Japanese
ねごと
Skream! マガジン 2014年05月号掲載
2014.05.01 @Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
Writer 沖 さやこ
今年3月にリリースされた2ndミニ・アルバム『"Z"OOM』のリリース記念ライヴ・シリーズ"お口ポカーン!! "Z"OOM in X,Y,Z day"。7月に開催されるZ dayに先駆けて、X dayとY dayをMt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて2デイズ開催。筆者はその初日となるX dayに足を運んだ。開演前にはリーダーであるベーシストの藤咲佑による場内アナウンスが流れ、ふんわりした空気でフロアをあたためる。SEと共にメンバーがステージに登場すると、1曲目は蒼山幸子のキーボード弾き語りで幕を開ける「インストゥルメンタル」。透明感のある蒼山の歌声と鍵盤の音色にバンドの音が合わさった瞬間、ねごとが描く夢の景色が広がった。蒼山が"こんばんは、ねごとです!"と一言告げると「サイダーの海」へ。キュートかつ芯のある歌声に、優雅でスパイスのあるサウンドが心地よく響く。『"Z"OOM』収録の「Dreamin'」はトランポリンのように弾む澤村小夜子のドラムと、沙田瑞紀による熱いギター・ソロが大きなグルーヴを生んでいた。
昨年は様々なバンドとの対バンを繰り返していたねごと。この日は約1年ぶりのワンマン・ライヴとなった。「七夕」では蒼山がハンド・マイクでステージ前方へ出たり、場内からワイパーが起こるなど、キャッチーで新しいアプローチも。鍵盤なしの「M.Y.D.」では沙田のクールでムーディーなギターがヴォーカルと同等の存在感を示すなど、バンドとしてのしっかりとした体幹に頼もしさを感じる。「メルシールー」のイントロのキーボードが鳴った瞬間、客席から歓声が沸く。黒い髪を振り乱しドラムを叩く澤村の姿も美しく、彼女の力強く緩急のあるドラミングが曲の持つスケールをより引き立てていた。演奏中は毅然としている4人だが、MCとなるとほんわかした空気に。このギャップも彼女たちの魅力だろう。"ここでみんなといい夢を見ようと思います"と「真夜中のアンセム」へ。彼女たちは音色もしなやかだが、演奏するその姿も同様だ。「ビーサイド」では4人が自らの音に身をうずめるようにゆっくりと髪を振る姿に、気品と荒々しさが滲む。そのエモーショナルな空間をよりディープにした「NO」は大きなハイライトで、情熱が迸る一音一音に終始胸を抉られる思いだった。
このライヴには"観に来てくれたお客さんにも"Z"OOM inする"という意味があり、事前にリスナーからアンケートで"演奏してほしい楽曲"と"カヴァーしてほしい楽曲"を募っていた。後半はそのリクエストに応えたセットリストで攻める。リクエスト1位だった「ふわりのこと」、過去に1回しかライヴで演奏したことがなかったという「彷徨」を披露したあとはカヴァー・タイムへ。MC中に結成当初によくコピーしていたというナンバーガールの「IGGY POP FAN CLUB」や、RED HOT CHILI PEPPERSの「Can't Stop」のさわりを披露するなど、見ているこちらにはとても嬉しいサービスを挟み、初めてカヴァーするというBUMP OF CHICKENの「天体観測」を披露。音に初々しさもあり、2000年代の名曲を歌う蒼山の声も新鮮に響く。その後は「Re:myend!」「迷宮ラブレター」「シンクロマニカ」と可憐に畳みかけ、蒼山の"みんなの声が聞きたいんです!"という言葉のあとに演奏された1stシングル曲である「カロン」は、バンドと共に曲が成長してきたことを感じさせる、人を強く引き込むパワーがあった。ラストの「勲章」の後半のシューゲイザー的展開は圧巻で、会場をあたたかく激しく、そしてなにより優しく包み込んだ。
普段はアンコールを行わない彼女たちだが、鳴り止まない拍手に応え再びステージに現れ、最後に1曲「ループ」をプレイ。現在のバンドの安定と充実を感じさせるワンマン・ライヴだった。7月20日にEX THEATER ROPPONGIで行われる"Z day"は、更に大きくなった4人の姿が見られることだろう。
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