Japanese
eastern youth
Skream! マガジン 2013年02月号掲載
2012.12.15 @渋谷O-EAST
Writer 伊藤 啓太
結成から20年以上が経ち、メンバーの齢もとうに40を超えて今なお最前線で戦い続け、蒼く瑞々しい衝動を包み隠さず放散しているバンド――そんなバンドが日本の、いや世界中のどこを探したらいるだろうか?今のeastern youthは間違いなく最盛期だ、そしてこれからもそうあり続けるであろう。そう確信させる夜だった。
最新アルバム『叙景ゼロ番地』のリリース・ツアーとして行われた“極東最前線/巡業2012「ゼロ番地から彼方まで」”のツアー・ファイナルとして行われたO-EASTは今の彼らの“生き様”を目に焼き付けるべく集まったファンで埋めつくされていた。
SEが流れると、いつものようにひょうひょうとメンバーが現れる。この日の宴の1曲目はアルバムの1曲目「グッドバイ」。次の曲もアルバムの曲順通り「眩暈の街」。頭っから全身全霊で力を振り絞るかのように歌い、Jack Whiteの言葉を借りると“棒切れのように”乱暴にギターをかき鳴らし、しかし確かな音色を刻む吉野(Vo/Gt)の姿に思わず涙腺が緩む。そして二宮(Ba)と田森(Dr)はこの日も淡々と仕事をこなすように正確なリズムを刻み、太いうねるようなグルーヴを作り出す。いつ見てもこの3人のバランスの完璧さにはため息がこぼれる。
自らの風貌や年齢を揶揄するジョークから不適な笑みで“本日はお足下の悪い中、こんなにたくさんのみなさまにお集まりいただきまして、ありがとうございます!”という吉野の言葉。ステージの上の彼の目は常に殺気に似た鈍い光を放っている。真っ直ぐで、淀みなく放たれる言葉は油断していると切り捨てられそうにすら感じるのだ。
個人的にも大好きな、揺ぎ無い名盤『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』から「男子畢生危機一髪」そして「青すぎる空」で巻き起こった会場中の大合唱、いやシュプレヒコールと呼ぼうか。この日会場に来ていたのは恐らくほとんどが30を超えた、それもその多くは男性だ。少し乱暴な言い方かもしれないが、“いい年”をした男たち(勿論女性、若者もいた)が思い思いの生活へ向けて拳を握り、彼らの歌を顔を歪め泣き叫ぶように歌う。こんな美しい光景を、他のライヴでは私は見たことがない。彼ら(無論私も含め)にとってeastern youthの歌は日常へのレベル・ミュージックである。諦めではなく踏み込み、抗う歌だ。
「静寂が燃える」、「残像都市と私」とザラザラと、そしてヒリヒリとしたナンバーを続け、「踵鳴る」ではイントロのギターが刻まれた瞬間から、一気に会場を沸騰させる瞬発力の強靭さをまざまざと見せ付ける。その後は選挙前日ということもあり、選挙に絡めたやや“ポリティカル”なMCや、吉野の不屈の反骨精神をむき出しにしたMCからの「地図のない旅」“やるしかねぇ/行くしかねぇ”という揺るがないメッセージにまた涙腺が緩む。アンコールでは二宮、田森の気の抜けるような(笑)MC、そしてダブル・アンコールの「夜明けの歌」でこの日の宴はお開きとなった。2013年はどんな衝動で私たちを突き動かしてくれるのか。このアラフォーを超えた3人組の“ユース”たちの旅路の一幕に出会えることが楽しみでならない。
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