『"Z"OOM』の流れを汲んだゆったりとしたポップ・ナンバー。"愛したいきみだけを!"というストレートなメッセージに軽快なクラップが幸福感をさらに高めてゆく。対して「黄昏のラプソディ」はメンバーそれぞれの楽器でのアプローチが効果的な非常にクールなアンサンブルが印象的な楽曲。シンセとピアノの音色を巧みに扱い、ギターもユニゾンで魅せるなど、各楽器に趣向が盛り込まれており、ねごとのテリトリーの拡張を証明する楽曲だ。今年度24歳を迎える彼女たちだからこそ出せる、フレッシュな大人の表情を堪能できる。(沖 さやこ)
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ねごとの2014年第1弾リリースは現在のモードを詰め込んだ全6曲。作曲はNEGOTO名義のものが大半を占め、歌詞はメンバーそれぞれが書いているという、より"4人でひとつのねごと"という側面が強まったと同時に、4人それぞれのキャラクターも克明になるという、非常に理想的なバランスを帯びた作品になった。特に明確な新しさは、蒼山幸子(Vo/Key)の歌だ。表現力やニュアンスが増え、より情感豊かに弾ける歌声はとてもキュートで、とてもフェミニンに響く。キーボードを取り入れていないTrack.3、ストリングスにシューゲイザー的アプローチが壮大なTrack.6など、バンドとしての許容範囲も広がった。本人たちが"リスタート"と言うように、積み上げたキャリアを存分に生かした、鮮やかな音像に心が洗われる。(沖 さやこ)
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4人組ガールズ・バンド、ねごとの約10ヶ月ぶりとなるニュー・シングル。切ないながらも繋がりを求める、ときめきいっぱいの気持ちをキュートに歌ったタイトル・トラック「シンクロマニカ」は、アニメ"ガリレイドンナ"のタイアップが決定している。通常盤に収録されるくるりの名曲「ばらの花」のカバー、沙田瑞紀(Gt)が手掛けた「Lightdentity -Mizuki Masuda Remix-」も、蒼山幸子(Vo)の浮遊感溢れる透き通った歌声と、彼女たちらしい軽やかでリズミカルなキラキラのポップ・サウンドが詰まっている。初回盤には「シンクロマニカ」の他、バンド初挑戦のヴォイス・ドラマ等が収録。今春、全員大学を卒業した彼女たちの新たな試みに、ますますの活躍が期待される。(奥村 小雪)
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昨年リリースされたミニ・アルバム『Hello!"Z"』の記憶も新しい、話題沸騰中のガールズ・4ピース・バンド、ねごとのファースト・シングル。何気ない夜に夢のようなキラキラした魔法を掛けてしまう極上のポップ・センスと、素直な感情を詰め込み炸裂させたオルタナティヴな空気感。芯があってキュートな蒼山幸子のヴォーカルはどこまでも澄み、空に勢い良く飛び立つ鳥の翼のような力強さと美しさを宿している。二十歳の彼女達がリアルタイムで刻む煌びやかな青春に圧倒されてしまった。裸足でつんのめりながらも何かを掴もうと全速力で走り抜けるような葛藤を抱えたがむしゃらさも若者らしい。4人が奏でる等身大の可愛らしさと漲るパワーに、可能性を感じずにはいられない。この子達、只者じゃ御座いません!(沖 さやこ)
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結成10周年を迎え昨年末に初のベスト・アルバムを発表したオワリカラが、自主レーベル"PAVILION"を設立。その第1作目として会場限定シングルのアルバム・バージョンと新曲を詰め込んだ、約3年ぶりのオリジナル・アルバムをリリースする。オルタナ、ダンス・ミュージック、サイケ、プログレ、歌謡曲など様々な要素をブレンドさせ、それを高度なアンサンブルとピュアなエモーションで組み上げる手腕、スタイリッシュになりきらない絶妙ないびつさは今作も健在。そこからさらに既発曲含め、元来彼らが持ち合わせていたロマンチシズムが、よりディープでありながらユーモラスに響く楽曲が揃った。中でもタイトル曲はキャリアが生んだ洗練性、引き算の美学と豊かなコーラス・ワークが歌詞の重みを引き立てている。 (沖 さやこ)
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オワリカラというバンドは、いつもちょっと人と違う場所にいる気がする。そんな4人が作り上げた極上の楽園――1st『ドアたち』はまさしくその結晶だった。そこから聴き手の心に突き刺さり踊らせる2nd、聴き手に問いかける3rdと徐々に楽園の入り口を広げ、今作4枚目は我々にまだ見ぬ新たな場所へと"行こう"と手を差し伸べる、いわば集大成であり新たな出発を感じさせる深い深いアルバムだ。1曲1曲に含まれる強いメッセージに、4人がこれまで歩んできた生きざまを落とし込んだ本能を刺激する直情的で耽美的な音色。強い気概を持ち、先陣切って歩き出す彼らに追いつくのは、もしかしたら容易いことではないかもしれない。だが追いかけるという行為やそのときに見える景色、感じた想いは間違いなく美しいはずだ。(沖 さやこ)
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昨年5月にリリースされた3rdアルバム『Q&A』以来となる新作は、ライヴでおなじみの新曲にライヴ音源4曲を加えた全5曲ワンコインという太っ腹シングル。"ロールシャッハ"とは、インクを紙の上に垂らし、それを二つ折りにしてできた模様から何を想像するかをもとに性格などを判断する心理テストのこと。"ロールシャッ!ハッ!ハッ!"というサビなどの歯切れの良い語感を生かした歌、4人各々がインパクトのある音を鳴らす"点"を生かした構成で、音の隙間もリズムを作る重要な役割になっている。キャッチーでありながらも緊迫感のあるグルーヴは、推理小説のような謎めいたハラハラ感。楽しいだけではない空気を醸しながら踊れるナンバーを作る彼らのセンスと知性には相変わらず感服だ。(沖 さやこ)
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"オワリカラなのにオワリカラじゃない。そうか、これが今のオワリカラなんだ"と、前作『イギー・ポップと賛美歌』で思ったが、今回もそうだ。自分たちの新しい可能性を試したくて、それが面白くて仕方がないのだろう。瑞々しいサウンドに焦りの文字は無い。それは1stアルバム『ドアたち』から一貫しているから感服だ。"Q&A"というミニマルなコミュニケーションをテーマに掲げた今作は非常にストレートで、小難しいリズムも皆無。だが彼らが培った経験は、オワリカラ特有の謎めいたムードとして輪を描いてゆく。じっくり聴かせる楽曲、疾走感のあるギター・ナンバーから攻撃的なロックンロール、ファンク、やわらかいサウンドまで多彩な全11曲。皆さんもちょっぴり不思議なコミュニケーション、してみませんか?(沖 さやこ)
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「swing」の振り子は、大きな弧を描きながら「シルバーの世界」へ――。2ndアルバム『イギー・ポップと讃美歌』で、バンドの現在進行形の衝動の全てを叩き込んでみせた、革新曲「swing」。タカハシヒョウリ(Vo&Gt)曰く、"マインドとフィジカルが拮抗している"と言うこの曲は "ハートに訴えかけたい、でも踊らせたい=心と体に訴えかけたい"という、内にも外にも突き刺さる "完全無欠の衝動"が波打つダンス・ナンバーであった。そして本作は、未だ止まらず進行していく衝動が、更にディープに作用する"怪作"である。タカハシの言葉を借りるならば "拮抗している"という、せめぎ合いによるストレス状態すらも超越した"超高揚状態"を味わえる。エンドルフィンもアドレナリンも過剰分泌されるシルバーの誘惑......オワリカラ、最早脳内麻薬の域っす。(島根 希実)
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そのドアは、開けても開けても開けても開けても…きりがない。あれはなんだ?終わりなき欲望か?逃れようのない矛盾だったのか?サイケデリックかつディープなネヴァー・エンディング・ストーリーを描き出したデビュー作『ドアたち』はやはり本物だった。本作もまた、前作同様に演奏と言葉の説得力が凄まじく、歌詞はもちろん、音や曲の表情までもが一つのキーワードにリンクしている。今回のテーマは“つきささる”。この完成度の高さはコンセプト・アルバムの類いのものであり、より私的な言葉や表現を全面に押し出したDavid Bowieの『The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars』というような印象を受けた。音と言葉で完璧なビジュアル世界を作り上げたのがBowieならば、彼らは音でもって言葉の本質というビジュアルを明確にしていく。(島根 希実)
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気が付けば、ノストラダムスの予言から11年が経過した訳で、私たちは変わりない毎日を生きている。けれど、恐怖に包まれた1999年以降、あけすけに幸せが充満した音楽に紛れ、シニカルな音楽が着実に育まれてきたように思う。そんな2010年に産み落とされたオワリカラの1stアルバム『ドアたち』。暴力的なまで引きずり込む熱気と、浮遊感あるノスタルジックな余韻が全身を圧倒する。中でも、「団地」は衝撃であった。人々の生活空間を“ハコ”という完結かつ閉鎖された空間となみす客観視の鋭さと、そこに存在する生活をいとおしいと感じる主観的な温もり。そして、最終的には逃れることの出来ない結末を受容する微妙な矛盾。衝動や焦燥感を伴った不安定な感覚は、限界まで掘り下げられ、吟味・咀嚼され、再構築された上で吐き出される。そこには、日常性を剥き出しにするタカハシヒョウリその人の人間性が、色濃く凝縮されているように思う。そして、練り上げた感情を実体として解放できるのは、強烈にストイックな4 つの音が存在しているからだ。誰もが全力で一点を目指す。“全員が4番”というサウンドが互いに音を磨ぎ合うからこそ、言葉が突き刺さるように弾けるのだろう。彼らをサイケデリック・ロックと言うジャンルで括ってしまうのは、どうも解せない。おそらくは、音楽性のカテゴライズというよりも、もっと深いそれ以上の世界を彼らは捉えているのだ。“オワリカラ”始まる“コレカラ”。まばたきする一瞬さえも惜しい。(山田 美央)
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地殻変動を思わせるインストからスタートし、レゲエと数え歌が合体したかのような「アジテーター」、めまぐるしい展開と転調でグイグイ引き込まれる「the 大丈夫」でバンドの新境地を明確にまず印象づける冒頭。中盤にはポップ・ミュージックとして消化されたチルウェイヴ以降のシンプルで静謐な「noir」、一転、ある男の人生をMOROHAのアフロが鬼気迫るラップで表現する「Scene 3」で様々な情景を喚起させ、終盤には先行リリースされたストリングス・バージョンとは異なるトリオならではの緊張感が楽しめるバージョンの「yet」や「ある鼓動」のリアレンジ版も収録。1曲における情報量というより音楽で体験できるドラマ性をあくまでも演奏とアレンジで構築した未体験の音像がここにある。(石角 友香)
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一見ゆるふわって感じだけど、手に取ってみたら意外とズッシリ、みたいな。クラムボンの音楽にはいつもそんな感覚を受ける。原田郁子の幼児性帯びた容姿と歌声の強烈なイメージに起因したものだけど、個性ある3者3様の歩みが内包した、音楽的語彙の多様な刺激の重みなのだ。ジャズ、AOR、クラシック、エレクトロニカ、ヒップ・ホップと、触手赴くままに取り入れ、着地は万人を魅了する流麗なクラムボン節となる。ラジカルな前衛性とポップな大衆性の理想的な融合。オリジナル・アルバムとしては07年『Musical』以来実に3年ぶり、8枚目となる『2010』でもその衝撃は変わらない。ハイライトは数あれど、9分の大作「あかり from HERE」の深遠な世界は感動もの。ポップ・ミュージックの神髄、ここにあり。(伊藤 洋輔)
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2009年から2010年の怒涛のリリース・ラッシュの流れから、2年ぶりのオリジナル・アルバムの登場だ。まず何と言っても目立つのは全15曲というこの収録曲の多さ。中川曰くこれでも4曲ほど収録するのを止めたとのこと。シングル曲ををキッチリと収めつつもTrack.2の「ホップ・ステップ・肉離れ」やTrack.3の「ダンスは機会均等」など既にライヴで披露され、キラー・チューンにもなっている楽曲も多数入っている。60分を超える収録時間だが、最初から最後までさらりと聴けてしまう。しかし、一曲一曲に込められたメッセージ、エネルギーは様々な形で聴く者の心に突き刺さる。ソウル・フラワー・ユニオンの生き様を心に刻み込め!(西浦 雅人)
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ソウル・フラワー・ユニオンのマキシ・シングル。今回もライヴ・テイク6曲を含むハイ・ヴォリューム。表題曲「死ぬまで生きろ!」は、スティール・パンの響きも心地よいSFU流のカリビアン・ナンバー。トロピカル・ブルースに乗せて「路上」で生き、「路上」で歌い踊る喜びと覚悟を力強く歌いながら、聴く者の想像力や思い出が入り込む居場所を残した歌詞が素晴らしい。そして、それがあくまで軽やかで温かいダンス・ナンバーとして鳴らされているところこそ、SFUの真骨頂だ。浅川マキの追悼カヴァー「かもめ」そして、「殺人狂ルーレット」「アル・ファジュル」など勢いのあるライヴ・テイクも収録。「外交不能症」のメッセージは今こそ輝きを増す。「唄と踊りは法の外」にあることを理解し、行動するからこそ、彼らの歌は強い。(佐々木 健治)
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EGO-WRAPPIN'の中納良恵とハナレグミが参加した東京スカパラダイスオーケストラ通算17枚目のアルバム。ヨーロッパ・ツアーの合間を縫って1週間という短期間でレコーディングされたというエピソードからも分かるとおり、衝動がそのまま切り取られてパッケージされている。Track.1の「黄昏を遊ぶ猫」を聴いた瞬間から、顔面に熱風を吹きかけられたような熱さと勢いに呑み込まれそうになる。もちろんそこには長くに渡って音楽シーンを牽引してきた彼らだからこその楽曲の深みと質の高さがしっかり存在しているのだが、それよりも音楽への歓喜の叫びが聴こえてきそうな作品に仕上がっているのが印象的だ。誰よりも音楽を楽しみ、音楽への欲を追求する、衰え知らずの攻めの姿勢は、最高にロックなのではないだろうか。(石井 理紗子)
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ハナレグミの4枚目のフル・アルバムが届けられた。温かく力強い永積タカシの声は、まるですぐ側で彼が歌っているかのように響いてくる。「People Get Ready」「光と影」での柔らかで哀愁漂うソウルフルな歌唱は相変わらず素晴らしい。そして、マダムギターをフィーチャーした「・・・がしかしの女」での騒々しくも笑顔に満ちた掛け合い、BOSEとAFRAを迎えた「Peace Tree」のオーガニックなグルーヴからは、人と音楽を奏でることを思い切り楽しんでいる彼の様子が伝わってくる。この作品には、音楽と共にある喜びが目一杯に表現されている。音楽は楽しい。そして、優しい。この素晴らしいソウル・アルバムはそんな言葉さえも信じさせてくれる。ただ甘ったるいだけのポップ・ソングじゃこうはいかない。(佐々木 健治)
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そういえば、桃野ってXTCとTodd Rundgrenが好きなんだった。外見はXTC、その中に隠れるねちっこさはソフトなTodd Rundgren。これは、monobrightのプログレ・バンドとしての側面が全面に押し出された挑戦作だ。だが、なにより素晴らしいのは、さらに磨かれた歌心。オタク男子らしい、音へ好奇心と研究心の賜物の、仕掛けだらけのサウンドの中で、メロディだけはシンプルなのだ。アルバム前半のセンチメンタルな曲たちの、少し懐かしく、モダンで甘いメロディからは井上陽水にも似た臭いがする。これは、これまでの捻じれたロックンロールから、歌に酔わせる"分かりやすさ"、新しい"ポップさ"を手に入れたということ。50's~00'sまでの音のエッセンスを盛り込んだ、サウンド面で挑戦している作品でありながら、結果としてメロディの素晴らしさが際立っているのは、やはり桃野のPOP 偏差値の高さ故。monobright、いい感じに熟してきました。(島根 希実)
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ライヴの定番曲をパッケージした2枚組アルバムをリリース。「ロクでナシ」や「労働CALLING」などこれぞ怒髪天! という曲が収録されている。なんといっても増子直純(Vo)の描く不器用な男の生き様を綴った歌詞が沁みる。年齢のことだったり、お金、仕事のことなどシビアでありながらリアルを歌い、それでも楽しく生きていくんだと、いつだって背中を押してくれている。こんなアツいおじさんがいる日本はまだまだ面白いと思う。文句なしのライヴ導入盤。まだライヴを観た事のない人はMCを含め体感必須です。さぁ、これを聴いてライヴ・ハウスに直行しましょう。(花塚 寿美礼)
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2010年、いきなりのワンマン2デイズで派手に幕を開けた怒髪天のニュー・シングル。アルバムを3月に控え、充実の歌を聴かせてくれる。ミドル・テンポの骨太ロックに合わせて、増子が朗々と歌い上げるダイナミックなナンバー。「ド真ん中節」というタイトルどおり、これまで怒髪天が発し続けてきたポジティヴなメッセージを、よりシンプルかつ明確に示した歌詞。しかし、シンプルなだけではなく、ひねったブレイクなど怒髪天らしいアレンジもまた面白い楽曲だ。カップリングには、怒髪天との交流も盛んなCM 界で名を馳せる箭内道彦作詞、作曲の「YOU DON'T KNOW」を収録。朴訥とした味わい深いフォーク・ナンバーに仕上がっている。男女二人の心境を交互に描き出す歌詞世界が琴線に触れる。こちらも、さすがの出来。(佐々木 健治)
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弾き語りもバンド・スタイルもどちらも真骨頂と言える完成度とすごみを湛える現在。デビュー30周年アニバーサリーのバンドでの一発録音アルバムに続いて全国25ヶ所27公演にわたる弾き語りツアーの日本武道館公演を完全収録した映像作品の発売は必然的だ。新旧広範囲なレパートリーからの選曲はその音楽性の幅の広さを歌とギターという最小編成に凝縮した原点且つ完成した表現で届けられる。今回の見どころはひとりっきりで歌と対峙する前半だけでなく、中盤には沖 祐市(Key/東京スカパラダイスオーケストラ)とふたりで「Over the Season」、「泣いてたまるか」の2曲、後半はバンドのギタリストでもある真壁陽平も参加して、2本のギターの豊潤な絡みも堪能できること。歌を生み出し続ける彼の根底にある魂の強さに打たれる。(石角 友香)
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デビュー30周年のアニバーサリーにバンド・メンバーとの一発レコーディング作品を制作するのがなんとも斉藤和義らしい。マメにライヴに足を運ぶファン以外はおそらく今の彼らの演奏がこれほどソリッドで、時にカオスなロックンロールであることを知る人は少ないのではないか。冒頭、斉藤と真壁陽平のゾクゾクするようなツイン・ギターにKO。真剣勝負の抜き差しの美学、時代を超えるバンド演奏のすごみ、ラテンやダンス・ビートも消化する貪欲さにハマるとあっという間にラストに辿り着く。まっすぐ放たれる斉藤の歌はいい意味で不変。やめたいのに自分と人を比べてしまう「ジレンマ」の歌詞が四半世紀を経ても刺さり、不安はあるけれど群れの中にいられない心情が「歩いて帰ろう」で肯定されるように受け止めてしまった。(石角 友香)
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斉藤和義はバンドを従えギターで弾き語る歌うたいの印象が強いが、時にひとりで多重録音で曲を作る。今作も藤原さくらがコーラスで参加するものなどもあるが、多くの楽曲で音源ならではの彼の演奏が味わえるのだ。新しい玩具としてドラム・マシンの名機で遊び、打ち込みのリズムにシンセを重ねるが、今風テクノではなく、表情豊かなギターや血の通った詞を乗せ、懐かしく彼らしいロックを演出。"文春"なんて言葉も入れ今の日本を皮肉った「オモチャの国」。ギターが滑らかに流れるインスト曲でラストを心地よくまとめる大人のニクさ。初回限定盤収録のパワフルに自らを鼓舞する「I'm a Dreamer」も必聴だ。「始まりのサンセット」で歌うように、彼が新鮮に感じ、やりたいことはデビュー25周年を迎えても尽きないのだろう。(稲垣 遥)
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15枚目となるアルバム『45 STONES』も素晴らしく、夏フェスにも積極的に参加し、幅広い層から支持を集める斉藤和義がニュー・シングルをリリース。躍動的なギターで幕を開けるこの曲は火曜ドラマ『家政婦のミタ』の主題歌。"やさしくなりたい""強くなりたい"と叫ぶ、そのメッセージには人を傷つけてしまったときに自分の未熟さに気付くように、やさしい人こそ強い心を持っているんだと感じる。佇まいはゆるく自然体。だが、ポーカーフェイスに隠されたアツい信念は揺るがない。斉藤和義のそんな姿がより心を揺すぶるのかもしれない。ドラマの世界観と曲がどうリンクしていくのかも注目したいところだ。c/wには8月31日に放送されたUSTREAMで披露された「ウサギとカメ」などを収録。(花塚 寿美礼)
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斉藤和義14 枚目のオリジナル・アルバム。元BLANKEY JET CITY の中村達也、リリー・フランキー、妻夫木聡、ザ・クロマニヨンズの真島昌利などの豪華ゲストを招き、タイアップ曲も多数収録。全ての曲に美しい物語が凝縮され、過去最高にゴージャスでバラエティに富んだ内容になっている。優しいメロディと、照れ臭くてなかなか面と向かって言えないような素直でストレートな歌詞は、心の中に陽だまりのようなあたたかい光を点す。スチャダラパーのBose を招いた「いたいけな秋」では斉藤がラップのようなポエム・リーディングを披露。大人の男2 人がサシで交わすクールでスリリングなマイク・リレーは鳥肌ものだ。秋晴れの都会が舞台のトレンディ・ドラマを見ているような、ロマンチックな気分に浸る1 枚。(沖 さやこ)
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懐かしい女優やアイドルが勢ぞろいしている資生堂のCMソングとして書き下ろされたナンバー。タイアップといってしまうと、あまり聞こえは良くないが、これはものすごく良質なタイアップだ。CMと楽曲の世界観、さらにはミュージック・ビデオまでも、全てがリンクしているのだ。これは商業的なリンクではなく、大人の遊び心に溢れている。アラフォーとなったアイドルと、彼女たちに夢中になったかつての少年たち。CMと楽曲とが両者を結びつけることで、そこにドラマ性を生み出している。だから「ずっと好きだったんだぜ」というおっさんくさいセリフにも、爽やかな哀愁があり、胸をキュンとさせるのだ。そして、楽曲テーマをさらに広げる形で作られたミュージック・ビデオでは、元・少年たちの方が主役となっている。(島根 希実)
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2009年の年末に大阪城ホールで行われた弾き語りプレミアム・ライヴがCD&DVDとなって登場。"大阪?!!"と始まる今作は現時点の最新作である『月が昇れば』からの楽曲を中心にこの日のライヴがすべて収録されている。もちろん「歌うたいのバラッド」や「歩いて帰ろう」などの代表曲もありとてもお得な内容。5年振りとなる弾き語りライヴだが気負いや緊張感はなく、とてもリラックスしていて軽やかな感じが彼らしくカッコいい。今作のギター一本、ピアノ一つで演奏される楽曲もメロディの良さや歌詞の素晴らしさを感じられてとても感動的。最後に友人であり今回舞台演出を担当し、今注目を集める大宮エリーの特典映像も見逃せないところ。(遠藤 孝行)
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スカという枠組みをさらに押し広げながら独自のスタイルを確立して20年間君臨するスカパラ。多彩なスタイルと方法論で、大衆性と独自の音楽性を両立する彼らの面目躍如とも言えるポップなアルバムだ。洗練されていながら、ダイナミズムに満ちたその音楽性はもちろんだが、スカパラほどメジャー・フィールドに対して戦略的なバンドはそういない。それはスカパラのようなバンドが未だに現れないという事実が物語っている。例えば多様なコラボ(今作では奥田民生、Crystal Key、斉藤和義が参加)をとっても、とてつもなく意識的で戦略的だからこそ、その高い音楽性をキープできるのだろう。「Won't You Fight For Happy People?」スカパラはファイティング・ポーズをとり続けている。(佐々木 健治)
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2009年は伊坂幸太郎の年だったと言えるくらい彼の本は売れた。数々の原作が映画化されてきたが、山本周五郎賞を受賞した今作「ゴールデンスランバー」もいよいよ公開。その伊坂幸太郎と斉藤和義の関係は深く、作家になる決心をつけたのも斉藤和義のある曲を聴いたからだと言う。斉藤和義が初となる全編に渡り映画音楽をプロデュースした今作は、主題歌でTHE BEATLES のカヴァーである「Golden Slumbers」と再録された「幸福な朝食 退屈な夕食」、「ランナウェイ」の三曲以外はすべてインストゥルメンタル。映像化力の高い彼の曲の数々は暖かく、そしてどことなく切なさを含んでいる。熱っぽい「Golden Slumbers」も素晴らしいが、全体を通しても二人がこの作品に傾ける情熱が伝わってくるようでグッと胸を打たれる。(遠藤 孝行)
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昨年デビュー15 周年を迎えた斉藤和義から前作『I Love Me』から2 年振りとなる13 枚目のニュー・アルバムが届けられた。フジファブリックの山内総一郎がギターで参加しているが、それ以外はほぼ一人でこなすマルチプレーヤーである彼の魅力が発揮されたアルバムである。パワフルなロック・ナンバーの「COME ON!」で始まる今作は、アリナミンのCM 曲でもお馴染みの「やぁ 無情」やブルージーで弾けた「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」。初めてのピアノ弾き語りを披露している「アンコール」と曲ごとにガラッと雰囲気が変わり全く飽きさせず、すべての曲から斉藤和義が歌にかける情熱を感じる事が出来る。中途半端な志では到底たどり着けない高みを見せてくれる。ただそこに力みはない。だからかっこいい。 (遠藤 孝行)
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CDデビュー5周年を迎え、1月に5thアルバムをリリースしたばかりのOKAMOTO'Sによる"5.5th"アルバムは5組のアーティストとのコラボレーション作品。RIP SLYMEとはAEROSMITH & RUN-D.M.Cばりのオールド・スクールな王道ヒップホップとハード・ロック・サウンドの融合を聴かせ、スカパラとは大編成イケイケ音楽部隊と化し、Wilson PickettばりにシャウトするROYとはクロさ全開で渡り合う。タイトルと曲調から"民生愛"がビンビン感じられる「答えはMaybe」と、いずれもOKAMOTO'Sならではの、この企画を実現できる実力と各アーティストへの敬意を感じさせる内容。中でもラストの黒猫チェルシーとのデュエット「Family Song」が出色で、2組の友情を感じさせる感動的な楽曲となっている。(岡本 貴之)
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約2年ぶり通算16枚目となるニュー・アルバム。ピアニストの上原ひろみ、サックス・プレイヤーの菊地成孔、Manu Chaoといった面々との豪華コラボ曲も収録し、中でも中納良恵(EGO-WRAPPIN')が参加した「縦書きの雨」はしっとりとしたミディアム・チューンでお互いの良さを最大限に生かした都会的な大人のスカに仕上がっている。スカパラ節が炸裂したアッパーな展開も痛快だが、こういった沁みるサウンドも素晴らしい。アルバム・タイトルが示すとおり、一歩一歩確実に踏みしめてきた今までの彼らの歩みと、これからも自分たちらしい速さで歩んで行く意思を感じる。デビュー23年目、また新たな想いのもとに鳴らされる音はとてつもなく新鮮で煌びやか。(花塚 寿美礼)
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東京スカパラダイスオーケストラが20周年を迎える今年、まず放つのがこのシングル。何と、「美しく燃える森」以来となる奥田民生との2度目のコラボレーションである。都会的で洗練されたスカパラの音に合わせて、奥田民生もこれまであまり見せたことのない大人っぽい歌声が印象的でグッと歌に引き込まれてしまう。少し切なさが滲むこのシングルは、奥田民生の新たな一面を垣間見させるとともに、スタイリッシュな雰囲気を生み出すスカパラのアレンジ、演奏能力の高さを示すシングルとなっている。スピード感はありながらも、それがこれまでの歌モノと違うのは、熱を抑えたスタイリッシュなナンバーであること。スカパラ20 周年がどういう一年になるのか、早速楽しみになる一曲だ。(佐々木 健治)
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スカパラデビュー20周年!記念碑的な今回の4曲入りニュー・シングル。タイトル・ナンバー「KinouKyouAshita」ではFISHMANS の茂木欣一がリード・ヴォーカルを務め、作曲にも参加している。メジャーコードながらもどこか哀愁が漂うメロディと、ダブの手法に乗っ取って強調されているベースのグルーヴが印象的なナンバーだ。「Give Me Back Ball」はスカパラらしいアッパーなナンバーで、曲中盤ではキーボードのソロが炸裂している。そしてシャンソンの名曲、エディット・ピアフ「愛の讃歌」のカヴァーでは、スカパラならではの工夫を凝らしたアレンジがそこかしこに加えられており、正にお見事!な出来栄えだ。更にラストは、「トーキョースカメドレー」のライヴ音源が収録されている。(杉浦 薫)
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メロディ、サウンドともに、その響きのなんと甘酸っぱいことか......(感涙)。聴けば一発で"この人だ!"と分かる、志磨遼平のちょっと鼻にかかったクセのある声で歌い上げる、"Mary Lou" への純粋無垢な愛情。それを包み込むのは、池田貴史(100s)のオルガンとともに鳴らす、優しくて夢見心地な雰囲気のサウンド・アンサンブル。軽快なリズムに、広がりのあるサウンドとキャッチーなメロディを重ねて作り上げている楽曲の仕上がりは、60~70年代のフィル・スペクター作品をほうふつとさせる。そして、Track.3「デュマフィスの恋人」は、そんな「Mary Lou」へのアンサー・ソングとして作られたという。ピアノが悲しげなムードを演出する1曲は、少女から大人になり、人生の終焉を迎えた"Mary Lou"への鎮魂歌のよう......。たまらなくドラマチック!(道明 利友)
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THE BAWDIESとは違う方法論で、ロックンロールを今に蘇らせる毛皮のマリーズが、遂にメジャー・デビュー。こういう参照点の分かりやすいロックンロールの手法をやる若いバンドって、考えてみると確かにいない。ロックンロールへの愛情が出まくっているが故のデフォルメ感とでもいいましょうか。RCサクセションや奥田民生などと同じ系譜にいるバンドだ。前作『Gloomy』でのサイケデリックでディープな世界観から「憑き物が落ちたように」(志磨 遼平)ゴキゲンなロックンロールを取り戻したこのアルバム。これまで通り、ここには新しい音はない。だけど、ロックンロールの楽しさがそれだけの訳もない。彼らはそういう価値基準とは別の場所で彼らにしかできないロックンロールを鳴らしている。(佐々木 健治)
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浅井健一の、ソロのフィジカル・リリースとしては約5年ぶりのタイトル。曲ごとにジャストなミュージシャンと制作するスタイルで、表題曲ではSHERBETSでもお馴染みの仲田憲市(Ba)、以前のソロでも組んでいた岡屋心平(Dr)、キルズ(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)の小林 瞳はコーラスで参加している。ブルースやサイケデリック、少しGSのニュアンスも含んだいぶし銀のアンサンブルの上を、ベンジーのピュアなヴォーカルが響き、静かにまっすぐ前を向かせてくれる。「INDY ANN」はキルズのメンバーで、静謐な表現でもぴったり息の合った演奏を堪能。「Freedom」はベンジーの語るような歌とアコギ、美央のヴァイオリンのみの音像が心を揺さぶる。(石角 友香)
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2017年3月に1stアルバム『METEO』をリリースし、年間3本のツアーで、中尾憲太郎(Ba)、小林 瞳(Dr)とのバンド感をさらに増した3ピース。小林のロカビリーをルーツに持つシンプルながら躍動感のある若いビートと、中尾の重いのに速いベースは、浅井健一の疾走するR&Rと独自の瑞々しいリリシズムを際立たせる。トルネードのように駆け抜ける「Vinegar」や「Turkey」、愛嬌と才能が入り混じる、でも生きるのが不器用な主人公を見守る視点の温かさに、浅井ならではのひらめきを感じる名曲「Fried Tomato」、ピアノやフルートを効果的に配置した懐かしい匂いのする「水滴」など、オールド・ファンはもちろん、若いリスナーにもこの厳しくも美しい人生を感じる作品を聴いてほしい。(石角 友香)
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"ロックンロールなの、これ? 俺は(呼び名は)何でもいいよ"とベンジーは言った。ギター、ベース、ドラムのトリオによる演奏がたまたまそうなったということだから、ことさらにそこにこだわる必要はないと思う。しかし、Track.2「朝の4時」のようなサイコビリー・ナンバーは、このアルバムの聴きどころだと思うし、ガレージ・ロック風のリフを奏でてもロックンロール以上の何かを表現してしまう才能は今回、そういう作風だからこそ際立っている。ロカビリー・サウンドに乗せ、マス釣りをこんなにかっこよく歌えるミュージシャンを、僕は知らない(作家ならヘミングウェイがいるが)。悲哀に満ちたメロディとともに25年前の思い出に世界の真理を見いだしたTrack.3「細い杖」を聴き、また1曲、名曲が生まれたと思うファンは多いはず。(山口 智男)
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『きれいな血』と『CRASHED SEDAN DRIVE』という素晴らしいアルバムをわずか7ヶ月というインターバルでリリースしたSHERBETSの精力的な活動を経て、浅井健一が約2年ぶりに取り組むソロ・プロジェクトは、トリオ編成のバンドとなった。メンバーは元NUMBER GIRLの中尾憲太郎(Ba)と無名のドラマー 小林瞳。挨拶代わりにリリースするこのシングルは、ロカビリーやガレージの影響が色濃い4曲のロックンロール・ナンバーがTHE BLANKEY JET CITY時代からのファンを狂喜させるものになっている。ラストを飾る「Rat Party」は軽快なモータウン・ビートと明るい曲調を裏切る歌詞の世界がベンジーならでは。残酷なファンタジーとも言えるその深さが、すでに完成しているアルバムの伏線になっているようだ。(山口 智男)
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浅井健一名義で1月にリリースされたアルバム『PIL』を引っ提げて開催された全国ツアーのファイナル公演である、2013年3月4日のSHIBUYA-AXの模様を完全収録したDVD。ベンジーのキャリアを総括するようなセットリストも然ることながら、素晴らしいのはこの4人のグルーヴだ。4人の音の交錯はカー・チェイスさながらにスリリングでありながらも、圧倒的な多幸感がある。弦楽器隊の3人が同じ動きでキメる「MORRIS SACRAMENT」、4人のソロを織り込み魅せる「MAD SURFER」など遊び心も満載。2本のギターによる音のふくよかさにも高揚する。フロアの歓声やシンガロングも情熱的で、浅井健一というアーティストの魅力を再確認。非常に純度が高く、肉体的でダイナミックな120分を堪能出来る。(沖 さやこ)
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ソロとしては前作「Sphinx Rose」以来、3年4ヶ月ぶりとなる新作。茂木欣一(Dr)、岡屋心平(Dr)、渡部圭一(Ba)、マーリン(Ba)とのバンド・セッションをベースにしたハードでノワールなロックンロール・ナンバー、そしてドラム・ループに乗せて他の楽器やシンセを浅井ひとりで重ねていった繊細で神聖なイメージのナンバーの両方が収録された、まさにソロならではの表現が詰まった意欲作。インタビューにもあるように、1人でヴォーカルやコーラスを重ねた楽曲の(「青いチョコ」「Mona Lisa」「エーデルワイス」など)メロディやファルセットの美しさ、声の近さが醸す映像や温度を感じさせるような世界観は、ジャンルを問わずあらゆる音楽ファンの琴線を震わせるはず。(石角 友香)
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今年はSHERBETSとしての活動が盛んだったベンジーこと浅井健一がソロ活動を再スタート。来年1月にはソロとして3年半振りのオリジナル・アルバム『PIL』をリリースすることも決定しており、このシングルには同アルバムにも収録される楽曲を含む新曲4曲で構成されている。表題曲「OLD PUNX VIDEO」はキャッチーなロック・ナンバー。気負わずもひりっとしたアンサンブル、ラフなベンジーのヴォーカルのバランスが非常に小気味良い。「MORRIS SACRAMENT」はメランコリックなアルペジオとコーラス、クールな低音の効いたビートが交錯し、「PLAY」「HOT ROD No.1」はパーソナルな感傷を繊細に表現。より深みと広がりを増すベンジーの曲世界に、アルバムへの好奇心が煽られる。(沖 さやこ)
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浅井健一ソロ名義としては、4 枚目のアルバムが完成した。それぞれ全く違うモードを見せた2ヶ月連続シングル「FRIENDLY」「Mad Surfer」を始め、様々なスタイルを持つ楽曲が収められている。「FRIENDLY」や「Your Smile」のように、素朴で穏やかなアコースティック・ナンバーから、ベンジーらしいどこか妖艶で危険な雰囲気を醸し出す「Mad Surfer」や「スケルトン」。そして、「Bad Strawberries」のようなストレートなロック。ヴァイオリンをフィーチャーした荘厳なバラード「大きな木」。今のベンジーがさらけ出すように紡ぐ言葉は、シンプルで優しい。ラストの「SPRING SNOW」の愛に満ちた日常のファンタジーまで、まるで一つの物語のような、美しく力強いアルバムだ。(佐々木 健治)
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浅井健一ソロ名義としては、約2年ぶりのリリースとなるシングル。驚くほど穏やかな空気に満ちた4曲が収録されている。ヴァイオリンをフィーチャーした「Friendly」や「Spring Snow」では、ベンジーが見出す美しさと優しさを穏やかに語りかけてくる。ピュアなものに対する憧れはベンジーの物語には欠かせないが、この飾り気のなさはどうだろう。ここにあるのは、素の浅井健一の視線だ。ソリッドな「Bad Strawberries」や比較的へヴィな「Sensational Attack」でも、ベンジーはこの世界に向けて愛を振りまく。これまでにはないベンジーの表情に驚かされるが、ここには確かな説得力がある。初回生産限定盤(「Sensational Attack」は未収録)には、何と自身初のフィギュア(!)がついてくる。(佐々木 健治)
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数年前によく一緒に酔っ払っていた友人が真心ブラザーズを大好きだったので、その友人から真心のベスト的CDRを作って貰い、よく聴いていた時期があった。今でも、真心ブラザーズを聴くと、その頃のことを思い出す。ただ酔っ払っていただけの、今と特に変わらない日々だけど。自分達のスタンスで飄々と活動を続ける真心ブラザーズ20周年の集大成となるベスト・アルバム。僕が貰ったCDRにも、この2枚組ベスト・アルバムに入っている曲が結構あった。「ひこうきぐも」が入ってないのは残念だが、それを言い出せばきりがない。過去の代表曲、名曲から、最新アルバム『俺たちは真心だ!』収録曲までを網羅した充実の内容。真心ブラザーズは、どうしようもない日常の風景を豊かにしてくれる。そんな音楽を探しているなら、まずは聴いてもらいたい。 (佐々木 健治)
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前作『ねむらない』から約1年7ヶ月ぶり12枚目となるアルバム。LED ZEPPELINとDAFT PUNKを掛け合わせたらこうなりそうな(?)「ヘルシンキ」の延々と続くワンワードのループ感がもたらす恍惚感と、ロマンチックな美メロ曲「TOMATO」、フォーキーな「ユーは13?14?」のコントラストはまさに真骨頂で、グッと心を鷲掴みにされること間違いなし。後半にダイレクトなギター・ロックが多くなっているのでどんどん加速度が増していく印象。トータル・タイムが28分36秒とのことだが、さほど短いと感じなかったのは曲ごとの個性が際立っているからだろう。英国人イラストレーターのBUNNY BISSOUXとコラボしたというジャケットはイラストの中のジャケを丹念にチェックしたくなってしまう。そんな音楽の楽しさに溢れた1枚。(岡本 貴之)
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最近すっかり愛と感謝の人・須藤寿にはもう毒はないのか?と思っていたら、毒とはまた違う成分..."同じ場所にはいられない駄々っ子な表現者"な彼が顔を出したようだ。そもそもダンス・ロックとかポスト・ロックとかインスト・ジャム・バンド風とか一点突破的な小さなサークルにいない彼らの曲はもっとスケールが大きい。が、同時に神は細部に宿ることも知っていることを現実の1曲1曲に結晶させた本作。オルタナ・カントリー&ブルースをUK経由で東京に着地させたような「キングスバリー・マンクス」、空耳的な歌詞の譜割りがユニークな「ベルボーイ!ヘルプミー!」、ダブの音響にイーヴルなギターが刺し込む「地獄」、髭流マンチェな「ボーナス・トラック」など、時に夢が現実よりリアルだったりする感覚にも似た鳥肌モノの全13曲。 (石角 友香)
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髭のフロントマンの須藤寿の初のソロ作品がリリース。"須藤寿GATARI ACOUSTIC SET"と名づけられたこのプロジェクト、その名の通り弾き語りをベースに最小限のアコースティック・セットで組み上げられている。Track.1のミドルテンポのフォーク・ナンバーの「あそびにいこう」から髭で見せている側面とは違った彼の歌心が垣間見れる。リード・トラックの「ウィークエンド-Theme From The Great Escape」ではゲストにコトリンゴを迎え、アンニュイでミニマルな髭では想像しえないような優しいヴォーカルを披露。彼のイメージから正直もっとざらついたフィジカルなフォーク作品を想像していたのだが、大瀧詠一や細野晴臣などを想起させる極上のポップ・ソングが詰まった作品。(伊藤 啓太)
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髭ちゃん、コロムビア・レコードへお引越し(移籍)第一弾となるオリジナル・アルバムが到着! さあ、みなさん旅の支度はできました?"約束の時間だよ"、"きっかり約束の時間ですよー!"聞こえたでしょ? もたもたしてたら置いていかれるぞー! 冒頭から、タイトル・トラック「それではみなさん良い旅を!」でもって、新天地から旅立ちの帆を上げた髭ちゃん。驚くことに全14曲中7曲を須藤以外のメンバーが作曲を手掛けた本作は、14曲というボリューム感も相まって、楽曲のバラエティ・パック状態。シンプルでコンパクトな楽曲が目白押しの、賑やかな内容となっている。そして、思考によるサイケデリアとでもいうような、須藤独自の語感が冴えわたる歌詞は、詞の域を超えて、一節ごとにネーミング・センスを感じてしまうほどに、コマーシャルでカラフル。時々センチで、めちゃキャッチーなこの旅に、あなたは行っとく? やめておく?(島根 希実)
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ふざけてるようで、マジメに遊んでる感じ。絶妙なスレスレ感で独自の怪しげなイメージの楽曲やふりきったポップだったり、今までのHiGEのアルバムとはひと味違った甘いフレーバーな作品に仕上がっている。ユニコーンの川西幸一、RIZEの金子ノブアキら豪華メンツが参加し、ますます研ぎ澄まされて純度が増していく。先行シングル「サンシャイン」は奥田民生がプロデュースすることで話題に。HiGE× 民生の化学反応はアルバムの世界観の軸を形成している。「青空」のようなメッセージ性のある歌詞が印象的なものから、「オニオン・ソング」のような遊び要素おあるものまでバラエティに富んだ内容で聴くたびに新たな発見を得られるから不思議。音楽にフォーマットなんていりません!と改めて気づかせてくれる1枚。(花塚 寿美礼)
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夏にはニューアルバムをリリースするHiGEからベスト・アルバムが届けられた。「ブラティー・マリー、気をつけろ!」など代表曲を詰め込んだDISC1からアンプラグド・ヴァージョンで新録されたDISC2と充実な内容。毒を含んだ鋭い歌詞と小気味良いロックンロール。やっぱりHiGE は今の日本のロック・シーンになくてはならないバンドの一つだろう。今回収録された日本テキーラ協会公認ソングでもある新曲「テキーラ!テキーラ!」はHiGE節が炸裂するフック満載の心地よいソウルフルなブギー。前作のドリーミーな展開も良いけど、やっぱりこのスカッとする感じが欲しかった。ちなみに今作のマスタリングはなんとあのアビーロード・スタジオの名エンジニアSteve Lukeが担当。(遠藤 孝行)
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結成10年にして、好きな音楽がバラバラであることが、さらにいい方向に作用し始めた黒猫チェルシー。考えればロックは、あらゆるジャンルを放り込める大きな鍋。それを今作では、各メンバーが演奏から歌唱までこなしたそれぞれの「ベイビーユー」を収録することで、鮮明に浮き彫りにしている。原曲は普遍的なロック・バラードで、モノラルに近い音像もどこか甘酸っぱい。岡本啓佑(Dr)はメロディは残しつつ、ポップス寄りのアレンジ、澤 竜次(Gt)は持ち味のブルース・ロックですらない(!)荒いメタルで180°違う曲へ。宮田 岳(Ba)は浮遊感のあるオルタナ・カントリーにエキゾチックな香りも加えた。そして渡辺大知(Vo)はライヴでの弾き語りを収録。今の黒猫の自由度を体現しきった痛快なシングル。(石角 友香)
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"ルーレット回して進んでくゲームさ(中略)少ない出目じゃ あんま進めはしないけど/そこが重要なマスだったりするんだ"(「LIFE IS A MIRACLE」より)――約4年4ヶ月ぶりのオリジナル・フル・アルバム。この期間、彼らは少しずつ前進し、少しずつ音楽を純粋に楽しめるようになってきたのだろう。これまでで最も自然体で素直な4人の姿が感じられるものだった。歌詞に描かれているのはいち個人の日常と恋愛。壮大でも派手でもないかもしれないが、ささやかでありながらかけがえのない確かな感情にしか出せない"匂い"がすべての曲にある。センチメンタルできらきらした若者の青春劇を観ているようで、ラストを飾る3連符のミディアム・ナンバー「海沿いの街」は感動のエンドロールだ。(沖 さやこ)
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2016年2月にレーベル移籍後初となるシングル『グッバイ』をリリースし、全国7都市ツアーを行った黒猫チェルシーが早くもシングルをリリース。岡本啓佑(Dr)が初めて単独で作曲した表題曲はTVアニメ"NARUTO-ナルト-疾風伝"のエンディング・テーマに起用されている。切ないマイナー・コードのメロディと力強い演奏が、悩みを抱えながらも突き進む等身大の少年像に重なり、"胸が苦しくても へっちゃらなのさ"という強がりも美しい。カップリングには澤竜次(Gt)が作詞作曲し、ホーンを入れたスカ・テイスト・ナンバーTrack.2、渡辺大知(Vo)が出演したTVドラマ"毒島ゆり子のせきらら日記"の劇中歌のアコースティック・バージョンTrack.3を収録。三曲三様の男子ならではのロマンチシズムを堪能できる。(沖 さやこ)
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2015年はNHK連続テレビ小説"まれ"の劇中バンド"little voice"としてシングルをリリースしていた黒猫チェルシーだが、彼ら名義のオリジナル作品は約3年半振り。レーベル移籍後、初のシングルとなる。"よりシンプルに伝わるロックを突き詰めた"という表題曲は、歌メロがど真ん中にあるミディアム・テンポのロック・ナンバー。何より感銘を受けたのはサビ頭の"ああ"と歌う渡辺大知(Vo)の声。ストレートでわかりやすい言葉よりも何よりも渡辺の発する"ああ"というひと言が、非常に強い説得力と深みを持っていたのだ。この声を聴いた瞬間に、彼らが3年半の間に感じてきた様々な喜怒哀楽を植えつけられたような気がした。自分たちの音楽を愛でるように鳴らされる音もあたたかく、じっくりと染み入る。(沖 さやこ)
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2009年のインディーズ盤『黒猫チェルシー』から2012年の『HARENTIC ZOO』から時系列ではなく、曲の流れの良さで選曲された初のベスト。少し切なくなってしまったのは、登場時の怖いもの知らずでTHE STOOGESやジミヘンを思わせるコアなR&Rが、逡巡を経ていくごとに、いわゆる日本のギター・ロックへ寄っていったあたり。しかし歌詞のリアリティは増し、「東京」の切実さは必然なのだと感じる。ルーツだったブルースは彼ら自身の内側に宿ったのだ。それにしても奥田民生のカヴァー「息子」は、渡辺大知が自身に向けて歌うような決意に満ちていて恐ろしくしみる。映画"大人ドロップ"挿入歌のこの曲と主題歌の「サニー」にこれからの黒猫チェルシーが見えるのが、実は今作の最も大きな聴きどころである。 (石角 友香)
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初のフル・アルバム、そしてメンバー全員が作詞・作曲を担当した意欲作。60年代のロックンロールに日本人特有のわびさびが混じっているようで、何ともレトロな味わいだ。そんなエキゾチックでもある雰囲気を作り上げているのは、今回はサウンド・プロデューサーに一風堂の土屋昌巳を迎えたことが大きいのではないだろうか。オリエンタルな風を運ぶギター・メロディ、確実に丁寧なリズムを刻むドラム、安定感あるベース、衝動の中に愛嬌も感じさせるヴォーカル......。そのすべてが洗練されていて、彼らが描くじつに美しく眩しき楽曲の世界からは、黒猫チェルシーというバンドの素を見ることができた気がする。また、David Bowieなどの世界的ミュージシャンを撮影したカメラマン鋤田正義がとらえた鮮烈なジャケットワークにも注目。(花塚 寿美礼)
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サイケデリックでディープな爆音ガレージ・ロックンロールを鳴らす、神戸出身の黒猫チェルシー。春に発売したミニ・アルバムに続いて、早くもフル・アルバムが登場する。Vo の渡邉大知が映画『色即ぜねれいしょん』に主演して注目を集めると同時に、今年に入って黒猫チェルシーもその名を見かけることが多くなった。例えば、ゆらゆら帝国。例えば、BLUE CHEER。もっと言えば、高円寺のライヴ・ハウスで育まれるアングラ・ガレージ・ロックのような世界観と10 代特有の焦燥感。変態性の高いうねるベース・ラインとサイケデリックなギターが爆音で轟く荒削りなサウンドとイライラを撒き散らす衝動性の高い歌詞。10代の野郎の頭の中に詰まった狂気を勢いまかせでぶちかます。もっとやれ!(佐々木 健治)
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