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INTERVIEW

Japanese

THE BACK HORN

2022年04月号掲載

THE BACK HORN

メンバー:山田 将司(Vo) 松田 晋二(Dr)

インタビュアー:石角 友香

コロナ禍突入以降もその都度、新曲で意思表示してきたTHE BACK HORN。発端となった「瑠璃色のキャンバス」から最新の先行配信曲「ユートピア」までの流れと、アルバムならではの多彩なジャンル感やメンバーおのおのの個性が際立つ新曲、そしてまだ先のことはわからないけれど、必ずこの曲たちを連れてオーディエンスに会いにいくという最終曲「JOY」の音楽的な新しさ。世の中に激震が走るとき、素直に自分に向き合い、バンドの新しいあり方を開拓していく4人の人間力が発揮された名作だ。今回は多くの楽曲を手掛けた山田将司と、作詞面で大きな役割を担った松田晋二に話を訊いた。


何も起きない日常だけど、それが幸せだというようなことを 自分はあまり書いたことがなかった


-まずアルバムの起点についてうかがいたいのですが。

松田:実際に取り掛かったのはストリングス・ツアー("THE BACK HORN「KYO-MEIストリングスツアー」feat.リヴスコール")が終わったあとで。とはいえ、コロナ禍になってしまった2020年には、全員なんとなくアルバム制作の想像はしてたんですけど、ツアーも延期になっていたので、まずは『カルペ・ディエム』(2019年リリースの12thアルバム)のツアーを完走したいねっていうのがあり。そのなかで「瑠璃色のキャンバス」という曲が将司から出てきたんです。そんな状況だからこそ曲を作ろうということで、作品として世の中に出すことができて。で、ストリングス・ツアーが終わってみんなで話してるときに――もちろん改めて楽曲を作り出したのは2021年のツアー終わりだったりするんですけど、「瑠璃色のキャンバス」からの思いや物語をひっくるめてアルバムを作ろうという話を、みんなでしましたね。

-こういう時期にバンドが何を表現するのかは注目されるところでもあるし。

松田:それはあったかもしれない。ただ、そこだけを歌うのが音楽じゃないんで、もちろん影響は受けつつ、その状況自体を歌うというよりもその中にいるそれぞれ、バンドや音楽を必要としてる人にとって、何が大切かなとか、何を歌ってあげたいかなというのは自分の中で向き合った部分ではありますね。楽曲的な部分では、このアルバムがリリースされるころにコロナ禍がどうなってるかっていうのはあるけど、少なからずちょっとずつ改善された、その場所で鳴ってる音を想像して作ろうっていう感じにはしてたんです。だからじんわりと内に向かっていくような楽曲より、外にエネルギーが放出できるようなアルバムを青写真として目指していこうっていうのは最初に話をしてましたね。

-今回、山田さんは作詞作曲ともに一番多く制作に携わっていますね。

山田:コロナ禍前に喉のこともあって、「瑠璃色のキャンバス」でこのアルバムの制作が始まってるのもあり、歌い手として、ちょっと委ねてくれたのかなっていうのもありますね。自分が歌いやすいメロディとか、作ってみていいよって言われてる気はしましたけど、実際に栄純(菅波栄純/Gt)がどう思ってるかはわからないです(笑)。

-しかも自分が歌いやすい曲ばかりじゃなく"どう歌うの?"って曲も多いじゃないですか。おふたりがタッグを組んでいる「深海魚」しかり。

松田:これは曲作りの初期の段階で将司が展開や全体像、細かいサルサのリズム含め、"こういうのどうでしょう?"って持ってきて。自分が感じたのはなんとも言えない妖しさと、湿り気のある風と、でもサビは開けるようなキャッチーなメロがあって、その混ざり具合が新鮮な楽曲だなと。どういうとこから生まれたのか聞いてみたいんだけど(笑)。

山田:ほんとにサルサ調の曲を作りたいなってところで、妖しさが絶対THE BACK HORNに合うだろうなと。ピアノが入ってないこういうリズムの曲は前にもあったと思うんですけど。

松田:たしかに合うね。このサルサ・リズムとピアノの感じ。しかもコード感で鳴ってる感じね。単音じゃなくて。

-じゃあ山田さんのデモ段階でアレンジもラフなものは入っていたと。

松田:もうほぼそういう感じ。みんな、チャット上でざわついた感じはありますけどね(笑)。"なんかすごいのがきたぞ"みたいな。

山田:「深海魚」と「ネバーエンディングストーリー」が最初だもんね。とりあえずこの曲たちは入れたい、みたいな。

松田:そのころ、「希望を鳴らせ」もあったんですよ。そういうストレートで力強い楽曲があり、妖しさやTHE BACK HORNのコアな要素の楽曲みたいな枠で「深海魚」が生まれてきたのは新鮮でしたね。もっとドロっとしてたり深みのあったりする曲にも行けるけど、そうじゃないアレンジで。

山田:サルサのちょっとアダルトな匂いのする感じが、マツ(松田)の歌詞とも相まって。

-松田さんの歌詞は曲が来たとき同様、驚きがあったと思うんですけど、最終的にはこれまでのTHE BACK HORNの曲に出てくる少年少女と実はそんなに変わらない感じもして。

松田:そうなんですよ。楽曲のどこの部分をふくらませるかで、歌詞の色合いがいろいろあるなと思って。サビの感じをふくらませていったら、もっと爽やかであったり、せつない感じにも行けたんですけど、最初感じた湿り気とか妖しさで物語が完結していくほうがいいんだろうと感じたんです。ギリギリまでそういう方向性を考えてたなかで、どこかでコロナ禍――強引に結びつけるわけじゃないんですけど、人に直接会ってたころの肌触りや空気感を感じるのって、遮断されてるからこそ生きてくる皮膚感なんだなと。そういったものがひとつ奥底ではテーマになってたりもしますね。

-そして新鮮なサウンドが続く「戯言」。いろんな国に行きますね(笑)。

松田:このタイミングで栄純と今回のアルバムの話題になったとき、いろんなジャンルのいろんな国の音楽が入ってるアルバムだよね、それって今まであんまりなかったよねって。というのはたぶん、将司が作ってきた楽曲、それこそ「ネバーエンディングストーリー」しかり、そういう曲に入ってるよねって話をした記憶はあるんです。栄純の楽曲に関してはTHE BACK HORNサウンドであったり、音楽的なところから攻めてる感じがあるけど、将司楽曲に関しては国のジャンル的なものがこんなに散りばめられていて新鮮だね、みたいな話をしましたね。

山田:たしかにいろんなジャンルの曲を持っていきたいなとは思ってて。みんながどんな歌詞を書いてくるかは想像するしかなかったけど、もしかしたらシリアスな雰囲気が強い歌詞たちになってしまうのかなと。ジャンル的にもいろいろな楽しみ方ができたほうが全体のバランス的に良くなるのかなと思ったのもあって、カントリーっぽい曲やジャズっぽい曲も作って。

-でも「戯言」は単純にジャズとは言えない展開です。

山田:久しぶりの感じだったね(笑)。インディーズのころなら普通にやってただろうね。

松田:テンポ・チェンジとかも含めて、年々突き詰めていくごとにリズムとかノリも、かっちりどこにハマるかをみんなで追求してたところがあるから、ここにきてこういう自由にテンポを泳ぐような楽曲は久しぶりな感じがありましたね。

-松田さんが言うように国が違うぐらい違うジャンルの曲がくると、やはり菅波さんから出てくる歌詞ももちろん違うし。いったれいったれみたいな。

松田:これは栄純で良かったですね。たぶん栄純しかこの楽曲の歌詞はなかなか書けない。

山田:だね。おしゃれなテンション・コードでピアノもシャラーンみたいな世界観に、このちょっと皮肉めいた歌詞っていうバランスがいいですよね。

-"他人の人生笑うのはカス"って、ただ言いたいみたいな(笑)。

松田:半々だよね? メッセージ的なところと響き的なところで、あとあと心に残る言葉っていうのが混ざり合って、歌ってても楽しそうな。

山田:ちょっとフランス語で歌ってる感じというか。"ワラウノハカス~"(笑)。

-この曲は若干、道化的な部分があるから言い放ってるなと。

松田:世相とこの楽曲の物語の絡み具合がいいですね。

-そして岡峰(光舟/Ba)さんの2曲はアルバムの中に入るとメロディの特徴がわかりますね。

山田:うん。おおらかで優しいメロディに光舟節がちゃんとある。

松田:「夢路」にはメロディの壮大さやせつない感じはあるけど、バックの力強さだったりギターもガッツリ歪んでドーン! と始まったりするんで、その展開をどういうふうに曲の終わりに向かってふくらませていくか、みたいなのは話しながらアレンジをやっていったような記憶がありますね。

-この時期にTHE BACK HORNとしての意思表示をする曲、面白い曲、カッコいい曲がおのおの出てきて、ベーシックにいい曲っていうのが岡峰さんから出てくるなと。

松田:あぁ。たしかに「桜色の涙」は最初のデモから、ストレートにせつなくていい曲だなぁみたいな感じにみんなで捉えてましたね。シンプルに"いい曲だね"っていう。

山田:桜の歌詞にしたいってマツが最初から言ってて。

松田:そうそう。曲が出る前に"トライしたいんだよね"って話をしてて。でも、たぶん光舟は光舟で俺のその話とは別で、それをイメージして出てきた曲というわけじゃないと思う。最後、将司のアイディアでピアノを入れることになって、さらに情景が浮かぶようになったんですけど、もともと最初のリフを聴いたときに、もう花吹雪が舞ってるっていうのしか見えてこなくなっちゃって(笑)。光舟の楽曲の面白いところは、メロディは優しかったり温かみがあったりするんですけど、バックの力強さみたいなのが伴ってて、ビートがしっかりしてたり、ディストーションが作る景色がサビで来たり、激しい音の中にある優しさとかせつなさを描いてるところで。それは「桜色の涙」と「夢路」で感じた部分ではありますね。

-「夢路」は裏話がありますが。

山田:ありますね。光舟の飼ってる猫が亡くなっちゃったこともあるけど、このコロナ禍で、さっきマツが言った、そばにいられないからこそ響いてくる言葉たちがあるなというのも感じます。

-作詞も岡峰さんで、言葉もすごく素直ですね。

山田:そうなんですよ。それがメロディの素直な感じと相まって、丸裸で光舟が来たなって感じました。

-そして山田さん作詞作曲の「ネバーエンディングストーリー」。これまでもシングルのカップリングなどで、肩の力が抜けた等身大の曲も増えてきたなと思っていたところに、また新たなジャンルが増えたなと感じました。

山田:この温度感って何も起きない日常だけど、それが幸せだというようなことを自分はあまり書いたことがなくて。具体的にモチーフとなった人もいたりするんですけど、久しぶりに会える喜びと、そういう存在がいてくれることが、なかなか会うことが難しくなってるこのご時世で、すごくありがたかったし、このままこの時間が続けばいいなって、ほんとただそれだけ。その人がいてくれることが自分の希望だったりして。