Japanese
THE BACK HORN
Skream! マガジン 2022年10月号掲載
2022.09.24 @日比谷公園大音楽堂
Writer 石角 友香 Photo by 橋本塁[SOUND SHOOTER]
"もういっそ「夕焼けを目撃したい」に変えたほうがいいんじゃないか"と松田晋二(Dr)がMCで言っていたが、約5年ぶりの野音公演も雨だった。いや、豪雨だった。だが都会のど真ん中で自然の営為を感じながら体感するTHE BACK HORNのライヴ、これは代替不可能だ。今回、初めて大阪公演も実施された"夕焼け目撃者"の東京、日比谷公園大音楽堂の様子をレポートする。
前回が2017年だったとはにわかに信じがたいほど、前回の幽玄なムードの漂う夜を覚えている。約5年経過した今、まさか世界中で疫病が流行し、大きくライフスタイルも変化しているとは。だが、コロナ禍3年目の夏の終わりともなると、THE BACK HORN久々の野音が始まる高揚が勝る。ただ、雷雨でもあり、開演前にスタッフがその安全を確認しながら進行する旨を伝えた。オーディエンスとの信頼関係はメンバーだけじゃなく、このライヴを実現するあらゆる人に通底していた。
定刻にSEが流れ、不穏な天気とブルーの仄暗い照明もあり、物々しく響く。レインコートやポンチョに身を包んだファンはメンバーの姿が見えると拳を上げ、雨音を上回る拍手を起こした。1曲目はヘヴィな物語を持つ「幾千光年の孤独」でスタートしたのだが、豪雨と稲光すら演出に感じられる。ラストにホワイトアウトするような強烈な光が客席に向けて放たれ、ファンの人生を照射するような演出に見えた。そう。常にTHE BACK HORNのライヴは自分ごとである。間髪入れず岡峰光舟(Ba)のスラップから「金輪際」へ。ジャジーなコード感のナンバーだが、内容の赤裸々さは若い。山田将司(Vo)が雨のステージ前方に歩み出る。2曲演奏を終わると"俺ららしい、最高の天気ですね"と、山田が笑顔で言い放つ。誰も異論はなさそうだ。人間の内面のドス黒さを暴くような最初のブロックの濃厚さの中でも、レア選曲だった「ファイティングマンブルース」で、菅波栄純のスライド・ギターがあやしさとカオスを増幅する。
ちなみに雨の野音でも、近年の引き締まった分離のいいアンサンブルは健在だ。チーム力の勝利を確信する。ドス黒い感情やリアリティをどんどん暴いていくセットリストは、音楽的にも複雑な絡み合い方をしていて、それがラテンテイストのイントロを持つ「疾風怒濤」にたどり着いた頃、野音に結集したファンの思いの丈を声なき声として吐き出させたように見えた。山田のラップも定着し、サビでの"踊ろうぜ/疾風怒濤"への突き抜け方もライヴを重ねるごとに強度を増している。ライヴ・アンセムに育った「疾風怒濤」に続いて披露されたのが、シングル『コバルトブルー』収録曲「カラビンカ」だったのはかなりの驚きだった。ゴスなガレージ・サウンドともストーナー・ロックとも受け取れる、解釈の幅を広げた現在のアレンジ力をもってストレートにストロークされるコードの痛快さ。前半最大の発見と言えそうな演奏だった。
前回2017年の野音は、『BEST THE BACK HORN Ⅱ』の一筋縄ではいかないコアなナンバーも選出されるこのバンドの側面を堪能できたが、MCでの松田の言葉通り、"夕焼け目撃者"には、"マニアックヘブン"ともまた少し違うニュアンスのレア選曲と流れがある。アルバム・ツアーと"マニヘブ(マニアックヘブン)"のいい部分を取りながら、別モノでありスペシャルなのだ。
"虫が鳴いてるね"と山田が「何もない世界」のイントロで思わず口にしたくなるのも納得するほど、静かな音像の中では小さな生き物たちの力強い存在もライヴを演出するようだ。スローな楽曲が続くと、野音という場所が持つ磁場がことさら強調される。「何もない世界」も「カラビンカ」同様、『B-SIDE THE BACK HORN』に収録された、深く記憶される名曲。"風が吹き抜けて君は永遠になった"という出だしにしてパンチラインが歌われた瞬間、一瞬止んだ雨の隙間を風が縫っていったように感じた。野外の醍醐味であり、自然の不思議である。ロング・トーンが続くメロディが呼んだかのようだった。雨が止んだことで空気が澄み、目に入るステージが4K画像のようにクリアだ。「I believe」も「ひとり言」も解像度が上がっていく。
菅波が"イェー! 出てきたとき、みんなの笑顔と上がってる手に励まされたわ"と、豪雨の中ステージに飛び出す勇気を得たと話したり、久々の野音について4人が思いを述べたりしたあと、山田が"次の曲はライヴで初めてやる曲です。この空気にピッタリじゃないかな"と前振りをしたのは「輪郭」だった。小説世界が音楽に昇華された『この気持ちもいつか忘れる』のラスト・ナンバーで、ピアノの同期、素直なビート、広がるサビが瑞々しい。その感触を引き継いでの「瑠璃色のキャンバス」への流れも美しかったし、なんと「世界中に花束を」では、スマホのバックライトを点灯してほしいという珍しい要望がバンドから出た。共に歌えない、それなら各々の光を発光させよう。そんな自然な思いが野音中に広がっていた。再び終盤に雨が降るのだが、この曲の前後は雨が止んで、ファンがスマホを取り出せたのも奇跡的と言う他ない。
自然と共に生きていることを都会のど真ん中で感じる、それが彼らのライヴの真骨頂なんじゃないだろうか。終盤はコロナ禍以降の普遍的なアンセムとなった「希望を鳴らせ」から勢いを増していく。サビは声なき声が聞こえてきそうだ。「Running Away」での菅波の滑空するようなエフェクトも効果的で、雨の中、フル・キャパのファンがジャンプする様子は、ライヴの現場がもとに戻ったというより、2022年の9月という現在地にたどり着いた歓喜に溢れている。そしてまさにこの季節の哀愁も表現された「ヒガンバナ」がリアルな季節感を伴い、クライマックスは客席から湯気が上がりそうな「コバルトブルー」、「刃」。山田はステージの前方に出て、さらに左右に大きく動く。この日だけのストーリーを編んできたセットリストも、最後はやはり生身のぶつかり合いだ。物理的にぶつかり合えなくても、全力は尽くせる。気まぐれな雨も稲妻もすべて味方につけるという、らしさ満点の本編だった。
アンコールでは恒例になったバックドロップの絵について、作者である菅波と岡峰が軽く説明。菅波いわく"疫病退散的な"発想らしい。台風の中、遠い街から足を運んでくれたファンへの感謝や、このあとも風邪をひかないようにという温かな言葉もすべてライヴ本編と繋がっている――今のTHE BACK HORNの包容力は音楽の充実と、バンドの状態の良さと分かち難い。強く優しいとは何か。バンドとファンでこれからも導き出していく道のりの、ひとつの道標のような"夕焼け目撃者"として2022年9月24日を忘れないだろう。
プレイリスト情報
"THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンライブ」 ~第四回夕焼け目撃者~"プレイリスト
9月24日(土)日比谷公園大音楽堂、10月1日(土)大阪城音楽堂 セットリスト
プレイリストはこちら
配信情報
"THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンライブ」 ~第四回夕焼け目撃者~"
※アーカイヴ配信
[チケット]
¥3,500
配信期間:~10月9日(日)23:59
販売期間:~10月9日(日)21:00
チケットはこちら
- 1
LIVE INFO
- 2025.07.13
-
星野源
あれくん
SVEN(fox capture plan)
CYNHN × タイトル未定 × fishbowl
TenTwenty
板歯目
SAKANAMON
LOCAL CONNECT
FIVE NEW OLD
ASP
YOASOBI
BLUE ENCOUNT
コレサワ
鶴
"HELLO INDIE 2025"
なきごと
ズーカラデル
UNCHAIN
ART-SCHOOL
有村竜太朗
アルコサイト
[Alexandros]
寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game)
チリヌルヲワカ
GRAPEVINE
Nothing's Carved In Stone
Homecomings
ADAM at
ブランデー戦記
Eve
神はサイコロを振らない
荒谷翔大
すてばち
カミナリグモ
FUNNY THINK
ぜんぶ君のせいだ。
VOI SQUARE CAT
安藤裕子
古墳シスターズ
東京スカパラダイスオーケストラ
reGretGirl
斉藤和義
原因は自分にある。
トラケミスト
- 2025.07.14
-
Mirror,Mirror
- 2025.07.15
-
有村竜太朗
板歯目
BLUE ENCOUNT
桃色ドロシー
[Alexandros]
Mirror,Mirror
TENDOUJI × 浪漫革命
SCOOBIE DO
キミノオルフェ
羊文学
Saucy Dog
Ivy to Fraudulent Game
- 2025.07.16
-
有村竜太朗
YOASOBI
BLUE ENCOUNT
桃色ドロシー
GLIM SPANKY
BIGMAMA × Dannie May
坂本慎太郎
Base Ball Bear × PEDRO
SHE'S × ヨイズ
TenTwenty
Saucy Dog
- 2025.07.18
-
斉藤和義
YOASOBI
フレンズ
[Alexandros]
SVEN(fox capture plan)
板歯目
東京スカパラダイスオーケストラ
ExWHYZ
GLIM SPANKY
the paddles
キュウソネコカミ
NEK! × komsume
KiSS KiSS
Organic Call
SIRUP
ぜんぶ君のせいだ。
SAKANAMON
ヤングスキニー
ACIDMAN
Laughing Hick
TENDOUJI
cinema staff × eastern youth
- 2025.07.19
-
豆柴の大群
浅井健一
フレンズ
"NUMBER SHOT2025"
コレサワ
YOASOBI
PIGGS
鶴
東京スカパラダイスオーケストラ
"KESEN ROCK FESTIVAL'25"
ASP
Novelbright
"JOIN ALIVE 2025"
shallm
Eve
"OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2025"
キノコホテル
UNCHAIN
竹内アンナ
め組
"焼來肉ロックフェス2025"
SPECIAL OTHERS
ExWHYZ
LOCAL CONNECT
寺口宣明(Ivy to Fraudulent Game)
ぜんぶ君のせいだ。
いきものがかり
新しい学校のリーダーズ
"DAIENKAI 2025"
チリヌルヲワカ
片平里菜
PENGUIN RESEARCH
荒谷翔大
Nothing's Carved In Stone
マオ(シド)
- 2025.07.20
-
神はサイコロを振らない
"NUMBER SHOT2025"
斉藤和義
[Alexandros]
ビッケブランカ
"KESEN ROCK FESTIVAL'25"
ASP
"JOIN ALIVE 2025"
さめざめ
キノコホテル
HY
Eve
"OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2025"
崎山蒼志 / NakamuraEmi / ズーカラデル / TENDRE ほか
GRAPEVINE
"焼來肉ロックフェス2025"
清 竜人25
PK shampoo
"DAIENKAI 2025"
LOCAL CONNECT
ROF-MAO
いきものがかり
GARNiDELiA
ブランデー戦記
- 2025.07.21
-
"NUMBER SHOT2025"
斉藤和義
PK shampoo
LOCAL CONNECT
東京スカパラダイスオーケストラ
ASP
鶴
TENDOUJI
jizue
め組
HY
PIGGS
小山田壮平 / 奇妙礼太郎 / 安部勇磨(Band set) ほか
ぜんぶ君のせいだ。
アーバンギャルド
LACCO TOWER
GOOD ON THE REEL
いゔどっと
ビレッジマンズストア
GRAPEVINE
Homecomings
SpecialThanks / レイラ / GOOD4NOTHING / THE FOREVER YOUNG ほか
アカシック
PENGUIN RESEARCH
- 2025.07.22
-
Hump Back
the telephones
- 2025.07.23
-
東京スカパラダイスオーケストラ
板歯目
フラワーカンパニーズ×アイボリーズ
9mm Parabellum Bullet
女王蜂
- 2025.07.24
-
水平線
板歯目
bokula.
ビレッジマンズストア
竹内アンナ
the paddles
- 2025.07.25
-
四星球
マカロニえんぴつ
セックスマシーン!!
東京スカパラダイスオーケストラ
"FUJI ROCK FESTIVAL'25"
キュウソネコカミ
FIVE NEW OLD
有村竜太朗
Ivy to Fraudulent Game
のうじょうりえ
輪廻
RAY
らそんぶる
UNCHAIN
ゴキゲン帝国
miida
bokula.
感覚ピエロ
- 2025.07.26
-
あれくん
[Alexandros]
Eve
"OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.14"
GANG PARADE
須田景凪
コレサワ
LOCAL CONNECT
アーバンギャルド
reGretGirl
"FUJI ROCK FESTIVAL'25"
ASP
Creepy Nuts
FIVE NEW OLD
PENGUIN RESEARCH
マオ(シド)
さめざめ
Academic BANANA
"MURO FESTIVAL 2025"
WtB
有村竜太朗
Czecho No Republic
Mrs. GREEN APPLE
- 2025.07.27
-
Eve
東京スカパラダイスオーケストラ
MAPA
神はサイコロを振らない
"OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.14"
LOCAL CONNECT
"FUJI ROCK FESTIVAL'25"
ASP
コレサワ
DURDN
"MURO FESTIVAL 2025"
Mrs. GREEN APPLE
- 2025.07.28
-
THE YELLOW MONKEY
パピプペポは難しい
のうじょうりえ
Hump Back
RELEASE INFO
- 2025.07.13
- 2025.07.15
- 2025.07.16
- 2025.07.18
- 2025.07.19
- 2025.07.20
- 2025.07.23
- 2025.07.25
- 2025.07.29
- 2025.07.30
- 2025.07.31
- 2025.08.01
- 2025.08.06
- 2025.08.08
- 2025.08.13
- 2025.08.15
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
Organic Call
Skream! 2025年07月号