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INTERVIEW

Japanese

Bentham

2016年08月号掲載

Bentham

Member:小関 竜矢(Vo/Gt) 須田 原生(Gt/Cho) 辻 怜次(Ba) 鈴木 敬(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

今年4月30日に代官山UNITにてフリー・ワンマン・ライヴ"祝!初ワンマン~タダだ!タダだよ!全員集合~"を行ったBentham。応援してくれているファンへの感謝を込めた初ワンマンは、キャパシティの10倍にも及ぶ5,000通もの応募があった。その映像をひとりでも多くの人へ届けるために、彼らはEggsとタッグを組み、"Eggsサポートプロジェクト"を実施。クラウドファンディングに馴染みのないリスナーでも気軽に参加できるプランを立ち上げた。バンド初の試みとなるクラウドファンディングの話題や、初ワンマン以降のライヴにかける想いなどから、今のBenthamのモードを感じ取ってほしい。

"Eggsサポートプロジェクト"で初ワンマン・ライヴのDVDを制作することになった経緯とは?

小関:今年の4月に代官山UNITで行った初ワンマンが、フリー・ライヴということもあって応募が殺到しまして。"より多くの人にこの日のライヴを観てもらいたい"という想いからDVDを出そうという話になりました。もともと僕はクラウドファンディングが好きで、これまでいくつかサポートをしてきたんですよね。リターンの内容もそれぞれ違って興味深いし、音楽シーンで言うとレーベルに所属してないアーティストが自分たちの力で道を切り拓いていく熱量を直接受け取れるし。直接アーティストを応援したり支援したり、(アーティストとリスナーで作品を)一緒に作っていくことは、これからの時代には必要なんじゃないかなと思っています。

須田:僕はオゼ(小関)ほどクラウドファンディングに詳しくなくて、今回の話をきっかけに他のアーティストはどんなことをしているのか調べました。単純にDVDをリリースするだけだと、DVDというアイテムと金銭の交換でしかないところが、クラウドファンディングだと参加する人の価値観でプラス・アルファを選べるという仕組みがすごく面白いなと思って。今回こういうチャレンジができて良かったです。

鈴木:僕らのプロジェクトにはバックステージに来れるプランがあって、最初は"そんなに来たい人いるかな......?"と思ったんですけど(笑)、結構いたみたいで、嬉しいことだなと。需要と供給がバランス良く成立していれば、いいシステムかなと思います。

辻:投資したぶんだけ見返りがあるというのが、なんだかマネー・ゲームっぽいなと思って。株みたいなことが身近にできるのもそうだし、お客さんがプランを選択してその権利を得る――お客さん自ら動き出せることで、バンドとお客さんの距離が縮まっているなと思います。若い子たちも興味を持ってくれて、実際参加してくださったお客さんもいて。こういうツールがもっと広がってくれたらと思いました。

-5月31日にサービスを開始させてから現時点で1ヶ月半ほど経ちましたが、実行してみていかがですか?

小関:クラウドファンディングはそこまで珍しいことではないとはいえ、誰でもやっていることではないので。"なんでクラウドファンディングにしたんだろう?"と考えてもらって、ひとりでも多くの人に参加していただいて、新しいことができればなと思っています。

須田:この前、実際にお客さんから"名古屋のバックステージ・パスを取ったので行きます!"と言ってもらえて。そのときすごく嬉しそうに話してくれて、喜んでもらえてることが直に伝わってきたので、こういうプランを作って良かったなと思うと同時に、どんなふうになるんだろうと楽しみな気持ちもありますね。

-今回、Benthamが用意したサポート・メニューは4ランク。限定映像が収録されたDVDのほか、ライヴ&バックステージへの招待、限定のラバーバンドやTシャツのプレゼントなど、ライヴに関係するメニューが多いのが特徴的だと思います。

小関:若いお客さんが多いので、サポート金額も低めに設定しました。でもやるからには自分たちもプラスになることをしたい。だから実際、ライヴに来てもらえるチケット付きのプランも作りました。

辻:Tシャツやラバーバンドはこのクラウドファンディング限定の、特別仕様のものなんです。あと、僕らは結構な本数のライヴをやっているので、"ライヴを生で観てもらわないと始まらないな"というところもありますね。

須田:このDVD自体、"来たくても来れなかった人を始め、いろんな人にライヴを観てほしい"というのがテーマなので、ライヴに直結する内容になったのは必然的だったなと思います。

-初ワンマンということに加え、DVD収録も決まっていたということは、当日は緊張の度合いも高かったのでは?

小関:スタッフのみんなが気遣ってくれて、撮影に関しては"もし何かあったとしても編集もできるから心配するな。普段どおりのライヴをしなさい"と言ってくれたんですよね(笑)。だから音や映像を撮られる緊張はそんなになかったです。ただ単にワンマンに対する緊張がデカかったです。

鈴木:実はスケジュールがいろいろ立て込んでいたのもあって、ワンマンの直前にあんまりリハーサルができなくて。でも、始まったら"やるしかない!"と思ってやりきりましたね。僕のすぐ横に小さいカメラがセットされてたので、ちょこちょこ(カメラを)見たりしました(笑)。あのカメラ目線は使われたかな(笑)?

-ははは。映像はまだ完成していないんですね。

辻:映像はまだなんですけど、音だけは確認しました。めちゃめちゃいいです。お客さんが歌っているところもよく聴こえて、ステージで感じているライヴの空気が詰め込まれているし、音もきれいだし。かっこいい作品になってると思いますね。

須田:完成した映像がどうなっているのかドキドキです(笑)。それを見て"次はもっとこうしたいな"という目標や課題ができるかもしれないなと思っています。

-ところで小関さんはこの日、喉のコンディションが良くなかったんですよね。

小関:そうなんです......。高音が出なくて、最初"これはヤバいぞ!?"とテンパっちゃって。でもすぐに"今日撮影が入ってるんだ! もうどう足掻いても仕方がない"と冷静になって、とにかく動揺が表情に出ないようにしようと努力しました。その表情を早く確認したいですね......(笑)。

-そういうものが残るのは、アーティストとしてどんな気持ちなのでしょう。

小関:......昔は、ライヴDVDってすごく人気があるバンドしか出せないものだったと思うんですよね。自分自身、完全に脂が乗った状態のバンドのライヴDVDばかり観てきてるんです。僕は学生のころにBRAHMANのライヴDVDとかを観て"かっけー!"と思ってたし、ライヴDVDを撮ってもらうというのは本当にすごいことだと思うんです。でも今の時代はインディーズ・バンドでもライヴDVDを出すことができる。だから成長の過程をDVDという形でも残していけると思うんですよね。僕らは変にかっこつけたりしないし、僕も声が出なかったことをこういうインタビューでちゃんと隠さずに言いますし。声が出ていないことは恥ずかしいけれど、今後そういうことがないように努力しなければいけないし、その努力の過程を映像で確認できる。そういうのはいいんじゃないかなと思いますね。

辻:レコーディングされた音源やミュージック・ビデオの映像と違って、ライヴ音源やライヴ映像は音がぶれてるところやミスが生っぽくて、それが醍醐味だと思うんですよ。事務所の先輩の、KEYTALKの(小野)武正君もこのワンマンに来てくれてて、打ち上げで"辻君あそこミスってたよね。でもそれが良かったと思うよ"と言ってくれたんですよね。......最初は完璧なものを録画したいと思ってたんですけど、音のズレや、間違っているところをうまくごまかしたり(笑)、そういうものが残せるのはいいなと思います。