Japanese
THE BACK HORN
Skream! マガジン 2018年11月号掲載
2018.10.01 @新宿LOFT
Writer 石角 友香
"結成当初はお客さんがどれだけ引いてるか? に燃えていた。それぐらい人間のドロドロした部分も汚さも表現してきた"(山田将司/Vo)、"それが今や(お客さんと)同じ気持ちっていうか、わかるようになってる"(菅波栄純/Gt)というMCをライヴ中盤にしていた彼ら。THE BACK HORNの強み、代替不能な個性を示唆する言葉だ。結成20周年をインディーズ時代から最新シングルまで、あらゆる時代の楽曲で祝う"祭り"が、今回のワンマン・ツアーの趣旨。全国20ヶ所のツアー中、一度しか演奏しない曲も盛り込まれ、会場ごとに異なるセットリストが予定されている。そのキックオフとなる新宿LOFT公演には、インディーズ時代より彼らを知る層から20代の若いファンまで500人に及ぶファンが詰め掛け、THE BACK HORNの表現世界と貴重なキャパシティでのライヴ・パフォーマンスに全力で応えた。
ツアー中ゆえ、曲順やセットリストの詳述は避けるが、新宿LOFTと言えば岡峰光舟(Ba)の元バイト先で、岡峰が山田、菅波、松田晋二(Dr)と出会った場所であり、山田、菅波、松田にとっては、プロのバンドとしてのスタート地点だ。が、そうした感慨を超えるほど、500人キャパのライヴハウスでも近年の『運命開花』以降のモダンなサウンド・プロダクションは徹底されており、4人の声や楽器が見事なバランスで鳴らされるスキルとメンタルの進化に、THE BACK HORNの尽きない好奇心と更新されるセンスを見た。
時代を網羅することで、逆に現在のアレンジ力が証明されることも今回のツアーの醍醐味のひとつで、聴き慣れたメジャー・デビュー曲「サニー」での菅波の裏拍のギター・カッティングの確かさ、青さを滲ませる歌詞に感じる彼らの不変の世界が、世代を越えてまさに共鳴する様はファンでなくても心を揺さぶられるだろう。さらにインディーズ1stアルバムのタイトル・チューン「何処へ行く」の"孤独なふりをすんな でも孤独をかみしめろ"というフレーズに、背伸びじゃない、今の彼らだからこそ放つことのできるニュートラルな強さを感じた。ちなみに廃盤になっていたインディーズ時代の3作品(『何処へ行く』、『甦る陽』、『風船』)を再録した"ニュー・アルバム"『ALL INDIES THE BACK HORN』も、10月17日にリリースされる。音源との違いや共通点を楽しむのも一興だ。
また、THE BACK HORN流にラップ/ヒップホップを解釈というか、今どきの新世代ジャズ的な生音ヒップホップに通じる「コワレモノ」での松田のキック&スネア、菅波のサンプリング的なギター・リフは、この曲が作られた当時よりさらに研ぎ澄まされた印象。菅波が"神様だらけの"とコールし、"スナック!"とフロアからレスポンスが返る。この曲でコール&レスポンスをするのがいかにも彼ららしい。あとで"コール&レスポンスもやれるバンドになった"と松田が笑いを誘っていた。さらには勇敢と言えばこのメロディというほど、ファンの気持ちが束ねられていくライヴ鉄板曲「コバルトブルー」もプレイされたし、作家 住野よるの連載小説"この気持ちもいつか忘れる"とお互いにインスパイアを経て作られ、ライヴ初披露となった最新楽曲「ハナレバナレ」も盛り込んでくる。さらにここに書き切れない、時代や、多彩な気持ちの色合いに寄り添う曲など、アンコールを含め全20曲。これまでバンドとファンが生きてきた20年を余すことなく全力で肯定したい――このニュアンスが2019年2月8日に開催される自身3度目の日本武道館公演でさらに開花することは、おそらく間違いないだろう。
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