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INTERVIEW

Japanese

THE BACK HORN

2020年10月号掲載

THE BACK HORN

メンバー:菅波 栄純(Gt) 岡峰 光舟(Ba)

インタビュアー:石角 友香

小説と音楽のコラボレーションと言われてもピンとこないかもしれない。しかも今回、住野よるの連載と並行するように楽曲が制作され、また楽曲が連載中の小説に影響を与えるという相互作用の連続で実現したのが、"この気持ちもいつか忘れる"だ。すでに9月、CD付の先行限定版として発売されたが、10月19日には同タイトルで文章のみの書籍とTHE BACK HORNの新曲5曲が収録された配信音源がリリース。表現者同士の共感や影響、小説ならではのインスピレーションが新鮮な体験をもたらしてくれる。読んでから聴くか、聴いてから読むかは我々に託されている。この稀有な機会をバンドはどう捉え、実際に作品化していったのか、菅波栄純と岡峰光舟に訊く。

-コラボのきっかけは、住野よるさんがバックホーン(THE BACK HORN)のファンだったことだそうですが、その話はいつ頃伝わってきたんですか?

岡峰:『運命開花』(2015年リリースの11thアルバム)のツアー("THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」~運命開歌~")のとき、神戸のライヴに来てくれて、その前に本をいただいてて。それを読んでから楽屋で初めて会った感じですね。でも、そのときは"いつか何か一緒にできたらいいですね"ぐらいの感じで。今回の話が出たのは2017年末か2018年初めで、住野さんから一緒に作品を作れたらいいなってお話をしてくれて、俺らも今までやったことないことだし、期待というか未知な感じで楽しんでました。

-2018年の9月に「ハナレバナレ」が配信されましたが、どれぐらいのことがわかってて「ハナレバナレ」を書けたんですか?

菅波:最初の段階ではあらすじと本編の序盤の内容を貰って、それで考えた感じですよね。でも、そのあらすじを貰って「ハナレバナレ」を書き始めるより前に何回かお会いしてました。

岡峰:どういう内容にしますか? というより、どういう考え方をしてるのか、何が好きなのかなどを話しました。

菅波:逆に俺らが"バックホーンの曲でどの曲が一番好きですか?"って聞いて(笑)。そしたらいろいろ挙げてくれたんです。どの曲が誰の作曲ってわかってるから、1回目の親睦会兼打ち合わせのときはそれで盛り上がった記憶しかない(笑)。あとは会ってるうちに住野さんから出てきた言葉を、「ハナレバナレ」には情報として結構入れてます。例えば、"君の膵臓をたべたい"は恋愛小説のつもりでは書いてなくて、人と人の大切な出会いみたいな話のつもりで書いてたんですけど、みたいな話をチラッと聞いてたのを取り入れて、「ハナレバナレ」だと"恋愛小説でも無いよ"みたいな歌詞が出てくるとか。

岡峰:最初の親睦会のときに、恋愛小説を書いたことないって話もされてて。それに向かって書いていきたいみたいな話は聞きましたね。

-振り返ってみて、"ハナレバナレ"っていうタイトルができたきっかけはなんだったと思いますか?

菅波:主人公(カヤ)とチカという違う世界の人が、1個の場所で奇跡的に出会うシーンがあるじゃないですか。それで書いたんです。だから結構、作品寄りに書いたんですけど、最近バックホーンが配信ライヴを行っていて、「ハナレバナレ」をやる機会も何回かあって、"ハナレバナレ"っていう言葉がまた違う意味になってきたっていうか、自分たちとファンとかも2020年に入って離れ離れ感が強い時代になって。小説とCDのための曲とはまた別の意味も感じ始めていますね。

-小説を読むと「ハナレバナレ」はカヤの1人称って気がリアルにします。

菅波:この時点でカヤっぽさっていうのはまだわかってなかったんですけど、なんとか整合性が取れてよかったです。

-バンドはこの間、他の活動もしながらこのコラボレーションが続いてるわけで。

岡峰:『情景泥棒』(2018年3月リリースのメジャー1stミニ・アルバム)が出て、そのまま『ALL INDIES THE BACK HORN』(2018年10月リリースのインディーズ・ベスト・アルバム)も21曲録って、また20周年のワンマン・ツアー("THE BACK HORN 20th Anniversary「ALL TIME BESTワンマンツアー」~KYO-MEI祭り~")をやり出し。それで去年、ツアー・ファイナルの武道館を終えて、『カルペ・ディエム』(12thアルバム)を作り出している最中にこの曲たちも生まれて。

-何曲ぐらい入れる予定だったんですか?

菅波:曲調から大雑把に4か5ぐらい。でも、目安でしかなかった。

岡峰:そこから小説がどう進んでいくかにもよるから。最初の俺らの構想ももちろん変わっていく可能性もありましたしね。

-2曲目の「突風」なんて、このワードは主人公が大人になってから意識することだし。

菅波:「突風」なんて、そういう意味では歌詞ができたのは最後ぐらいなのかな? だけど、光舟とデモを作ってた時期はもっと前。

岡峰:そう。2018年の冬に作ってて、その頃山田(将司/Vo)、松田(晋二 /Dr)組は「輪郭」を作ってましたね。で、俺らの手法として各々がある程度デモを作り上げた状態を共有してたんですけど、俺と栄純が「突風」のデモを作っている最中は、栄純が"俺今ちょっと時間あるから光舟、断片をいろいろよこせ"という感じで。このプロジェクトのために作ってたわけではなかったんですけど、そのリフとか、Aメロとかを組み立てたり、サビのコード進行を逆にイントロに持ってきたりっていう作業を栄純が手を加えて、1曲のパーツの段階のようなものがあったんですよね。で、それを作ってたのは頭の片隅にはあったんですけど、そのあと『カルペ・ディエム』のレコーディングを始めて、最後の最後のほうに"あの曲あったな"と思い出して。

菅波:俺、正直その作業してたのすっかり忘れてた(笑)。

岡峰:"じゃあその曲を山田と松田は聴いたことないから聴かせてみよう"って、聴かせたんです。そしたらマツ(松田)が、"この曲と連載進行中の「この気持ちもいつか忘れる」とでリンクするイメージがあるわ。だから、歌詞ちょっと書かせてくれ"って言って、この曲がどんどん進んでいったんです。

菅波:あれは鶴のひと声だった。光舟がふと思い出して良かった。「突風」のあの枠があるとよりバックホーン感が増すじゃないですか。

-小説のコラボと言っても、バンドから出てくる楽曲はそのためだけじゃないですもんね。

菅波:もう生活じゃないけど、日々の中で楽曲が生まれていてネタとかもあるので、そういうのがパズルとしてバーンとハマったときの気持ち良さはやっぱあるよね。

岡峰:たしかに。あれができた直後に聴かせてたらマツはイメージできてないから、曲にできてなかったかもしれない。そういう意味ではタイミングも良かったですね。

-激しい2曲から一転して「君を隠してあげよう」はかわいらしさもある曲です。

岡峰:たしかに木琴がぽんぽん鳴って、かわいいのか、怖さも感じるけど。

菅波:木琴が入ってるのはすぐ思い浮かびましたね。子守唄じゃないけど、メロディが素朴なんですね。優しいメロなので、何か入ってたらいいのかなと。

岡峰:じゃあそういうイメージが俺もハマったのかな。Aメロの感じは子供っぽい感じというか。それで鍵盤ハーモニカのイメージでベースをつけた。

-この曲はカヤとチカと他者の関係にひもづく印象でした。

菅波:結構ネタバレになっちゃうから難しいな。具体的には言えないけど、俺には小説とは別の妄想があって。というのが、住野さんの作品はどの登場人物もそれ以降の人生があるって考えが住野さんにあるんです。それが頭の中にあったから、小説とは別の設定を住野さんに提案したら、面白いって言ってくれて。

-なるほど。主人公ではない視点でも聴けると。1曲目、2曲目と主人公のエッジの立った思いが出てるけど、この曲でちょっと主人公の一方的な思い以外のものも出てきますね。

菅波:この曲単体で聴いても、ストーリーとして読めればいいなっていうのはあります。この曲って主人公ではない、もうひとりいる相手のほうがすごい泣くじゃないですか。相手は悲しんでるけど、俺はそこにガチで共感できてないっていうモヤモヤ感が、わりとリアルにあって。俺って冷たいのかなとか思うときがあるな(笑)。っていうのは正直入れました。そういうのをひとさじ入れるのはいい曲に仕上がるコツかなと思います。でも、この小説のプロジェクトがなかったら、わりと繊細な感情というか、あんまり簡単には言い切れない複雑なこのキャラクターを、主人公にしようとは思わなかったかもしれないですね。曲ってわりと大雑把な主人公の設定でも、グッとくるものが書けるので。そういうチャレンジができるきっかけにはなりましたね。

-具体的には言えないけど、住野さんが描く主人公の若いときのストーリーはすごく長いじゃないですか。主人公の気持ちは共感できるものでしたか?

菅波:俺はカヤのある種......めっちゃわかりますね。簡単に言うと性格悪いところあるじゃないですか(笑)。正直わかる。心の中で人のことを観察して、あいつこういうやつだからなってレッテル貼りをしてるじゃないですか。あれもちょっとわかるな。疲れてるときやってそう、とか(笑)。

岡峰:わかるけど、思ったより深いよね。"一段階悪いかも"感。

菅波:後半加速してくるじゃないですか、カヤの性格というか。若いときの性格は共感性高い内容だとは思います。"あぁ、わかるわかる"っていうエピソードや、普通にドキドキする場面もあるじゃないですか。そういうとこはもちろんあって、この小説は次のステップに進んだあのへんが結構一番食い応えのあるゾーンだと思います(笑)。