Japanese
怒髪天
2009年11月号掲載
Writer 佐々木 健治
最近、演歌や昭和歌謡に違う視点で目を向ける音が面白いなと思うことがある。吉幾三のファンキーなマッシュ・アップやリミックスが出回ったり、ドリフターズ(もちろん、日本のね)の「ドリフの早口言葉」が実はとてつもなくファンキーなナンバーだと知ったり、若かりし日の和田アキ子の歌唱力の凄まじさに悶絶したり。
演歌にしろ昭和歌謡にしろ、西洋音楽などの輸入文化がなければ生まれていなかった音楽だ。JAZZにしろ、シャンソンにしろ、クラシックにしろ、ブルースにしろ、そういう海の向こうの音楽を土台に、日本人が本来持っていた音楽との折衷によって再解釈したのが昭和歌謡であり、演歌だったわけで、とりわけ演歌はその西洋音楽とはかけ離れた情念の世界を築き上げてしまった。
自らをR&E(リズム&演歌)と自称している怒髪天だが、演歌の音楽性そのものをロックンロールに取り込むというより、その義理人情の精神とでも言うのか、そういう精神性を受け継いでいるわけで、大真面目で一本気、そしてどこかコミカルな怒髪天のロックンロールは、他のどのバンドにも真似することができないオリジナリティを放っている。そして、もちろん演歌とも昭和歌謡とも全く違う。
怒髪天のエモーショナルなメッセージ性とエンターテイメント性は、演歌ではお涙頂戴に向かうようなテーマを、逆に豪快に笑い飛ばすところから生まれてくるのかもしれないし、その表現はどちらかと言うと、ドリフターズに近い大衆性を持っている。
無駄に前置きが長くなったが、怒髪天のニュー・シングル『オトナノススメ』。タイトルが示す通り、増子直純のカラッとしたヴォーカルに乗せて大人賛歌を叫ぶ、怒髪天らしい骨太なロックンロール・ナンバー。
調べてみたら『リズム&ビートニク』で初めて怒髪天に出会ったのが2004年。もう5年も前の話なんだ(しかも、廃盤なんだ。)
生きていれば、どんどん時間が過ぎるスピードは早くなっていくわけで、数年前のことがつい最近のことに思えたりする。ちょっと前まではそういうことに焦ったりもしたけれど、さすがに30歳にもなると、そんなことすらどうでもよくなってくる。何だかんだ忙しなく日々が過ぎ、酒を呑み、僕より年上のかっこいいロクデナシの先輩方に囲まれていると、歳をとったなとか落ち込んでいる暇もないし、笑っていたほうがいいに決まってる。
あるインタビューで増子直純が、大人がふざければ、子供なんかとても敵わないというような話をしていたが、その最たる例がドリフターズであり、楽曲の中でもドリフそのまんまの合いの手が入れられる。学校の体育館で、学生服を着た中年男女を前に歌うPVもシンプルだがニヤリとさせられる。
カップリングの「武蔵野流星号」は、日本最大の自転車ショー「CYCLE MODE international 2009」のテーマソングにも決定している、軽快なギターが楽曲を引っ張るキャッチーな一曲。それにしても、日本最大の自転車ショーと「終電なくても/行くよ/チャリンコ飛ばし/会いに行くから/待っててくれよ」という歌詞との飛距離は凄いですね。
怒髪天らしい人間味溢れる歌詞世界が詰まったこのニュー・シングルだが、初回生産限定盤には、6月に赤坂BLITZで行われた10曲のライヴ映像や笑いに満ちたツアーや舞台裏の光景なども公開した80分にも及ぶDVDが付く。
そして、今年も年末までライヴが続く怒髪天だが、年明け1月16日(土)、17日(日)には二日続けてのワンマン・ライヴも決行する。
2010年1月16日(土)
「オトナだョ! 全員集合 "一富士 二鷹 サントリー"」
@渋谷 C.C Lemonホール
2010年1月17日(日)
「オトナ真剣ゼミナール "SHELTER留学"」
@下北沢SHELTER
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