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"くさのねフェスティバル2023" 座談会

"くさのねフェスティバル2023" 座談会

千葉県佐倉市の野外ロック・フェス"くさのねフェスティバル"が今年も開催される。キャッチコピーは"佐倉はロックの産地です!"。BUMP OF CHICKENを筆頭に、Halo at 四畳半など、様々なロック・バンドが育った地であることからだ。市内のライヴハウス、Sound Stream sakuraを中心に街に根づいている文化を発信していこうと始まった本フェスは、今年で6回目の開催。Skream!では、くさのねフェスティバル実行委員会会長のシラハタノブユキと出演者3名による座談会を企画。"くさのねフェスティバル"の魅力や思い出、今年の見どころについて語ってもらった。

くさのねフェスティバル実行委員会会長/Sound Stream sakura店長:シラハタ ノブユキ
明くる夜の羊:カワノ ユイ(Vo/Gt)
Varrentia/Halo at 四畳半:渡井 翔汰
Organic Call:平田 真也(Vo/Gt)
Interviewer:蜂須賀 ちなみ Photographer:生田 大起

-佐倉市ってどんなところなんですか?

渡井:だいたいいつも"何もない場所"と答えています(笑)。

カワノ:あるとすれば、砂とか、森とか......。

平田:川もありますよね。あとは牛がいたり......。

渡井:"くさのねフェス(くさのねフェスティバル)"の会場の佐倉草ぶえの丘にはヤギもいます。

シラハタ:草ぶえの丘は、"緑豊かな自然の中で農業体験や生き物とのふれあいを通じて、子どもたちに豊かな人間性を育んでほしい"というコンセプトで作られた施設で、幼稚園や小学校での農村学習でよく使われているところなんです。"くさのねフェス"の会場として使用しているのは"第二キャンプ場"という1区画なんですが、他にはバラ園があったり、森の中を国内最大級のミニSLが走っていたりします。あと、市民の森というスポットでは、ココロオークションやHalo at 四畳半、BUMP OF CHICKENがアーティスト写真やMVの撮影をしていて。

渡井:佐倉がどんな場所なのかと言うと、自然が豊かなところなんですけど、僕らとしては、佐倉市と言えばサンスト(Sound Stream sakura)という印象が強いです。佐倉市出身の僕は高校生の頃から出演しているし、学校以上に青春の時間を過ごした場所でした。

カワノ:私は佐倉出身じゃなくて、高校から佐倉の学校に通うようになったんですけど、先輩がみんなサンストに出ていたので、私も自ずと出るようになった感じでした。

シラハタ:市内の学校の軽音学部とは関わるようにしているし、先輩がうちに出ているから後輩も一緒にやって来るというケースはたしかに多いと思います。カワノが高校の先輩に連れられてやって来たというのもそうだけど、平田は大学入学と同時に佐倉市に来たんですが、彼の入った軽音学部の何人かと店としてもともと交流があったので、彼を紹介してもらって、出会って。そういうサイクルが当たり前のようにあるんですけど、それがうちの店の個性というか、もしかしたら、傍から見たら普通じゃなかったところなのかもしれません。

渡井:僕、都内のライヴハウスに出るようになってから、サンストは特に繋がりの強いライヴハウスだったんだなと感じました。佐倉市の音楽文化にとってサンストの存在は大きいし、もっと言うと、シラハタさんありきですよね。シラハタさんを中心にサンストに出ているアーティストたちが繋がっていくことで、結束が強くなっていく。その結束が"くさのねフェス"にも繋がっている。

シラハタ:そもそもうちの店って、飯を食うのにもちょっと困っちゃうような場所にあるんですよ。打ち上げでどこかに飲みに行こうと思っても、できなくはないけど難しいから、だいだいいつも僕が焼きそばを焼いていて。"ないなら作ればいい"というスタンスでいつもやっているんですけど。

平田:僕らはその感じがすごく好きで。今やっているOrganic Callというバンドを結成して、東京を拠点に活動するようになってからも、サンストにはツアーでもツアー以外でもよく行っています。

シラハタ:このインタビューに参加してもらっている3人は、うちの店でよくライヴをしに来てくれている3人なんですけど、彼らが(サンストに)連れて来てくれることで、初めて出会えるバンドも多いんですよ。そういう機会を作ってくれるのが本当にありがたい。特に、Organic Callや明くる夜の羊と同年代の20代中盤のバンドは今すごく多くて、意識して見てないとよくわからなくなってしまうくらい、移り変わりも速いんですが、知っていくほど面白くなるし、人となりもだんだん見えてくるんですよね。そういった貴重で希少な機会をひとつひとつ受け止めながら、今年も"くさのねフェス"の制作に携わりました。なんなら、バンドマンならではの意見を貰うこともあるくらい、この3人のことは信頼していますね。

-では、ここからは"くさのねフェス"の話を。2017年に行政主催でスタートしたフェスなんですよね。

シラハタ:はい。会場の草ぶえの丘が2017年から佐倉市役所が管理する施設に変わったんですが、ある日、市役所の方から電話がかかってきたんです。"草ぶえの丘は自然が豊かだし、音楽が1日中鳴っているようなイベントができたら素敵だと思うんだけど、協力してもらえないだろうか"と。

-市役所からフェス立ち上げの話が挙がったということは、もともと市単位で、"音楽を大切にしていこう"、"文化事業に力を入れていこう"という方向性があったんでしょうか?

シラハタ:佐倉市が市制施行50周年を迎えた2004年が、ちょうどバンプ(BUMP OF CHICKEN)が結成10周年を迎えた年で、そのときに佐倉市民体育館にバンプのリスナーを迎えて、フリー・ライヴをやったんですよ。

渡井:盛り上がりすぎて、床が抜けて中断したライヴですよね?

シラハタ:そうそう。中断したけど、なんとか最後までやって。そのときバンプを呼んだのが当時の市役所の職員の方なんですが、今"くさのねフェス"にはその後輩にあたる方が携わっているので、音楽やバンプの偉大さが先輩から引き継がれているというのはあると思います。佐倉市出身と謳っているバンプが、バンド・シーンにおけるシンボルのような存在になっていったこともあり、佐倉からロックの文化をもっと発信していけたらいいんじゃないかと、行政目線ですごく考えてくれているように感じますね。

-なるほど。

シラハタ:で、2017年に初めて"くさのねフェス"を開催したところ、思った以上にたくさんの人が来てくれて。初めてのことなのでもちろん改善すべき点もあったんですけど、続けていったほうがいいという意見が多かったので、続けていくことになり、翌年の2018年までに実行委員会を作り、2回目以降は民間組織で運営していくことになりました。