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LIVE REPORT

Japanese

meiyo

Skream! マガジン 2025年01月号掲載

2024.12.11 @渋谷WWW

Writer : 山田 いつき Photographer:後藤壮太郎

令和のポップ・マエストロとして、数々のバズ・ソングを生み出しているシンガー・ソングライター meiyoが、12月11日に渋谷WWWにてワンマン・ライヴ"meiyo ONE-MAN LIVE in TOKYO「POP IDEA」"を開催した。

昨年12月にメジャー1stフル・アルバム『POP SOS』をリリースし、メジャー・デビュー後初となるワンマン・ライヴ"meiyo One-Man LIVE「POP SOS」"を開催したmeiyo。今回のライヴはそれから約1年ぶりとなる彼にとって待望のワンマンで、自身初の大阪での公演を経て行われた東京編にも多くのファンが駆けつけた。

開演前から会場にひと笑いを起こしたユーモラスな影アナののち、定刻通りに暗転。古い映写機のカラカラ音をブリッジに、様々なアーティストの名曲を断片的に繋ぎ合わせたSEが流れ始める。ポップ史を彩ってきた有名曲というより、meiyo自身を形成してきたのであろうパーソナルな趣きを感じる選曲だ。

先に定位置についたサポート・メンバーのセッションに合流する形でmeiyoがステージに登場し、ダンサブルな「うろちょろ」でライヴの口火を切る。打ち込み主体の原曲を肉体的なバンド・サウンドに昇華しつつ、meiyo印のポップネスを惜しげもなく爆発させたライヴ・パフォーマンスは圧巻。久しぶりのワンマンにもかかわらずフロアとの掛け合いも完璧な仕上がりで、meiyoが観客に向けた"うれしい! たのしい! 大好き!"という粋な返しにも彼のJ-POP愛が垣間見えてニヤリとしてしまう。「ココロ、オドルほうで。」までほぼノンストップで6曲を演奏したmeiyoは"今日は嫌なことを思い出す暇もないくらい楽しませるアイディアをいっぱい考えてきました"と意気込んだ。

続くブロックでは、WEST.に提供した「まぁいっか!」、Adoに書き下ろした「クラクラ」を立て続けに初披露。二転三転するメロディ展開も楽々と乗りこなしていくのは、さすがコンポーザーといったところか。ここからはiPhoneで作ったリズム・トラックを使用したアコースティック・コーナーへ。meiyoはその場で女性客の声や会場のハンド・クラップを録音し、慣れた手つきでビートを作成。完成したリズム・トラックに乗せて披露されたのは、彼が人生で多大な影響を受けたと公言するシンガー・ソングライター KANのカバーだった。

数ある名曲の中からこの日歌われたのは2007年発表の「IDEA」。この曲はmeiyoにとって、公演名にも冠された"IDEA"という言葉に特別な想いを抱くきっかけになった曲だという。昨年11月、KANの訃報を受け、悲痛な心境とともに"先の世代にもKANさんの素晴らしき音楽、そのDNA的なものを繋げていく"と自身のSNSで綴っていたmeiyo。思えば、この日のライヴでは開場中の影アナに始まり、演出の細部に至るまで、KANへのリスペクトが散りばめられていた。KANが残した素晴らしいポップスの数々を後世に伝える――それが今の彼にとって何よりの原動力であり、令和のポップ・マエストロとしての使命なのかもしれない。

そしてそんなKANに大きく影響を受けた楽曲として「Cat Scat」を披露する流れに。難しいからワンコーラスだけ練習させてほしいと、meiyoは石本大介(Support Gt/Mani)、伊藤龍一郎(Support Gt/Cho)とともにアカペラで歌唱。恐らくそのリファレンスは「ほっぺたにオリオン」と推察するが、アカペラでのドゥーワップは12月という季節感も相まって「KANのChristmas Song」を彷彿とさせる。一向に終わる気配のないアカペラにマツイヒロキ(Support Ba)から"ワンコーラス長くねぇ!?"と野次られながらもフルで歌い切り会場は笑いと拍手に包まれた(その後リズム隊も交えて演奏された)。

たった2分間の小休憩を挟んで始まった後半戦は「ねぇよな」や「PAKU」といった中毒性抜群のセルフカバー曲を連投。続く「っすか?」では守屋優樹(Support Dr)を含むメンバー全員が楽器を置いて真顔でダンス(工藤静香「嵐の素顔」の振りも!)に興じる等、カオティックな世界観でフロアを魅了した。

ラスト・ブロックを前にmeiyoはポップについて、自分の中での定義と前置きしつつ"悲しいものとか、切ないものとか、悔しい気持ちとか......もちろん楽しい感情だって、嬉しい気持ちだって、その全部をきれいにまとめ上げたものというか......恥ずかしいこと言いますけど「宝物」だと思ってるんですよ"と熱い想いを語る。さらに"ということは僕に「宝物」をくれたアーティストたちがいるわけですよ。前回の「POP SOS(meiyo One-Man LIVE「POP SOS」)」ではポップに救われたってことだけを言ってたんですけど、今回は救われた上で、皆さんに僕の「宝物」を見てほしいなと思って。だからその「宝物」を一番いい状態でお見せするために、様々なアイディアを考えてきて、今日のイベントを作りました。それが「POP IDEA」ということでございます"と、このライヴに込めた想いをまっすぐに伝え、客席からは大きな拍手が沸き上がった。

そんな真摯な言葉から演奏されたのは、軽快なシャッフル・ビートに鼓舞される「希望の唄」。愛があればそれだけで充分だと歌うこの曲が「愛は勝つ」(KAN)へのアンサー・ソングのようにも聴こえてグッときてしまう。「いつまであるか」をエモーショナルに届けたあと、meiyoは"本当にいつ何があるか分からないですよ、いろんな物事がね。だから僕はこれからも好きなものは好きと言い続けたい。ポップが大好き"と宣言。そして"ポップなビートで逃げ出したい"と明るく歌う「ビートDEトーヒ」で本編を締めくくった。

前名義のワタナベタカシとして音楽活動を始めてから来年の1月で10年を迎えるmeiyo。この日のアンコールでは、それを記念したmeiyoとワタナベタカシによるツーマン・ライヴの開催が発表されたほか、その前哨戦にもあたる新曲も届けられた。さらに本公演で演奏した楽曲をダイジェストで繋げた"全曲つなげ"なる力業も披露。実はこれ、KANのコンサートでは定番だった名物企画で、ライヴで演奏した全曲から何小節かずつをコンパクトに繋いで2分間程のメドレーにまとめ上げるというもの。ライヴに全く関係のない楽曲が紛れ込ませてあるのも本家同様で、今回は2024年を象徴する某バズ・ソングと某大御所アーティストの名曲2曲を見事にマッシュアップ。そして最後は、石本との2人編成で「あとがき」をしっとりと歌い上げ、約2時間のエンターテイメント・ショーは宝物のような余韻を残して幕を下ろしたのだった。

[Setlist]
1. うろちょろ
2. KonichiwaTempraSushiNatto
3. クエスチョン
4. レインボー!
5. HOPE!HOPE!HOPE!
6. ココロ、オドルほうで。
7. まぁいっか!
8. クラクラ
9. IDEA(KANカバー)
10. Cat Scat
11. ねぇよな
12. PAKU
13. っすか?
14. なにやってもうまくいかない
15. 希望の唄
16. いつまであるか
17. ビートDEトーヒ
En.1 新曲
En.2 STICKER!!!
En.3 全曲つなげ
En.4 あとがき

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