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LIVE REPORT

Japanese

the HIATUS

2014.12.22 @日本武道館

Writer 山口 智男

昨年3月にリリースした4thアルバム『Keeper Of The Flame』を引っ提げ、5月、6月、7月と日本各地を回った"Keeper Of The Flame Tour 2014"の"Closing Night"として実現したthe HIATUS初の日本武道館公演。
"今日は俺たちを武道館に連れてきてくれてありがとう!"多くのミュージシャンが目標のひとつに掲げる大舞台に立てたことを、細美 武士(Vo/Gt)は自分たちを応援してきてくれたファンに感謝しながら、"(武道館でやることに)思い入れはない"と言ったように、大舞台にふさわしい演出を若干交えながらも、この日、the HIATUSが会場を埋め尽くしたファンに見せてくれたのは、ふだんライヴハウスで演奏しているいつもと変わらないバンドの姿だった。ロック・バンドのライヴでもイスが置かれることが多いアリーナもこの日はスタンディング。ギュウギュウ詰めになった、そのアリーナでは序盤からステージ前に押し出された観客が猛ダッシュでまた客席に戻るというライヴハウスではお馴染みの光景が見られた。ダブル・アンコールも含め、4枚のアルバムからまんべんなく選曲した、ある意味、起承転結がはっきりしたセットリストも正攻法を思わせるものだった。

まさに抜き身のバンドの姿をアピールした1時間45分が改めて印象づけたのは、武道館を揺らしたthe HIATUSというバンドそのものが持つ底力だ。それはこれまでの活動の成果であると同時に武道館という大舞台で、いつもと変わらないバンドの姿を見せることに全力で挑んだ結果でもあるのかもしれない。圧巻は「The Flare」から一気にギアを入れ替え、アップ・テンポのロック・ナンバーをたたみかけていった前半の流れ。宇宙空間を思わせるスペクタクルな映像を背後の巨大スクリーンに映し出しながら、渾身の演奏を繰り広げる5人の姿にあっという間に気持ちを鷲掴みにされた。

普段よりも念入りにリハーサルを重ねたことを語った細美が"でも、お前らのいないところで演奏するのはつまんなかったよ!"と心憎いセリフを挟んでから、ファンとともに"1-2-3-4!!"とカウントして演奏が始まった「Storm Racers」、バンドが奏でる爆音にファンが"Oi!Oi!Oi!"と応えた「Centipede」、そして演奏中、ステージ前方に歩み出た細美がファンの気持ちを受け止めるように高く両手を掲げた「Monkeys」。そのころには筆者がいた2階席から見下ろすのとはまた違うものすごい景色がステージからは見えていたに違いない。普段とは違って、横を見ても、上を見ても、ファンの笑顔が見える"この景色、超好きかもしんない"と細美の顔に笑みが浮かんだ。この日のライヴはDVD化されるそうなので、足を運んだ人も運べなかった人もぜひ、その光景を確かめてみて欲しい。

アコースティック・ナンバーを並べた中盤はゲスト・ヴォーカルのJamie Blake(「Tales Of Sorrow Street」「Souls」)に加え、海外では当たり前になってきた手話通訳も迎え、「Tales Of Sorrow Street」「Souls」「Horse Riding」の3曲の歌詞を手話で伝えた。イノセントの喪失を謳ったように思える「Horse Riding」を含む3曲を選んだのは、何か意図があってのことなんだろうか? 

そしてエレクトロなサウンドが新境地を思わせる「Thirst」「Unhurt」を挟んで、「Lone Train Running」で再びギアをトップに入れ替えると、眩いライトが客席を照らし始め、ファンの大合唱の中「Insomnia」からラスト・スパート。「紺碧の夜に」「Ghost In The Rain」とさらに武道館を激しく揺らした。

この日、細美はファンに対する感謝をいつも以上に言葉にしていたように感じたが、アンコールで語った"楽しかったけど、(武道館は)俺たちには似合わない。お前との距離が遠い。だからまたどこかの町の汚い路地裏で会いましょう"という言葉ほどファンにとって嬉しいものはなかったはず。
武道館公演がこの次あるのかどうかわからないが、細美曰く"誰の命令も聞かず、嫌な奴と思われても自分を曲げずに突っ張ってきたオルタナ・バンド"が武道館をいっぱいにしたうえで、いつも通りのやりかたでそこに収まりきらないほどの熱量を放つライヴをやったんだから、それだけでも大きなメッセージになったに違いない。そういう意味でもthe HIATUS初の日本武道館公演は大きな意義があったはずだ。



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