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INTERVIEW

Japanese

リュックと添い寝ごはん×クジラ夜の街

2020年07月号掲載

リュックと添い寝ごはん×クジラ夜の街

インディーズおよび新人アーティストの音楽活動支援を行う"Eggs"が、札幌/東京/大阪の3会場を繋ぐオンライン・フェス"Live Eggs ONLINE 2020"を7月11日に開催する。今回Skream!では、同フェスに出演する、リュックと添い寝ごはんとクジラ夜の街それぞれのフロントマンを迎えて、対談インタビューを敢行。コロナ禍により、イベント自粛や制限が続いているなかだが、変化に順応しつつも、今後の音楽シーンにそれぞれの形で貢献したいと考える若きバンドマンの姿勢が窺えた。また、お互いに友であり、良きライバルだと認識している同い年ふたりの、正反対な世界観も興味深いものだった。

リュックと添い寝ごはん:松本 ユウ(Vo/Gt)
クジラ夜の街:宮崎 一晴(Gt/Vo)
インタビュアー:三木 あゆみ

-リュックと添い寝ごはんとクジラ夜の街は、2019年に"RO JACK"で優勝されていたり、結成した年や年齢も同じだったりと、結構共通点の多いバンドですよね。おふたりが初めて会ったのはいつごろですか?

宮崎:初めて会ったのはいつだっけ。"JYOJI-ROCK"

松本:僕は一方的に知ってたんですけど、会ったのは"JYOJI-ROCK"かな?

宮崎:"JYOJI-ROCK"っていう22歳以下限定の大会があって。当時、自分もバンドを組んで間もないときで、ユウ君は別のバンドで出てたんですけど。でも、そのときは喋ってもないか? あいさつ程度でしたね。

-初めはお互いどんな印象を持ってましたか?

松本:ほんとに才能のある同年代の人がいるなぁみたいな感じでしたね。輝いて見えてました。

宮崎:(笑)初めて会ったとき、ユウ君はギターを弾いていて、ヴォーカルは別にいたので、当時はそのバンドのヴォーカルばっかり見てたんですよね。で、別のバンドでヴォーカルをやってるってことを知ってからは、すごくいい声だなって思ってて。そこから大会でもどんどん活躍していって、すげぇやつが来たなって感じてましたね。

松本:僕、クジラ夜の街のライヴを初めて観たのは高校1年生のときの"青二祭"だったんですけど、そのとき"うわぁ......これが同年代か"ってなって。ちょっと、プレッシャーも感じましたね。

宮崎:そうだ、"青二祭"の予選会のときに観に来てくれてたよね。

松本:"すごいバンドが同年代にいる"って聞いて、それは観ておかないといけないって思って。

宮崎:それで観に来てくれてすごく嬉しいなって思ったのが、初対面だったかもしれないです。

-そこからどんどん交流が増えていった感じですか?

宮崎:そうですね。大会とかで会う機会がどんどん増えていって。軽音部って、運動系の部活と違って、大会がすごく多いんですよ。大きなものからライヴハウスでやるような規模の小さいものまであって。そういうところで対バン、共演して自然と話すことも増えていった感じでした。

-今は、お互いにどんな存在であると感じていますか?

松本:もう本当に"すごい"って言葉に尽きますね。僕の中では、友でありライバルでもあるって考えてます。

宮崎:僕は"すげぇところまで行かれちゃったな"って思ってて。人気もありますし、カリスマ性もあるし、見習うところもたくさんありつつ、悔しいなって感じることも多いです。ライバルって言葉が一番似合うかなって思いますね。

-リュックと添い寝ごはんは『青春日記』、クジラ夜の街は『星に願いを込めて』と、両バンドとも3月に1stミニ・アルバムをリリースされましたが、お互いの楽曲も普段からチェックされたりしていますか?

宮崎:そうですね。めちゃくちゃ良かったです。ユウ君とは同い年なんですけど、やってる音楽は自分とは正反対で。ユウ君は身の回りのものをすごくよく見てて、小さなこと、些細なことも取り上げて、生活や青春、日々のことを歌に昇華しているんです。そういう世界観が僕にとってはすごく新鮮で。僕はそういうのはなかなか書けないので、自分では書けないような音楽の集合体という感じで、鮮烈でした。

松本:一晴君とはジャンルが違うっていうのもあるんですけど、"この年齢でこの曲が書けるのか"っていうか、こんなものの見方ができるんだってハッとさせられる部分が多かったです。ひとつの映画を観ているような感覚というか、最初から最後までストーリー性があって、聴いててワクワクするし、起承転結があってすごく好きですね。

-クジラ夜の街は5月に「ヨエツアルカイハ1番街の時計塔」と「インカーネーション」を配信リリースされました。「ヨエツアルカイハ1番街の時計塔」は"いつかはあえるよ"というメッセージが込められているそうで、これは今のライヴができない状況に沿ったものなんですか?

宮崎:これはちょっとオカルト的な話になっちゃうかもしれないんですけど、僕は結構作り話とか、想像とか思想みたいなのを歌詞にするんですよ。それが未来予知的に現実になって起こることがよくあって。「ヨエツアルカイハ1番街の時計塔」を作ったのは2019年の夏なんです。そのときはコロナ(新型コロナウイルス感染症)なんて言葉はもちろん知らないし、いつでもみなさんに会える状況で。そのときはファンタジックなものを作りたいっていう一心で、メッセージ性の優先順位は少し下げて作ったんですけど、それがまわりまわって、今一番メッセージ性が濃く出る楽曲になったんです。狙って作ったわけじゃないんですけど、結果的に時代に沿った歌に変わって嬉しいですね。

-巡り巡ってこのタイミングでリリースというのは、運命的な気もします。松本さんもお聴きになりましたか?

松本:もちろんです。周りでも話題になってて。「ヨエツアルカイハ1番街の時計塔」はライヴでも何回も聴いてたので、僕もすごく楽しみにしてたんですよ。これがついに音源になるんだ! と。いざ聴いてみたらもう......頭の中で物語が浮かんできて。"3.2.1"で幻想的な音が鳴るところとか、目つぶっちゃいますね。

宮崎:歌詞通りに(笑)。

-(笑)先ほども話があったんですけど、おふたりの歌詞の書き方というか雰囲気はほんとにタイプが違いますよね。

松本:ほんとに、真逆って言ってもいいよね。それくらい違う。

宮崎:メロから作ってるんだっけ?

松本:メロが先だね。

宮崎:俺も曲によっては違うけど、メロに合わせて気持ちいい言葉をはめてく感じ。コードとかを弾きながら言葉を探してっていうことは結構多い。

松本:そう、メロに気持ちいい言葉をはめて、あとから入れたい言葉を足していくというか。

宮崎:作り方みたいな部分で言うと結構似てるけど、そこでどういう言葉を紡ぐかっていうので、真逆に行くんですね。

-それは興味深いです。

宮崎:あと思ったんだけど、めちゃくちゃ趣味は合うよね? Twitterとかで好きなバンドとか曲を列挙したときに、すごい反応してくれて。

松本:たしかに、好きな曲とかアーティストとかは似てるかも。

宮崎:共通点はかなりあって。インプットしてる音楽は似てるけど、それをどう表現するかが180°違うんでしょうね。

-例えば、どんな音楽を共通して好きなんですか?

松本:やっぱり星野源さんかなぁ。僕自身はおそらく一番影響を受けているアーティストだと思うんですけど。

宮崎:僕もかなり好きなミュージシャンのひとりですね。歌詞とかもかなり影響を受けているかな。あと高校時代にふたりが熱烈に愛している先輩バンドがいたりして(笑)。

松本:そこでも共通点あったね(笑)。

宮崎:インプットもそうだし、軽音部っていう育ってきた環境も似てるし。なのに何かがちょっと違うだけで、ここまでアウトプットに差が出てくるのは面白いですね。

-そうして真逆のものを生み出しているおふたりですが、お互いに"ここがすごいな"って感じるところとかはありますか?

宮崎:さっきも言ったんですけど、ユウ君は身の回りの日々のこととかを表現するのが非常に上手くて。僕は比喩を使ったり飾ったりして、すごく脚色しちゃうんですよ。そういうのを好きな自分もいるんですけど、反対にありのままを伝えることに少し自信がない部分もあって。だからこそ、捻くれた文章を書くことが多いんですけど、ユウ君の歌詞はダイレクトに日々のことをまっすぐな音に乗せて歌う。例えば、水って嫌いな人いないと思うんですけど、水みたいだなって。誰にでもスッと入ってくるものを作れるのがすごい。"こんなクリアなものがあるんだ"みたいな。そこがいいなって思います。

松本:そういうふうに言ってもらえると、ちょっとニヤけちゃいますね(笑)。嬉しい。でも、ないものねだりじゃないですけど、僕は逆に難しい言葉とかを歌詞にできなくて。ストレートに表現することが多いから、比喩とか語彙力の高さが感じられる言葉、そういうのが滲み出ているところが、すごいなと思いますね。あと、共通したインプットがあるからなのかもしれないですけど、メロディの感じがすごく好きなんです。"あぁ、この音の次は、やっぱりこうするよね"みたいな。それに、曲のひとつひとつにちゃんとストーリー性があって、自分もこんなの作りたいなって思うことがあります。バンド自体も技術が高くて、一晴君が頭の中で考えているものを、それ以上のものとしてバンドでしっかり作り上げているのかなって感じがしますね。