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INTERVIEW

Japanese

オワリカラ

2014年02月号掲載

オワリカラ

Member:タカハシ ヒョウリ (Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

オワリカラ、約1年9ヶ月振りのオリジナル・アルバム『サイハテ・ソングス』。タカハシヒョウリが言うように、間違いなくバンド史上の最高傑作となった。彼がロックや音楽に出会ったときの衝撃や感動、音楽に言ってほしかった言葉という、強い想いが込められたもの。コミュニケーションを求めた前作『Q&A』からまた一歩踏み込んだ"ついてきてほしい""伝えたい"という感情が詰まった嘘偽りのない全11曲。タカハシが何度も口にした"架け橋になりたい"という言葉――オワリカラはそれを実現すべく、より広い世界へと踏み出している。

-前作『Q&A』から今作『サイハテ・ソングス』の1年9ヶ月はどんな期間でしたか?

アルバムを出す環境や僕らの周りの環境もちょっと変わったというのもあって――その間ずっと曲は作り続けてたんですけど、それをリリースするタイミングがなくて。(期間を)空けようと思って空けたわけじゃないんだけど、結果的にいろいろ準備時間ができたというか、今回のアルバムについて考える時間とか、ライヴをすごいいっぱいやる時間があって。......大体ライヴして曲作って、僕らがやってることはそんなに変わらなかったですけどね。

-ただ"リリースするタイミングがなかった"という。

そうですね。(音楽は)勝手に出てくるものだと思っているので、いっぱい出してるアーティストを見ると"この人は勝手にどんどん出てきてるんだな"と思うから、自分としてはいっぱいリリースするのは好きなんだけど。......僕らの前の3作(『ドアたち』『イギー・ポップと讃美歌』『Q&A』)が3部作のような気持ちがあって。だから(この期間で)そこがひと段落したというか、1個終わって次に向けて仕切り直しというか、新しいスタートを切りたいというか。だからそこに時間があったのはすごく良くて。自分たちの新しい側面とか......あとは何が余分で何が核心なのかとか、そういうところをすごく考えたり、バンドで削ぎ落としていく作業ができたから。"オワリカラだったらこれだろ"と思うものを作るには必要な時間だったかな。

-ヒョウリさんが思う"オワリカラだったらこれ"というのは?

ポップスとアバンギャルドの架け橋みたいな、その中間地点に向かって音楽を投げていける。それがこのバンドのいいところだなと思ってるし、僕がやりたいことはそこにしかないので。それをすごく意志的に取り組めた。多分それが、ただ小難しかったり、聴いても体が動かなかったり、"これなんなんだ?"で終わっちゃったら意味がないと思うんだよね。それが"届く"とか"伝わる"というのがすごく大事で、それがなかったら意味がないと思ってるから。伝えるために僕らの武器や――足りないところもひとつの武器だと思うし。そういうことをすごく考えたり、ライヴをやっていく上で悟ったり感じていく時間がすごくあったかな。

-ひとつの武器である"足りないところ"とは?

だって......ねえ。(こちらの紙資料の曲目リストを覗き込みながら)あからさまに......変です(笑)。全部がラヴ・ソングとか、そういう分かり易いものかというとそうではない。僕はいわゆるすごくシンプルでストレートで明るい音楽というものに心を救われたことが、いままで一度もないので。そういうものに救われる人たちがいるのも勿論理解してるんだけど......そうじゃない人たちも絶対いると思うんだよね。例えば、30人くらいのクラスのうちの2人を救うもの、10人を救うもの、いろいろあると思うんだけど――僕はマイノリティとマジョリティの間にいたし。そういうところは"足りない"とも思うし、すごく好きだな、とも思う。

-それは自分の昔を重ねて?

うん。僕は音楽作るときにいっつも、絶対大事にしてることの1個がそれで。僕がすごく音楽が好きで、いちばんCDやレコードを買っていたり探していたのは16歳とか17歳の頃で、そのときの自分がダサいなと思わないもので"これすごく新しい!"とか"いいな"と思えるものが作りたくて。昔、Merzbowとか暴力温泉芸者とか、マイクの前で裸でギャーって言ってる日本のノイズ・ミュージックもすごく好きで。音楽の趣味も変わっていくから、自分がいまもそういうものを愛聴してるかというとそういうわけでもないんだけど、コアや根っこにある部分はずっと変わってない。だからそれがちゃんと反応するような音楽にはしたくて。結局ロックというのは若者、ティーンエイジャーのものだと思うんですよ。それは年齢的な意味合いじゃなくて、30歳の人のなかにも10代の部分はあると思うし、50、60になってもティーンエイジャーの部分は破片としてちゃんとあって。そういうところが反応できるような音楽にしたいなと。それが実際のティーンエイジャーにとっては新しい世界を覗き見るような気持ちがある音楽になるのがオワリカラだといいなと思ってるんですけどね。