Japanese
毛皮のマリーズ
2010.12.17 @SHIBUYA-AX
Writer 道明 利友
ライヴの開演を告げるBGMは、フレンチ・ポップスの名曲「夢見るシャンソン人形」。どこか耽美なムードを漂わせるその音色は、毛皮のマリーズの作品の世界観に通じるものを感じさせつつ……。優美に、かつ昂揚的に幕が上げられたライヴのオープニングナンバーは「Mary Lou」。聴いていると心が自然とウキウキしてくるリズミカルな演奏に乗って、志磨遼平がステージを躍動する。足を勢いよく蹴り上げながら、そして、両手を大きく広げながら甘い甘いメロディーを歌い上げる姿は、“Mary Lou”に愛情を捧げるこの曲の主人公の生き写しのようだ。
「“コミカル・ヒステリー・ツアー、始まるよーーーーーっ!」
志磨の高らかなシャウトとともに、「ベイビー・モートン」でビート感がさらに上昇! さあ、ここから始まるは、“これぞ毛皮のマリーズ!”としか表現しようがない一大ロックンロール・オンステージ! 一度聴いたら忘れられない強烈な個性を持つ歌声とともに、シアトリカルなアクションで1曲1曲のストーリーを志磨は鮮やかに描いていく。そして、THE BEATLES、THE ROLLING STONES、RAMONES、etc……。数々の偉大なる先人たちも鳴らした衝動的なビート、そして、心躍るメロディーを、今度は自分たちのやりかたで現代のリスナーに伝えたい━━。楽器陣の演奏にも、彼らが音楽に注ぐ熱い思いがこもっているような感覚さえ覚える。
「今日が来るのを、ずっとずっと待ち望んでいました。こんな日が来るのを、ずっとずっと待ってました━━」
渋谷AXを超満員のファンが埋めた光景を眺めながら、志磨は感慨深げにメッセージを贈る。バンド結成からはや7年、自身が心打たれた音楽を、これほどたくさんのオーディエンスと共有できるまでになった喜びがその言葉からは伝わってくる。そして、その現在の彼らが鳴らすサウンドは、ロックンロールという音楽が持つ根源的な魅力を、今のこの時代に再び蘇らせようとしているかのよう。音数を詰め込みまくり緻密に作りこんだ現代のロックとは一線を画す、良い意味でルーズなノリが心地よい「ザ・フール」。「金がなけりゃ」はKeith Richardsばりのブギーなギターが鳴り響き、ステージを右から左へ滑らかに移動していく志磨の動きはまるでChuck Berryのよう。ヒロコ嬢がリードボーカルを務める「すてきなモリー」は、シンセがトリッキーな印象を与えつつ、Suzi Quatroばりのパワフル&キュートなロックンロールに喝采が飛ぶ。そんなヒロコのほっぺに、志磨はキスなんかしちゃったり(笑)。ステージは楽しさが満開、かと思えば次はパンク、さらに高速ロックンロールへ展開! 「愛する or die」は爆音の中で志磨と越川のシャウトがこだまし、「犬ロック」はElvis Presleyのナンバーを何倍速かで速回し再生したかのようなスピード感が痛快だ。
と、彼らの楽曲に対して、様々なバンドの名前を引き合いに出しながら言葉を連ねてきたわけだが……。それはもちろん、彼らが過去の遺産の真似事をしているなんてことを言いたいわけでは断じてない。毛皮のマリーズが鳴らしている音楽が、ロックンロールという音楽がそもそも持つ、こんなにも楽しくてこんなにも人を引き付ける魅力をしっかり受け継いでいるということだ。音や声を加工するレコーディング・テクニックがどれだけ進化しても、かき鳴らすギターリフ一発に威力があればそんなものは何も必要ない。演奏者が一体となって作るグルーヴが気持ちよければ、バンドサウンド以外のものも必要ない。そんな、時代が移り変わろうとも変わるはずがない音楽の根源的なパワーを持っているからこそ、現代の音楽ファンの心をつかむ極上のロックンロールを毛皮のマリーズは奏でられるのだと思う。
「ちくしょーっ! 死にたくないっ!」
きれいごとだけで乗り切ることなんてできるはずがない人生の中で、生の渇望を叫ぶかのような叫びが胸に響いた「人生 II」。そして、John Lennonの「Starting Over」の志磨の独唱から、これもまた“人生”の悲喜をエモーショナルに歌い上げた「ビューティフル」━━。衝動的なロックンロールの中から大きな大きな感動が伝わってきた、毛皮のマリーズの2010年ラスト・ワンマンライブ。この感動が、来たる2011はさらなるスケールで広がっていくに違いないという期待を大いに感じながら……。この原稿の最後は、その2011年の彼らの動向をうらなえるようなトピックで締めくくりたい。
“ロックンロール”という表現をこの原稿の中で何度も使ってきたが、2011年の幕開けとともに完成した彼らのメジャー2ndアルバム『ティン・パン・アレイ』の楽曲の多くには、スタイルとしての“ロックンロール”はある意味存在していない。正真正銘のロックンロールバンドたる佇まいは彼らの大いなる個性だが、聴き手を裏切るかのごとく新たなものに挑戦し続ける毛皮のマリーズの現在進行形の表現が、この作品には詰まっている。
「いわゆる“毛皮のマリーズ的なもの”っていうのは、跡形もないかもしれません。例えば、ものすごくノイジーな、ヒステリックなギターサウンドがあるわけでもないですし……。この作品にあるのはもう“美しい音楽”だけ、他に何が要るっていうことは、僕は強く感じてますね。
今回のコンセプトというのが、例えば“東京”っていうイメージとかそういうものがありますけども……。僕らの日々の生活の舞台、ひいては人生といいますか、そういうものを今回僕は歌いたくてですね。で、その僕らの日々、人生を表現するためにメロディ、音色を選ぶとなったときに、僕はやっぱり、必要以上に何かを……。破壊的な衝動とか不穏な異物だとかを入れようという意識は、一切浮かばなかったというか。
つまり、僕らのこの日々というのはこんなにも美しく豊かで、愛にあふれていて、これはなんて幸せなことかっていう……。そういう音楽を作りたかったっていうのが一番の理由ですよね。今回、こういう音楽形態を僕が必要とした理由というのは」
アルバム取材の中で志磨が話してくれたこの言葉は、今回の『ティン・パン・アレイ』という作品を端的に物語っている。志磨自身も実際に身を置き、哀しいことも、喜びも、様々な感情で心を揺らしながら誰もが生きている街━━“東京”。そこを舞台に展開する『ティン・パン・アレイ』のストーリーは、これまでのどの毛皮のマリーズの作品とも異なる感触を持っている。ある意味、毛皮のマリーズ作品史上屈指の問題作と言ってよいかもしれないこの作品だが、ひとつだけ言えることがあるとすれば……。彼らが手にした新たな表現手段は、聴き手に大いなる“幸せ”を感じさせてくれるはずということ。そう言いきってしまいたくなるほど、『ティン・パン・アレイ』という作品は“美しい音楽”で満たされている。彼らのさらなる飛躍のきっかけを作りそうな大作を、あなたの耳で、そして心で直に感じて、その奥にあるメッセージをぜひつかんでほしい。
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