Japanese
THE BACK HORN
Skream! マガジン 2023年03月号掲載
2023.01.14 @中野サンプラザ
Writer : 石角 友香 Photographer:makiko takada
マニアックなアルバム曲やインディーズ時代の曲でセットリストを組んで、これほど今という時代に刺さる流れを形成できるバンドは稀有なのではないか。大人になっても変わらないもの、このバンドでしか起こし得ない化学反応を結成25周年初っ端のライヴで実感することになった。
まず銃声を想起させるサウンド・コラージュが、現実を強く認識させる。どの曲から始まるのかと張り詰めた空気をざっくり切り落とすような、菅波栄純(Gt)のコード・カッティングと蠢く岡峰光舟(Ba)のフレーズに寒気すら覚える「カウントダウン」だ。山田将司の声の少年性が際立つ。与えられるもので麻痺していく人間の末路を描くようなこの曲に続き、バンドのキャリアの中でも最も強烈に表現にもがき苦しんでいた季節の「運命複雑骨折」と容赦ない。さらにジャンルとしてのデス・メタルより死を感じる「ペルソナ」。"傷口の浅い絶望"という歌詞のラインでサイドからの赤いライトがバンドを照らす。と同時に、もはや平和ボケもしていられない2023年にあっても、まだどこか他人事のように思える危機が俄然、リアリティを増して迫ってくる。バンドはシンプルに今やりたい曲を選曲しているのかもしれないが、THE BACK HORNの"世界の中の自分"を描くレパートリーは現実を描いた内容という意味で枚挙に暇なし、なのだ。
松田晋二(Dr)が新年一発目のライヴに足を運んでくれたファンへの謝辞を述べたあとも緊迫したムードが続く。早い時期からジャズへのアプローチも見せていたことが今のスキルでさらに際立つ「白夜」。夜が来ないことの恐ろしさを強烈な白いバックライトが演出するなんてTHE BACK HORNのライヴぐらいだろう。音源でも生々しいが、さらに隙間が多く、その抜き差しで幽玄なサイケデリアを作り出した「シェイク」はことさら新鮮。ハードな音像とは対極の幾何学模様を想起させるアンサンブルに感じられた。ブレイクビーツのSEから松田の生音のドラムが入ってきた瞬間、もともとラガマフィン的なアプローチをしていたとはいえ、「がんじがらめ」が今、海外のシーンとも共鳴する曲としてハマっていることに気づく。それにしても1曲にラガマフィンと8ビートが同居する2010年代の曲なんてそうそうあるものじゃない。歌詞面では社会も自分も少しユーモアを持って揶揄できるタフさを増しているのが、前半のヒリヒリするような選曲の中にあって、時の流れを感じる部分だ。
クランチなコードはより冷酷に、しかも楽器同士の音が当たらないためヴォーカルもよく聴こえる「雨に打たれて風に吹かれて」、生音のトライバル・トランスといった感じのグルーヴをあくまでもヘヴィ・ロックの文脈で鳴らす「神の悪戯」はなぜそんなアレンジになるのか? の答えを歌詞のテーマに求めてしまう。文語調の言い回し、まるで聖書にありそうなフレーズ。人間の業をストイックにぶちまけるような集中力を見せた前半だった。
一転、"結成25周年一発目のライヴを楽しんでいきましょう"と笑顔で盛り上げる山田。彼もギターを携えて「コンクリートに咲いた花」で空気が変わる。前半の壮絶さで、瓦礫の街の朝みたいな気分だ。続いて山田がアコギを弾きながら歌う「クリオネ」。菅波がギターで表現する2番からのオブリは音源よりさらにエレクトロニックな響きを纏い、インディー・ロック・バンドのような時代感。"もっと何気なく話せるような そんな気分なんだ"というさりげないフレーズは大人になったファンにも刺さったんじゃないだろうか。ライティングがラスタ・カラーに変化し、レゲエの裏拍のビートに山田が吹くピアニカが夕陽のような切なさを醸す「ヘッドフォンチルドレン」。後年、「ユートピア」では前向きな意味で再定義された"ヘッドフォンチルドレン"だが、オリジナルの中では世界が終わるはずだった年に生まれ、生き延ばされてきた受け身の印象が強い。そして大人になっても、やはりヘッドフォンの中の世界に救われていることも多いことに気づく。それにしても、ダブを日本の若い世代のノー・フューチャーな世界観で昇華したバンドは他にいるだろうかと、再度、THE BACK HORNの特異性に気づかされる。
ここ中野サンプラザでの公演は、2016年のストリングス・ツアー("THE BACK HORN「KYO-MEIホールツアー」~月影のシンフォニー~")以来。MCでは岡峰が"正直、年始一発目に「マニアックヘブン」ってどうなのと思いながら正月からベースの練習をしてた"と言うと、菅波が"俺も俺も"と食い気味に賛同していたのが彼ららしかった。東名阪の3ヶ所のために改めてレア楽曲を掘り起こし、ライヴ・アレンジの練習をするのは今だから披露したい楽曲と流れがあるからだろう。"マニヘブ(マニアックヘブン)"が単に恒例企画にならない鋭さを保つ所以がそこにある。
後半は歌が明確に聴こえる「フリージア」、「泣いている人」と歌に引き込まれていく。特に「泣いている人」の2017年に新録された際に追加された、友達に電話をするくだりの歌詞が、今なかなか会えない誰かを思わせて、じわじわと胸に迫ってきた。自分自身も周囲も祈るような気持ちで、山田の歌を心の中でともに歌っていたんじゃないだろうか。
四半世紀、生きていることを感じられる曲を作ってきたと、まさに存在意義を言葉にした松田。喜怒哀楽もその間も高い解像度で追求してきた彼らの楽曲は、時代に左右されない強度を持つ。加えて、もともと楽曲が持っていた軸をより明快な演奏で届けることが今はできる。"マニヘブ"に限らず、THE BACK HORNのライヴはPAや照明を含め、ますます研ぎ澄まされているのは確かだ。
終盤は、らしさが溢れるドライヴする楽曲の中でも比較的新しい「突風」、今改めて命について認識を新たにする「一つの光」、そしてとても若いオルタナティヴ・ロック・バンドのようなみずみずしさを放つシンプルな8ビートの「閃光」へと、"光"が引き継がれていく。そして本編ラストは生きづらさや自分自身の矛盾、中盤の嘘のない優しさを経て、それらを包摂するように生命を称える「カナリア」へと到達する。エンディングの松田のスネアの1打にエフェクトがかかり、遠くへ放たれたように聴こえた。これはオープニングSEの銃声に似て非なるものとして、鳴らされたのではないかと想像する。銃声から祝砲へ――そう思いたい。
アンコールでは山田がドラム、菅波がベース、岡峰がギターで松田の朗読による恒例の「天気予報」の完成度の高まりに大いに沸くなど、誰よりメンバーが楽しむ姿が心に残った。楽しみながらも、予想できない時代に突入していきそうな今、心に留めたい楽曲で構成された今回の"マニヘブ"。結成25周年の初っ端に痛烈なメッセージを喰らった気分だ。
[Setlist]
1. カウントダウン
2. 運命複雑骨折
3. ペルソナ
4. 白夜
5. シェイク
6. がんじがらめ
7. 雨に打たれて風に吹かれて
8. 神の悪戯
9. コンクリートに咲いた花
10. クリオネ
11. ヘッドフォンチルドレン
12. フリージア
13. 泣いている人
14. 突風
15. 一つの光
16. 閃光
17. カナリア
En1. 天気予報
En2. 上海狂騒曲
En3. さらば、あの日
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