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Japanese

黒猫チェルシー

Skream! マガジン 2016年05月号掲載

2016.03.27 @新代田FEVER

Writer 白崎 未穂

今年2月にオリジナル作品としては約3年半ぶりとなるシングル『グッバイ』をリリースし、全国7都市を巡るツアー"黒猫チェルシー 2016全国7都市「グッバイ」リリースツアー"を敢行した彼らが、新代田FEVERにてツアー・ファイナルを迎えた。日曜日ということもあり、スタート時間はいつもより早めの17時30分。予定時刻を過ぎたころ場内が暗転し、Tony Marshallの「Schöne Maid」がフロアに鳴り響く。SEに合わせてオーディエンスの小気味よい手拍子と歓声とともに青い照明の中、岡本啓佑(Dr)がステージに姿を現し、バスドラでビートを刻み始めると、宮田岳(Ba)、澤竜次(Gt)、渡辺大知(Vo)の順番で登場。


"行きますか、東京!"と叫ぶ渡辺の声とともに「Hey ライダー」からライヴがスタート。続けて、"今日は最後まで思いっきり楽しんで行こう"と最新シングルより「Teenage Hero」が披露される。この日のライヴをとにかく楽しみにしていた渡辺の気持ちがうかがえる。立て続けに初期楽曲「ノーニューヨーカー」もプレイ。早すぎず、遅すぎもしないテンポでライヴは進行し、オーディエンスも徐々にエンジンがかかっていく。"東京のみなさん! 恋、してますか? 音楽に恋してますか?"と問いかけながらアコースティック・ギターをスタンバイする渡辺は、フロアの反応を確認し"もっとトキメキが必要のようです。恋せよ新代田!"と告げ、自らが出演していたNHK朝の連続テレビ小説"まれ"の劇中バンドlittle voice名義のシングル表題曲「涙のふたり」を演奏。そして、すべての"ついてない君"に捧げる「アンラッキーガール」で澤の渋いスライド・ギターを響かせ、「ブルーサマー」では黒猫チェルシーならではのキャッチーさを存分に出していく。


この日1番のトピックとして記しておくべきは、怖いもの知らずでギラギラしていた"黒猫チェルシー"というバンドが、アコースティック・スタイルで演奏するコーナーを設けていたことだろう。4人は『グッバイ』のリリース・イベントで披露したアコースティックでの演奏をキッカケに味をしめたようで、澤が"ロック・バーに来たつもりで聴いてください"と笑いながら伝えると、「ノーマン・ノークライ」でアコースティック・コーナーがスタート。この日のライヴに願いを込めるかのような"いい日になれ"という言葉とともにしっとりと歌いあげていた――かと思えば、なんとリズム隊の宮田と岡本まで"最近アコギにはまって......"とわざとらしく言いながら自慢のギターをそれぞれ取り出し、ステージ前方へ。CROSBY, STILLS, NASH & YOUNGさながらに4人全員がアコギを持つスタイルで披露されたのはlittle voice名義の「また会おう」と、アコースティック・スタイルとはいえモッシュまで巻き起こりそうな勢いの「黒い奴ら」。さらに「郷愁」、「のらりのらねこ」、THE WHOの「My Generation」をカバーを経て、最後にもう一度「郷愁」に戻ってくるというメドレーで、宮田と岡本と澤がそれぞれメイン・ヴォーカルをとるレアな光景も見せてくれた。こんな彼らを見ることができるのはワンマン・ライヴならでは。オーディエンスは笑顔しかない。


気がつけば後半戦に突入。さっきまでの和やかな空気はどこへ行ったのかと言わんばかりの"悪い顔"に変貌した渡辺。「オンボロな紙のはさみ」、「アナグラ」、「ベリーゲリーギャング」と頭の中が沸騰しそうなほど熱くなった。するとここで、"2014年に出したベスト・アルバムを発表してから「グッバイ」までの2年は、ただ休んでいたわけじゃなく、曲を作ってひたすらライヴをするという期間でした。確かにつらい2年だったけど、同時に大事な2年になりました"と一生懸命に胸中を言葉にする渡辺。"いろんなことを考える中で気づいたのは、やっぱり黒猫チェルシーのことが本当に大好きだということ。ずっとワクワクできるバンドなんてほかにありませんよ"。高校卒業後、すぐに上京してデビューを果たして休むことなく音を鳴らし続けてきた彼らが、束の間の休息ののち掴みきれなかった何かを手に入れ、新たな一歩を踏み出したように感じられた。"もうこんなに待たせることはないと思います! これからも俺たちをよろしくお願いします!"と告げると、今日あった嫌なことに"全部グッバイする"最新シングル表題曲「グッバイ」を披露。そして何かを確認しあうかのように4人全員でドラムを囲むように向き合い、ゆっくりと「夜更けのトリップ」へと繋ぎ、とびきりのラヴ・ソング「恋はPEACH PUNK」で明るく本編は終了した。


アンコールでは、渡辺大知が新たなTVドラマ"毒島ゆり子のせきらら日記"に出演すること、さらにニュー・シングル『青のララバイ』が6月1日にリリースすること、そして新たに東名阪ワンマン・ツアーを開催することを発表。嬉しいお知らせのあと、"新曲聴きたいでしょ?"と渡辺はもったいぶりながらも「青のララバイ」が披露された。さらにサビでシンガロングが巻き起こる「ロンリーローリン」を投下し、ラストに彼らのリアルな心を表現した「東京」をエモーショナルに演奏。


"明日がホントにホントに、いい日になりますように!"と何度もオーディエンスに渡辺が呼びかける。来年は結成10周年という節目を迎える黒猫チェルシー。"負けそうになるけど、必ずうまくいく"と新曲で歌っていたように、今の黒猫チェルシーは長く苦しい時を経て、さらなる進化を遂げたかのような晴れ晴れとした顔をしている。つらく悲しいことがあろうとも"明日はきっといい日になる"と、そう教えてくれたライヴだった。

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