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Japanese

サンボマスター

2009年11月号掲載

サンボマスター

Writer 佐々木 健治

身体中のあらゆるところから汗が噴き出し、飛び散っているようなエネルギッシュなサンボマスターの楽曲が、パンクやロックだけでなく、ソウルフルな高濃度ファンキー・サウンドを土台としていることは今さら言うまでもないことだろう。山口隆の全身全霊を込めたヴォーカル・スタイルと荒々しくも抜群の演奏力を持ったバンド・アンサンブルが生み出すグルーヴがあるからこそ、山口隆の全身全霊を込めたシャウトやヴォーカル・スタイルもリアルに響いてくる。

サンボマスターが今年6月に発表した「君を守って 君を愛して」に続いて放つニュー・シングル「ラヴソング」。愛という言葉は、サンボマスターの楽曲とは切っても切り離せない言葉。この直球なタイトルのシングルも、サンボマスターらしい熱を放つソウルフルなロックンロール・・・ではない。
何と、この「ラヴソング」ではピアノとストリングスが絡み合う、叙情的なバラードを披露しているのだ。サンボマスターのパブリック・イメージを覆す、シングルとしては初となる本格的なこのバラード。

何の前情報もなく聴いたとしたら、サンボマスターのシングルとは思えないかもしれないが、実はサンボマスターのライヴでは既に「ソウルコア」というタイトルで披露されていたこの楽曲。二度と会えないあの人に向けた想いを静かに切なく歌い上げる、抑揚の効いた山口隆のヴォーカルが新鮮なラヴソング。ギターレスでシンプルなアレンジがこの楽曲の切ないムードを高めている。とは言っても、爆発こそしないものの徐々に熱を帯びていくのが伝わってくる山口隆のヴォーカルも、何ともサンボマスターらしい。
シンプルで美しいメロディを持つこの曲がアルバムでどういう立ち位置になるのかも気になるところだし、普段ロックを聴かないという人にも届いていくのではないだろうか。
カップリング・ナンバー「世界を変えさせておくれよ」は、サンボマスターらしいエネルギッシュでパンチの効いたナンバー。2トーン・スカ調のリズムに乗って、可愛らしい声で歌う女優の伊藤歩とのデュエットで駆け抜ける疾走感のあるナンバー。日本コカコーラの天然水「いろはす」CMソングとして、耳にしたことがある人も多いであろう。

「世界を変える」でも「世界は変わる」でもなく、「世界を変えさせておくれよ」とお願いしてしまう自信があるんだかないんだか分からないその言葉選びのセンスも、バックで「僕はくだらない世界を変えて/革命を起こしたい」と叫びながら、その結果が「君とキスがしたい」というこの等身大の距離感もサンボマスターらしい。そして、タイトでパンキッシュな中にもルーズさを巧みに織り交ぜる演奏がとてもカッコイイ。

そして、今年もCOUNT DOWN JAPAN09/10への出演が決定(サンボマスターは12月31日に出演)。さらには、12月24日のクリスマス・イヴにはSHONEN KNIFE、bloodthirsty butchersとの濃厚な3マンが渋谷CLUB QUATTROで開催される。来年には発売されるであろうアルバムまでは、このシングル「ラヴソング」とこの2本のライヴに全身全霊を込めて臨むしかないだろう。

余談ですが、山口隆さんのブログ「ただいま放課後!」は、良さそうな7インチや12インチのソウルやロックが度々紹介されていて、とても面白いです。特にソウルでは知らないアーティストばかりで気になります。R.E.Mについて突然語ってみたりするところも流石ですね。

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