Japanese
9mm Parabellum Bullet
2010年01月号掲載
Writer 杉浦 薫
まずはバンドの基本情報をおさらいしておこう。メンバーは、菅原卓郎(Vo/G)、滝善充(G)、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)の4人。04年3月に横浜にて結成。パンク、メタル、エモ、ハードコア、J-POPなどあらゆるジャンルを呑み込んだ独特な音楽性が主に外資系レコード店で話題となる。
これまでに、アルバム、シングル、EPを含み9枚の音源をリリースしており、09年9月9日には、日本のロックバンドの聖地である日本武道館でのワンマンライヴを大成功させ、その際の音源を緊急収録した3rd EP『Cold Edge e.p.』が、2nd EP『Black Market Bules e.p.』に続き、2作品連続オリコン・シングルランキング初登場5位を記録。正に今、ノリにノっている9mm Parabellum Bullet(以下9mm)。
彼らにとっての2ndシングルとなる「命ノゼンマイ」が、1月6日にいよいよリリースされる。このシングルには表題曲の他、「エレヴェーターに乗って」、そして、昭和歌謡曲の代表曲と言っても過言ではない、山本リンダの「どうにもとまらない」のカヴァーと、全3曲が収録されている。
まずは、「命ノゼンマイ」。08年にリリースしたシングル『Supernova/Wanderland』収録の「Wanderland」と同じく、基本のリズムは3拍子のリズムで奏でられているのだが、こちらはもっとテンポを落とし、ワルツ然としている。ヨーロッパのジプシー風とも取れるメロディーは物悲しく、聴いた人それぞれの想像と解釈を膨らませるであろう歌詞も相まって、シアトリカルなナンバーとなっている。作曲者である滝善充のアレンジ・センスが光る曲展開の多さも特徴の一つだ。特に、スクリームが導入される後半からの怒涛の展開が非常に面白い。飽きがこないので、あっという間に曲が終わったと感じるのだが、尺を確認したところ、5分強あったのには驚いた。シングルにしては長い曲であることは間違いないが、それだけ聴き応えは十分にある。尚、この曲は、1月9日に全国公開される松本光司原作のサスペンス・アクション映画「彼岸島」の主題歌に決定している。
「エレヴェーターに乗って」は、基本リズムがシャッフルなのだが、9mmお得意の速弾きギターとメタリックなドラミングが華やかに彩られている曲だ。メタルがある意味必要悪とされてしまっているロックンロールシーンにファックサインを突付けているかのような頼もしさも9mmサウンドの特徴の一つであるが、そんな姿勢が如実に現れている、非常に9mmらしい曲と言っていいだろう。
そして、山本リンダのカヴァー曲「どうにもとまらない」。昭和歌謡曲の特徴の一つとして、ベースが引導するファンクネスというものがあるが、中村和彦のベースからもそのような時代的な雰囲気が漂っており、原曲の良さをきちんと理解しているのだなと感じる。そして、カヴァーというのはバンドの個性が現れていないと意味がない。そこはもちろん、くるりの「青い空」のカヴァーと同じく、9mmらしいメタリックなアレンジが施され、個性を表現している。誰もが一度は聴いたことがある曲なので、ライヴで演奏された時には盛り上がること必至だろう。
この3曲入りシングル『命ノゼンマイ』は、9mmの表現力の幅広さと個性が非常によく現れている。是非一度聴いてもらいたい作品だ。
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