Japanese
ASIAN KUNG-FU GENERATION
2017年04月号掲載
ライター:石角 友香
バンド結成21年目の最初のアクションとしてASIAN KUNG-FU GENERATIONはニュー・シングル『荒野を歩け』を3月29日にリリースした。そして、結成20周年イヤーの締めくくりに彼らへのリスペクトが込められた初のトリビュート・アルバム『AKG TRIBUTE』も同日リリースされた。これは単にプロモーション的な事情による同日リリースなのか? といえば、勝手な想像ではあるが、そうじゃないと思う。アジカンが新たなディケイドに入る、そのタイミングで、彼らの音楽を聴いて直接・間接の影響を受けた、現在20代のバンド/アーティストがアジカンの楽曲をどうカバーするのか。その2作が並列されたとき、アジカンを軸にした音楽の広がりと個々の2017年のサウンドが窺えるというワクワクするシンクロニシティが秘められているからである。
アジカン、24枚目のシングル表題「荒野を歩け」は、4月7日から全国公開されるアニメーション映画"夜は短し歩けよ乙女"の主題歌として、後藤正文(Vo/Gt)が作詞作曲を手掛けた書き下ろし新曲。アニメは以前、アジカンの「迷子犬と雨のビート」を提供したアニメ"四畳半神話大系"のスタッフが再集結しており、キャラクター原案はアジカンのアートワークでお馴染みの中村佑介である。加えて作品の主人公である"先輩"の声は星野源。まさに今年だからこそ叶った新しいスタンダードな顔合わせと言えるのではないだろうか。
肝心の楽曲はというと、ひと言で言えば肩の力が抜けたパワー・ポップだ。前作の『ブラッドサーキュレーター』までが、いわばドラスティックな変化を体現したアルバム『Wonder Future』以降のモードだったとすれば、ここでいったん、日常的な光景――それは街の色合いや、時間帯による匂いや空気感が立ち上がるようなモチーフに材を取るという手法――を切り取っていることがひとつ目のポイントだ。優しい眼差しを向けながら、いつまでも胸の内にある自身の恒常的な青春感も浮かび上がらせるという作風やムードは、曲調は違えど、かつて『サーフ ブンガク カマクラ』で、音楽への追求心で固く縛られすぎたバンドのメンタルをポーンと解き放ったタームに近い印象もある。しかし、今のアジカンは別に追い詰められて解放を求めたわけじゃない。アジカンにしか鳴らせない夜の孤独の心地よさであったり、その気持ちを知る大人の目線から"スケートボード蹴って/表通り 飛ばす"女の子の、彼女にとっての正義や不安も包摂して描ける。
そして、雨上がりを思わせる澄んだギターの単音のイントロの瑞々しさ、抑えた調子で情景を歌う後藤の声の調子、タフだけれど、あまり圧のないアンサンブル、そうしたすべてが、ここ2、3年の間にバンドが"やっぱりギター・ロック・サウンドが好きだ"という素直な心持ちと、そのギター・ロック・サウンドをどう今、昇華するのか? という課題に対して、真摯に向き合った結果なのだと思う。"荒野を歩け"という、生き方に関するメタファーがこれほどストンと胸に落ちるサウンドはない。何か衝動に駆られて街を疾駆する少女、承認欲求と自前の言葉を持ち得ないことに板挟みになる少年。その"痛み"が彼らの足を進ませる。そしてその痛みは年齢を超えて、人々を共振させる。まさにアジカン節である。カップリングの「お祭りのあと」が、さらに新境地。喜多建介(Gt/Vo)と山田貴洋(Ba/Vo)の共作曲なのだが、日本的なものとグラマラスなニュアンスが相まった間奏のギターとコードの醸すムードの不思議さ、タフなアンサンブルにもかかわらず(!?)、投げ出されたままのエンディング。それはもしかしたら後藤がほんのりエロティックな歌詞を乗せたことによって、そうした構成に着地したのかもしれないが、喜多の甘く高い音域のヴォーカルと共に、今まで感じたことのないアジカン像が残る。こんな曲が生まれること自体、すごくバンドの状態がいいんだとしか思えないような曲だ。
アジカンという誠意が呼び寄せた13の解釈と13の希望が集うトリビュート・アルバム
アジカンの2017年を味わいつつ、初のトリビュート・アルバム『AKG TRIBUTE』に移行してみる。通常どのバンドでも"トリビュートされる"ということは、完全におまかせなわけで、アジカンのメンバー自身、楽しみに待っていた"だけ"だ。それは20年にわたってバンドを続けてきたことへの最上級のプレゼント、ご褒美のようなものだと想像する。さて、リスナーである私たちにとっては、アジカンの楽曲が存在し、それをいわゆる今、旬のバンドがカバーしているわけで、やっぱりプレゼントだという気がする。再度収録曲順に列挙すると、yonige「ソラニン」、04 Limited Sazabys「未来の破片」、じん「Re:Re:」、amazarashi「夏の日、残像」、Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)「リライト」、シナリオアート「迷子犬と雨のビート」、LILI LIMIT「ブラックアウト」、夜の本気ダンス「N.G.S」、BLUE ENCOUNT「アンダースタンド」、リーガルリリー「ムスタング」、never young beach「君の街まで」、the chef cooks me「踵で愛を打ち鳴らせ」、KANA-BOON「君という花」というラインナップだ。
基本的に原曲が持つギター・ロックのスタイルを踏襲しつつ、ラウドやエモ寄りのアプローチを行うフォーリミやブルエンのアレンジは、今の彼らの力量を改めて知る格好の手引きにもなっており、また歌詞に含まれるこれまでの自分への悔しさからの跳躍といった意味合いでも他の曲が考えにくいほどしっくりハマっている。言葉という表現で言えば、他者の言葉を歌うことが意外なamazarashiも、秋田ひろむという季節とそこから立ち上がる感情で稀有な才能を見せる作家である彼が「夏の日、残像」のカバーをしていることは非常に腑に落ちる。また、それこそアジカンの「荒野を歩け」の主人公に繋がるイメージが女性ヴォーカルのyonigeにもリーガルリリーにもあって、ラフなギター・サウンドのyonige、儚さを含むサウンドスケープのリーガルリリーと、音楽の志向性は違えど、女性が歌うことで、性別を超えた普遍性が立ち上がったり、同じ歌詞でも異性の感性が窺えるのも、カバーならではの面白みと言えるだろう。そして、アジカンとは異なるハイブリッドで複雑な構成――つまりはそのバンドやアーティストの個性なのだが――にリアレンジした、じん、シナリオアート、LILI LIMITのアレンジ力にも感服する。ポスト・パンク的なビートを消化した夜ダンのセンスは、ほとんど彼らのオリジナルに聴こえるほどの仕上がりだ。
アジカン直系のギター・ロックとは異なる文脈で言えば、ネバヤンの「君の街まで」での、西海岸サイケ・フレーバーが立ち上がるギターの音、しかし歌詞はまるで安部勇磨の語彙とあまり齟齬がない。また、アジカンやゴッチのソロのサポート・メンバーでもあるシモリョー(下村亮介)率いるシェフが、比較的最近の曲である「踵で愛を打ち鳴らせ」を最高に洒落たインディペンデントなサントラのように料理していることも、このオムニバスが音楽的に豊かなものになっている重要なキーだ。そして著名な曲をカバーしたKANA-BOONとCreepy Nutsの心意気は対照的な形で表現される。原曲に忠実なアレンジの中に平歌にコーラスを重ねたり、バンドの今を示すギター・リフを入れたKANA-BOON、対して、ラッパーとして自身の言葉をむしろメインにして「リライト」とは何なのか? を表現したR-指定の凄み。13曲いずれ劣らぬ素晴らしさなのだが、この2組のアプローチには特に心を震わされた。全13組、今現在の誠実な表現者たちの実力を知ることができる企画を超えた素晴らしいトリビュート・アルバムだ。
▼リリース情報
ニュー・シングル
『荒野を歩け』
NOW ON SALE
[Ki/oon Music]
amazon
TOWER RECORDS
HMV
【初回生産限定盤】CD+DVD
KSCL-2897~98/¥1,300(税別)
【通常盤】CD
KSCL-2899/¥1,000(税別)
[CD]
1. 荒野を歩け
2. お祭りのあと
[DVD]
1. 荒野を歩け Music Video
2. アニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』劇場予告
トリビュート・アルバム
『AKG TRIBUTE』
NOW ON SALE
KSCL-2896/¥2,913(税別)
[Ki/oon Music]
amazon
TOWER RECORDS
HMV
※初回仕様:デジパック仕様
1. ソラニン / yonige
2. 未来の破片 / 04 Limited Sazabys
3. Re:Re: / じん
4. 夏の日、残像 / amazarashi
5. リライト / Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)
6. 迷子犬と雨のビート / シナリオアート
7. ブラックアウト / LILI LIMIT
8. N.G.S / 夜の本気ダンス
9. アンダースタンド / BLUE ENCOUNT
10. ムスタング / リーガルリリー
11. 君の街まで / never young beach
12. 踵で愛を打ち鳴らせ / the chef cooks me
13. 君という花 / KANA-BOON
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