Japanese
THE BACK HORN
Skream! マガジン 2019年09月号掲載
2019.08.12 @新木場STUDIO COAST
Writer 石角 友香
12回目にして初の夏開催となった"マニアックヘブン"。今回は福岡、東京、岡山の3ヶ所の中から東京公演をレポートする。新木場に着くと、すでにグッズ購入済みのファンが腹ごしらえしていたり、STUDIO COASTに近づくにつれてイベント名を記したノボリが見えてきたり、中に入るとメンバー発案のドリンク、イラスト原画やライヴ写真の展示など、場外場内ともに"マニアックヘブン"らしいお祭り感が満載。そしてフロアは1階奥まで満員、パツパツ状態だ。いかにこのレア選曲のライヴが愛されているかがわかる。
それにしても昨年、結成20周年を迎えたキャリアを当初から追ってきたファンだけじゃなく、若い層も循環しているというのに、アルバム曲やシングルのカップリング、インディーズ時代の楽曲まで、歓声やため息が上がるリスナーの深度には驚かされる。と、同時にもし初見の曲だったとしても、演奏と曲そのもので引き込むことができるというのも、今のTHE BACK HORNだからこそではないかと思う。
どこか昭和のアングラ劇団風書体の"マニアックヘブン"のバックドロップを背後に従え、戦闘的なイメージのSEに乗せてメンバーが登場。オーディエンスが前方に詰め掛ける様はひとつの生き物のようだ。意気揚々と登場したメンバーがグッと引き締まった表情になり、菅波栄純(Gt)のアルペジオが響き渡り、1曲目の「野生の太陽」が荘厳なムードを作り出す。ギター、ベース、ドラムのみで作り出されるアップデートされた音の壁はバンドがゼロ年代に参照元のひとつにしていたMUSEを想起させた。続く「セレナーデ」、軽快なビート感の「楽園」すらも重厚でありつつ、選び抜かれた音で組み上げられた建造物のようで、しょっぱなからドラマチックな音像に圧倒されることに。
嵐のような冒頭のブロックに続いて、個人的な白眉だったのが「8月の秘密」、「幸福な亡骸」という、真夏、そしてごく自然に70余年前の戦争の記憶を呼び起こす8月という季節に恐ろしくハマる選曲。音源より訥々と歌う山田将司から感じる、涙も乾いてしまったような悲しみ。菅波も岡峰光舟(Ba)も松田晋二(Dr)も選び抜いたフレーズを繊細に奏でる。特に静謐な楽曲での岡峰のメロディアスなフレーズや和音は、物語をより鮮明に立体化するようで、思わず耳をそばだててしまう。
今回は初めての夏開催で、夏にちなんだ曲だけで組んだセットリストであることを松田が説明していたが、実際、胸に迫るものがリアルだ。残酷なほど明るい夏の空に意識が遠のくような感覚が、演奏に重なっていくようだった。そんな作品世界を噛みしめるようなフロアの集中力も素晴らしく、バンドとファンの信頼関係を確認できるのも"マニアックヘブン"の美しい側面なのだと思う。ヨーロッパ的なメロディと歌謡の強さを感じる「虹の彼方へ」がグッと骨太な演奏で、プログレッシヴなアレンジにも磨きがかかっていたのも、2019年の今、聴く醍醐味に満ちていた。
メンバーは"こんなマニアックな選曲で盛り上がってくれてありがとう"と言うけれど、"この気持ちや感情をこの言葉と音に落とし込めるのはTHE BACK HORNだけなのだ"というレパートリーが続くのだから、むしろ心が震える場面は必然的に多くなる。「自由」の冒頭の歌詞に、鎖に繋がれた犬を解き放ったが、彼はその場を動かなかったという表現があるが、こうした逆説や矛盾を丁寧に描くことでしか、本心から前進したと思えない――ここにTHE BACK HORNへの圧倒的な信頼がある。また、レゲエ・ビートの「甦る陽」や、フォーク~ニューミュージックのメロディを想起させるような「水芭蕉」といった、ジャンルに拘泥しない曲作りを改めて知るのも楽しい。しかも「水芭蕉」の2サビ後のブリッジ部分に溢れる実験的なアンサンブルは今の力量だからこそ、より意図が伝わった印象もある。
終盤は一気に真夏の狂気や衝動に振り切っていく。山田のトーキング・ヴォーカルが散弾銃のように放たれる「太陽の仕業」から、ステージ上もフロアもさらに加速していく。何かが崩落するような体感のイントロから16ビートに突入し、ジャンプし、多くの手が挙がる。菅波のミュートしたカッティングと岡峰のスラップでグルーヴが深まり、サビではシンガロングが巻き起こる「導火線」。山田はフロアに何度もマイクを向ける。
そして本編ラストを前に、今日のライヴへの感謝とともに新作『カルペ・ディエム』は最も4人が深く関わり、人生をぶっこんだつもりだと山田が語る。"マニアックヘブン"の濃厚さにこれだけヴィヴィッドに反応するファンに向けて、期待してくれて構わない、いや、期待を上回るアルバムが完成したという報告に思えてならなかった。ラストはひとりひとりの孤独を肯定し、闇の中で光る命を象徴するような「蛍」が、再会を誓うように精一杯鳴らされた。夏だからこそ、染み入るようなレパートリーをこれほど持っているバンドは稀有なのではないか。本編ラストは大人と呼べる年齢になった彼らが描いた近作『孤独を繋いで』収録の「夏の残像」。見事な構成の本編だった。
フロアから上がってくる熱気に空調が追いつかないようだが、アンコールを求める声は止まない。そこへ現れた菅波はベース、岡峰はギター、山田はドラム・セットに位置し、演奏を始める。そして松田が最後に現れ、朗読する。楽器をスイッチしての「天気予報」はリリカルな内容であること以上に、バンドの状態の良さを印象づけた。さらには目下の新曲「心臓が止まるまでは」で、民話世界とEDM以降のサウンドやドロップの手法を接続し、しかもその斬新さがすでにファンにしっかり受け止められていることに驚いた。ニュー・アルバムは相当ぶっ飛んだ内容になってるんじゃないだろうか。
夏の曲で統一し、新曲も盛り込んだ濃厚な2019年の"マニアックヘブン"。この日最後に演奏したのはインディーズ時代の「さらば、あの日」。それぞれの曲の良さと、その時々の自分に向き合うこのバンドの誠実さが存分に伝わった。機会があればまた夏の開催を望む。
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