Japanese
THE BACK HORN × 9mm Parabellum Bullet
Skream! マガジン 2021年02月号掲載
2021.01.20 @昭和女子大学 人見記念講堂
Writer 石角 友香 Photo by 橋本塁(SOUND SHOOTER)/ 西槇太一
盟友 THE BACK HORNと9mm Parabellum Bulletが1月19日、20日の2日間にわたってスペシャルなライヴを敢行した。もともと"ARABAKI ROCK FEST."の20周年を記念して8人でステージに立つはずだったが、ご存知の通り昨年の同フェスは開催が見送られ、5月に東京で開催されるはずだった2デイズも延期。だが約8ヶ月の時を経て、ついにもともと東京公演の開催地である昭和女子大学 人見記念講堂でのライヴが人数の制限はありながらも有観客で実現。同時に配信も行われた。ここでは2日目の様子をレポートする。ちなみにアーカイヴは1月26日23時59分まで視聴可能なので、ネタバレしたくない人は視聴後に読んでいただければ幸いだ。
1日目は9mm Parabellum Bulletが先行、2日目はTHE BACK HORNの先行で約40分のステージに渾身の力を込めた両者。後半は8人全員と2バンドからふたりずつ、トータル4人のスペシャル・バンドが登場する、"鰰の叫ぶ声"の2部構成だ。
THE BACK HORNは冒頭から16ビートのセッションでスタート。意表を突く1曲目は「コワレモノ」。コロナ禍以降、さらに物事の善悪や人の評価を断定しがちな世界のムードを炙り出すような選曲。今刺さるメッセージ、音を研ぎ澄ませた演奏が彼らならではの世界観と相まって、この対バンの意味をさらに明確にする。歓声や叫びを上げられない代わりに長く拍手が続くリアクションも心にしみる。アッパーに畳み掛けるというより、重く真摯な内容を持つナンバーを選曲してきた彼ら。名曲「美しい名前」は常に死生観を日常に取り替えさせてくれる作品だが、今、嘘偽りなく誰の命も誰かにとってかけがえのないものであることを痛いほど実感できる。歌い終えた山田将司(Vo)が、"感情が乗りすぎて、泣いてばかりいることをこんなところで告白するのもなんだけど"と話していたが、ファンも同じだったんじゃないだろうか。加えて"ライヴに生かされていることに気づく"という言葉も。後半は「シンフォニア」でギアを上げ、「太陽の花」では彼らの宇宙観、自然観が浮かび上がる讃美歌のようなコーラスも素晴らしく、ラストはパンキッシュな「無限の荒野」で、大人になったタフさと、バンド大好きな少年性を同時に感じさせてくれた。このナンバーは"荒吐"できっと大盛り上がりするんじゃないだろうか。そしてその場にいる全員で"我 生きる故 我在り"と歌いたい。常に命と向き合う楽曲を生み出し続けるTHE BACK HORNの中でも、欺瞞を暴き、包容力を獲得するプロセスを描くような選曲が今の彼らの気概を伝えていた。
後半はスペシャル・バンド、鰰の叫ぶ声が"荒吐"の出囃子同様のSEで、まず8人全員が登場。山田の"改めまして、「荒吐20th SPECIAL」、よろしく!"の一声から、THE BACK HORNの「コバルトブルー」を演奏。さすがにツイン・ドラムは豪快だが、すべてが同じように倍の音量、アレンジじゃないのはお互いを知り尽くしている彼らならでは。岡峰光舟(Ba)と中村和彦(Ba)がフレーズの応酬をしたり、菅波栄純(Gt)がコード・カッティングし、滝 善充(Gt)がフレーズを弾いたりする場面も。山田(Vo)と菅原卓郎(Vo/Gt)のサビのユニゾンも、まっすぐな声質がしっくりハマる。THE BACK HORNのステージでは感極まった歌唱を見せていた山田も8人のステージはグッと楽しそうな様子だ。続いては菅原も含め3人がイントロをユニゾンする9mmの「ハートに火をつけて」。菅原の艶っぽいヴォーカル、そして山田もケレン味たっぷりに歌うのだが、今回の選曲がそうなのか、そもそも共通する世界観があるからか、両バンドの歌詞はふたりどちらが歌っても違和感がない。今回のステージは腕の不調を感じさせない滝の絶好調ぶりが戻ってきたというか、"重力から自由な滝 善充"完全復活を印象づける場面が続出。ステージ前方で膝をついてソロを弾きまくり、カメラが追えないほど動く。重めの菅波、切れ味の滝、ふたりのギター・サウンドが歪さも厚みも増していく。
続いてはこのスペシャル・ライヴの見ものである両バンドのメンバーをシャッフルした4人でのターム。"黒組"と称するメンバーは菅原、菅波、中村、松田晋二(Dr)。菅原が昨日のことを踏まえて"俺が喋りすぎるから白組が喋ることがなくなるって"と言うと、菅波が"じゃあ関係ないこと喋っとけば?"と振るも、バックドロップが"荒吐"で使用するものだと説明。松田が"「荒吐」を人見記念講堂に持ってきた感じだね"と言うと、菅原が"配信したことで東北の人にも観てもらえたのは良かった"と、やはり肝心なことを話す流れに。そこへ菅波が感心したように"卓郎っていい声だねぇ"と、キャラクター通りの発言で和ませる。ファンにはお馴染みだが、演奏とのギャップがすごすぎる。
ようやく演奏へ移ると、9mmの「Vampiregirl」。速すぎないBPMと菅波のカオティックなギターが色濃く感じられる。2曲目はTHE BACK HORNの「罠」。菅原が奏でる和音に菅波のフィードバックが重なり、そこからは全楽器、怒濤の畳み掛け。納得感があったのはこの歌詞が菅原に異様に似合うことだ。Aメロの不穏さから、締めの"優しさを信じ~わかりあって"の包容力。善悪のどちらも描きつつ理想や希望を表現する両バンドだからこそ、カバー合戦ではなく、メンバーのシャッフルが可能なのだろう。もっと聴きたいところだが、2曲で次は"白組"に交代。
山田、滝、岡峰、かみじょうちひろ(Dr)という"あまり喋らない方"を珍しく岡峰がMCで盛り上げているのもレアだ。しかしライヴの主だった意味は黒組がすでに話したあと。昨日は白組にかけて滝以外のメンバーは白のロンTなどを着ていたが、"滝君は黒しか着ないから、今日は白黒のシャツにしてきた"と岡峰。山田は"ロンTだと学生みたいだからシャツにした"と、結局THE BACK HORNのふたりしか話さないという流れに。9mmのステージでは基本喋らない滝とかみじょうは笑顔でMCのバックグラウンド的に音を発生させていた。
いざ演奏が始まると、言葉の何万倍もの熱量で縦横無尽にギターを弾き、動く滝。まずは9mmの「The Revolutionary」で、間奏ではフロントの3人がセンターの山田のもとに集まって、鋭いアンサンブルを聴かせる。山田が歌う"世界を変えるのさ"もまた似合う。ここまで言い切り勇気の湧く言葉選びは自身のバンドとはまた違うニュアンスだが、それが似合うのが大きな発見だ。勇猛果敢に攻める印象が続くTHE BACK HORNの「戦う君よ」に繋いだのもいい。滝とかみじょうというスキルの怪物が支えるとソリッドな聴感に変化して、それも痛快だ。
黒組も白組ももっと聴きたいところだが、大団円は再び8人勢ぞろいしての演奏。山田が"今年は「荒吐」が開催されることを祈ってます"と言えば、菅原は"今までと同じ形じゃないかもしれないし、これからも行きつつ戻りつつかもしれないけど、開催されたときには(今日のライヴが)良かったって発信してください"と、冷静さの中に熱さを内包した発言でまとめた。
日本的な音階とタンゴのようなメロディを伴う「刃」はまさに両バンドともに得意とする世界観。フロントに居並ぶギターふたり、ベースふたりが前に出てのプレイは壮観だ。菅波と滝が作るメタル由来なハーモニーも笑う場面じゃないが、楽しさが伝染してくる。また、中村が普段はスクリームやデス・ヴォイスで使っている低い位置でのマイクでシンガロングするというレアな場面も見ることができた。そしてラストは山田の"みんなありがとう! 元気でまた生きて会おうぜ!"というお馴染みのMCから、松田のドラム始まりで9mmの「Black Market Blues」という、カオス必至な選曲。怪しげなブラック・マーケットを表現する歌詞をシアトリカルに歌う山田のハマりっぷりも痛快だ。ベースのパートをふたりともあえて抜いて、オーディエンスのクラップが映える場面を作るなど、今この場でできることをステージ上もステージ下も楽しんでいる。そして自由すぎるのはギタリストふたり。8人のアンサンブルも堪能できるが、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーがどんな人種(!?)なのかがよくわかる。そして8人分の音の厚みはあるにせよ、メンバーが、そしてリスナーが好きなオリジナルの持ち味をしっかり残して、潔くエンディングに至ったのが素晴らしかった。
音楽が生きるパワーを供給してくれる経験はこのコロナ禍の中、何度も実感してきた。だが、この両バンドから得られるパワーはいい意味で実体を伴う印象を受けたのだ。癒し励まされるというより心身に筋力がつく感じ。勘違いでもいい。この興奮を日々に生かしたい。また、この2日間の願いがどうか今年の"荒吐"開催につながりますように。
[Setlist]
■THE BACK HORN
1. コワレモノ
2. ブラックホールバースデイ
3. 心臓が止まるまでは
4. 美しい名前
5. 瑠璃色のキャンバス
6. シンフォニア
7. 太陽の花
8. 無限の荒野■鰰の叫ぶ声(THE BACK HORN×9mm Parabellum Bullet)
1. コバルトブルー
2. ハートに火をつけて
3. Vampiregirl
4. 罠
5. The Revolutionary
6. 戦う君よ
7. 刃
8. Black Market Blues
LIVE STREAMING INFORMATION
"「荒吐20th SPECIAL -鰰の叫ぶ声-」東京編"
■アーカイヴ期間:
1月19日(火)公演:~1月25日(月)23:59
1月20日(水)公演:~1月26日(火)23:59
■チケット販売期間:
1月19日(火)公演:~1月25日(月)21:00
1月20日(水)公演:~1月26日(火)21:00
チケットはこちら
- 1
LIVE INFO
- 2024.12.23
-
DOES
Cody・Lee(李)
LiVS
ドレスコーズ
Cody・Lee(李)
RAY×BELLRING少女ハート
坂本慎太郎
原因は自分にある。
東京初期衝動
- 2024.12.24
-
羊文学
川上洋平([Alexandros])
藤巻亮太
ポップしなないで
CIVILIAN
Plastic Tree
yama
- 2024.12.25
-
UNISON SQUARE GARDEN
原因は自分にある。
ExWHYZ
サンドリオン
川上洋平([Alexandros])
豆柴の大群都内某所 a.k.a. MONSTERIDOL
シノダ(ヒトリエ)
ずっと真夜中でいいのに。
- 2024.12.26
-
BiS
いゔどっと
優里
Cwondo
LACCO TOWER
ネクライトーキー / kobore
UVERworld
Dannie May
- 2024.12.27
-
いゔどっと
"FM802 RADIO CRAZY 2024"
優里
TK(凛として時雨)
シノダ(ヒトリエ)
賽
Devil ANTHEM.
"TOKYO COUNT DOWN 2024"
ネクライトーキー / 3markets[ ]
ビッケブランカ
ExWHYZ
煮ル果実
神聖かまってちゃん
SANDAL TELEPHONE
ウソツキ
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.28
-
CENT
ザ・クロマニヨンズ × go!go!vanillas
the paddles
"FM802 RADIO CRAZY 2024"
TK(凛として時雨)
シノダ(ヒトリエ)
ADAM at
TENDOUJI
DJ後藤まりこ × クリトリック・リス
鯨木
Homecomings
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
モノブライト
BiS
THE YELLOW MONKEY
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI / PIGGS / Wang Dang Doodle / ゆっきゅん
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.29
-
"FM802 RADIO CRAZY 2024"
ADAM at
DIALOGUE+
Aooo
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.30
-
Dragon Ash × The BONEZ
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.31
-
Nornis / ROF-MAO / 葛葉 ほか
"第8回 ももいろ歌合戦 ~愛の大晦日~"
フラワーカンパニーズ
FINLANDS
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
大森靖子
9mm Parabellum Bullet×アルカラ
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2025.01.03
-
JIMMY EAT WORLD
- 2025.01.04
-
私立恵比寿中学
RAY×BELLRING少女ハート
いゔどっと
sajou no hana
PRIMAL SCREAM / ST. VINCENT / JIMMY EAT WORLD ほか
- 2025.01.05
-
RAY×BELLRING少女ハート
PRIMAL SCREAM
Base Ball Bear
WEEZER / MANIC STREET PREACHERS / DIGITALISM ほか
PIGGS
- 2025.01.06
-
THE JESUS AND MARY CHAIN
- 2025.01.07
-
WEEZER
PRIMAL SCREAM
GANG PARADE × 寺中友将(KEYTALK)
レイラ
- 2025.01.08
-
あいみょん
MONOEYES ※振替公演
WEEZER
THE YELLOW MONKEY
- 2025.01.09
-
OKAMOTO'S
ずっと真夜中でいいのに。
米津玄師
あいみょん
MONOEYES ※振替公演
the paddles
四星球
NOIMAGE
reGretGirl
RELEASE INFO
- 2024.12.25
- 2024.12.26
- 2024.12.27
- 2024.12.28
- 2025.01.01
- 2025.01.06
- 2025.01.08
- 2025.01.10
- 2025.01.12
- 2025.01.14
- 2025.01.15
- 2025.01.17
- 2025.01.20
- 2025.01.22
- 2025.01.24
- 2025.01.29
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ST. VINCENT
Skream! 2024年12月号