Japanese
クジラ夜の街
Skream! マガジン 2023年07月号掲載
2023.06.21 @LIQUIDROOM ebisu
Writer : 石角 友香 Photographer:Ryohey
クジラ夜の街が、結成6周年記念とメジャー1st EP『春めく私小説』のリリース記念を兼ねたツアーを敢行。ファイナルの東京公演は結成日である夏至に満員のLIQUIDROOM ebisuで行われた。
"ファンタジーを創るバンド"を自称する彼らの音楽は日常からの逃避が目的ではない。現実を生きるなかで諦めてしまいがちな夢ややってみたいこと、ちょっとした冒険心を目覚めさせるきっかけのようなものだ。その効力は音楽そのものが研ぎ澄まされることで増幅する。
アーティスト写真の掲出など、ライヴ開始前からワクワクする演出が施されたこの日。これから始まるライヴを旅に見立てた開幕の言葉を含む「幸せのかたち (Prelude)」に乗せ、サポートの高田真路(Key)を含む5人が登場し、宮崎一晴(Vo/Gt)が「風のもくてきち」のタイトル・コールを放つと、満場のファンの待望感が解放されるように爆発する。離れ離れの"君"を探す旅はのどかな響きのこの曲でスタートしたが、エンディングで早くも秦 愛翔のドラム・ソロのブロックを投入、一気に加速し、「夜間飛行少年」へ。物理的な速度だけじゃなく、より鮮明になった山本 薫(Gt)のオブリガートや低音をタフに支える佐伯隼也(Ba)のフレージング、ロック・ドラムでありつつ、パワー・ヒットより抜き差しで曲のトリガーを作っていく秦のドラミング、それらすべてがブラッシュアップされている。スピード感はあるが、耳に優しいアンサンブルが新世代なのだ。「詠唱 (Prelude)」をインタールード的に挟んで、いよいよかけられた魔法も薬が切れるようにむしろ苦しいと歌う「ラフマジック」では、山本と宮崎の2本のギターの意味が増し、ライヴ・アレンジに耳を澄ましてしまう。
曲終わりに宮崎がバンドの"6歳の誕生日を祝ってくれてありがとう! こんなにたくさんの人に演奏を見てもらえて嬉しいです"と謝辞を述べつつ、普段の達者な口上のさらに上をいく早口で物語の導入をまくし立てると、ピアノも含めた5つの楽器がおもちゃ箱のような賑々しさを醸す「あばよ大泥棒」に接続していく。山本のソロをいちいち"薫、スーパー・ソロ!"と宮崎のマスター・オブ・セレモニー張りの紹介付きなのが彼らなりのショーらしいスタイルと言える。こちらも大手を振って個人技に拍手を送れるのは参加感を増す装置にもなっている。そこに"ファンタジーが大嫌いな魔王"のアナウンスが流れるのだが、"クジラ夜の街ぃ? バンドなのに口上述べたりして気持ち悪いな"と、この魔王に外野の意見を代表(突っ込まれる前に言う、的な先制攻撃とも取れるが)させて、フロアから笑いが起きる。そこに"ハットにマント"姿の宮崎がステージに戻ってくる。「BOOGIE MAN RADIO」1曲のためだけの扮装である。アレンジもロック・オペラよろしくナイトメア感漂うコード感のなかですべての楽器が競い合いながら錐揉み状態で走っていく。ただのダンス・ロックに止まらない嬉しい忙しさにフロアも食らいついていった。
MCタイムは秦が担当。昨年12月のWWW Xでメジャー・デビュー発表時に宮崎がメンバーに宛てた手紙をネタにした"今でも僕はメンバーのこれが許せない"エピソードを開陳して大いに笑わせた。その後、アッパーな「インカーネーション」で冒険物語のプロセスを体感させて、インタールードの「奔走 (Interlude)」からグッとエクスペリメンタルなライヴ・アレンジに育った印象の「幽霊船1361」へ。アウトロを高田真路が奏でるクラビネットの音色による三拍子で繋いで、ジャズ・テイストのある「裏終電・敵前逃亡同盟」へ至る流れは音で体感する映画のような趣きだ。山本のワウペダルを踏みながらのフレーズがユーモアを添える。クジラ夜の街の音楽的な守備範囲の広さは続く「ロマン天動説」でのネオ・ソウルっぽいビート、ギターとピアノの音色が醸すアンサンブルでも存分に味わえた。そこからの繋ぎがまた見事で、メジャー1st EPでもひと連なりの「浮遊 (Interlude)」と「ハナガサクラゲ」が、この日の物語の中で主人公が"君"を探す旅の途中で苦しさゆえに挫折しそうな体感と見事にリンクしていた。
演奏に没入するオーディエンスに向けて、旅の次章を告げたのは「平成」のイントロ。宮崎は"ご唱和ください!"と呼び掛け、大多数を占める若いファンが"昔は良かったなんて大人たちは言うけれど、僕は信じちゃいなかった"と大声でシンガロングする様を見ていると、自分の思っていることを歌える痛快さがあるのだろうなと想像する。が、とっくに大人になった人間もそう思えるところがある。それが音楽の面白いところだ。フロアの声を力に変換するかのように宮崎の"ドラムス、タイムトラベル・ビート!"の掛け声から秦のソロが爆発し、人力の演奏でタイムリープ感を作り出した「時間旅行」から、シームレスに「時間旅行少女」へ。時空を縦横無尽に行き来できるタイムトラベラー・ガールの曲ではあるが、アウトロで時間が現在に戻っていくような描写があったのは次の「再会の街」に繋がる重要なライヴ・アレンジだったと思う。このインストが素晴らしく、街の環境音と共に生音でも喧騒を表現していくのだが、特に秦のパーカッショニストとしてのアイディアとスキルには目を見張ってしまった。インスト部分を伸長して、「ヨエツアルカイハ1番街の時計塔」に繋がり、邂逅したふたりが時計塔から街を眺める歌詞の箇所ではバーンと視界が広がるようなスケールの大きな演奏で再び息を呑むことに。アレンジ力で情景を喚起するパワーはツアーを重ねるごとに確かなものになっていた。
本編ラストはアイリッシュ・トラッドを想起させるフォークロアなアレンジの「オロカモノ美学」。行進の列から逸れてしまった愚かな主人公はその間に泣いたり絶望したりしながらしたたかになったのだ、という大意を持つこの曲はファンタジーを作りながらも、クジラ夜の街の根っこにあるマインドなんじゃないかと思う。クジラ夜の街のファンはこのしたたかな主人公に自分を重ねたり、応援したりしているのだと確信するラストだった。
アンコールではバンド初のアニメ・タイアップである"闇芝居 十一期"への書き下ろし新曲「マスカレードパレード」を7月12日に配信リリースすることを発表。ありのままを是とする傾向の逆を行く、仮面をつけたままでもいいと歌った内容だと宮崎が説明。展開もハイスピードから三拍子、ループするダンス・ビートなどなど、これまで以上にめくるめく仕上がりにバンドの野心が窺えた。年内のアルバム・リリースも告知し、フロアの歓喜がさらに上昇したことは言うまでもないだろう。ファンタジーでシーンに新しい景色をブッ立てる、クジラ夜の街のこれからが楽しみでならない。
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クジラ夜の街
配信シングル
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