Japanese
ASIAN KUNG-FU GENERATION
2015年03月号掲載
Writer 石角 友香
正面突破――プレイ・ボタンを押して聴こえたディストーショナブルなギター・リフ一発で、太字の"ロック"というデカい車が突進してきて自分はそれにノされてしまっていた、そんな感じだ。ガッツポーズをする暇もなく、ただ半笑いである。
まず音圧が違う。ザクザク刻まれるコード・カッティングの厚さも違う。そしてスネアから何からドラムの音が鼓膜をビリビリいわせるぐらいデカい。軽くはない8ビートでガソリンを食いそうな車体が断崖絶壁に向かって疾走するようなある種の重さもある。そう、このシングルのタイトル・チューンは、すでにアナウンスされているようにFOO FIGHTERS所有のロサンゼルスにあるプライベート・スタジオ"Studio 606"で録音、また同バンドの作品を数多く手がけるエンジニア陣と録音された純US産のサウンドなのだ。普段から何気なく読んでいた後藤正文のブログには、やれWEEZERが『Pinkerton』のレコーディングで使用したコンソールを使ってるとか、10年ぶりにギター・バッキングをダブルにしたとか、はたまた久しぶりにメンバー4人で部屋飲みして楽しかったとか(これ結構重要)、このシングル、そして来るべき『ランドマーク』以来となるニュー・アルバムへの期待が否応なく高まるドキュメントが満載だった。
そこに記載されている事柄から予想がつく音でもあり、曲でもあったのだが、ここまで真正面からゴリゴリのロック、もっと言えば今や何が"それ"なのか誰も根拠を持って説明できない"王道のロック"が鳴っている。それこそ、その根拠とやらを音で、曲でブッ飛ばす具体が鳴っているのだ。
3年前、東日本大震災後にホーム・グラウンドであるスタジオの名前を冠したアルバム『ランドマーク』をリリースし、一昨年はメジャー・デビュー10周年記念ライヴを横浜スタジアムで2日間に渡り開催。2000年代のロック・シーンにあって日本語のロックで、いわゆるロスト・ジェネレーションのリアリティをもって、普段音楽を聴かない層にまで、"あらかじめ失われた時代に自分たちの世代は何を歌い、どんな音を鳴らすのか?"を強烈に印象づけた彼ら。AKGを契機にロック・ファンになったオーディエンスの多さ、その影響力をあらためて目の当たりにさせたのが2013年だった。その後、後藤があたためていた一連のソロ活動を行っている間も、ある種、原点回帰的な新曲「スタンダード」を主催フェス"NANO-MUGEN"のコンピに収録するなど、バンドの胎動の兆しは見えていた。
そしてここ2年ほど、20代前半のバンドではKANA-BOONが最も知られているように、彼らの影響下にある若手も続々登場。今現在シーンのトップを走るバンドたちに"他の何でもなくバンドをやりたい"と思わせた張本人、それがASIAN KUNG-FU GENERATIONであることを実感する場面も増えた。実際、プロフィールに書かれていなくても新人バンドにインタビューするとどれだけ多くのバンドマンがAKGを通ってきたかがわかる。彼らの初期楽曲のビートや歌詞はそれぐらい、ティーンエイジャーにとって"発明"だったのだ。
そんな背景ももはや言わずもがなな感もある中、いよいよAKG自身がこれまでとは違う、しかし彼ら自身がロックの切っ先として触れた原体験を今の身体性で更新するような楽曲で、まさにタイトル通り"復活"を遂げようとしている。言葉で言うのは簡単だが、すでに確立したロック・バンドとしてのイメージやメッセージを一旦ぶっ壊すほどの気概と痛快さを現実に鳴らしてしまったASIAN KUNG-FU GENERATIONの覚悟は、彼ら自身を含むこれまでの日本のロックを新たな道へ牽引し得る。とにかく1度、聴いて欲しい。好きでも嫌いでも聴かなきゃ今年のロックを語れない、そんな一撃なのだ。
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
ニュー・シングル
『Easter』
[Ki/oon Music]
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2015.03.18 ON SALE
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