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LIVE REPORT

Japanese

9mm Parabellum Bullet

Skream! マガジン 2019年09月号掲載

2019.07.22 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 石角 友香

結成15周年の今年、すでに4月には東京、大阪の野音でフリー・ライヴを敢行、9月にはニュー・アルバム『DEEP BLUE』をリリース、そして全国ツアーが決定している9mm Parabellum Bullet。中でも同世代対バン・シリーズであるこの"6番勝負"は、ゼロ年代デビューでサヴァイヴしてきた盟友の今を確認するうえでも重要なアプローチである。ガチンコ勝負の相手はavengers in sci-fi、the telephones、アルカラ、そしてここでレポートするUNISON SQUARE GARDEN、凛として時雨、男性限定ライヴでのTHE BAWDIESという面々だ。

PA卓の後ろまでファンでぎっしりのLIQUIDROOM ebisuに、先攻のUNISON SQUARE GARDEN(以下:ユニゾン)が登場すると、大歓声で迎えるフロア。殺気(!?)を漂わせる田淵智也(Ba)に目が釘づけになるが、鈴木貴雄(Dr)のキック一発の圧力で身体が吹っ飛ぶ錯覚に陥る。そして斎藤宏介(Vo/Gt)がスピーディに挨拶すると同時に、しょっぱなから「シュガーソングとビターステップ」を繰り出すという、出し惜しみゼロのスタートだ。完全にこの勝負、9mm(9mm Parabellum Bullet)もオーディエンスも倒しにきたなと笑ってしまった。1曲の中でスペクタクル映画のサントラが展開されるような「天国と地獄」まで、一気に演奏し、すでに絶叫マシンに乗った気分だ。

「サイレンインザスパイ」は、田淵のランニング・ベースや歌謡としての強さを感じる歌メロなど、どこか9mmにも共通する印象。ユニゾンのエクストリームさは音量のデカさではなく、どこか音楽を科学するようなロジカルな構築を生身で体現するところだと、改めて興奮しながら笑うしかない領域にあるステージを見つめる。特に「BUSTER DICE MISERY」から「WINDOW開ける」の流れは、選び抜いた音、リフ、フレーズの抜き差しがメンバー3人の呼吸や動きと連動して発生する、まるでひとつの生き物のようなアンサンブルに息を飲んだ。後者は1stアルバム『UNISON SQUARE GARDEN』からの楽曲だが、どこまでスリリングな曲に更新されていくのだろう。かっこいいとかヤバいなんて形容詞じゃ釣り合わない。

終盤前のMCで斎藤が、9mmもユニゾンも、そして奇しくもLIQUIDROOMも15周年である三つ巴に歓喜し、2007年、初顔合わせになった9mmの"The World Tour"や、2013年の"9周年惑星直列"時を振り返りながら、"同じ歳月を積み重ねてるんだから、どこかで重なるのは当然で、だからむしろしょっちゅうはやらないのがいいんじゃないか"という意味の発言をしていた。また、翌々日の7月24日リリースの初のトリビュート盤『Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~』に触れ、9mmが「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」をカバーしたのは、菅原卓郎(Vo/Gt)が"最高にバカな曲"と気に入ったことが由来だと暴露(!?)。"しばらく9mmの曲になっちゃうんで、今日はユニゾンでやります"と、本家の振り切ったポップネスを見せつける。斎藤が"ラスト!"と手を上げ、怒濤の転調とスリリングなメロディが駆け抜ける「桜のあと(all quartets lead to the?)」へ。ロング・トーンがない歯切れのいい演奏はパーカッシヴで、幸せな空間なのに、体感はバンバン飛んでくる音に撃ち抜かれて自分が蜂の巣になったような衝撃が残った。時間にして50分。一瞬の出来事のようだった。

気迫と美意識を叩きつけたユニゾンに9mmはどう応えるのか? とツーマンならではの高揚感が高まるなか、とステージに登場した9mm。全員がロング・トーンで音の壁を作り、一気に崩落するように「The Revolutionary」からスタートした。リリースから約10年を経ても、未だに"世界を変えるのさ/おれたちの思いどおりに"という意志は不変だと感じる。15年目の新たな狼煙だ。立て続けに裏のカッティングが小気味いい「ハートに火をつけて」で、菅原の声の艶、ヴォーカリストとしての安定感を改めて実感した。菅原、滝 善充(Gt)、サポート・ギター 武田将幸(HERE)とのトリプル・ギターでアレンジを完成させており、しかも菅原の自由度が高いことに気づく。特にアルバム・ツアーでもない今回のようなライヴの場合、彼らのフレキシブルな対応、各々のプレイヤビリティ、ミュージシャンシップが可視化される気がした。そして、歌の持つ意味は発表された頃と不変でありつつ、包容力をぐっと増した、今の彼らの人間性をライヴの鉄板ナンバーで再確認する。ソリッドで青く、孤独な側面を描く「Cold Edge」が、単にハードで暴れられる曲だから盛り上がるわけじゃなく、歌詞の世界観に共振してここまで強く優しい音楽になったことに感銘を受けた。もともとあった彼らの気質が、どの時代のレパートリーからも溢れている。

"リキッド!"と笑顔で歓喜を表す菅原。"ユニゾンかっこ良かったね"という言葉にフロアからも拍手が起こる。そして互いの15周年を祝い、同時代を駆けてきたバンドも含め、"こんなにストレンジなバンドが生き延びてきたんですよ"と多少俯瞰する余裕も見せる。ストレンジと言えば、今回の"6番勝負"の中には、テクニカルな部分をこれまでのバンドの文脈にない構造で聴かせる、およそ初めて観る人は驚愕するバンドが多く登場した。速いBPM、複雑な構成、高い演奏スキル。限界を超えるユニークな音楽を作り出してきたバンドの層がとにかく厚い。

現状の最新曲「名もなきヒーロー」は、クランチなカッティングと美しいフレーズが相乗効果を生んで、音で前を向かせる。さらに、ストレートになった歌詞が素直に拳を上げさせた。"生きのびて会いましょう"。そのメッセージに存在を捧げる――そんなふうに書くと悲壮感が漂いそうだが、今の彼らから伝わる温度感はニュートラルなものだ。8ビートの名曲と言えば「黒い森の旅人」もそうで、純粋でタフであり続けようとする初心にこれほど戻らせてくれるバンドは、稀有なんじゃないかと今さらにして思う。怒濤のような体感の音像の中で、自分を見いだす。そのストイックな演奏とある種のナイーヴさは、このバンドが愛され続ける最強の理由なのではないだろうか。その"怒濤"をかみじょうちひろ(Dr)はポーカーフェイスで作り続けているし、中村和彦(Ba)は今や荒ぶる9mmのステージングを一手に担っている印象がある。そして菅原はオーディエンス全員を煽りつつも包み込み、滝はこれぞ9mm Parabellum Bulletと言うべきメイン・リフや音色を司る。つまり、彼ら自身が彼らの楽曲を最高に愛していることがわかる。

ユニゾンのトリビュート・アルバムの話題に絡めて、いかに自分たちが"トリビューター"であるかを話す菅原(たしかにくるり、THE YELLOW MONKEY、NIRVANA、スピッツなど挙げれば枚挙にいとまがない)。そしてここまでのフロアの歓喜や盛り上がりを見て"誰のイベントだったっけ? っていうこのワンマン感! 同世代でどっちのバンドも盛り上がっていくのは美しいと思います"と、この"6番勝負"で表明したかった思いをたった今のリアルな言葉にしたのだった。

終盤に入り、滝のプレイにエモーショナルな熱が増し、「Black Market Blues」ではフロアからの変拍子のクラップが、さらにステージにエネルギーを送り込んだのか、滝のメイン・リフがギラつく。何度そのイントロを聴き、シンガロングしても、タイトル通り今日は今日の"新しい光"を見せる「新しい光」で、あの重力から自由に解き放たれた滝 善充が降臨。ラストは滝のタッピングで、ジャーマン・プログレも真っ青なギター・オーケストレーションが出現した。「ロング・グッドバイ」だ。重厚なのに誰より速く走るビートとアンサンブル、そしてそのカタルシス。これは9mmにしかなし得ない表現だろう。

それにしても、結成15周年のバンドがここまで尖ってるなんてどうかしてる。しかも一度体験すれば唖然とするタイプのポピュラリティを備えた尖り方。彼らの世代ならではの前例の塗り替え方をまだまだ目撃していきたい。



[Setlist]
■UNISON SQUARE GARDEN
1. シュガーソングとビターステップ
2. 何かが変わりそう
3. 天国と地獄
4. サイレンインザスパイ
5. フィクションフリーククライシス
6. BUSTER DICE MISERY
7. WINDOW開ける
8. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ
9. fake town baby
10. 桜のあと(all quartets lead to the?)

■9mm Parabellum Bullet
1. The Revolutionary
2. ハートに火をつけて
3. Cold Edge
4. ガラスの街のアリス
5. 名もなきヒーロー
6. Bone To Love You
7. 黒い森の旅人
8. 太陽が欲しいだけ
9. Black Market Blues
10. 新しい光
11. ロング・グッドバイ

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