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INTERVIEW

Japanese

Organic Call

2025年07月号掲載

Organic Call

Member:ヒラタナオヤ(Vo/Gt) カワカミトモキ(Gt/Cho) タカハシシモン(Ba/Cho)

Interviewer:サイトウ マサヒロ

活動開始から8年を経て初の事務所所属を発表し、バンドの新章を歩み出したOrganic Call。6月25日にリリースされたニュー・デジタル・シングル「トーキョーフライデーナイト」は、ボカロ世代以降のポップ・サウンドが変化を恐れない彼等の現在地を象徴しながら、ロック・バンドとしてのプライドを手放さずにさらなるステージへと自身を押し上げている。来年2月に過去最大キャパシティで開催する"東京日輪音楽祭"、そしてその先にある夢に向けて、仲間たちとの旅は続く。

-今年の1月に、SHIBUYA FOWSによるマネジメント・チーム"YOZIGEN"への所属を発表しましたよね。活動開始から8年にして初の事務所所属となりますが、決断の裏にはどのような思いがあったのでしょう?

ヒラタ:これまで活動を続けてきて、なかなかそういうお声掛けを貰うタイミングがなかったんですよ。自分たちで何もかもやりすぎていたから、というのもあったんですけど。ただ、ここ数年は、自主だと辿り着けない場所があることを感じるようになってきて。タッグを組んでくれる人たちを探してたところで、YOZIGENに声を掛けてもらって、一緒にやることになりました。

-自主での体制でやれることはやり切ったと。

ヒラタ:もっとたくさんの人に知ってもらうためには、僕たち以外の力や第三者の意見も欲しいなと思って。たかが20代のバンドマンで、知らないこともまだいっぱいありますから。それを教えてくれる人に出会いたかった。

-そのなかでYOZIGENと惹かれ合ったのはなぜなのでしょう?

ヒラタ:今チーフ・マネージャーをやってくれている鈴木(慎哉)さんという方が、もともと下北沢RéGで働いていて、その頃から事務所のことを相談してたんです。その後、鈴木さんがYOZIGENをやることになったので、一緒にやろうと。YOZIGENにとっては初めての所属アーティストなので、一から一緒にチームを作っている最中って感じですね。

-以前から縁のある鈴木さんからの誘いだから信頼できたんですね。

ヒラタ:長い付き合いのある方ですから信頼感があったというのが、メンバーにとっても大きかったと思います。

-所属以来、活動にはどんな変化がありましたか?

カワカミ:第三者の意見を聞けるのが一番デカいです。自分たちだけで考えられる範囲にはどうしても限界があったし、現状それが確実にプラスになってると思います。あとは純粋に、金銭面でも助かるというか。車の運転とかも。

タカハシ:細かいところでもたくさん助けてもらってますね。

ヒラタ:音楽に、ライヴに集中できる環境になったっていうのが一番ありがたい。

-新たに挑戦できることの幅が広がった実感はありますか?

ヒラタ:来年の"(Organic Call pre.)東京日輪音楽祭"は川崎 CLUB CITTA'でやるんですけど、自主だったらこのキャパには挑戦できなかったと思いますね。やっぱり、赤字になったらバンドが背負うとなると、成功しそうなところにしか踏み込めない。もちろん今回も成功させるつもりでいますけど、リスクを背負って頑張ろうってことを考えられるようになりました。

-現在は6大都市ツアー"New Chapter Tour 2025"の真っ最中です。新章の幕開けを感じさせるタイトルですが。

ヒラタ:事務所に入ったからと言っても大きく何かが変わるわけではないんですけど、今年はこれからちゃんとチームで動いていくぞという1年にしたかったので。一から気持ちを入れ替えるようなタイトルにしました。

-各箇所で2組ずつゲストを招いていますが、ブッキングの狙いは?

ヒラタ:静岡公演に出演してくれたCloudy以外はみんな交流のあるバンドですね。繋がりのある、信頼してる友達です。

-現在はちょうど折り返し地点ですが(※取材は6月25日)、手応えはいかがですか?

ヒラタ:(バンドの状態は)今が一番いいですね(笑)。今が一番いいって言えなくなったらもう終わりだから、これを続けていこうっていう感じです。自分を納得させられて初めて、相手を納得させられるかもしれないラインに立てると思うので。それをしっかり感じられてます。

カワカミ:サポート・ドラムが今年の2月から変わってバンドとしても新体制なので、これからどうなっていくかという期待があって。1本ごとにグルーヴが絶対良くなってきてるし、バンドが仕上がってきてる感覚があるので、それをファイナルに向けてしっかり組み立てて、いいツアーだったなって言えるようにしたいですね。

タカハシ:最近はあまり遠征に行けてなかったんですけど、やっぱり待っててくれるお客さんがたくさんいて。対バンの友達や先輩からも刺激を貰えてるので、今のところすごくいい感じですね。

-東京以外の場所でライヴをやるっていうことには、やっぱりキャパシティ以上の意味がある?

タカハシ:そうですね。どうしても東京や関東近郊のライヴに来れないお客さんが、すごくいい反応をくれるので。時間をかけて遠い場所に行く価値があるなと思います。

-ツアーの中で、特に刺激を受けた対バン相手はいますか?

ヒラタ:初日の千葉LOOKで対バンしたthe paddlesの渡邊剣人(Dr)は2月まで僕等のサポートをしてくれてたので、共演できて嬉しかったです。次はツーマンとかで、ソールド・アウトさせたいな。あとは、静岡で初対バンしたCloudy。もちろん曲は知ってたんですけど、なんかヴォーカル(小柴タケト)がめっちゃ変なやつで面白かったですね(笑)。Androidのスマホを使ってて、それは別にいいんですけど、iPhone勢に向かって"リンゴのマークに10万払うとか損してますよ"って一生言ってて(笑)。人間性もしっかり鋭利で、媚を売らない感じがいいなぁと思いました。

タカハシ:同じく静岡にKAKASHIが出てくれたんですけど、僕の地元の先輩で、高校生の頃からお客さんとしてもバンド仲間としても活動のほとんどを見てきたんですよ。昔から知ってるバンドと一緒にやるのは刺激になりますし、身が引き締まりました。

ヒラタ:そんなに引き締まってた? 楽屋が家みたいになってて、結構ガバガバに見えたけど(笑)。

タカハシ:仲いいからね(笑)。でもライヴ中の気持ちは引き締まってた。

-様々な縁が詰まったツアーでもあるんですね。そして、6月25日にリリースされたニュー・デジタル・シングル「トーキョーフライデーナイト」もまさにニュー・チャプター突入と言えるような、新境地の楽曲です。

ヒラタ:わざとらしく今っぽさを取り入れてみたというか。前作の「コンビニエンスミュージック」(2025年3月リリースのデジタル・シングル)もそうなんですけど、ボカロチックな曲を書いてみようっていうブームが来てて、この曲も音のイメージから出発しました。もしかしたら今までOrganic Callを聴いてきた人は戸惑うかもしれないけど、もう今は僕が歌えばOrganic Callの曲になるだろうと思ってるので。音が新しくても、詞が皮肉っぽかったり、それでも最後にはちょっと上を向きたかったりっていうところに、嫌でも自分らしさが表れるから。表面的には新しくても、それでも変わらないOrganic Callらしさがある曲になりました。

-「コンビニエンスミュージック」も今作も、ポップな一面が強調された楽曲ですよね。

ヒラタ:これまでは、作曲する上で"いい曲を作ろう"、"好きだと思える曲を作ろう"以上のことは深く考えてなかったというか。今もその考えはありつつ、プラスアルファでどういう曲が今届くかとか、世の中の流れを見ながら作るようになりました。

-ただやりたいことをやるのではなく。

ヒラタ:はい。もちろんやりたくないことはやらないですし、Organic Callという枠組みの中で作るという意識はあるんですけど、"意外とこういうのも好きだったな"っていうのに気付きつつあるタイミングなのかな。バンドを長くやってるとどうしても凝り固まってきますけど、別に好きなものは1個じゃなくてもいいと思うので。

-その柔軟さを獲得できたきっかけはあるんですか?

ヒラタ:パソコンで曲を作れるようになったことかな。

カワカミ:スタジオで頭を抱えるよりも効率的に時間を使って整理した上で共有できるから、余裕ができましたね。

ヒラタ:コロナ禍でスタジオに入れない時期にパソコンや機材を一式揃えたんですけど、それが今になってバンドに活きてきてるのかなって。

-曲作りの過程が変わったことで、新たな発想が生まれるようになったんですね。これまでも同期の音を取り入れた曲はあったけど、あくまでバンド・サウンドの添え物という印象があって。それに対して、今作は生楽器と打ち込みがガッチリハマっています。

ヒラタ:純粋に、当時は作り方を知らなかったので。今は出したい音をアウトプットできるようになりました。