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LIVE REPORT

Japanese

リュックと添い寝ごはん

Skream! マガジン 2020年10月号掲載

2020.08.26 @渋谷TSUTAYA O-nest

Writer 三木 あゆみ Photo by 関口佳代

今年3月に高校を卒業したばかりの新世代アーティスト、リュックと添い寝ごはん。一度見かけたら気になってしまうそのバンド名、楽曲のメロディの良さと親しみやすさで若い世代から圧倒的な支持を得ている注目のバンドだ。8月26日、彼らの初ワンマン・ライヴが無観客配信で行われた。このライヴは今年1月頃からすでに予定されていたそうだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、配信で実施することとなった。記念すべき初ワンマンが無観客というのは、メンバーやファンの気持ちを汲み取ると、やはり残念なところもあったのかもしれない。それでも、メンバーの表情は明るく、前をしっかりと向いている。だって、青春は今しかない。それを大切に歌うバンドだからこそ、今回の配信ライヴを決断したのだろう。

画面にライヴハウスの舞台袖の様子が映し出され、メンバーがステージへと一歩ずつ向かい、それぞれの位置につく。1曲目に披露されたのは8月19日に配信リリースされたばかりの新曲「生活」。最新のリュックと添い寝ごはんが詰め込まれた、鮮度抜群な彼ら流ダンス・ロック・チューンを一発目に持ってくるところに、初ワンマンに懸ける気合を感じる。開放感溢れるそのバンド・サウンドはものすごく眩しい。すでに手応えを得たのか、続く「ノーマル」でのメンバーの表情はこれまで以上に生き生きとしているように見える。ベースのグリッサンドもバッチリ決まって気持ちがいい。レトロで爽やかな風の吹くような未発表曲も披露し、松本ユウ(Vo/Gt)に促され、宮澤あかり(Dr)と堂免英敬(Ba)がドヤ顔で"頑張るぞい!"とカメラに向かって意気込むと、何も触れずに松本がすかさず「サニー」を歌い出す(曲とのギャップが絶妙でちょっと笑ってしまった)。ヴォーカルには情感がグッと込められ、フロントマンとしての成長も表れているように感じた。そして、意外な曲展開と散りばめられた遊び心満載の音たちに驚きの連続だった未発表曲で魅せ、あっという間に前半戦が終了した。

換気タイムも兼ねて、場所を移動しクイズ大会がスタート。リュックと添い寝ごはんにまつわるクイズに、メンバー全員、予想以上にヒートアップし"お茶の間"の笑いを誘った。こういった企画を挟むところにも、観ている人に配信でも楽しんでもらおうと、自分たちなりに考えていることが感じられる。ハイテンションで大盛り上がりとなったクイズ大会を経て、後半戦へ。「500円玉と少年」はもともとアコースティックなナンバーだが、この日はバンド・アレンジで聴かせる。宮澤の女声コーラスもいい味つけになっていて良かった。そこから「手と手」、未発表のゆったりとしたナンバー、そして「グッバイトレイン」と続く。ライヴのアレンジしかり、プレイ・スタイルしかり、バンドや各々が目指していること、やりたいことをしっかりと表に出していることが伝わってくる。緩いMCから繋いで演奏した「青春日記」では、言葉のひとつひとつを大事に歌う様にグッときた。

曲が終わり、突如フィルム映画のようなカウントダウンが映し出され、"速報"の文字が表れる。そこではなんとメジャー・デビュー決定が発表された! "今まで通り変わらずに頑張っていきたい"という想いを松本が話し、ラストに披露されたのは未発表の新曲「あたらしい朝」。12月9日にリリースされる1stフル・アルバム『neo neo』にいっそう期待が高まる、新たな表情を見せる1曲だった。

こうして、改めてスタートラインに立った彼らの初ワンマン・ライヴは幕を閉じた。結成から約3年でメジャー・デビュー。飾らないピュアな姿の彼らは、これから先どんなミュージシャンになっていくのだろうか。未来が楽しみで仕方がない。

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