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INTERVIEW

Japanese

ねごと

2017年09月号掲載

ねごと

Member:蒼山 幸子(Vo/Key)

Interviewer:沖 さやこ

『アシンメトリ e.p.』以降、大胆なサウンド・アプローチや赤裸々な歌詞に挑戦し、聴き手を驚かせてきたねごと。精力的なリリース・ペースにも驚きだが、今回はその作品内容も予想だにしない意外性のあるものだった。今作は人力飛行サークルを舞台にした青春映画"トリガール!"とタッグを組んだシングルで、収録曲はスピッツの名曲のカバーとなる主題歌「空も飛べるはず」と、彼女たちによる書き下ろしの挿入歌「ALL RIGHT」。それぞれのMVには映画で主演を務める土屋太鳳が登場している。"トリガール!"とのコラボレーションは、彼女たちにどんな刺激をもたらした?

-ねごとが映画"トリガール!"の主題歌と挿入歌を担当するに至った経緯とは?

"トリガール!"の監督を務める英勉さんから、"トリガール!"の映像と一緒に"ねごとに主題歌と挿入歌をお願いしたい"とお話をいただいたことが始まりでした。映像を見る前は勝手にラヴコメみたいな感じなのかなと思っていたんですけど、見てみたら土屋太鳳ちゃんが演じる主人公の鳥山ゆきなちゃんがすごくパワフルで歯に衣着せぬ物言いの女の子だったりして(笑)、見ていて気持ちのいい映画だったんです。同じ女子としてもこういう子好きだなと思える映画だったし、もともと私たちのことを知ってくださっている監督さんからのオファーだったこともあって、ぜひやりたいなと思って。

-主題歌がスピッツの「空も飛べるはず」のカバーであることも最初から決まっていたのでしょうか。

人力飛行サークルが舞台の青春映画なので、監督さんも「空も飛べるはず」を主題歌にしたかったみたいで。"トリガール!"という映画だからガールズ・バンドによるカバーがいいと思われた監督さんが、スピッツさんサイドに(ねごとがカバーした「空も飛べるはず」を主題歌にしてもいいかどうか)確認をしてくださって、光栄なことに(スピッツのギター・ヴォーカルである)草野マサムネさんが"いいよ"と言ってくださったそうで......。それを聞いて私たちも"こんな機会、人生でなかなかない。公式にOKをいただいたならやるしかない!"って。プレッシャーもちょっとはあったけれど、スピッツは本当に大好きなバンドなので、やらせてもらえるからには堂々と(笑)。"トリガール!"を観る人は世代的に若い人が多いと思うので、もしかしたら"なんとなく知ってるけど......"と原曲自体がぼんやりしているかもしれなくて。おこがましいかもしれないけれど、自分たちが名曲を引き継ぐような気持ちでカバーしました。

-幸子さんが「空も飛べるはず」と「ALL RIGHT」に関する公式コメントでスピッツのことを"ロックもポップも、甘さも鋭さも、両極端のものを兼ね備えた最強にかっこいいバンド"とおっしゃっていましたが、それはねごとにも共通する部分だと思います。

ねごとは"こういうバンドを目指したい"という具体的なものがあったわけではないんですけど、私個人はそういうマインドのバンドがすごくかっこいいな、自分たちもそうあれたらな......と思っていて。スピッツはJ-POPシーンでも知られていて、ロックのシーンでもレジェンドのポジションにいて。そういうバンドはなかなかいないと思うし、それがすごくかっこいいなと思うので、スピッツは憧れですね。

-実際スピッツの音楽に触れたのはいつごろですか?

「空も飛べるはず」を知ったきっかけは中学校の合唱曲だったんですけど、実際に魅力を知ってちゃんと聴くようになったのはねごとを組んだあと、高校3年生の終わりから大学生にかけてくらいです。高校生のとき、地元のライヴハウスで同年代のバンドがスピッツのコピーをしていたんですよね。高校生なので上手ではないんですけど(笑)、それでも"すごくかっこいい曲! 誰の曲なんだろう? これスピッツなんだ!"と衝撃的だった......という思い出が強烈に残っていて。それでまず『ハヤブサ』を聴いてみて、そこからどんどん掘っていって。

-"トリガール!"も先輩と後輩の青春物語で、幸子さんにとってスピッツも高校時代の青春に欠かせない存在で、いまはバンドとしても先輩後輩関係にあるという。作品の内容とねごとのリアルな部分もリンクしているなと。

うん、だからすごく縁があるなと思って。こういうお話がいただけて本当に嬉しいです。

-「空も飛べるはず」はギターの沙田瑞紀さんがアレンジを?

そうです。原曲よりもテンポをちょっとだけ上げてるんですけど、原曲のイメージを壊しすぎないようにしたかったので、極端なことはせず。あと、私たちはガールズ・バンドなので、瑞々しいアレンジにしすぎてしまうとかわいすぎてサラッとしてしまうことを瑞紀は懸念していたみたいで。だから"グランジ感が出せたらいいなと思って、あえてちょっと渋い音作りにした"と言っていましたね。ギターの感じもそうだし、エレピもちょっとタイム感をずらしたりして。

-ねごとの「空も飛べるはず」は広く包み込むサウンドスケープだなと思いました。それもあって、ねごとの母性を感じて。

あははは! 母性かー......。たしかにそうかもしれない。母性を出そうと思ってアレンジを組んだり演奏をしたり歌ったりしたわけではないんですけど(笑)、スピッツが好きだ! という気持ちが一番大きかったから自然と曲の中に入り込めるというか。歌うときもあまりこうしようああしようということは考えず、狙いすぎずに歌えたかなって。

-そうですね。肩肘張らずに自然体で、混じりけのない愛が注がれているなと感じる歌と演奏とアレンジでした。

本当にソングライティングが素晴らしいですよね。まずAメロを何回か歌ったときに、"あぁ......。いい歌詞だな......!"としみじみ思って(笑)。Aメロだけでなくどのパートでもそう思ったし、あと歌うのがすごく難しい。草野さんはなんてことないように歌っていらっしゃいますけど、こういうシンプルなバラードでこのメロディを歌うのは本当に難しくて。改めてスピッツというバンドにも、ソングライターとしての草野さん、ヴォーカリストとしての草野さんのすごさも再認識させられました。