Japanese
クラムボン
Skream! マガジン 2015年12月号掲載
2015.11.06 @日本武道館
Writer 石角 友香
様々な意味で驚きの連続のライヴだった。多くの人が"武道館過去最良の音質"とか、"さすがの音楽性"とか"祝祭感"といった称賛を送る中、個人的には久々のニュー・アルバム『triology』制作の過程におけるミト(Ba/Vo)と原田郁子(Key/Vo)の方向性の違いを内包しながらも、2015年の新たなポップ・ミュージックとして着地させた、葛藤と達成は、20周年、しかも初の武道館公演という機会をターニングポイントとして、再びメンバー個々の活動へとある意味"離散"してしまうのではないか?と思わせるぐらい渾身の作品であり、もっと言えばライヴの最中ですら、3人のトライアングルの間で火花がバチバチ飛び交うようないい緊張感があっただけに、全編が終了するまで、まったく気が抜けない状態でステージを見つめていたのも事実なのである。
平日の18時という大人のファンにはなかなか早い開演時間は、長編のライヴであることを予想させる。ステージ中央に淡いブルーの水槽のごとき円筒が3人のセットを囲んでいる。そこに宇宙船が着陸するようなSE、そう、新作のオープニング同様「Lightly!」、伊藤大助(Dr)のドラミングが響き渡る荘厳でスペイシーな幕開けだ。打って変わって原田郁子の転がるようなヴォーカルの「Rough & Laugh」ではハンドクラップが自然に沸き起こった。そして序盤から怒涛のカオスを巻き起こした「the 大丈夫」のエンディングに、もはやエクスペリメンタルとか情報量を過剰積載した最近の新世代バンドやアニソンや、そんな広範なジャンルを飲み込んで消化したモンスター、クラムボンが出現していた。しかも当然、出ているのは(ほんの少しのシーケンスはあるとしても)3人の歌と楽器の音だけ。ミュージシャンシップというより、洗練されたバトルである。一気に3曲演奏したあと、"始まってしまった(笑)"と本音を漏らした原田は、それを口にしたことでリラックスしたように見えた。なんたってレコーディングに臨むまでの自主練や曲の解釈に費やした時間が膨大な新作だ。楽しいだけでそこに立っているわけはない。
20周年アニバーサリー・ツアーということで、選曲は当然新旧混在している。そんな中で演奏面ではミトのメロディアスなベースが主旋律級の存在感を発揮し、演奏の輝度とリンクするようにステージ上に置かれたミラーボール数基が回る「ミラーボール」や、"メンバーそれぞれが自分自身に宛てた手紙をもとにした歌"と原田が改めて歌詞のことを説明した「便箋歌」はこの日ならではの感慨にも包まれたし、先鋭的な演奏が多い彼らの曲の中では、素朴で力強い日本の歌といった趣きで、セットリストにいいフックを生んでいたと思う。演奏の緊張感とユーモラスでキャラクターの立ったMCのギャップもこの日はさらに際立っていて、ミト曰く、ツアーに出ると福岡出身の原田や、札幌出身の伊藤が地元のライヴで"おかえり~!"と歓待されることに"ちょっとジェラっていた"と、笑わせ、東京生まれ東京育ちの彼に向けて、"おかえり~!"コールをする場面も。加えて武道館にほど近い高校に通っていて、このあたりはランニング・コースだったこと、そして彼の実家近くのスタジオで初期のクラムボンが練習していたこと、そんな機会がなかったら"ただのニートでしたよ"と、今日ぐらいはさまざまな人や出会いに感謝させて欲しいという旨の発言も。そして、この日の音響周りのシールドなどで協力してくれたメーカーや、会場に設置したハイレゾ・ブースのことにも触れ、"今回のアルバムでハイレゾで聴くと一層良く聴こえた音"として、古いビートマシンを紹介。このビートが印象的な「agua」へと演奏を繋ぐ。ここで冒頭に触れたブルーの円筒が3人を包み、静謐なナンバー「sonor」、そしてダブステップ調でミトがメイン・ヴォーカルをとる「noir」といった楽曲群が、巨大な水槽の中で鳴っているようなイメージで届けられる。そして、何度も波のように押し寄せるベースのダイナミクスが圧巻だった「はなさくいろは」のエンディングで、思わず大きく息を吐いてしまった。それなのに!ミトは"ぶっちゃけます! この前出たアルバムで1番難しい曲やります! 3人のテンパった顔を見てください"と、度重なる転調とリズム・チェンジが、歌詞の愛らしさと好対照を描く「バタフライ」を、実際、息詰まる演奏で披露。演奏しきった3人は恐らく笑顔だったと思う(大きなスクリーンとか、そういう仰々しい演出はないので)。
安堵とともにテンションが上がる3人が奏でたイントロに大きな歓声、そう、「バイタルサイン」だ。だがしかし、"頼りない~"の箇所でピアノの音が止まるアクシデント。"「頼りない」ねぇ(笑)"と原田、"武道館の怪みたいなのがあるんじゃないですか?"とミトも笑わせる。気を取り直して再び始まった演奏は後半に行くにつれ、凶暴なアンサンブル、いやインタープレイに突入し、ミトはベースをフィードバックさせまくり、最後には放り投げて終了。全身の毛穴も瞳孔も開きっぱなしである。また、"お囃子ファンク"な「アジテーター」では男女に分けてコーラスの"ナーナナナーナナ"を大合唱。ライヴ開始時の筆者の緊張はどこへ行ったのか?というぐらい、2015年型クラムボンのグルーヴに巻き込まれていた。20周年記念且つ初の武道館ということで、最初のスペシャル・ゲストは「Scene 3」に参加したMOROHAのふたりとミトの古くからの友人であるチェリスト、徳澤青弦が登場。ハードボイルドでスリリングなこの曲を鬼気迫る語りで駆け抜けたアフロ(MC)の迫力に拍手喝采が起きる。そして今やすっかり定番になったSmall Circle of Friendsのカバー「波よせて」ではファンのシンガロング、彼らの楽曲の中でも最大級のポピュラリティを持つ「サラウンド」が、武道館ごと持ち上げて空を飛ぶようなアンサンブルでオーディエンスを解放していく。
"クラムボンを愛してくれてありがとう!"と感謝を述べた原田に続き、"19曲やったけど、まだ4曲ぐらいしかやった気がしない"と、充実ぶりを感じさせるミトが、続けて"武道館だから、またスペシャルなゲストを......オープン・ザ......"とまじない(?)を唱えると同時に、背景にはストリングス隊が配置し、しかもコンダクターとして菅野よう子も呼び込まれて、原田とハグしている!ということは当然、シングル・バージョンの「yet」が生披露されたわけだが、これがもう、ピアノの静かな入りと原田の歌に入ってくるストリングの音の良さですでに鳥肌もの。3人のアンサンブルをさらに"魔法のじゅうたん"のように空高く旋回させるようなストリングスのスリル、全員が息を合わせた見事すぎる演奏。演奏をフィニッシュしたミトが叫びに近い声で"ありがとーっ!"と声を発した瞬間、こちらも涙腺決壊......。こんなに魂と洗練が同居した演奏はなかなかない。ファンも喜びとともに放心状態だったんじゃないだろうか。
アンコールに登場したメンバーのMCでも特に印象的だったのは、伊藤の言葉。"初めて武道館に入ったのが演奏する日っていう。こんな今の自分があるのは、郁子さん、ミトさんのおかげです。これ逃したら一生、言えないし"と、照れていたけれど、誰がいなくてもこのトライアングルは成立しない。そしてこの日のラスト・ナンバーは会場限定シングルとしてこの日発売されたばかりの「Slight Slight」。部分的にTHE BEATLESを想起させるような普遍的なバラードだった。また、年明けからは会場限定販売のミニ・アルバムに伴う全国ライヴハウス・ツアーも発表。もしかして武道館を境に......どころかクラムボンはここからまた始まるのだ。だって「yet」でも"まだまだ"と歌ってるし、「アジテーター」でも"これからは私たちが 浮き世を照らすアジテーター"って歌ってるじゃないか。"tour triology"とは、そういうツアーだったのだ。
[Setlist]
1. Lightly!
2. Rough & Laugh
3. the 大丈夫
4. GOOD TIME MUSIC
5. 君は僕のもの
6. ミラーボール
7. 便箋歌
8. agua
9. sonor
10. noir
11. はなさくいろは
12. バタフライ
13. バイタルサイン
14. シカゴ
15. アジテーター
16. Scene3 w/ MOROHA & 徳澤青弦
17. 波よせて
18. KANADE Dance
19. サラウンド
20. yet w/ 大先生室屋ストリングス & 菅野よう子
[Encore]
1. はなれ ばなれ
2. Re-ある鼓動
3. Slight Slight
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