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INTERVIEW

Japanese

a flood of circle

2020年10月号掲載

a flood of circle

メンバー:佐々木 亮介(Vo/Gt)

インタビュアー:秦 理絵

a flood of circleが10枚目のアルバムで目指したのは"圧倒的なロックンロール・アルバム"だという。だが、言うならば、a flood of circleは、2006年の結成から14年間にわたり、全アルバムでバンドの現在地を更新する最高のロックンロール・アルバムを作り続けてきたバンドだ。そんな彼らが、なぜ、今あえて"圧倒的なロックンロール・アルバム"をコンセプトに掲げたのか。その答えが、以下、佐々木亮介に訊いたインタビューになる。長くメンバーの入れ替わりが続いた時期を経て、最強のメンバーに固定化された今だからこそ、今作にはa flood of circleの多面的な魅力が素直に研ぎ澄まされている。


もともと"そんなにいい世の中だったかな?"って思ってたから どういうシチュエーションだろうが、強い曲に聴こえないと意味がない


-また最高を更新する1枚が完成しましたね。

俺らもそう思ってます。姐さん(HISAYO/Ba)とか、いつもは特に改まって何も言ってこないんですけど、今回はなんかあったみたいで。全部レコーディングが終わったあとに、"いいね"みたいなLINEをくれたんですよ。そういうのは初めてでしたね。

-何がいつもと違ったのか、詳しく聞きましたか?

姐さん的には、"シンプルにいい曲ばっかりだね"って感じたみたいで。ソングライティングがスキルフルになってきたって言うよりは、今回は、変なこだわりがなくて、シンプルにいい曲を書くっていうところに行けた気がするので。そこを褒めてくれたのかなと思いますね。

-たしかに最近の作品では、外からの刺激を積極的に取り入れたチャレンジングな制作が多かったと思いますけど、今回はむしろ得意技で勝負してるように感じました。

うんうん、そうかもしれない。2個前のアルバム(2018年リリースの8thアルバム『a flood of circle』)ぐらいまでは、イギリスのエンジニアを呼んだり、自分もイギリスに行ったりしてましたからね。当時は、それまでに固まってきたa flood of circleっていうものに新しいものを取り入れて変わっていかないと、"続かないかも"みたいな気持ちがあったんです。2015年に『花』っていうシングルを出したときに、"もう曲を書けない"っていうぐらい苦しかったんですよ。ちょうどバンドを10年やって、1周しちゃった感もあって。そこから、(アオキ)テツ(Gt)が入ったことで、新しい流れができあがっていったんですよね。

-当時、テツさんの存在は大きかったですね。正式加入は2018年ですけど、ちょうどサポートとして関わりはじめたのは2016年頃で。

うん。で、前回のアルバム『CENTER OF THE EARTH』(2019年リリースの9thアルバム)が、テツが正式に加入したアルバムなんですよね。今回の『2020』は、この4人で作る2枚目なんですよ。だから、自分の中では、あえて前回と同じ路線で作ってるつもりなんです。外部の人間を入れずに、このメンバーでちゃんと作るっていう。前回の『CENTER OF THE EARTH』と、この『2020』を踏まえて、次のアルバムまでが3部作って考えてて。そこで1個の形になったらいいなと思ってるんです。ちょうど来年が15周年っていうキリのいいところでもあるので。そういう意味で今回、自分の中ではそこまでの集大成感はないんですよね。

-キリがいいと言えば、今作は10枚目のアルバムじゃないですか。

それ、びっくりました。"10枚も出してるんだ"って。こないだ、昔バイトしてた所沢のスワンっていうジャズ・バーに久々に行ったんですよ。

-いくつぐらいのときにバイトをしてたんですか?

18、19のときです。そこのマスターは初期のメンバーも知ってくれてる人なんですけど。そのときに、"どうにか(バンドで)飯を食ってます"っていう話をしたんです。そしたら、"10年メジャーにいるって、すごいと思うよ"みたいに言ってくれて。最近はそういうのを振り返ることもなかったけど、言われてみると、長くやってきたなとは思いますよね。

-10枚目として相応しいものにするんだ、みたいなことは考えてましたか?

これが不思議なんですけど、俺とナベちゃん(渡邊一丘/Dr)は14年目ですけど、姐さんは10年で、テツは(サポートも含めて)5年とか、メンバーの歴史がバラバラなんですよ。で、とにかく俺は今のメンバーが一番大事だから、今回10枚目っていう感じは全然なくて。2枚目の作品として素直に成長したいなっていう感じでしたね。

-テツさんと渡邊さんに関しては、佐々木さんから見て、それぞれ今作にどんなふうに臨んでいるように見えましたか?

テツは、「Whisky Pool」っていう曲の一部を書いてきたんです。そういうのを頼まないでもやってくるようになりましたね。「Lucky Lucky」(2019年リリースのミニ・アルバム『HEART』収録曲)を作ったときは、"作ってみない?"って持ちかけて作ってきたんですけど。それもシンプルな気持ちだったんだと思います。周りに気を使って、何が正解かを探るんじゃなくて、"いったん俺はこれで行く"って決められる強さが、テツにはあるんですよ。そのぶん、どんどんクリエイティヴな人間になってる。"自信がある"って言うよりは、"ふわふわしてない"っていうか、そういうのは感じるようになりました。

-渡邊さんは?

ナベちゃんは、自粛中にライヴをできなかったことがいいほうに作用してるっぽかったです。今までは毎月必ずライヴをやってて、その間に曲を作るっていう慌ただしい時間を過ごしてきたけど、初めてぽっかり時間ができたんですよ。そのぶん、アルバムに向けて準備する時間があって。いつもはレコーディングのときに、絶対に悩む時間があったんですけど、今回はドラムを録るのが早かったですね。

-アルバムの制作は、コロナの自粛期間にも重なっていたんですか?

そうです。もともと去年『CENTER OF THE EARTH』を出したあと、2020年も1枚出すっていうのは決めてたんですよ。

-ここ最近は1年に1枚ペースですもんね。

うん。去年のアルバムの制作はギリギリになっちゃって、正直もっといけたんじゃないかって思うところもあったから、今回は早めに準備しようって決めてて。まず、メンバーにふたつ言ったんです。ひとつが"圧倒的ロックンロール・アルバムを作る"ってことで。

-圧倒的ロックンロール・アルバム?

そう、めっちゃ抽象的な言葉だし、俺らがずっとやってきたことではあるんですけど、それでいいかなって。新しい何かを作るんじゃなくて、これまでやってきたなかでシンプルに一番かっこいいと思えるものを作りたかったんです。

-あともうひとつ伝えたのは?

テツが入ってきて、やっとメンバーが固まったじゃないですか。で、バンドって、いちいちそんなことを確認したりしないけど、一応、解散するまで一緒にやるはずなんですよ。それを確かめたうえで、"これを最後にするつもりはない"って言いました。俺的には3部作の2枚目ぐらいの気持ちだし、次が完成したら、またイギリスに行ったりして新しいことをやろうよ、みたいなことまで伝えましたね。

-どちらもアルバムのコンセプトと呼ぶには抽象的ではありますけど、メンバーからすると、自分が今作で何をするべきかっていう共通認識は持てそうですね。

そう、ひとつの指針があったほうが、動きやすいタイプのメンバーなんです(笑)。あと、今回は1曲目から12曲目まで、デモの状態でどれを使うかを全部決めてみんなに提案したんです。"今回はこの枠で作る。でも、何か思いついたら言ってくれていい"って。

-枠というのは、どの程度まで細かく考えていたんですか?

例えば、2曲目に「Beast Mode」があるから、そのイントロとして、1曲目の「2020 Blues」を作って、このキーとテンポは一緒にして、みたいなことですね。全曲イントロとアウトロは被らないようにしてとか。「Whisky Pool」みたいな50年代からあるような古臭いロックンロールを入れるけど、それを全部やると、古臭くなっちゃうっていうバランスもとってます。ただ、最初にそういうのを全部決めちゃうと、メンバーがつまらなく感じるんじゃないかなと思って。言い訳のように、"これで最後じゃないから、今回はこれで挑戦してみよう"って言ったんです。それが去年の夏ですね。

-だいぶ早い時期から着手してたんですね。

そこから、秋ぐらいにプリプロをはじめて。半分ぐらいまで録って、年が明けて、5月くらいから後半のレコーディングをする予定だったんですけど......。

-コロナの影響でスタジオに入れなくなったと。

そうです。じゃあ、5月は飛ばそうってなって。その代わり、アルバムに向けて集中して準備ができるよねってなって。たしか6月から後半を録りはじめたはずですね。

-前半と後半がコロナで分断されたことで、作品に変化はありましたか?

いや、"2020"っていう仮タイトルと曲目も去年から決めてて......特に変化はないんじゃないかな。コロナのモードは取り入れたくないなと思ってたんですよ。

-どうしてですか?

コロナがあろうがなかろうが、地震も起こるし、台風も来るし、政治も変わるじゃないですか。もともと"そんなにいい世の中だったかな?"って思ってるところもあるから。どういうシチュエーションだろうが、強い曲に聴こえないと意味がない。コロナのことを反映させなくても、そういうふうに聴こえないと意味がないと思ってたんです。

-これだけ社会が激変したなかで、去年のうちに作っていた前半を変えなくても良かったのは、作り手として間違ってなかったっていう確認にもなったんじゃないですか?

それはありましたね。震災があったときのアルバムを思い出しました。もちろん(コロナも)起こったことだから、自然と寄っちゃって、影響が出ちゃうところはあるけれど。わざわざ寄せていくと、軽くなってしまうというか、"これが、言いたかったことなのか? お前は"って、自分で思っちゃうので。自粛期間中に、テツと一緒に"SATETSU"っていう名前でリモート・アルバム(2020年5月リリースの1stフル・アルバム『Make Money』)を出したんですけど、そっちにコロナのことは具体的に入れたのもあって、すっきりした状態だったのも良かったんだと思います。

-後半のレコーディングに入る前の中断期間には、お互いにデータのやりとりをしながら、楽曲を煮詰めていく作業もしてたんですか?

そうですね。メールのやりとりで。いつもはスタジオに集まってやると、セッションしながら、ぬるぬるっと固まっていく感じなんですけど。今回はスタジオに入れる回数も少ないから、その一発でビシッと決めなきゃいけないんですよ。そうなると、みんな結構ちゃんと仕上げてくるんです。今までも、そうやってくれよっていうぐらい(笑)。

-(笑)時間があったからこそ、アウトプットが変わった曲はありますか?

5曲目の「天使の歌が聴こえる」は、今までのやり方で録ってたら、姐さんのコーラスは入れてなかったかなと思いますね。

-へぇ。あれ、すごく良かったです。ホーリーな雰囲気になりましたね。

俺も思いました。空いた時間にいろいろ試せるなと思って作ったんですけど、姐さんに歌ってもらったら、めちゃくちゃ良かったんです。で、途中からコーラスを増やして。