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INTERVIEW

Japanese

9mm Parabellum Bullet

2017年05月号掲載

9mm Parabellum Bullet

Member:菅原 卓郎(Vo/Gt)

Interviewer:石角 友香

ギターの滝 善充の腕の不調から、通常の長さのセットリストでライヴを行えないことを素直に表明し、ゲスト・ミュージシャンやサポート・ギターを迎えて走りきった前回のツアー。しかし驚くべきことにその間、彼らはいかにも9mm Parabellum Bulletらしいニュー・アルバムを制作していた。ここで聴ける、滝らしい怒濤且つイマジネーションに富むギター・プレイ、アルバム・タイトルである"BABEL"に紐づく、菅原卓郎が綴った一連のストーリーが、音像として立体化したときの重厚感。シリアスな状況もバンドの新しい表現のガソリンにする気概で進む、今の9mmについて菅原にじっくり訊いた。

-時間が経過しましたが、ツアーを完遂したことの感想をお聞きしていいですか?

完遂したと言っても、中止にしたところもあるし、内容自体もゲストに助けてもらってるから、普通ワンマンでやる半分とは言わないけど、1時間ぐらいのライヴだったので。でも、完全に観に来てくれたお客さんに一番助けられていたというか。そういうふうに、いろんな人に助けてもらいながらなんとかやり遂げたツアーだったっていう感じですね。

-ファンの人からは"少し休んだ方がいいんじゃないか?"という意見もありましたね。

いや、もう自分たちももちろんそれを何回も考えたし、バンドで"次はどうするよ"とか、"ツアーは全部やるの?"、"全部飛ばしちゃうの?"っていう話は出たんですけど、"なんとかできないかな?"と。大変な状況なんだけど、なかなか諦められなくて、とにかくやろうよっていうことで続けたんです。

-そこで止めなかったことが、今回のアルバムにも関係してる気はしました。

そうですね。そこで止めちゃってたら、こんなアルバムはできてない。いくらツアーをやり遂げたって言っても、あとから振り返ったときに形になってるものって、なかなかないじゃないですか? そのときの写真だとかライヴ映像だとかよりも、レコーディングすることによって、そのときに感じてた気持ちとかを直接書くわけじゃないけど、形になればなぁと思ったんですよね。そのときの記録っていうことで、絶対になんとか作りたいなと思って形にしましたね。

-アルバムの制作自体はどういうきっかけで誰が言い出したんですか?

前の『Waltz on Life Line』(2016年4月リリースの6thアルバム)ができてすぐぐらいに、次は滝が全作曲で僕が全作詞っていうコンビで1枚作ったら面白いんじゃないか? っていうアイディアがあって。それは去年の日比谷野音(※2016年6月開催)より前に出た話だったので、それがそのまま実行されましたね。

-滝さんは常に曲を作ってる人だとは思うんですけど、新曲はコンスタントにできていたんですか?

6thアルバム『Waltz on Life Line』のときに滝は曲作りがちょっとスランプ気味で、なかなか曲ができないっていう状態で。ストックはあるけどまったく新しい曲っていうのはほとんどなかったんですよ。そのあと、「インフェルノ」(2016年7月リリースの8thシングル表題曲)を書いたあたりでスランプから抜けて、作曲シーズンが到来して、そっからずっと書いてるって感じだったみたいです。今は僕らの全然知らない曲が、アルバム収録曲の10倍ぐらいあるっていう(笑)。

-そもそもツアーが始まる前から滝さん作曲、菅原さん作詞で、9mmの核と言うべきアルバムの"今"を作る計画があったと。

1stアルバム(2007年リリースの『Termination』)がその組み合わせなんで、奇しくも今年でメジャー・デビュー10年目になるんですよ。だから、10年経って当時と今を比べるっていうのも面白いという意味も含め計画がありましたね。

-アルバムを一聴したときに、めちゃくちゃ"滝 善充"感がありました(笑)。それはクラシック的なものもメタル的なものもそうだし、しかも荘厳だったりするあたりとか。

うんうん、そうですね。荘厳な。なんか「Everyone is fighting on this stage of lonely」(Track.7)の後半に聖歌隊みたいなコーラスが入ってるんですけど、あれはギターを録ってるときに思いついたらしくて。最初は入ってなくて、まさに荘厳な感じを出したいっていうことで入れたパートだったりしますね。あと、今までだったらただ破壊的な音の壁になってるようなパート――「バベルのこどもたち」(Track.8)の間奏はすごい轟音のギター・ソロが入ってるんですけど、そこもすごく荘厳なものっていうか、神殿みたいなイメージで(笑)。

-今回それが単なる要素じゃなくて全編を貫いている印象です。

曲を10曲集めるときに、ひとつの同じようなトーンを感じる、アルバム全体でひとつのトーンで貫いてる曲を選ぼうということになって。滝とディレクターを中心に選んでたんですけど、やっぱり荘厳さの種類が似てるし。激しさのバリエーションがあるように聞こえるんだけど、実は曲の構成がすごく近いものが多かったりするんです。そういう、いろんな角度から同じトーンを貫くためにやってることはあります。

-たしかに一編の小説のような印象があるアルバムで。

歌詞も、滝の中で曲ごとに"なになに時代"ってイメージがあって、手塚治虫の"火の鳥"とかも、時代が巡っていくんだけど、ずっと火の鳥がいて、同じ顔した登場人物が違うものを演じるじゃないですか。その"火の鳥"みたいな構造って、滝が"歌詞のイメージです"って出してくる前にすでに自分は感じてて。1枚のアルバムで同じトーンで表現するにはどうすればいいかなっていうときに、同じ顔の人間がずっと演じてるっていうようなこと? まぁ、文字というか歌詞にするとどういうことになるかわかんないんだけど、イメージとしてはそういうことだよな、手塚治虫の"火の鳥"みたいなことだよな、っていうことがすでに一緒だったんです。だから、お題があって歌詞を書く、っていうのはすごくやりやすくもあったし、通じてる部分があったから、説明をひとつひとつしなくてもよくて、同じトーンを目指すことができましたね。

-たしかに手塚治虫の"火の鳥"は時代は変遷していくけれど、翻弄されてる人間が主軸の物語なわけで。

そうですね。だから歌詞に書くのも、翻弄されてる人たちっていうか。俺、"これからどうなるんだ?"ってことがわからない状況にある人たちばかり書いてるなって思うんですけど(笑)。

-(笑)でも、そういうテーマですからね。

それで、歌詞についてはひとつのトーンでいいぞと思っていたんですよ。今までだったら同じような言葉とか、裏舞台設定みたいなものが同じになりそうだったら避けていたんです。"これ別の曲でやってたから、同じ言葉になっちゃうからやめよう"みたいな。そうやって禁じていたところを、同じような状況だなと思っても、もうアリにするっていう。10曲同じ話になってもいいやっていう気持ちで書き始めて。