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LIVE REPORT

Japanese

ツタロックスペシャルライブ"3MAN!!"Vol.2

Skream! マガジン 2016年06月号掲載

2016.05.19 @TSUTAYA O-EAST

Writer 石角 友香

出演バンド楽曲のスプリット盤のリリースなど、新たな出会いが用意されている[ツタロックスペシャルライブ"3MAN!!"]。この日は4月に6thアルバム『Waltz on Life Line』をリリースし、早くも7月20日に8thシングル『インフェルノ』をリリースする9mm Parabellum Bullet、4月に6thアルバム『Dune』をリリースしたavengers in sci-fi、そして6月1日にメジャー2ndシングル『AIM』のリリースを控える04 Limited Sazabysが結集。ジャンルや世代を飛び越えて、"少年性"というロック・バンドの共通項を確認した。
 
口火を切ったのはavengers in sci-fi。前半は、アルバム『Dune』のオープニングの曲順どおりに「Departure」、「Dune」、「Vapor Trail」と、ツアー前にもかかわらず新曲を立て続けにプレイ。しかも、音源でのエレクトロニックな印象をギターリフや重いビート、トライバルなタムなど想像以上に演奏力が凌駕していく様に痛快な気分を味わう。相変わらずエフェクターやシーケンサーなど機材の量は膨大だが、あくまでも楽器でイマジネーションが広がる構造になっているのが、ライヴという五感すべてを支配する場において有効な気がした。後半は、今となっては早すぎたファンクへのアプローチを感じる前作『Unknown Tokyo Blues』から演奏。スラップとハイハットのシャープな打音、そして極めつけはスクラッチを思わせるサウンドをギターで鳴らす木幡太郎(Gt/Vo/Syn)のプレイ。演奏でヒップホップ/ファンクのニュアンスを作り出そうとする感覚は、エフェクターを繋ぎまくるセンス同様、"男子=少年"の夢を現実のものにしていくプロセスに他ならないのではないか。ラストはハイパーになったマンチェ・ビートとでも言いたい「Citizen Song」が徐々に圧を上げて3人のトライアングルごと離陸するようなアンサンブルで締めくくった。
 
次いで勢いよく飛び出してきたのは04 Limited Sazabys。4カウントから「Remember」が一瞬で駆け抜け、切ないイントロから2ビートに突入する「monolith」でダイバー続出。そこから「fiction」、「escape」まで一気に畳み掛ける。それにしてもGEN(Ba/Vo)のハイトーン・ヴォイスは、言わばそれがそのまま少年性の象徴でもあるが、メロディックという、ある種フォーマットが完成してしまったロック・バンドのスタイルを良い意味で破壊し、10代のリスナーを再び呼び込む武器であることを高い解像度で見せつけられた。日常的な事柄や悩み、恋などを言葉遊びの鋭さやユーモアも備えた歌詞で表現すること、そして重力なんてお構いなしなフロント3人を見ていると、04 Limited Sazabysというバンドの存在そのものが奇跡のように見えてくる。ラストのブロックの前には、"僕らは名古屋のバンドで、昔は渋谷って歩きにくいし嫌いだった。でもどんどん友達ができて、東京も来るたびに好きになって。なのでもっともっとでかい景色をみんなと見たい、そんな曲をやっていいですか?"というGENのMCが届けられ新曲「climb」が輝きと共に放たれた。
 
04 Limited Sazabysが醸成した空気感のせいか、9mmも登場早々、貫禄より瑞々しいまでのアッパーなテンションを見せ、「Answer And Answer」を勇壮に刻み込む。素直なリアクションを起こすファンに、思わず笑顔になる菅原卓郎(Vo/Gt)の表情には少年性と共に父性まで見て取れた。そう、どれだけ激しいライヴをやってもあたたかい、今の9mmの包容力に感銘を受ける。しかも、間断なく「The Revolutionary」や「新しい光」もブチ込んでくる。そして9mmならではの、腹の底から勇気が湧き起こるようなメロディも、界隈全体を揺らすようなヘヴィネスも、滝 善充(Gt)の重力に逆らうアクションも、すべてが何事にも立ち向かわせるピュアな勇気を奮い起させる。"よくみんな、「今日、最良の日にしよう」って言うでしょう? そうじゃなくて、明日が最良の日になるように今、ハードルを上げてるんだよ"と、卓郎がさすがのMCでさらにオーディエンスの気持ちをドライヴさせたところに6thアルバム『Waltz on Life Line』からの「太陽が欲しいだけ」。"おまえの瞳の奥にある 太陽が欲しいだけ"――こんなことを歌えるバンドはやっぱりヒーローだ。そして裏拍の2ビートやジャジーなパート、重厚なツイン・ギターのコード感など、その構成にもブン回される「Lost!!」の破格のプレイヤビリティ。ラストは今を生きるサバイバーたちのアンセムに成長した「生命のワルツ」に抑えきれないエモーションがステージとフロアで拮抗、融合。破格の人間力と彼らの優しさが更新され続けていることを思い知った。

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