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LIVE REPORT

Japanese

version 21.1(サカナクション/OGRE YOU ASSHOLE/the telephones)

2009.06.13 @新木場Studio Coast

Writer 村上 ひろ美

 このイベントは2009年3月12日、金沢にあるライブハウスで対バンを終えたサカナクション、OGRE YOU ASSHOLE、the telephonesの3バンドのヴォーカルによる打ち上げでの話しをきっかけに行われたそうだ。2010年の主役になるであろうこの3バンドによるこのイベントを皮きりに、2010年の音楽界を更に盛り上げていこうという主旨のもと、ここ新木場Studio Coastには音楽を愛する若者がつめかけた。

〈サカナクション〉

 6月の蒸した空気以上に熱気で溢れた会場のフロアは開演10分前にはびっしりと人で埋め尽くされた。とてもじゃないけどライヴ・レポートのメモを取ることなんてできそうにない。自分の立つ場所を陣取るので精一杯だ。天井には直径1.5~2mはある特大ミラーボールが設置されており、新木場Studio Coastは今日も巨大なディスコのように見えている。

 DJのプレイする曲が消え、会場は真っ暗になった。「Ame(B)」が流れ、拍手と歓声の沸き起こった会場のステージにキラキラ光るネオンに照らされメンバーが入場。ヴォーカルの山口がジャンプし会場を一層盛りたてる。一旦曲が止むところでは会場は拍手で包まれ、そんなことはないとわかってはいたものの、ライヴの雰囲気に呑まれ、今日はもしかしたらここで終演なのではないかと錯覚させられた。
 ジャンプする客で会場は揺れ、そのまま2曲目、「ライトダンス」に突入。<♪明日が見えなくて>のサビの部分では客席とメンバーが一体となり大合唱となった。

 「みなさん、最後まで楽しんでいって下さい!」と山口が言い、「インナーワールド」へ。観客は会場の床を抜く気なのではないかと思うほど飛び上がっていたが、その後の「サンプル」ではさっきとは一変し、ステージを見守っている。まるで合図が出るのを待っているかのようだ。山口が手をあげタイミングを教える。「ここだ!!」と言わんばかりに再び会場は熱気を増した。
 会場が暗くなり、「minnanouta」のバスドラとシンセサイザーが会場に響く。山口がジャンプして手を挙げて盛り上げ、メンバーを紹介していく。「いくぞ~!!」の掛け声と共に会場の空気も一気に最高潮へと達していく。その勢いのまま「ナイトフィッシングイズグッド」。ジャンプしていない人はいないんじゃないかというくらい会場は一つの巨大な力を発していた。

 「ありがとう!」「どうも改めまして私たち、僕たちサカナクションです。」と、山口の挨拶でMCが始まった。この企画の始まりを話し始め、演奏の順番の話になった。「この順番ジャンケンで決めたんです。」というと会場からは驚きの声があがる。「勝って1番やらせてもらって。機材多いからさ、転換の時間待たせちゃうからさ。お客さんに楽しんでもらいたいと思って。」というと、細かいところまで配慮するサカナクションの愛情に歓喜した声が上がった。「この3バンドでやることはすごく意味のあることなんですよ。」とversion21.1の意義について語尾を強くし、「ここにいる人達はみんな、センスいいと思います。」とリスナーの大切さを語った。

 MC後は「ネイティブダンサー」、続いて「セントレイ」へと疾走した。サビに入る前などには山口が「ヘイ!!」と声を掛け、一層盛り上がる会場を引っ張っていく姿に、この企画の主旨通り、彼らが次世代を担うことを実に頼もしいと感じさせた。
 「次で最後の曲です。次もいいバンド出るんで皆さん最後まで楽しんでいって下さい!サカナクションでした!」こうして会場とサカナクションがしっかりと一つになるのを肌で感じ、最後は「アドベンチャー」で幕を閉じた。誰もが手を叩き、会場は拍手喝采に包まれた。

〈OGRE YOU ASSHOLE〉

 客電が落とされ会場が暗くなると、ステージ上から「コインランドリー」が始まった。まだステージと観客席の間を覆っていた薄いカーテンの開く前の話だ。その一瞬に観客は耳を凝らし、歓声を上げた。カーテンが開いてOGRE YOU ASSHOLEのメンバーが顔を表す。観客は縦に体を揺すって応える。目を瞑っていても、彼らの動きに目をやっても、確かなグルーヴを感じた。私自身、心地よくて心がうっとりし始めた。気が付くと、始まったばかりなのに、すでにOGRE YOU ASSHOLE が作り出す統一された空気の一員となっている。

 「フラッグ」「しらない合図しらせる子」と続き、観客は“ノル”というよりも、1つ1つを“噛みしめて”聴いている。ドラムの勝浦はタムを中心に落ちついたリズムを生み出し、そこへ平出のベースラインが加わり、道を切り開いていく。その道に、ギターの馬渕が花を咲かせ、出戸がその道を歩く。見ている側の頭にはいつの間にか情景が浮かび、心にはこれ以上ないくらいの愛しさが溢れる。それに応えるこのように、OGRE YOU ASSHOLE は4人のバランスをとって全てに徹した演奏を魅せる。
 4曲目の「J.N」では照明が暗い青に照らされ、それぞれが深いところからメロディを運び、勝浦がロールでアップテンポへと一気に導く。ステージの上の4人に、そして彼らによって生み出されたメロディを目の当たりにし、誰もが皆釘付けになっていた。

 「どうもありがとう。」という出戸に盛大な拍手が贈られる。「え~こんばんは。OGRE YOU ASSHOLEです。」の言葉に続き、このイベントの発端について話し始めると、先ほどのサカナクションの山口のMCですでに周知になっている客の反応の薄さに、「もう、みんな知ってんのか!(笑)」と笑いを誘う場面もあった。フロントマン3人での打ち上げの際、このイベントを6月にやろうとなったが、レコーディングと重なるため、当初は時期を変更して欲しかったと明かした。しかし「ここでOGRE YOU ASSHOLE がやらなきゃ僕らもやらない。」と山口、石毛に熱く諭され、「僕らどんだけ愛されてんだ。レコーディングで断念しようとしてたけど、死んでもやるしかないなと、やってやろうじゃないかという気持ちで来ました。」というと会場からはそれを受けた観客から拍手と声援が飛んだ。「今日はうまくしゃべれたよ僕も。」そういって締めた出戸のMCは今回このイベントへのOGRE YOU ASSHOLE 自身の意気込みを強く語った。

 MC後は「サカサマ」「アドバンテージ」「かたっぽ」「ピンホール」と続き、照明が初めて全開に照らされた会場、そしてOGRE YOU ASSHOLE 自身も最高潮へと達していった。
 「どうもありがとう!またこの3バンドでやりたいね!今度は僕ら以外がレコーディングの時にやりましょう!(笑)」そのままドラムの重く深いエイトビートでひとり乗りが始まり、今まで以上にステージの上も下も高揚していく。「ネクタイ」ではエフェクターの拡張音に誘われて会場の雰囲気は引き立てられ、ステージの上は夢幻のように幻想的になった。最後という獲物に向かって、OGRE YOU ASSHOLE は音を空気を、そこに居合わせた全てのものを追い込んでいく。
 OGRE YOU ASSHOLEはそれぞれが音を生み出すことにストイックであり、彼らによって生み出された音楽は何にも劣ることなどない。世の中に完璧というものなんて、ないのかもしれない。しかし、その言葉はOGRE YOU ASSHOLEに向けて使うのに相応しい。彼らは本当に音楽と目の前にいるリスナーを愛していた。

〈the telephones〉

 2つのバンドが演奏を終え、会場はこれまでにない熱気に包まれていた。DJブースの前には興奮冷めやらぬ客達がそれを囲むようにして、今か今かとトリの登場に心と体を躍らせていた。
 DJの曲が止み、ステージ上のスクリーンには大きいミラーボールを後ろにして「the telephones」の文字が映し出される。それを目にした会場は一気に冷静さを失った。薄いカーテンが開き、白いミラーボールが映し出され、キラキラと回る。そこへ、黄色、青、赤といったアフロヘアでthe telephonesは登場し、観客の前にいくと手を挙げて挨拶をする。会場は始まったばかりとは思えないほど、全ての人が手を叩いて応える。

 「Oh!yeah~!」「We are the telephones!!」「最後まで楽しんでいきましょう!「Love&DISCO」の演奏開始と共に会場も、トップギアの状態でスタートした。「踊れ~!!!」という石毛の指示を受け、会場は今までにないくらいの盛り上がりをみせた。ジャンプし地面が揺れ、モッシュが起こる。最初からテンションがマックスなのはthe telephonesも観客もお互い様だ。最初から飛ばしすぎではないか、いや、これが彼らなのだ。彼らに飛ばしているなんて感覚はきっと微塵もないだろう。石毛が歌詞の合間に「新木場~!」と叫びを入れる。新木場バージョンのthe telephones、楽しすぎる!キーボードのノブも演奏の間ごとに大暴れし、華奢の体でこんなに暴れて大丈夫なのかという不安もすぐに掻き消される程、その動きは止まらない。今、この会場の勢いは誰も止まらなければ、誰にも止められない。気が付くと、2曲目の「RIOT!!!」から一気に「Monkey Discooooooo」まで突っ切っていった。
 次の「Beautiful Bitch」ではギター・サウンドがアグレッシヴさを増した雰囲気の中、客との掛け合いやコーラスが始まる。途中、「ストップ!!」という合図で会場は一瞬静止したり、また、手を挙げた石毛が「新木場そんなもんじゃね~だろう!」「オー!エヴリバディ・カモーーン!!!」というと会場は狂ったかのようにモッシュやダイヴで揺れた。次の「electric girl」へと続くが、the telephonesはこれだけの観客とこれだけの会場のテンションを止めることなく上げ続ける。彼らはまさにモンスター・バンドだ。

 「こんばんは。埼玉の北浦から来ました、the telephonesです。」という自己紹介からMCがスタート。やはり石毛もこのイベントの主旨を訴え、「必要なのは、ここに来てるみんなの力が必要だと思うんですよ。一郎さんも言ってたけど、ここにいるみんなは本当にセンス良いですよ。」とお互いの必要性と感謝を述べた。「2010年代を担ってよと、アホかと思う次第です。でもみんな音楽大好きだし、いっちょやっちゃおうかなと思います。」とversion21.1から先へ広がる未来への意気込みも話した。また、7月にアルバムを出すことを発表すると会場からは歓喜の声が沸き上がった。

 「新曲です。」と言って始まった「Jabberwocky」で再び会場を熱気の渦へ引き戻した。その後、「fu~shit!!!」から最後の「urban disco」までに、彼らは会場内にいる全ての人をthe telephonesの虜にしてしまった。
 全曲が終了し、「また会いましょう!サンキュー!バイバイ!!」と言い、ステージから彼らは居なくなった。しかしまだまだ熱気に溢れ返った会場からは、どこからともなく、「アンコール!!アンコール!!」の声、そして大合唱が沸き起こる。

 2分くらい経っただろうか、彼らはステージに舞い戻って来た。石毛が「アンコールありがとうございます。すげぇ嬉しいです。ORGEとサカナクションにもう一度でっかい拍手を!」というと温かい拍手に会場は包まれた。音楽が本当に大好きなこと、音楽以外ではうまくいかなかったことなどを話した後、「今とてもハッピーです!このハッピーなバイヴスをみんなで共有しましょう!!」と今の気持ちを語り、「フリースロー!!!!!!!!!!!!!」と叫んだ。彼の素直な言葉に打たれながら、観客もそしてthe telephones自身も最後の曲を思う存分味わった。

 the telephonesのアンコールが終了し、ステージから撤退するかと思いきや、石毛が「え~、今日は記念すべきなので、みんなで写真など撮ろうと思います。撮りたい方はぜひ写真を撮って下さい、とのことです。」と言い、ステージにはサカナクション、OGRE YOU ASSHOLEのメンバー、そしてDJを務めた前田氏とコジマ氏が登場した。
 客席は携帯を取り出し、両手を挙げて必死にその光景を納めようとしているお客さんで溢れた。「また、来年このメンバーでやるんで、遊びに来てください!」とこのイベントの再来を約束をし、最後に「一本締めしていい?」「2010年度を担う、この3バンド!!お手を拝借、よ~(パン)!!」ときりの良い終わりを飾った。今回、このイベントは2010年を担う3バンドが集り、期待と興奮を背負う中、開いたその幕の中には、紛れもない存在感とパワー、そして客を惹き付けて止まない音楽センスとカラフルで懐の深いメンバーの人間性が充満していた。
 2010年という区切りと始まりに向かって、音楽をやる側も聴く側も、双方がお互いの存在の不可欠さを改めて意識し、繋がりのあることをしっかり受け止めた。出演したサカナクション、OGRE YOU ASSHOLE、the telephonesはもちろん、会場に来たお客さん、DJやスタッフ、彼らの誰が欠けても、きっとこのイベントは成功とはいえなかっただろう。今日、ここ新木場Studio Coastに集まった彼らであったからこそ、このイベントは意味を持ち、音楽の未来を広げ、成功を手にしたに違いない。

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