Japanese
THE BACK HORN
Skream! マガジン 2017年12月号掲載
2017.10.21 @日比谷野外大音楽堂
Writer 石角 友香
秋雨の中、明かりがあまり届かない日比谷公園の中を歩いているときからすでに独特なTHE BACK HORNの世界へ足を踏み入れていた――ライヴハウスでの興奮と熱情とはまた異なる、レアな選曲も含む6年ぶりの日比谷野外大音楽堂でのライヴは、声を出し拳を上げたくなるような曲、孤独な夜を乗り越えるために共にあった曲、笑顔で飛び跳ねたくなるような曲、そんなバンドがファンと一緒に確かに築き上げてきた音楽に溢れていた。ひとりひとりの人生のある場面に、THE BACK HORNの音楽がきっと共存してきたのだろう、そんな一夜だったのだ。
三味線を手にした女や猫、バンドのロゴ・マークを顔に模した人間、いや、みんな妖怪だろう。そんな絵が描かれた大きな背景がまず他のバンドではありえない。ブルーのライトが照らすなか、登場したメンバーは凱歌のようなトーンのイントロから、ひたひたと迫るような「閉ざされた世界」でライヴをスタート。這うような岡峰光舟(Ba)のフレージングを始め、冒頭から息を呑む展開だ。"もう一度 信じるだけの勇気をもって/もう一度 疑うだけの知性をもって/最後まで世界を見つめ続けてゆく"――生き方の姿勢を描いた曲は数多くあるが、今この国に生きる者として、まっすぐに飛び込んでくる、しかも重厚なこの曲に込められた意志に、野音が腹の底から頷いた、そんな印象を持った。当然、先日リリースされた2作目となるベスト・アルバム『BEST THE BACK HORN Ⅱ』からの選曲が多いわけだが、このベスト・アルバム自体にも表れている、2008年以降のシングルを軸にしたDISC-1はもちろん、ファン投票に基づいた選曲のDISC-2のいわゆる定番曲に票が集中しないTHE BACK HORNというバンドの奥行きをこの日のライヴでも体現していたことが、彼らの誠実さでもあり、野音という約3,000人のキャパシティで功を奏していたのだ。
拳が上がるレパートリーももちろん配置しながら、ファンの思わず漏れるような歓声がイントロで聞こえたのが「ひょうひょうと」。デビュー時とは比べ物にならないアンサンブルでありつつ、山田将司(Vo)の叫びの本質は変わらないように感じた。生きることが簡単ではない若さゆえの苦しさ。続く「晩秋」は、菅波栄純(Gt)のドリーミーなギター、どこかRADIOHEADの「Creep」を思わせる普遍的な曲の美しさと、それぞれが抱える人としての悲しさが、20年近い時間を経て、今ここで響き合っている。そんなイノセンスを俯瞰するように、松田晋二(Dr)の乾いたキック&スネアが鳴り、山田のラップ調のヴォーカルがリズミカルに跳ねる「コワレモノ」に繋がる。その、人間として、バンドとしてのタフさを獲得してきた歳月を曲の配置で鮮やかに体感させたことは、小気味よいほど。インディーズ時代から聴いてきたファンにとっては、自分の実人生や曲と符合する時代を心に投影したことだろう。
雨足が強まった中盤は、再び聴かせる曲で呼吸を忘れる場面が続く。一瞬、シンセのように聴こえるギターのロング・トーンから重厚なハード・ロックへ突入していく「扉」、そして演奏面での白眉だった「アカイヤミ」。妖しく蠢くベース・ライン、ミュートしたスネア、体内に得体の知れない生物が侵入したように痙攣しながらギターに支配されているような菅波のプレイ。いくらか生き方を心得たとしても、手に負えない攻撃性や、生きていることそのものへのやるせなさや不条理はいつまでもつきまとう。彼らは演奏の純度と完成度を上げながら、これまで経験してきたことすべてを抱えていることをむしろ誇りを持って表現している。演奏が終わったあとの拍手、そして次の曲を待つ間に雨の音が聴こえるほど、会場全体が集中力を切らさない。バンドもファンも実に独特だし、その間すらTHE BACK HORNらしい。
緊張感に溢れる演奏に手応えを感じたメンバーは、MCではいつものキャラクターで、例えば松田は"これぐらいの雨は、昨今の気象状況を勘案するとなかなか上々なのでは"と言い、笑いとともに拍手が起こり、菅波は"野音は木に囲まれてるせいか妖怪のイメージがある"と、背景画の意図を話す。たしかに激烈なロック・バンドであると同時に、八百万の神やあらゆる生き物の存在も、THE BACK HORNのプリミティヴなリズムや世界観には影響しているのだろう。都会の雨の中で爆音を鳴らしているという状況も、メンバーをむしろ生き生きさせているようだ。
さらにファンには嬉しいライヴでのレアな選曲として「枝」が披露された。淡々と鳴らされながらも、菅波のジャム・バンドのメイン・リフにも似た工夫に満ちた音色や、ブルージーなソロが彩り、季節と歳月の変遷を各々が心に投影しているようだ。ライヴで聴くことが貴重なこの演奏に聴き入り、そしておなじみ岡峰の和音が心音のように響く「美しい名前」、そしてぐっと日常的な温もりを感じさせる「あなたが待ってる」への流れも、今生きていることを素直に感謝できる、しかも狙ってできるわけじゃない、1曲入魂で歩んできたTHE BACK HORNだからこそ、心底あたたかな気持ちになれる、これまたハイライトと言える流れだった。
終盤はこの10年の口火を切った曲と言っていいだろう「覚醒」が確かに刻まれていく。それは"僕らはいつだって独りじゃない"ということを明確に歌詞にしたと言う、今の彼らに繋がる部分だ。ステージもバック・ライトからメンバーに照明が当たり、続く「孤独を繋いで」での4人の表情も含めて、曲の説得力を増してゆく。それぞれの場所で生きていこう、そんな思いがそのまま「コバルトブルー」に手渡されて、疾走する8ビートが「シンフォニア」のサビでさらに会場ごと心を解放していく。"突き刺す感情を"のシンガロングは明るい強さに満ちていた。濃厚なのに、終わってみるとなんだかあっという間の本編だった。
アンコールでは、すでに浸透しつつある、友達への普段の言葉のような「グローリア」があたたかくも賑やかに鳴り響き、ファンの歌声が夜空に届かんばかりの「刃」で終了のはずが、山田の"名残惜しいな。もう1曲やる? そんな気分だな、今日は"と、笑顔で本当のラストとして「無限の荒野」を投下。横にスライドしながらステージを移動する菅波を始め、気持ちのままに演奏し切った4人は爽快な表情でステージをあとにした。まるで曲を演出するように強まったり弱まったりしていた雨は、終演ごろにはすっかり止んでいた。
[Setlist]
1. 閉ざされた世界
2. シリウス
3. 声
4. ひょうひょうと
5. 晩秋
6. コワレモノ
7. 扉
8. アカイヤミ
9. 罠
10. その先へ
11. 枝
12. 美しい名前
13. あなたが待ってる
14. 覚醒
15. 孤独を繋いで
16. コバルトブルー
17. シンフォニア
en1. 何処へ行く
en2. グローリア
en3. 刃
en4. 無限の荒野
- 1
LIVE INFO
- 2025.08.16
-
Bye-Bye-Handの方程式
reGretGirl
リーガルリリー
Eve
"RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO"
フレンズ
豆柴の大群
"SUMMER SONIC 2025"(大阪)
Faulieu.
Novelbright
Ivy to Fraudulent Game
レイラ
私立恵比寿中学
Keishi Tanaka / 荒井岳史 / TGMX(FRONTIER BACKYARD) ほか
Billie Eilish
ユアネス
"SUMMER SONIC 2025"(千葉)
- 2025.08.17
-
Bye-Bye-Handの方程式
reGretGirl
Eve
四星球 × G-FREAK FACTORY
PIGGS
金子ノブアキ
POP DISASTER / sfpr / waterweed
ビレッジマンズストア
PK shampoo
"SUMMER SONIC 2025"(大阪)
Novelbright
GOOD ON THE REEL
私立恵比寿中学
Billie Eilish
"SUMMER SONIC 2025"(千葉)
PENGUIN RESEARCH
- 2025.08.19
-
Hump Back
キュウソネコカミ
THE BAWDIES
YOASOBI
bokula.
- 2025.08.21
-
PENGUIN RESEARCH
THE BAWDIES
TENDOUJI
YOASOBI
GANG PARADE
金子ノブアキ
KALMA
キュウソネコカミ
"LIVEHOLIC / ROCKAHOLIC Candye♡Syrup (美容室) 10th Anniversary Party"
- 2025.08.22
-
奏人心
KING BROTHERS
"WILD BUNCH FEST. 2025"
TENDOUJI
THE BAWDIES
終活クラブ
YOASOBI
JunIzawa
ナナヲアカリ
Broken my toybox
RAY
フレンズ
Rei
キュウソネコカミ
- 2025.08.23
-
PENGUIN RESEARCH
KING BROTHERS
Maica_n
"MONSTER baSH 2025"
大森靖子
"WILD BUNCH FEST. 2025"
ぜんぶ君のせいだ。
LOCAL CONNECT
浪漫革命
リーガルリリー
Buzz72+
Appare!
佐々木亮介(a flood of circle)
w.o.d.
Eve
マオ(シド)
- 2025.08.24
-
大森靖子
"Sky Jamboree 2025"
KING BROTHERS
Maica_n
"MONSTER baSH 2025"
"WILD BUNCH FEST. 2025"
ぜんぶ君のせいだ。
cinema staff
LOCAL CONNECT
ビッケブランカ
Eve
マオ(シド)
小林柊矢 / 心愛 -KOKONA- / 虎鷹 / 荒木一仁 ほか
- 2025.08.25
-
Hump Back
神聖かまってちゃん
THE YELLOW MONKEY
- 2025.08.28
-
KALMA
Maica_n
ビレッジマンズストア
THE BAWDIES
22/7
- 2025.08.29
-
the cabs
神はサイコロを振らない
Bye-Bye-Handの方程式
安藤裕子×清水ミチコ
そこに鳴る
ゲスの極み乙女 × 礼賛 × roi bob
[Animelo Summer Live 2025 "ThanXX!"]
"SWEET LOVE SHOWER 2025"
- 2025.08.30
-
Kroi
reGretGirl
ナナヲアカリ
木村カエラ / OKAMOTO'S / 原因は自分にある。 ほか
豆柴の大群
ビレッジマンズストア
アーバンギャルド
天女神樂
ぜんぶ君のせいだ。
"ナノボロ2025"
Maica_n
"RUSH BALL 2025"
ビッケブランカ
レイラ
9mm Parabellum Bullet / THE BACK HORN / ACIDMAN / yama ほか
PIGGS
eastern youth
Appare!
VENUS PETER
GRAPEVINE
Lucky Kilimanjaro / 眉村ちあき / 森 大翔
崎山蒼志
セックスマシーン!!
[Animelo Summer Live 2025 "ThanXX!"]
NEK!
"SWEET LOVE SHOWER 2025"
Faulieu.
- 2025.08.31
-
reGretGirl
Broken my toybox
BLUE ENCOUNT / スキマスイッチ / 家入レオ / CLAN QUEEN ほか
ビレッジマンズストア
大森靖子
"ナノボロ2025"
"RUSH BALL 2025"
HY
GOOD BYE APRIL
Nothing's Carved In Stone / Base Ball Bear / ヤングスキニー / GLIM SPANKY ほか
ぜんぶ君のせいだ。
LACCO TOWER
なきごと
四星球 × G-FREAK FACTORY
RAY
Miyuu
GANG PARADE
ONIGAWARA
伊東歌詞太郎
ZAZEN BOYS
PK shampoo
[Animelo Summer Live 2025 "ThanXX!"]
"SWEET LOVE SHOWER 2025"
Academic BANANA / Yeti / BACKDAV
RELEASE INFO
- 2025.08.20
- 2025.08.22
- 2025.08.27
- 2025.08.29
- 2025.09.01
- 2025.09.03
- 2025.09.05
- 2025.09.10
- 2025.09.12
- 2025.09.17
- 2025.09.19
- 2025.09.24
- 2025.09.26
- 2025.10.01
- 2025.10.03
- 2025.10.08
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ExWHYZ
Skream! 2025年08月号