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INTERVIEW

Japanese

Nothing's Carved In Stone

2020年09月号掲載

Nothing's Carved In Stone

Member:村松 拓(Vo/Gt) 生形 真一(Gt)

Interviewer:荒金 良介

自他共に認めるワーカホリック・バンドと言えば、Nothing's Carved In Stoneだろう。これまで10枚のオリジナル・アルバムを作り上げ、結成当時から大車輪の活動で音楽シーンにその名を轟かせてきた彼ら。今回はバンドのヒストリーを辿るべく、自身初のセルフ・カバー・ベスト・アルバム『Futures』を完成。今年3月に初の配信シングル「NEW HORIZON」、続いて6月に第2弾配信シングル「Dream in the Dark」を発表、また有料生配信ライヴ[Nothing's Carved In Stone Studio Live "Navigator"]を開催するなど、コロナ禍の中でもポジティヴ且つバイタリティ溢れる活動方針を貫き続けている。今作は先述した新曲2曲に加え、セルフ・カバー18曲を収録した2枚組という内容。その中身はアレンジを大きく変えずに、鮮やかな変貌を遂げたニュー・サウンドに仕上がっている。従来のファンにとっても驚愕レベルの進化を魅せつけた今作について、村松 拓、生形真一のふたりに話を訊いた。

-今年前半は、Nothing's Carved In Stone(以下:ナッシングス)としてはどんなふうに過ごしてました?

生形:2月27日のライヴの延期が前日に決まって。そのあとは3月の配信の曲(「NEW HORIZON」)を含めてレコーディングしてました。

村松:ぶっちゃけ、今作のレコーディングも早まったし、長めに時間は持てましたね。

生形:ライヴは飛びましたけど、悩んでても後ろ向きになっても仕方ないから。

-この時期に普段できないことをやったりとかは?

生形:ずっとここ(事務所)に来てました。家から近いし作業部屋があるので、そこで毎日曲を作ってましたね。そこはいつも通りでした。時間はあったから、曲はできましたね。次に向けてね。

村松:俺は年末に引っ越したこともあり、自宅の録音環境を整えようと。機材を買い揃えて、曲を作ってみたり......鬱々とするよりも好きなことをやったほうがいいから、料理したり、釣りに出かけたり......まぁ、それは緊急事態宣言が解かれたあとですけどね。

-まず3月に初の配信シングル「NEW HORIZON」を発表しましたけど、これはコロナ以前から計画されていたものなんですか?

生形:もともとありました。3月と6月に配信リリースしようと。

-「NEW HORIZON」はまた新しいナッシングスが刻まれた、明るく開けたサウンドに仕上がってますよね。いつ頃に作ったものなんですか?

村松:"By Your Side Tour 2019-20"の大阪公演でデモを聴いた気がする。去年には作っていたのかな。

生形:そのツアー終わりですぐにアレンジを固めました。ナッシングスらしさもありつつ、新しい歌詞や曲調にも挑戦したいから。ひなっち(日向秀和/Ba)がここ何年かでデモを作ってくれるようになり、3曲聴かせてもらって、全員がピンと来たのが「NEW HORIZON」なんですよ。

村松:ひなっちのデモに真一がAメロやイントロをつけ加えてくれたんですよ。それから残りふたりが加わりました。デモからそういう形で作るのは刺激的でしたね。ひなっちはポップにするけど、真一のリフはアメリカっぽいし、ダークなUKっぽい色がそこに加わって、2色のカラーが存在するのが面白いなと。

-「NEW HORIZON」は歌詞のメッセージ性という意味でも今の状況と重なるところが多くて。

村松:リンクしてますよね。今回の新曲2曲の歌詞は俺が書いたけど、もともとナッシングスの歌詞はふたり(村松、生形)で書いてて、だいたい同じようなことを言っているんですよ。そこに込めてあるメッセージはあまり変わらないなと。新曲2曲の歌詞を書いたら、たまたまコロナとリンクして、背中を押すような内容になったんです。12年前から自分たちの本質的な部分を歌う、それをやり続けていたんだなと思いましたし、それが俺らのメッセージなんだなと改めて認識しました。

-ナッシングスが結成当初から掲げていた理念というと?

生形:基本的にナッシングスは前向きだよね?

村松:そうなんですよ。ヤバそうだなと思ったら、誰かが次の提案をしているから。

生形:歌詞にもそれが出ていると思う。

-あまり後ろ向きにはならないんですか?

生形:全然ならない。後ろ向きな話をしても、しょうがないですからね。

-「NEW HORIZON」では新たな地図を作り上げようと高らかに歌い上げてますからね。

生形:そうですね。またスタート地点に立ったなぁという気持ちで。

村松:この歌詞を書いたときは『By Your Side』(2019年9月リリースの10thアルバム)のワンマン・ツアーが終わったあとぐらいなんですよ。また先に行きましょう! という意志のもとに書きました。

-対して、6月に出た配信シングル「Dream in the Dark」のほうはいかがですか?

生形:その曲も3月に録りました。「NEW HORIZON」が先にできあがっていたから、それとは真逆というか、もう少しポップな曲を持っていったら、対比になっていいのかなと。

-「Dream in the Dark」はかなり削ぎ落とされたシンプルな曲調です。

生形:普段ならギターやシンセを入れるところを抜いてみました。それもチャレンジですね。ナッシングスは音数が多くて、どんどん豪華にする傾向があるけど、逆に音数を減らしてみようという。

村松:3月頭に歌を録ったけど、ちょうどコロナの影響が出始めたのが2月の終わりだから......多少そういう気持ちも入っていたのかもしれない。とにかく録音環境も変わって、僕のヴォーカルの声の帯域がより広く出せるようになったんですよ。以前はみんなで音をドカンと出して闘うような感じだったけど、今はそれぞれに居場所があるから、気持ち良く表現できました。

-この曲は歌詞を含めて隣に寄り添ってくれるような穏やかなメロディが印象的で。

生形:そうっすね。いわゆるナッシングスっぽいメロディかもしれない。

-THE BEACH BOYS風の爽やかなコーラスもいいフックになってます。

生形:それ誰かにも言われたんですけど、THE BEACH BOYSは一度も聴いたことがないんですよ(笑)。コーラスをキャッチーにして、みんなとライヴで歌えたらいいなと。

-あとこれはいちリスナーとしての感想ですが、"走り抜けて Baby"という歌詞もあり、村松さんは"Baby"というフレーズが似合うヴォーカリストだなと思いました。

村松:嬉しいっす(笑)。ロック・ヴォーカリストってそうあるべきじゃないですか? 要するに何を歌っても大丈夫な歌い手でありたいから。

-なるほど。そして、今作のセルフ・カバーのアイディアはいつ頃から考えていたんですか?

生形:結構前ですね。『By Your Side』ができたときにはあったかな。振り返ると、1年に1枚アルバムをずっと出し続けて、気づいたら10枚リリースしているんですよ。なぜ出していたかというと、バンドとしてどんどん成長していきたいし、周りの同世代のバンドと比べて歴史が浅かったから。ツアーも年に2回やってましたからね。10枚アルバムを出してるバンドもいないと思うし......そろそろ自分たちのペースで作ろうと思ったときに"何か出したいよね?"という話になったんですよ。オリジナルを100曲以上作ったから、一度セルフ・カバーを出してみようと。

-セルフ・カバー作を出すことについてはメンバー内で反対意見もなく?

生形:それはなかったです。これまで一切過去を振り返らずやってきたから、一度ぐらいいいかなって。で、やるからには前よりいいものにしたかったし、今回は結構忠実にカバーしているんですよ。アレンジもいくらでも変えられる自信はあるけど、まったく変えるなら、セルフ・カバーじゃなくてもいいんじゃないかと思って。聴く側のことも考えて......俺が好きなバンドがいて、そのセルフ・カバーが全然違うものになっていたら、少し寂しい気持ちになるかなとか考えたり。

-そこはファンの気持ちも考えて?

生形:ファンの気持ちなのか、自分の気持ちなのか、わからないですけどね(笑)。イエモン(THE YELLOW MONKEY)が3年前にセルフ・カバー(『THE YELLOW MONKEY IS HERE. NEW BEST』)を出して、一発録りでほぼ忠実にカバーしているんですよ。昔の作品も聴くけど、そのセルフ・カバーのほうを俺はよく聴いているんです。そういう作品を作りたくて。

-アレンジを変えないからこそ、現在進行形のナッシングス像が明確に浮かび上がったサウンドですね。

生形:まさに。そこを目指しました。

村松:曲作りやツアーを重ねて、バンドが昇るべき階段を1段ずつ上がってきたから。そこで培ったグルーヴ、リズムの感じ方もメンバー内で変わってきたし......自分たちで更新してきたものを表現しようと。ゆえにライヴでよくやっている曲を選びました。