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LIVE REPORT

Japanese

9mm Parabellum Bullet

Skream! マガジン 2015年01月号掲載

2014.12.10 @新木場STUDIO COAST

Writer 石角 友香

心地よい重さの伝言を受け取ったような、そしてそれを誰かに届けたくなるようなライヴだった。10周年の締めくくりとなる新木場STUDIO COAST 2デイズの初日のワンマンは、ワンマンとしては年内最後。コーストのお馴染みの看板下には"Next Bullet Marks Tour 2014"のツアー車が展示され、長い旅路を想像させる。会場に入ると、ライヴ当日に発売したばかりの6thシングル『生命のワルツ』購入抽選会でメンバー4人からそれぞれプレゼントが用意されているのだが、滝 善充(Gt)からは実家の"滝家の米"が出品。いろんな意味でテンションを上げてくれる人たちだ......。

会場が暗転しATARI TEENAGE RIOTの「Digital Hardcore」が流れ、双頭のモンスターのバックドロップがせり上がる瞬間、何度も経験してきた瞬間だが毎回、興奮することをこの日改めて実感した。冒頭から4人の楽器、菅原卓郎(Vo/Gt)のヴォーカルの出音の良さに感嘆してしまった。しかも「Discommunication」「Cold Edge」「Black Market Blues」「Answer And Answer」の4連発。激しいアクションのみならず、お立ち台に乗ったり降りたり(エフェクターを踏むために)、ミュージシャンとしてさらに前人未到の領域にあるような滝にまたしても目が釘付けになる。1曲1曲が濃く、しかも潔く展開していく体感の速さ。なんて瑞々しいのだろう。
バンドの中でもポピュラリティ高めなメニューのあいだに「We are Innocent」を挟む辺りもアニバーサリー・イヤーに相応しい印象。少年心に大人の説得力を増した卓郎のヴォーカル表現に、自分たちらしく進化してきたこのバンドの地力と、決してシニカルになることのない不可侵な無垢を見た思いだ。滝のミュートとかみじょうちひろ(Dr)のスティック回しのエンディングにため息が出た「Termination」からの「オマツリサワギニ」は繋がりもスムーズ。2月の日本武道館以来、初めてナマで聴くこの曲。彼らのアレンジにしては隙間の多い地メロが、プリミティヴなビートを際立たせ、中間部のドラマティックな展開へのカタルシスも何倍にも増した、というより本来曲が持っていた構造の本領を発揮したというべきか。

"ここまで28本ツアーやってきたけど、1回もやってない曲をやってみようか"と卓郎が切り出し、インストの「Wild West Mustang」を披露。この日だけじゃないし、このツアーだけじゃない。9mmほどツアー中に異なるセットリストで日々挑むバンドは珍しいんじゃないだろうか。休眠状態の曲が限りなく無だということは、常に楽曲群がその時期時期にさらに良くなる要素を持っているということでもある。続いて「Wanderland」が演奏されたとき、新曲「生命のワルツ」とのニュアンスとの符牒を感じたのだが、決して「Wanderland」が習作で「生命のワルツ」がその進化版というふうには聴こえない。相互に作用して"今"このときの演奏に進化してるのだ。ライヴ中にそんな閃きが何度も起こり、1曲1曲最大限に発光して燃え尽きる。1曲への集中度が上がったせいか、ライヴの進行が体感としてはものすごく速い。「ラストラウンド」での中村和彦(Ba)の地を這うような導入のライン、そのラインとチェイスするような2本のギターが剃刀のように鋭い。音の説得力がすべからく高い。斬られにいっているようでもあり、立ち向かっていっているようでもある、そんな気分で曲が終わるごとに深呼吸してしまうほどだ。

そうした実感を裏打ちするような卓郎のMCはこうきた。"ライヴに参戦する、って変な言葉だと思ってたけど、音楽は戦いですよ。別に俺らの音が弾丸のようだとかいう意味じゃなくて、前向きな傷だという意味で。そしてまたみんながここに戻ってくるという手はずになってるんだよ"。あまりにもこのライヴの印象通りで、バンドの意志に呼応してテンションが上がるフロア。たまに謎の発言もあるけれど、言葉に対する誠実さに於いて菅原卓郎という人は抜きん出ていると思う。そしてその言葉の印象を残したまま「命ノゼンマイ」に突入する上手さ。そして滝のよく歌うギターの表現力を軸にさらにドラマ性を増した「カモメ」。ストリングス・アレンジもいいが、アウトロの重量感はバンドだけのほうがむしろ出ているんじゃないか。

明快にトーンの違うブロックながら、15曲も演奏したことが信じられない気持ち的なペースの速さ(速さばかり書いてる気がするが)で、終盤は「ハートに火をつけて」から、さらにフロアをバウンドさせる。すべからく命について歌ってきた9mmだが、特に"再生"や"強く自由に生きる"ことが腹の底から沸き上がる「新しい光」「The Revolutionary」の連投は、また聴き手ひとりひとりにとって大きな覚悟として自分の中に響いたはずだ。何か世界が不穏で不寛容な空気に侵食されるとき、9mm Parabellum Bulletのロックは単なるストレス発散のためでも憧れでもなく、強度を持って胸に迫ってくる。そして、その最も明快な示唆が2014年に生まれた「生命のワルツ」であることは間違いない。本編ラストにこの曲の哀愁を帯びたフレーズを滝が奏で、ノイジーな音塊が放たれた瞬間、何か新たな生物が誕生するような、同時に確固たる信念が打ち込まれたようで、震えながら半笑いしてしまった。ツアーで磨かれ、研がれてきたこの曲。ライヴで演奏する手応えをメンバーは感じ、受け取るオーディエンスも曲のメッセージに呼応するように生命を爆発させる。

ここまで物理的に激しい音像のライヴでありながら、とても温かな気持ちと笑顔を生むライヴは、おそらく彼らとしても10年の進化の過程を経たからこそ創り上げられたのだと思う。衝撃や感動や、あらゆる情報さえも"傷"となって、11年目もまたこのバンドとこのバンドの音楽を必要な人たちと同じ場所にいたい。
今からだって遅くはない。何歳だって構わない。今、9mmは新たなピークに突入している。

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