Japanese
9mm Parabellum Bullet
Skream! マガジン 2016年12月号掲載
2016.11.05 @豊洲PIT
Writer 岡本 貴之
[9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 "太陽が欲しいだけ"]の追加公演にしてツアー・ファイナルとなったこの日、開演時間にまずステージに上がったのは9mm Parabellum Bullet(以下:9mm)の菅原卓郎(Vo/Gt)だった。滝 善充(Gt)の左腕の不調により一部中止を経て各地でゲストを招いて行われてきた今回のツアーについての説明、そしてこの日のライヴもいつものワンマンより短い時間になってしまうこと。そのひとつひとつの言葉にあたたかく反応する観客たちに向けて、"演奏MAXでいくんで、みんなも全開できてください!"と声を掛けると、もちろんそのつもり、と言わんばかりの大歓声が湧き起こった。"ライヴを楽しみつつ、自分たちもバンドを盛り立てよう"という気持ちで会場に足を運んでいるファンも多いようだ。そして、ゲストであり初対バンとなるこの先輩バンドにいかに影響されたかを話してから、菅原はGRAPEVINEを呼び込んだ。
"これが9mmのお客さんか......"と、GRAPEVINEの田中和将(Vo/Gt)は素朴な感想を呟き観客を笑わせるリラックス・ムード。西川弘剛(Gt)の奏でるディレイがかかったギター・フレーズからグラマラスなロック・チューン「FLY」になだれ込み、タイトルどおり少しずつ離陸するように上昇していく彼らは、9mmの激烈なサウンドとは異なるサイケデリックなギター・ロックを次々と披露。9mmファンにはあまり馴染みがないせいか、観客はじっと聴き入っているような反応だったものの、アコギで軽やかに叙情的に歌い上げた「1977」、"禊説法"、"釈迦に説法"という日本語の語感がストレートなロックにピタリとハマることを教えてくれた「MISOGI」、ラストは「風の歌」でゆったりと夕凪のような優しいメロディを聴かせると、観客から大きな拍手を受けてステージを降りた。短い時間ながら、起承転結を感じさせるところはさすがのライヴ巧者ぶりだった。
しばしの転換時間を置いて、いきなり耳をつんざくSEが炸裂すると、ステージ上のバックドロップが威風堂々と観客の前に姿を見せる。菅原、滝、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)、サポートにHEREのギタリスト 武田将幸がステージに上がり5人編成でのライヴが始まった。オープニングに選ばれた曲はツアー・タイトルでもある「太陽が欲しいだけ」。大歓声を上げると共に両手を掲げてバンドを迎える観客たちと、まるで戦いに臨むかのようなバンドの意気込みを真っ赤な照明がさらに煽り立てる。滝と武田はパートを分け合っているようで、続く「Discommunication」では滝はイスに座りシンセを弾き、コーラスを取る。こうしたシーンにバンドがライヴを行う苦心が見て取れるが、そんな気持ちすら瞬間で吹っ飛ばされてしまう激しい演奏が繰り広げられる。"Oi! Oi!"と咆哮しながら、ほぼ観客全員の手が上がっているとしか思えない光景は壮観極まりない。ハイスパートな2ビート・ナンバー「モーニングベル」では滝がギターの演奏に戻ると、タッピングでオリエンタルなフレーズを奏でて存在感を見せる。MCを挟み、かみじょうのツーバスが最大限の威力を発揮する8thシングルの表題曲「インフェルノ」で場内をかき混ぜるように盛り上げる。このツアーでは初めて演奏したという「ロンリーボーイ」では、他の楽曲よりも音数が少なく間を大事にした演奏で歌メロの魅力が前に出ていた。衝動に任せたライヴのようでいて、緊張と緩和のコントロールを知り尽くした心憎いアンサンブルと、菅原の絞り出すように歌うメロディはドラマチックで、この日のセットリストの中でもことさら印象に残った。
"「太陽が欲しいだけ」って名前にしたおかげで、あんまり太陽に出会えないツアーだったんですけど(笑)。今日、出会えたんで"という菅原のMCは、日中の陽気を指してのことだったのか、それとも目の前の観客のことを太陽に置き換えてのものだったのか? それは考えすぎかもしれないが、"終わり良ければってことで、最高です"とのMCには大きな拍手が湧き起こった。煌びやかにリズムを刻む16ビートのドラムとロングノートを弾くベースの上をギター・リフが彩る「スタンドバイミー」の演奏も、バンドの穏やかな一面が感じられてまた魅力的だ。
"これからも山あり谷あり海あり、いろいろあってやっていくんですけど、みんなの力を貸してください"とのMCから、"いけるかー!!"と号令一発、「反逆のマーチ」から後半戦へと突入。「The Revolutionary」で"世界を変えるのさ"と叫ぶ菅原の声は自信に満ち溢れていて、ちょっとやそっとじゃ諦めないタフなバンドマンぶりを感じさせる力強いものだったと同時に、レベル・ミュージックとしての9mmのアイデンティティを如実に物語っていた。最後は「生命のワルツ」で直情的な演奏と哀愁のあるメロディを聴かせてギターのフィードバック音が鳴り響くなか、バンドはステージを降りた。
エンディングSEが流れるも、しばらくアンコールの声が止まず。そして、再び姿を現したのは4人。メンバー4人のみで演奏することを菅原が伝えると、会場中からこの日一番の爆発的な大歓声が上がった。曲はバンドの気合を感じさせる爆音チューン「Talking Machine」。"1、2、3、4!"と会場一体となったカウントから"踊れー!"と煽動する菅原の声に、フロアの後方ではサークルピットもできて大盛り上がり。凄まじい音塊を叩きつけてバンドが去ったステージにスクリーンが降りてくると、最後に待っていたのは、"2017年春 7thアルバム発売決定"との告知。ドッと歓声が上がり、ファンにとって最高の余韻を残して終演となった。後日、滝がバンドでのライヴ活動を一旦控え休養することが発表されたが、アルバムの制作は今までどおり4人で行うことも宣言された。今回の出来事を経て、9mmがどんなアルバムを生み出すのか、今からとても楽しみだ。どんなアクシデントがあっても、それを物語として進んでいくからこそ、ロック・バンドは魅力的なのだから。
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