Japanese
ねごと
Skream! マガジン 2018年06月号掲載
2018.04.21 @渋谷TSUTAYA O-EAST
Writer 沖 さやこ
2017年はフル・アルバムを2枚、シングルを2枚発表し、今年に入ってからも楽曲提供やPHOENIXの来日公演のサポート・アクトなど、精力的な音楽活動を続けているねごと。フル・アルバム『SOAK』のリリース・ワンマン・ツアーは約2ヶ月で全国16ヶ所を回った。ツアー初日の恵比寿LIQUIDROOMでは気合十分といった様子で、フレッシュ且つ力強いライヴを見せた4人。ツアー・ファイナルでは堂々と自然体で自分たちの音楽と演奏とその場の空間を楽しむ彼女たちの姿が印象的だった。
オリジナルSEをバックにメンバーが登場すると、ステージの背景一面に楽曲とシンクロしたグラフィックが映し出される。SEからそのまま『SOAK』収録曲「INSIDE OUTSIDE」へと繋ぐと、会場一帯を一気に自分たちのワールドへと引き込んだ。ねごとは近年、音楽と映像/照明の一糸乱れぬコラボレーションにも力を入れたライヴ・パフォーマンスを行うことも多い。ファイナル公演ではこの日ならではの特別な演出も施され、スタイリッシュで洗練された照明と映像は、彼女たちの持つ華や楽曲に宿る力強さと繊細さをさらに美しく彩った。
映像とともに「DANCER IN THE HANABIRA」など4曲を畳み掛けると、蒼山幸子(Vo/Key)は凛とした表情で"ツアーはどの夜も最高だったんですけど、今日は16本のツアーで最高の景色を作りたいと思います"と宣言する。現在ねごとは基本のバンド・セットを基盤として、沙田瑞紀(Gt)はシンセやラップトップ、サンプラーなど、藤咲 佑(Ba)はシンセ・ベース、澤村小夜子(Dr)は電子ドラム・パッドなどを取り入れ、サウンドスケープを構築していく。ひとつひとつの音鳴りまで追求されたサウンドは、彼女たちや楽曲が持つ感情を表現するのに非常に有効と言っていいだろう。
「school out」は桃色と青色のライティングが、演奏に宿る心地いい緊迫感や蒼山のヴォーカルの艶やかさを引き立てる。ディープさとブライトさをクリーンに描き出した「メルシールー」やテクニカルな「黄昏のラプソディ」はバンドの演奏力でその場を圧倒した。楽曲が育っていることを実感することはもちろん、楽曲を育てることで彼女たちも成長していることが窺える。R&B要素を取り入れた「Fall Down」は、まさしく"SOAK=染み込む"を体現する演奏。少しずつ4人の色が混ざり合いひとつの音楽を作っていく様子は、非常に美しかった。
『SOAK』のラストを飾る「水中都市」のアクトは中盤のハイライト。映像、照明、演奏、歌とコーラスが溶け合い、スケールの大きい水中都市という空間を丁寧にエモーショナルに描き出す。チーム一丸となってこの瞬間に心血を注いでいることがダイレクトに伝わるステージは、隅々まで愛情が満ちていた。
蒼山が"普段のねごとはあんまり自己主張が激しい集団ではないんですけど(笑)、音楽をやっている瞬間はすごく自由になれるんです。そんな私たちだからこそ作れる、寄り添える音楽があるんじゃないかな......と思えたのが『SOAK』でした。生きていると気を強く持っていないと立ち向かえない瞬間もあるじゃないですか。そういうときにちょっとでも(聴いてくれた人が)気持ちを解放できたり、立ち向かうための力になれるといいな......と思いながら作ったアルバムです"と語ると、フロアから拍手が起こる。彼女が"伝えたいことは全部音楽に込めたので、今日はツアー・ファイナル、最後までぶちかましていきたいと思います"と続けて微笑むと、4人は最後に6曲をほぼノンストップで演奏した。
気持ちを解放しながら演奏していく彼女たちは逞しく強か。「nameless」では観客と彼女たちの熱量が最高潮の状態でシンクロしたのか、曲中に大きな歓声が起こった。「アシンメトリ」はステージ上のメンバーも観客も思い思いに身体を動かして音と戯れる。彼女たちが目指していた理想が現実のものとなったその景色は壮観だった。ラストは土曜日のツアー・ファイナルに相応しい「サタデーナイト」。東京の夜の街を映し出した映像はドリーミーというよりはリアリティがあり、歌詞をひと言ひと言噛みしめて歌う蒼山の歌声をさらに強いものにしていた。
アンコールでは「真夜中のアンセム」と、リミックス・アレンジの「シンクロマニカ」、「ETERNALBEAT」を披露。4人は最後まで自然体で瞬間瞬間を楽しみ、音楽と同化しながら音楽を届けていた。ねごとが10年のバンド人生の中でも最上級に充実していることを実感する、圧巻のツアー・ファイナル。"これからも「面白いじゃん!」と思ってもらえるような音楽を発信し続けたい"という蒼山の言葉を期待して、次の動きや続報を待ちたい。
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