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INTERVIEW

Japanese

ASIAN KUNG-FU GENERATION

2012年09月号掲載

ASIAN KUNG-FU GENERATION

Member:山田 貴洋 (Ba/Vo) 後藤 正文 (Vo/Gt) 伊地知 潔 (Dr) 喜多 建介 (Gt/Vo)

Interviewer:石角 友香

前作『マジックディスク』の終盤にあたるホール・ツアーを前に東日本大震災が発生。音楽的に自由にウィングを広げていたアジカンの活動は角度を変えつつ止まることはなかった。強い決意と努力によって開催された昨年の“NANO-MUGEN FES.2011”、後藤正文が立ち上げた“未来について考える”新聞“THE FUTURE TIMES”、そしてベスト・アルバムの発売とツアー。ミュージシャンが矢面に立ち社会的な発言をし、行動することは時にリスクを伴うが同時にこの間、バンドの求心力を高めたのも事実だ。そしてファンのみならずアジカンの新たな表現が待望される中、いよいよリリースされるニュー・アルバム『ランドマーク』。今回はその誕生から、2012年のロック・アルバムとしての矜持をじっくり訊いた。

-今回のアルバムの制作モードに入っていったのはいつ頃で、どういうモチベーションからだったんでしょうか。

後藤:もう、震災直後に。まず、自分たちの使ってるスタジオのスケジュールが、ミュージシャンが引きあげちゃってとにかくガラガラで。当時、ライヴやコンサート全般、不謹慎だって言われてて、レコーディングも……いろいろあって人が入ってない、と。で、スタジオの救済も含めて“スタジオ入ろうや”って空気になって。特に何も“新しいアルバム作ろうぜ”って話もなく、“とにかく曲作りやってみようか”って、スタートさせたのがこのアルバムになっていったきっかけですね。でもそこでもう半分以上、曲書いちゃったんですけどね。

-その段階で半分以上っていうのは、驚きです。

後藤:もちろん、歌詞はなかったですけど、楽曲だけとにかくできてて。みんな昂ぶってたってのはあると思うんですよ、感情が。だから興奮して形になりやすくて、うん。

-そこでできて、アルバムに入った曲というと?

後藤:ほとんどじゃないですか? 逆になかった曲を選んだほうが早いよね。「それでは、また明日」と「踵で愛を打ち鳴らせ」は後で作りました。

喜多:「AとZ」と「バイシクルレース」もちょっと後かな。

-その時はアルバムに入れる入れないは考えずに?

喜多:考えずに。

-スタジオの救済っていうのは具体的な話ですけど、もっと本能レベルで“ここで止まってしまうとよくないな”っていう気持ちはありましたか?

後藤:家に一人でいるだけだと参ってたなというのはありますけどね。それでスタジオに来てメンバーと“あれどうなの? これどうなの?”とか話したりもしたしね。後はそういうのを多少なりともユーモア交えて笑えたりするっていう現場がないと……俺としてはキツかった。メンバーはどうだったんですか?

伊地知:まぁいろいろ考えながら制作するって感じじゃなくて、とりあえずやりたいっていうか、“作ってなきゃやってらんないや”って感じだったんで。でも始めはスタジオに行くのはイヤでしたけどね。集まって音出す気分にあまりなれなかったし、親戚で被災した人とかがいたりして、“ちょっと今、それどころじゃないんだけどな”って気持ちもありつつ。でも、僕、なんもできないからこっちにいて。それで、いざ入ってみるとそうではなかった。やってるうちに曲もできてきたし、今までは“アルバムどういうふうにしていこうか”みたいな話が後藤からあってからの制作スタートだったのに、こういうふうにアルバムができちゃうってこともあるんだなって思いましたね。

-喜多さんはいかがでしたか?

喜多:ちゃんとツアーが終わりきっていれば、その後“今後どうしていこう?”みたいな話もあったかもしれないですけど、震災があって、3月の終わりに本来だったら名古屋のホールでライヴがある予定だった時に、後藤と募金集めに名古屋の会場に行って。その時、震災後初めて後藤に会って。そしたら、意外ともう後藤は前向きに動き出してて、曲も自分で1曲インターネットで発表してたし。

後藤:あれ、前向きじゃないけどね(苦笑)。

喜多:いや、実際動いてて。で、“NANO-MUGEN、絶対やりたいよね”って話とかにもなって、“スタジオ押さえてあるから、なんかネタ考えといてよ”って話で別れたんです。その時、それまでは俺も“どうしようか?”って感じだったんですけど。車も出せないし、計画停電とかもあったし、家にいることが多かったんで、動けなかったんですけど、“ネタ考えといて”って言われて、地元のスタジオに一人で入ってネタやフレーズを考えたり。それで、久々にみんなと集まった時に、それぞれ持ってくるネタがいつもより豊富で。さっき言ってた興奮状態じゃないけど、勢いもあったから曲がなんとなく形になって。“今後どうしていこう?”って話もしないまま集まりましたけど、単純にセッションで曲を作れることが……曲ができる場があるのは嬉しかったですけどね。