Japanese
ASIAN KUNG-FU GENERATION
2016年11月号掲載
Writer 本間 夕子
バンド結成20周年、人間に喩えるならば20歳という大きな節目を迎えたASIAN KUNG-FU GENERATION(以下:アジカン)が挑んだのは2004年にリリースした2ndアルバム『ソルファ』の再レコーディング。つまりアルバム1枚、収録された全12曲を丸ごと録り直すという実に大胆なトライアルだ。
その理由について後藤正文(Vo/Gt)は"『ソルファ』ってアジカンの中で一番売れたアルバムだし、今でも『ソルファ』が一番好きって言ってくれる人がたくさんいるんですよ。ただ、自分が誰かに「聴いてよ」って渡すときに選ぶかといったら、正直そういう作品ではなくて。やっぱり、どこか心残りがあるんですよね、歌とか。もうちょっと時間があったら歌えたな、みたいな気持ちがあったので、できたら録り直しをしてみたい。今だったらできるんじゃないかなって"と明快に語る。
アジカンにとって代表作とも呼ぶべきアルバムだからこそ自分たちが心から納得のいくものに仕上げたい。裏を返せば心残りのある作品を代表作とは呼ばせたくないということでもあるだろう。結成20周年のアニバーサリーに乗っかった話題性先行の企画ではなく、音楽家としての純粋且つ実に真っ当な動機に裏打ちされた12年越しの念願成就。込められた熱量の高さは完成した本作を聴けばはっきりとわかる。ただし、そのアイディアを思いついたのが昨年リリースの最新アルバム『Wonder Future』制作の真っ最中だったこともあり、メンバーには当初、笑って流されてしまったというエピソードも聞いた。すぐには足並みが揃わないところ、後藤が主導権を握っているようで意外なほど民主主義なところ、4人4様の個性とスタンスがでこぼこしながらも不思議と噛み合ってアジカンならではの音楽が生み落とされていくところ、そうした彼ららしさはおそらく結成当時から変わっていないはずだ。
"「ASIAN KUNG-FU GENERATIONが作った」アルバムだと思うんだよね"――2004年当時、『ソルファ』リリースに際してのインタビューで後藤が口にしたこのてらいないひと言が今でも強く印象に残っている。"ここにきて「いいバンドだな」と思えたのが大きくて。この人たちと音楽をやってる以上は大丈夫。自分も楽しいし、きっと誰かの心を動かしたりできる音楽を作れるんじゃないかなって。アルバムの作業をしていくうちにさらに濃くそう思えるようになったんです"とも彼は言っていた。
遡ること20年前の1996年、大学の音楽サークルにて結成されたASIAN KUNG-FU GENERATION。2002年にインディーズ・レーベルからリリースしたミニ・アルバム『崩壊アンプリファー』がキューンレコード(現Ki/oon Music)の耳に留まり、異例の再リリースで2003年4月、メジャー・デビューを果たした。その後、5月には初のワンマン・ライヴを達成。『未来の破片』、『君という花』という2枚のシングルを経て、11月に満を持してリリースした1stフル・アルバム『君繋ファイブエム』はASIAN KUNG-FU GENERATIONの名を広く知らしめ、各所で高い評価を得ることとなる。彼らの歴史をざっと追いかけただけならば、そこにはなんの屈託もないように思えるかもしれない。だが、2004年当時の後藤は"正直言うと、音楽が楽しいって心から4人で思えてた時期って今までほとんどなかった"と振り返った。大学卒業後、会社勤めをしながら、先が見えないままバンドを続けていたどん底の時代。メジャーの怒濤に揉まれ、存在意義を自身にも問うては格闘を重ねた『君繋ファイブエム』を経たからこそ、辿り着いた『ソルファ』なのだ。
年明け早々から初のワンマン・ツアーを敢行し、夏にはツアー1本分にも匹敵するほどの全国各地のフェスに出演。その合間を縫うようにして楽曲制作、とデビュー2年目となる2004年に突入すると彼らはますます多忙を極めた。とはいえ、デビュー当初の右も左もわからないような忙しさではすでにない。ライヴに曲作りにとひたすら音楽にまみれながら日々を過ごす彼らは傍目にも活き活きとして見えた。そうした日々の中で、自分たちのいいと思うものがいい音楽なんだという気づきが生まれ、徐々に確信へと変わっていったのだろう。バンドに揺るがぬ軸が根ざし、文字どおり"音"を"楽"しむことを謳歌できるようになったのがこの時期だった。そのリアルな手応えが『ソルファ』というアルバムに結実し、それが後藤に"「ASIAN KUNG-FU GENERATIONが作った」アルバム"、"「いいバンドだな」と思えた"と言わしめたのだと思うといっそう感慨深い。結果として2004年はアジカンの歴史の中でも最も多作な年となった。ちなみに"ソルファ"とは"ドレミファ音階"を意味する英単語"sol-fa"だ。ただひたすらに音楽のことだけを考えて作ったアルバムだから『ソルファ』、こんな幸せなタイトルが他にあるだろうか。
『ソルファ』という名盤に備わったポテンシャルを彼らの"今"がさらなる高みに引き上げた
一方で『ソルファ』はアジカンがサウンド的変革期を迎える直前の、最後の音源でもある。当時、アルバムをリリースするタイミングに相前後して使用する機材や楽器、また、彼らのライヴを支えるスタッフもがらりと変わった。当然、音に対する意識もさらに研ぎ澄まされる。そのあたりに着目しつつ、今回、再レコーディングされた『ソルファ』とオリジナルの『ソルファ』を聴き比べてみてもいいだろう。しかしアレンジ面ではほとんど突飛な変化はなく、むしろ原曲を踏襲する形で演奏されているのが面白い。"気張って構えたりせずに、今の体力でそのまま録ればいいんだよって。アレンジなんて変わってなくていいし、使ってる機材とか、音に対する考え方とか、この12年間の経験そのままに発揮すれば絶対良くなるはず。やってみたら、やっぱりそのとおりになりました"とは後藤の弁。
ただ、"『ソルファ』の曲はわりとライヴでやり続けてるものも多いので、その中で変化した部分はわりと採用してます。顕著なのは「Re:Re:」(Track.9)ですけど"と山田貴洋(Ba/Vo)が言うとおり、12年という月日のダイナミズムも随所に反映されている。Track.1「振動覚」のイントロで入る掛け声やTrack.12「海岸通り」の美しいコーラス・ワークなど耳を澄ませば自然と口角が上がるような嬉しい発見が散りばめられてもいる。より幅と深みを増した後藤の歌、特にTrack.7「ラストシーン」の柔らかなハイトーンは必聴だ。
大切なのは猫だまし的に聴き手を驚かせることでも、懐古趣味な原点回帰でもなく、『ソルファ』というアルバムに備わったポテンシャルを彼らの"今"でさらなる高みに引き上げること。"1回出した作品をまた録り直して出せるって、もうご褒美ですよね"と伊地知潔(Dr)のしみじみとした言葉に、たしかにこれは真の意味で贅沢な試みだと思った。
ひとつだけオリジナルの『ソルファ』と明らかに異なっているものがある。曲順、もっと言えば「ループ&ループ」(※今作ではTrack.3/オリジナルではTrack.12)の位置だ。曲順に関しては当時、かなり意見が割れたらしく、やはり「ループ&ループ」の置きどころが難しかったという。曲調的にはアルバムの導入部を盛り上げるに相応しいものの、そうするとシングル曲で前半が固められてしまう。当時の観点からすれば聴き始めに既発曲ばかりが続くのはいかがなものかと考えてしまうのも無理はない。"今なら素直に前にしようって言えるんですけどね。変なところで捻くれてたから、昔は。今はそのへん素直になったと思いますよ、みんな"と喜多建介(Gt/Vo)が笑う。もちろん好みは人それぞれ。オリジナルを聴いたことがある人は今回の作品を聴いてどう印象が変わるのか、ぜひその耳で確かめてみてほしい。
11月30日に今作『ソルファ』がリリースされたあと、12月17日からは年をまたいで全国5ヶ所7公演のツアー"ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016-2017 20th Anniversary Live"もスタートする。結成20周年の総決算をしかと見届けつつ、その先にある未来をワクワクと待っていたい。
▼リリース情報
ASIAN KUNG-FU GENERATION
リレコーディング・アルバム
『ソルファ』
2016.11.30 ON SALE
[Ki/oon Music]

【初回生産限定盤】CD+DVD
KSCL-2809~2810/¥3,700(税別)
※初回仕様:透明スリーブ&銀箔
※前景が印刷された透明スリーブを外すと隠れていた奥の部分が出現
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【通常盤】CD
KSCL-2811/¥2,913(税別)
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[CD]
1. 振動覚
2. リライト
3. ループ&ループ
4. 君の街まで
5. マイワールド
6. 夜の向こう
7. ラストシーン
8. サイレン
9. Re:Re:
10. 24時
11. 真夜中と真昼の夢
12. 海岸通り
[DVD]
『ソルファプラス』- a day with AKG -
1. 「夕暮れの紅」Recording Documentary
2. 「夕暮れの紅」Music Clip
▼ツアー情報
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2016 - 2017 "20th Anniversary Live"
2016年12月17日(土)幕張メッセ・イベントホール
OPEN 17:00 / START 18:00
2016年12月22日(木)神戸ワールド記念ホール
OPEN 18:00 / START 19:00
2016年12月23日(金)神戸ワールド記念ホール
OPEN 16:00 / START 17:00
2016年12月27日(火)名古屋日本ガイシホール
OPEN 18:00 / START 19:00
2017年1月10日(火)日本武道館
OPEN 18:00 / START 19:00
2017年1月11日(水)日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
2017年1月14日(土)福岡国際センター
OPEN 17:00 / START 18:00
【チケット】
全席指定 ¥6,480(税込)
※高校生以下対象当日会場にて¥1,000 キャッシュバック
※3歳以上チケット必要
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