Japanese
Dannie May
2024.11.09 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer : 稲垣 遥 Photographer:Ayato
Dannie Mayのニュー・アルバム『Magic Shower』の1曲目「マジックシャワー」を聴いたとき、視界がぱっと開け、光が降り注ぐような感覚があった。そしてアルバムを聴き進めると、それは偶然の賜物ではなく、彼等が自分たちで殻を破って手にしたものなのだと確信を抱くようになった。
2021年頃までは"コーラス系バンド"、"ポップとマイナーの境界線、新感覚バンド"と謳っていたDannie May。今はその触れ込みは公式サイトにはない。また直近では、多様な楽曲を届けることについて、"どんなタイミングでも刺さる曲があるバンドになりたい"といった旨の発言をしており、"自分たちの音楽のジャンルを固定しないこと"をむしろ強みにしていけばいいのだと曲に自信を持てたことによって、きっと素直になったのだと思う。そんな"今のDannie May"のパフォーマンスの説得力を見せつけたリリース・ツアー・ファイナルだった。
この日の渋谷CLUB QUATTROは満員。また本ツアーはバンドにとって初の全公演ソールド・アウトということで、気合は十分だった。1曲目「ええじゃないか」でのっけからぶち上げ、「玄ノ歌」ではオーディエンスから上がる"ラッキーボーイ"の声の大きいこと。端から端までびっしりと埋め尽くしたオーディエンスが手を上げる光景は、マサ(Vo/Gt)も言っていたが壮観だ。曲中にも歓声が湧くなか、新作から「ゲッショク」。シーケンスを多用するイメージが強かった彼等がストレートなバンド・サウンドで勝負する、青い疾走感のあるナンバーだ。お馴染みのサポート・メンバー、成瀬太智のドラムのキレもばっちりで、生音の迫力を際立てる。メインをとるマサだけでなく田中タリラ、Yunoのヴォーカル・パートやマサのギター・ソロ等見どころたっぷりのこの曲だが、その全てを華麗に決めてみせた。
マサがまずソールド・アウトへの感謝を述べた後、"理不尽なことの多いこの世界は、幸せで塗り潰してやっていくしかない"と想いを話す。ごはんがおいしいだとか、そういった幸せは1人ではなく誰かと共有することでより感じられるから、輪を広げていきたい、分け合うことの大事さを伝えたいと、弾き語りから「ふたりの暮らし」へ。彼等の曲の中でも日常を捉えた歌詞の描写が出色の出来のナンバー。言葉が胸にすっと入って来るような隙間のある素朴で温かな音像と、マサの優しく穏やかな歌声で、じんわりと曲の良さを最大限に届けた。
かと思えば"良い事も何もねぇな"、"人生は蟠り"と歌うタリラ作の「強欲」で一気に谷底へと突き落とすジェットコースターのような展開。闇にのみ込まれるような不気味な轟音と、マサのか細い高音ヴォーカルがホラー的ですらある。さらに、同じく息苦しくなる程厭世的なリリックで、アシッド・ジャズっぽいサウンドの「異形」を続けた。タリラがフロントマンとなり歌い上げると、マサがギタリスト然とした佇まいになるのも面白い。
シネマチックとも言えるおどろおどろしい世界観が繰り広げられ、拍手をすることも忘れ呑み込まれていたフロア。そこへ今度はピコピコとした電子音のSEが響くと「Night Flower」でクラブ的な雰囲気に。音源の洒脱な印象よりも狂騒感があったのは、前の2曲からの振り幅も手伝ってのことだろうか。Yunoの"一緒に跳ぼうぜ"の声を合図にクアトロ(渋谷CLUB QUATTRO)が揺れた。さらに、インタールードでBPMを合わせる技ありの繋ぎで「KAMIKAZE」へグルーヴを連れていく。「OFFSIDE」ではどんどん大きくなるクラップに、観客のテンションが輪を掛けて上がっているのが表れていた。
ここでタリラが繊細なキーボードの音色を神聖な雰囲気たっぷりに奏でて「肌合い」へ。一部コーラスが入るのみでほぼ完全弾き語りの静の演出とピンスポットが、澄んだムードを際立てて美しく印象的だ。"これまでの足跡を/そっと思い返して/生きてる証/感じ取れるように"という歌で、どん底から這い上がった怒濤のブロックを安らかに締めくくった。
ライヴも終盤に差し掛かり、Yunoが"終わりそうになると、終わりたくなくなってくるんだよな"と話し始める。"俺等も始めてすぐコロナ禍になって、終わりそうになったことも実際あって、今パンパンのクアトロに立ってるのって奇跡で――終わりそうで終わらずにこれたものって、大切にしたほうがいいんだよな"と実感を込めて言った。後ろでマサとタリラが目を合わせて照れ臭そうに笑っていたのも含めていい場面だった。
そんな熱いMCから、ラスト・スパートの口火を切ったのが新作収録の「ハッピージャック」だ。Yunoが高校生のとき初めて書いた曲と同じコード進行で作ったというシンプルなロック・チューン。3人が声を合わせるヴォーカルからパワフルに走り出し、Yunoがメインで歌い出すと、マサが楽しそうにギターをかき鳴らし、タリラが向かい合ってエアギターを弾く姿も見せ、フロアも大盛り上がり。Dannie Mayは3人とも曲を作り、作曲者がメイン・ヴォーカルを担うスタイルではあるが、シングルや作品のリード曲等その多くはマサが務めている。そんななかこの新曲がこんなにもアンセムになって、フィナーレへ向けたスタートダッシュを切れるような強さを湛えているとは。嬉しい驚きだったのと同時に、今後への期待値も高まった。
そこからは、ブレイクダウンも盛り込んだミクスチャー・ロック「ダンシングマニア」で、赤と白のストロボが明滅し迫力を煽るなか音源にはないマサのハイトーン・シャウト(!)も炸裂し、J-POP色の濃いパーティー・チューン「ぐーぐーぐー」ではオーディエンスの"フー!"、"ウォッオーオッオッオオーオ"のコーラスも完璧で、もっと大きい会場を巻き込んでいく姿が目に浮かんだ。そして極上のポップ・ソング「アストロビート」では、イントロからステージもフロアも揃ってノリノリでサイドステップする姿がなんともキュートで、一緒に歌いたくなるフレンドリーな楽しさを振りまいていく。さらにカッティング・ギターから"お待たせ「カオカオ」"とマサがやけにいい声のタイトルコールを決め、妖しい魅力のあるダンス・チューン「カオカオ」を畳み掛けた。
"音楽続けてて良かったなぁ"とマサ。Dannie May結成前、8年前に上京してから初めて立ったクアトロで弾き語りで挫折を味わった話から、"あの日の経験は無駄じゃなかったって答え合わせができた"、"僕は普通の人間です。こんな僕が大きくなっていくから価値があるんだって、おこがましいけど思う"と飾らない言葉で語り「コレクション」へ。"夢を語るたび強くなれ"と、報われない日々のなかでも聴き手とバンド自身を鼓舞するドラマチックで力強い歌から、ラストは「マジックシャワー」。アルバム・リリースにあたって"音楽は魔法か否か"を問うてきたDannie Mayだが、"音楽は魔法だと思う"とここであえて明言したマサ。大きな拍手に少し感極まったかのようにも見えたが、その素直な想いが歌に乗り、光となってシャワーのようにクアトロに降り注いだのだった。
「コレクション」の"ウォウウォオー"のコーラスが客席から湧き、大きくなってゆく。それに合わせるように手拍子が鳴らされたアンコール。再登場した3人は、ニュー・シングル「ラムジュート」の発売決定と結成6周年ワンマンの開催を発表した。来年の明るい話題になったところで、マサが"今年フェス出れなかったしね"と言うと、すかさずYunoが"言うなよそれ"とツッコんでいたが、"だから来年は出たい"とそのカッコつかない部分も表出してしまうところが、愛すべき身近な親密さに繋がっていると思う。"もっと大きくなるために頑張っていきましょう! Zeppでやりたいって夢があるからね! これからのDannie Mayもどうかよろしく!"とマサが声を掛け、最後はずっと歌い続けている1曲「御蘇-Gosu-」。20曲以上披露してきたにもかかわらず、フィナーレにまたファンタスティックな高音ヴォーカルを響かせ、彼等のマイルストーン的な一夜を最高の形で締めくくったのだった。
[Setlist]
1. ええじゃないか
2. 玄ノ歌
3. ゲッショク
4. 黄ノ歌
5. ふたりの暮らし
6. 強欲
7. 異形
8. 適切でいたい
9. Night Flower
10. KAMIKAZE
11. OFFSIDE
12. 肌合い
13. ハッピージャック
14. ダンシングマニア
15. ぐーぐーぐー
16. アストロビート
17. カオカオ
18. コレクション
19. マジックシャワー
En1. 東京シンドローム
En2. めいびー
En3. 御蘇-Gosu-
LIVE INFORMATION
"Dannie May Presents「Welcome Home!」"
2024年12月26日(木)渋谷 Spotify O-nest w/ レトロリロン
[チケット]
前売り ¥4,500 全自由(D代別)
一般発売中
詳細はこちら
"6th Anniversary One Man Live『SUPER FUTURE』"
2025年3月18日(火)渋谷CLUB QUATTRO
[チケット]
¥4,500 全自由(D代別)
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