Japanese
NANO-MUGEN FES. 2011
Skream! マガジン 2011年08月号掲載
2011.07.17 @横浜アリーナ
Writer 島根 希実
“一時はナノムゲンできないかもって。ミュージシャンが音楽やるなんて不謹慎だって言われて。でも実際は、ミュージシャンが使う電気なんてたかが知れてて。でも、そういう電気の云々以前に心が折れて。音楽鳴らす意味あんのって? ぐらんぐらんになった時期で。でも、大切なのは自分がどうしたいか。だからこのフェスだけは成功させたい。俺がこのフェスで立ち直りたい。みんなもちょっとでも軽くして帰ってください。”
これは、この日のMCでの後藤正文(Vo&Gt)の言葉である。そう、2年ぶりの開催となった今年の「NANO-MUGEN FES.」は、主催のASIAN KUNG-FU GENERATIONにとって、そして後藤にとって、例年までとは異なる意味で、とても大きな意思の下に行われていたのだ。
今年は、7月16日、17日の2日間に渡り、横浜アリーナにて開催された「NANO-MUGEN FES.」。今回Skream!は、後半の2日目に参加してきた。
早くもスタンディング・エリアは最後尾ブロックまで埋まっている。さすがはBOOM BOOM SATELLITES。青のライトで真っ青に染められたステージから聴こえてきたのは、「DIG THE NEW BREED」のノイジーで冷血な始まり。響き渡る硬質な音が、その音圧が増すにつれ、客席の地鳴りのごときジャンプはどんどん強くなっていく。そして、音圧を切り裂く「MOMENT I COUNT」と「KICK IT OUT」でこれでもかとばかりに、ギアを上げていく。なんとハイ・ヴォルテージなステージだろう。ラスト「STAY」では、眩しい音、眩い音像が会場を席巻し、儚くも美しく締めくくってくれた。
サウンド・チェック中から、騒がしいのはゲイリー・ビッチェ。“アリーナー! イヤン! チ○ポ×7 、ゆきちゃーん!”などなど。開演前からエンターテイメントちょちょぎれちゃってるモーモールルギャバン。が、いざライヴが始まってみれば、この巨大な空間に負けじとするパワーでギンギンといったご様子。「Hello!! Mr.Coke-High」「ユキちゃんの遺伝子」「ユキちゃん」で、ド直球の愛とピュアネスを叫ぶ! ラスト「サイケな恋人」では“パンティー”のコール&レスポンス。真っ直ぐすぎて変態路線へ両足突っ込み気味のモーモーの純愛ソングは、超ド級のポップ・センスと供に、横アリで大爆発!!
2日間通して、アコギ一本でステージに立ったのは星野源ただ一人だった。彼のステージにあるのは、日常への寂しさと哀愁、人生への敬愛と僅かな焦燥とでも言おうか。日々の中で、時に空虚な虚しさに捉われるこの身を見透かすように、心の内を締め付けてくる。どこか裏寂しさも漂うステージ、その根底にあるのは“でもね、全部、生きてるからあるものなんだよ。”という静かな希望だ。
昼時を蹴散らしたWE ARE SCIENTISTS 。アッパーなテーマ・パークを作り上げたTHE YOUNG PUNX! の後は、日本ロック界の超大物、佐野元春がバンドと共に登場だ。彼のステージは、なんといっても“歌”が素晴らしかった。“歌”が生きていた。哀愁のある“みんなのうた”とでも言おうか。大地にしっかりと根を張る大木の如く、強くぶれない言葉たち。不確かなものを、確かであると信じさせる魔法。
これは“人を生かす歌”だ。歌が人を呼び込む、歌が愛を呼び起こす。最後のスタンディング・オーベーションのような歓声と拍手がそれを証明してくれた。
ナノムゲン常連組、皆勤賞のストレイテナーは、瞬間のヴァイブスが幾度も噴射されるような爆発力と、一本の糸を紡ぎ壮大な造形物を作り出してみせるような繊細さのバランスが絶妙な、最後まで緊張感の途切れることのないステージだった。
MANIC STREET PREACHERSは、キャンセルとなってしまった2年前の悲しみも含めて、全てを吹き飛ばす気合いと信愛のステージを見せてくれた。兎に角、あまりに豪華なセット・リスト。息つく暇もなく次から次へと、懐かしさと感動の波が襲いくる。横浜アリーナを飲み込まんとする迫力と、他をしのぐスケールのステージは、ダイナミックな中に同フェスへの真摯な姿勢も垣間見えた。
さぁ、ラストに登場するのは勿論ASIAN KUNG-FU GENERATION。無機質に同一のテンポを刻む電子音が鳴り続ける中、突然ピタリと音が止むと、同時にライト全開! ギター全開! 「リライト」全開! 爆発的な歓声と同時に地響きの如く跳ねる横浜アリーナ。そのまま「Re:Re」とくればもう、歓喜の声はそのメロディに乗るウェーブのようだ。虹色のライトをバックに歌う「マジックディスク」は、ここまでの全アクトをひと繋ぎにする、全てが一つの円となるような希望一色の世界を。
冒頭に挙げた、後藤がその胸の内を明かしたMC明けの「センスレス」は、心が飲み込まれていくも、“闇に火を 心の奥の闇に火を”の言葉を受け、天に向けて高々と突き挙げられる拳は、そこに聖火を灯すようであった。そして「アンダースタンド」でもって更なる光を! そのまま「君という花」で盛り上がりは最高潮へ。ラスト・ソングは「転がる岩、君に朝が降る」。迷いながら、進もうとする祈りの歌を、目を見開いて歌う後藤の姿が印象的だった。アンコールは、「ループ&ループ」「新世紀のラブソング」。ループする日常と、世界を厳しく見据える愛の歌で締め括る今年のナノムゲンは、冒頭で述べた通り、やはり特別だったように思う。
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