Japanese
04 Limited Sazabys
Skream! マガジン 2014年11月号掲載
2014.10.05 @TSUTAYA O-WEST
Writer 齋藤 日穂
大型台風の影響で強く叩きつけるような雨と風でその日は一段と寒い夜だった。パーカーの袖に指先まで突っ込んでTSUTAYA O-WESTの会場に入ったが、そこはまるで別世界のような熱気で包まれていた。それもそのはず、この日行われた1stシングル『YON』のリリース・パーティー最終日のチケットは完全ソールド・アウトしていたのだから。"前につめてください"というスタッフの声で観客たちはぎゅうぎゅうになりながら彼らの初となる東京でのワンマン・ライヴの開演を待っていた。
SEが鳴り響き、赤、金、茶、黒とそれぞれ髪色の違うカラフルな4人がステージに登場すると割れんばかりの歓声があがる。楽器を持ち、確かめるように音を出した後に一呼吸置いて鳴らされたのは『YON』の1曲目に収録されている「swim」。GEN (Vo/Ba)のハイトーン・ヴォーカルが突き抜けるようにメロディを歌い上げる。風穴を開けんばかり音圧で演奏する彼らに対抗してオーディエンスもダイヴに次ぐダイヴで応戦。男も女も関係なく次々とステージに向かって飛んでいく。後方に目をやれば踊り狂うキッズたちでフロアはめちゃくちゃに。快進撃を続ける彼らの勢いを早速1曲目から見せ付けられた。そこから彼らは一気に駆け抜け、「nem」や「Do it」、「any」など盛り上がり必至の楽曲をどんどん投下。オーディエンスは曲が始まるたび嬉しそうにはしゃいでいた。
実は高校3年生のときに生徒会室で作ったという「Standing here」の制作エピソードでは胸が熱くなった。当時のGENは東京という自分の知らない不特定多数の人間がひしめき合う大都会で、自分のバンドのワンマン・ライヴに溢れんばかりのファンが集まってくれることを果たして想像していただろうか。いや、想像はしていたかもしれないが、それは夢物語のようにどこか遠い国での話であるように現実味はなかったのではないだろうか。"この状況を見て当時のGENはすごく喜んでると思うよ"と話した通り、高校3年生の制服を着た彼らからすれば、このステージは憧れの舞台なのだ。この日はワンマン・ライヴということもあって「Standing here」を久しぶりに披露してくれたのだが、この日に相応しい楽曲だと思った。
ライヴも中盤まで来たかと思うと楽器を置きだすメンバー。何が始まるのかと思えばメンバーの私物プレゼント・コーナーが突如開催されたのだ。それぞれ置物やオルゴールなど紹介し、KOUHEI(Dr/Cho)がバットでボールを打って、そのボールを見事キャッチした人にプレゼントされるというコーナーだったのだが、中にはPAがキャッチしてしまったり、遠くまで投げたボールが跳ね返ってステージに戻ってきてしまうハプニングもあったりと、会場中を巻き込んで楽しませてくれた。
"はい、後半戦いきまーす"という声とともに演奏がまた始まる。ひとつひとつの音に呼応するようにオーディエンスは割れんばかりの手拍子を打ったり、ぎゅっと強く握った拳をステージに向かって突き上げる。「Now here, No where」や「Lost my way」など04 Limited Sazabysの代表曲はもちろん、「758」や「bless you」など普段はあまりライヴで披露されない楽曲でも演奏が始まると歓声と共に沸く会場を見て、彼らの音がしっかり届いていることを実感させられた。それは2ビートの勢いや英詞で歌うメロディの際立て方だけでなく、日本語詞で歌うことによる伝わりやすさや力任せに音を鳴らすだけでなく少し力を抜けるようになった彼らだからこそ広く受け入れられるのだろう。
全身から音を鳴らすように「monolith」を放って本編は終了。アンコールでは「buster call」を感情的に鳴らしてこの日1番の盛り上がりを見せた。
"日本語で曲を作るようになってから言葉で影響を残したいと思った。できるだけポジティヴな気持ちを届けたい。"とGENはMCで語っていたが、その言葉通りライヴが終わった後の観客たちは一様に汗にまみれながらキラキラと笑っていた。
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