Japanese
"革命ロジック2024" Skream!ステージ
Skream! マガジン 2024年07月号掲載
2024.05.19 @下北沢シャングリラ
Writer : 中尾 佳奈、稲垣 遥、山田 いつき Photographer:堺柊人
2度目の開催となった下北沢LIVEHOLIC主催サーキット・イベント[LIVEHOLIC presents. "革命ロジック2024" supported by Skream! & 激ロック]。今年は新たにSkream!/激ロック編集部イチオシのアーティストが集結した"Skream!ステージ"/"激ロックステージ"が登場、音楽メディアとライヴハウスの強力タッグによりさらなる盛り上がりを見せた。本稿では下北沢シャングリラを舞台としたSkream!ステージの模様をお届け。シャングリラへと続く階段には、開場前から長蛇の列ができていた。
トップバッターは"おいしいおんがく"をテーマに活動するchef's。ショータイムのアナウンス風SEでこのSkream!ステージの幕開けを華やかに飾り、開演ブザーとともに"「革命ロジック」始めるよ!"とアヤナ(Vo/Gt)が元気良く放つ。冒頭からポップ・ロック・チューン「デクノボウ」、「ヒッチコック」を連投し、早速サビではオーディエンスの手が挙がっていく。"改めましてchef'sと申します"と挨拶を済ませると、メロディックに歌うベースのジャジーなムードに、泣き叫ぶ歪んだギター、テンポ・アップからの華麗なドラムさばきと楽器陣が魅せ、3曲目のおしゃれなミドル・ナンバー「Ci(n)der era」へと繋いだ。MCを挟み、ドラム・ソロから「Hamlet」へ。サビでグッと上がるテンポにフロアの熱も高まる。そして高速スラップが光るベース・ソロに続き「huit」、「スピンオフヒロイン」と爽やかなアップ・チューンを投下。アヤナの甘く切ない歌声と技巧派の楽器陣が生み出す、ポップスに様々な調味料を加えた独自の"おいしいおんがく"を存分に堪能できるステージとなった。
続いて登場したのは、2023年3月結成の3ピース・バンド、セカンドバッカー。"今日一番かっこいいライヴしに来ました!よろしくお願いします!"と威勢良くスタートを切ると、「アダルトエイティーン」では四つ打ちのサビで躍らせ、「なんだっていいわ。」では"BABYBABY"のフレーズでコール&レスポンスを繰り広げるなど、フロア全体を巻き込んでいく。昨年の"革命ロジック2023"出演時はまだ3曲しかなかった彼らが、今年はたくさんの曲を引っ提げ、下北沢最大規模を誇るシャングリラのステージを担うということで、意気込みは十分だ。体調が悪く声が出ないと言うこうへい(Gt/Vo)だったが、大切な人への想いを揺れるリズムに乗せたミドル・チューン「別れた後で」、「リンゴ」、「君とのこと」や、疾走感溢れるロック・ナンバー「どうせ枯れるなら」、「月と太陽」と、全8曲を懸命に駆け抜けた。"情けないけど、みんなと一緒に音楽をやりたい"と、かすれた声で精いっぱいに叫ぶその姿から、まっすぐな想いが伝わってくる。
リハーサルからオーディエンスを煽り異様な盛り上がりを見せていたのは、あらゆる要素をJ-POPに落とし込んだ唯一無二のサウンド"Ochu-POP"を提唱するOchunism。怪しくダンサブルな「SHOUT」、ズンズンと低音が響くファンキーなナンバー「freefall」、「Mongoose」と続けざまに投下し、「Hemoglobin」では観客とともに左右にステップを踏むなど、ダンス・フロアと化したシャングリラを沸かしていく。関西発のバンドらしく軽快なトークで笑いも交えたMCのあとは、凪渡(Vo)が"ありのままの自分を出した曲"だと語る未公開である新曲を、スタンドマイクを使いまっすぐに前を見つめ歌い上げた。続く「wakusei」では重厚感のあるダークな世界観で惹き込む。そして最後はとびきりのディスコ・チューン「Mirror」で躍らせ、軽妙なカッティング・ギターに乗り跳ねるフロアをディスコ感溢れるカラフルなライトが照らした。今回はたいち(Key)の休養により5人体制での出演となったが、不安など一切感じさせない堂々たるステージングで圧倒。フロアには高揚感に満ちた歓声が終始響いていた。
続く終活クラブも音合わせから盛り上げる。少年あああああ(Vo/Gt)が、屈託のない笑顔から目を見開いた挑発的な形相まで表情を変えながら、和の要素を携えたロックに皮肉たっぷりな詞を乗せて届ける様が印象的だが、羽茂さん(Key)もスピーカーの上に立ち、クラップを煽ったりダンスを先導したりと実にキャッチーだ。"こんな楽しいのにいつかつまんなくなっちゃうんだよね。人間ってしょうもないよね"(少年あああああ)と不気味な笑みで突入した厭世的な「しょうもないなあ」は、四つ打ちにドロップも盛り込まれ、新曲にして代表曲のひとつになりそうな強力チューン。かと思えば素直なラヴ・ソング「セプテンバー」でピュアな一面も見せ、"ほんとにいいバンドなのかなぁとか自信なくすことばっかりなんだけど、ライヴやると大丈夫なのかもって思ってしまう。それはこうして観に来るあなたがいるからで、いつか優しいあなたの歌が歌いたいんだよな"と自分の言葉で伝える様にグッと来た。"君の「死にたい」はぼくが歌う"(「キラーチューン」)と、真剣な眼差しで歌う少年あああああ。不器用ながらも音楽を愛し、自分の足取りにも迷いながらも他人の人生を背負おうとする、バンドマンとしての想いが伝わるステージでその存在感を印象づけていった。
3ヴォーカル・バンド Dannie Mayは、普段ラストスパートの起爆剤となることが多い代表曲「ええじゃないか」を頭に披露し、気合と挑戦を窺わせる幕開け。立て続けに低音が効いた「玄ノ歌」でアグレッシヴに攻めたてて狂騒感を煽り、パーティー・チューン「ぐーぐーぐー」へ。終活クラブに触発されたか、Yuno(Vo/Kantoku)がいつも以上にステージを縦横無尽に動くはじけたアクションを見せ、田中タリラ(Vo/Key)が思わず笑う場面も。フル・ボリュームで届けたこの冒頭3曲のような、マイナー調のダークでダンサブルなロックが彼らの色として定着しつつあるが、爽やかなポップスにも振り切れるのが、ルーツが多彩且つあえてその個性を楽しんでいる彼らの面白いところ。セッション~音数を減らした歌い出しで緩急をつけた、ディスコチックな「KAMIKAZE」では3人それぞれの歌声を聴かせ、バンドの特性を際立たせた。そこからミラーボールが回り、怪しげでムーディな世界観を盛り立てた「カオカオ」は、マサ(Vo/Gt)の声の伸びが良く、ファルセットでも勢いが落ちることなく3人のヴォーカルの迫力で突き抜けてゆくのが痛快。ラストは"ウォウウォオー"の合唱から始まる、夢を持つ人々を肯定するストレートな「コレクション」でフロアを明るく照らし、観客の拳を突き上げさせて去って行った。
"みなさまに忘れられない最高のエクスペリエンスをお届けしたいと思います"というAI風アナウンスのあと、真っ白の衣装で登場したKlang Ruler。この日の4日前に発売したばかりの1stアルバム『Space Age』収録曲「クリーチャー」でスタートし、まさにスペイシーでレトロフューチャー感満載の、バンドの今のモードを前面に押し出してゆく。さらにベースとカッティング・ギターが効いたグルーヴィな「ちょっとまって」でのキーボードやギターのソロ回し、「グッバイワールド」での平熱のyonkey(Vo)とパワフルなやすだちひろ(Vo)のヴォーカルの対比など、事前の座談会(※2024年5月号掲載)でも音源とライヴのギャップがあるとやすだが話していたが、浮遊感の中に、音源以上に燃えるエネルギーを感じさせるのが彼らのライヴの魅力なのだろう。男女混声がロマンチックなムードを醸成する「ロストインメモリ」、音圧を減らしリラックスしたラフなムードで始まったかと思えば、後半の技ありの展開と演奏でボルテージを上げていくユニークな「レイドバックヒーロー」、そして締めは「Thinking about you now」だが、これも後半のベースとギターのユニゾンが楽しく、ひと筋縄ではいかない作り込みに唸る。軽やかで愉快な楽曲にクラップが湧き、会場後ろまで手を振る光景が広がった。
いよいよSkream!ステージも残り3アクト。歌い手のSymaGと作家でボカロPでもあるナナホシ管弦楽団からなる音楽制作ユニット"カロンズベカラズ"のステージは「病葉」から勢い良くスタート。会場の熱気を一気に上昇させると「ブラヴァッキー迷宮入り」、「HitBit」とダンサブルなナンバーを連投し、観客の身体を大きく揺らしていく。筆者は初めて彼らのライヴを観たのだが、強靭なダイナミズムを感じさせる演奏と、それに負けないSymaGのパワフルなヴォーカルに終始圧倒されっぱなし。そんななかでもブラス・サウンドを取り入れた「くらませて吉祥寺」で見せたポップな一面は新鮮だったし、続く「残光」ではステージとフロアが渾然一体となったハートフルな瞬間を観ることができた。鬼気迫る「娑婆駄馬」を経て、最後は「エンバーミング」でフィニッシュ。今回が初めてのサーキット・イベント出演だったと言う彼らだが、大きな爪痕を残してステージをあとにした。
大人しめのSEから一転、キャッチーなラップが炸裂する「STICKER!!!」で幕を開けたmeiyoのステージ。"今日のライヴ、みなさん楽しめてますかー?"と爽やかに呼び掛け、続く「クエスチョン」ではハンドクラップを要求。誰ひとりとして置いてけぼりにしないパフォーマンスでシャングリラを自分の色に染め上げた。ここまでは順調かに思えたが、なんと最初のMCタイムで、ずっとmeiyoが顎マスクのままライヴをしていたことが観客からの指摘で発覚(サポート・メンバーもまったく気づいてなかった模様)。"ヤバッ(汗)"と照れ笑いするmeiyoの姿に、会場は温かい笑い声で包まれた。そんなハプニングもありつつ、新曲「HOPE!HOPE!HOPE!」では"マスク! マスク!"という合いの手が飛び交う場面も。後半は「PAKU」や「なにやってもうまくいかない」など令和のバズ・ソングで会場を沸かせてみせた。ラスト・ナンバーは、濱家隆一(かまいたち)と生田絵梨花からなるユニット"ハマいく"への提供楽曲で、昨年の"NHK紅白歌合戦"でも披露された「ビートDEトーヒ」のセルフカバー。ライヴという非日常的な空間から忙しない日常へと返っていく僕らに向けた温かいエールのように響き渡った。
meiyoからのバトンを受け取り、Skream!ステージのトリを務めたのは4人組バンド、リュックと添い寝ごはん(以下:リュクソ)。松本ユウ(Vo/Gt)が敬愛するSAKEROCKの「One Tone」がSEとして流れるなかメンバーが登場し、チャイナ・テイストのナンバー「天国街道」と、代表曲「青春日記」を挨拶代わりにお見舞い。まだこの会場が下北沢GARDENだったころ、同会場にて開催された大会に出演したものの、いい結果を残せず悔しい思いをしたと言う彼ら。当時その大会でも演奏した「ノーマル」をエモーショナルに届けたほか、コール&レスポンスを繰り広げた「Be My Baby」、「未来予想図」など、バンドの持ち味である瑞々しさ全開のステージが続く。そんな本編の最後は「Thank you for the Music」。ジャンルの垣根を超えた様々なアーティストが一堂に会した"革命ロジック"にぴったりの選曲で締めくくった。
鳴り止まない拍手に応えてリュクソが再登場。ライヴ・チューン「疾走」でアンコールをあっという間に駆け抜け、これで終わりかと思いきや"ギターの音が調子悪かったんで、もう1回やっていいですか"と、まさかの2周目に突入。"そんなのあり!?"と思わず笑ってしまったが、顔を見合わせながらプレイするメンバーも飛び跳ねるフロアも心底楽しそう。こうして約8時間に及んだSkream!ステージは大団円を迎えた。
今年から新設され、全9組のアーティストが集結したSkream!ステージ。それぞれジャンルやスタイルは違えど、彼らが次世代の音楽シーンを担う存在になっていくことを予感させる、濃厚なライヴ体験を味わうことができた。来年の開催にも期待が高まる。
[Setlist]
■chef's
1. デクノボウ
2. ヒッチコック
3. Ci(n)der era
4. Hamlet
5. huit
6. スピンオフヒロイン
■セカンドバッカー
1. ショート(仮)
2. アダルトエイティーン
3. なんだっていいわ。
4. 別れた後で
5. リンゴ
6. 君とのこと
7. どうせ枯れるなら
8. 月と太陽
■Ochunism
1. SHOUT
2. freefall
3. Mongoose
4. Hemoglobin
5. 新曲
6. wakusei
7. Mirror
■終活クラブ
1. 残留思念パラドックス
2. ハイホー!
3. セプテンバー
4. 創作逆モラトリアム
5. しょうもないなあ
6. テレキャス2
7. キラーチューン
■Dannie May
1. ええじゃないか
2. 玄ノ歌
3. ぐーぐーぐー
4. KAMIKAZE
5. カオカオ
6. コレクション
■Klang Ruler
1. クリーチャー
2. ちょっとまって
3. グッバイワールド
4. ロストインメモリ
5. 飛行少女
6. レイドバックヒーロー
7. Thinking about you now
■カロンズベカラズ
1. 病葉
2. ブラヴァッキー迷宮入り
3. HitBit
4. くらませて吉祥寺
5. 残光
6. 娑婆駄馬
7. エンバーミング
■meiyo
1. STICKER!!!
2. クエスチョン
3. HOPE!HOPE!HOPE!
4. PAKU
5. っすか?
6. なにやってもうまくいかない
7. ビートDEトーヒ
■リュックと添い寝ごはん
1. 天国街道
2. 青春日記
3. ノーマル
4. Be My Baby
5. 未来予想図
6. Thank you for the Music
En1. 疾走
En2. 疾走
- 1
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- 2025.01.22
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シノダ(ヒトリエ)
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ずっと真夜中でいいのに。
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ASIAN DUB FOUNDATION
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