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INTERVIEW

Japanese

2019年05月号掲載

爽

インタビュアー:石角 友香

札幌を拠点として活動するシンガー・ソングライターの爽(読み:さわ)が、Eggs主催"ドコモショップPR動画タイアップオーディション"でグランプリを獲得した楽曲「Runaway」を表題とするシングルをリリース。R&Bやアトモスフェリックな世界観を持っていたミニ・アルバム『FEARLESS』とは異なる、ギター・ロック・サウンドが新鮮だ。ジャンルは多岐にわたっても、軸にあるのは彼女の芯のある凛とした歌声。このシングルをきっかけにより全国区へステップアップを果たしそうな彼女に、今回のオーディションに応募した動機や、曲に込めた想いを軸に話を訊いた。

-今回の「Runaway」は、"ドコモショップPR動画タイアップオーディション"のために書き下ろされたんですか?

書き下ろしではなくて、もともと2~3年前から作ってた曲なんですけど、出すタイミングをずっと逃してて、デモみたいな形で残してたものがあったんです。募集の要項を見たときに私はあんまり明るい曲を持ってなかったので、"これはどうかな"と思って出してきた感じなんですけど。

-オーディションに応募した理由は?

もう6年ぐらい自分の歌を歌ってきて、いろんな人とお仕事をさせてもらう機会があったんです。だから、地元の方には、ありがたいことに自分のことを知ってくれてる人は多いけど、日本全国でって考えたときにまだまだ知られていないので、自分のアクションで知ってもらえるチャンスを掴めなかったら惜しいなって思ってて。ドコモさんのオーディションを受けたときも、"なんでもいいから引っかかるものないかな?"って作曲関係の募集にガンガン応募してた時期だったんです。なので、"1次通過しました"っていうのをいただいたのが、たまたまあのオーディションだったんですよ。

-ミニ・アルバム『FEARLESS』(2018年リリース)の世界観とは、だいぶイメージが違っていたので驚きましたが。

ははは(笑)、そうですね。私はもともと作曲が好きなので、ジャンルが違ったとしても、自分的には楽しいなっていうのがあるんです。『FEARLESS』を出した時期は、R&Bとかヒップホップがすごく好きなので、そういうシンガー・ソングライターもあんまりいないし、そういう方向だけを固めていきたいと思って、ずっとR&Bばっかり聴いてる感じだったんですね。でもそのあとは、意図はしなくても、書ける曲にポップネスのあるものがすごく多くて。それこそ「Runaway」とか、今回入ってる曲たちは、そういう意味で"個性押し"っていうよりかは、身近にあるJ-POPのコード・ワークがそのまま反映されてる部分があるので、正直リリースしてからどういう反応が来るかなっていうのは、自分もちょっと期待と不安があるというか。

-たしかに。

ああいうポップな曲も自分の言葉で書いたものだし、そうじゃないものも自分から出てきたものだから。それと、最近会う人会う人に"ギター・ロックは売れないよ"みたいに言われることが多くて、"これは売れない"とか、"これはもうこない"とか、"シティ・ポップはもうみんなやりすぎて、やったとしてももう売れない"とか、そういうことを言う人がすごく多くて、私は"なんの根拠があるのかなぁ"と思って聞いてたんですけど(笑)。私はあんまりジャンルとか流れとか......まぁ見てはいるけど、売れる/売れないとかいうのは自分もわからないし、そういう意見を聞いているときに、それこそギター・ロックが超好きだったんです。私、鍵盤のアーティストだし、表現者として遠いところにいるしなとも思って、ずっと書かないようにしてたんですけど、今回「Runaway」みたいな、自分が作った超ポップで、今まで爽っていうもので発信してたものと結構違う面があるものが評価されたときに、"あまり今はジャンルにこだわりを持たなくてもいいタイミングなのかな"ってすごく感じたんです。

-次に何がくるのかもし推測できたとしても、できた頃にトレンドじゃなくなってたり、自分の本意じゃなかったりしたらあまり意味がないですし。

そうですね。そこはひとりでコントロールできる部分ではないから。今せっかくフリーで何枚も出させてもらってるから、自分の中で実験して自分で確かめて、自分で見た材料の中から納得する方向性を決めていきたいなぁとは思ってます。

-軸はどんなジャンルの曲でも歌い方を極端に変えないところだと思います。でも曲作りの方が好きなんですか?

好きですね。8:2ぐらいで作曲の方が好きです。

-結構、作家体質?

"歌うことが好きで、歌う職業に就きたくて"という方とは全然違う動機というか。曲を書いてる人はだいたいみなさんそうだと思いますけど、普通に生活してて言葉で言えないとか、人との壁が普通の人よりも厚い部分があって。それを言葉と音と全部ひっくるめて自分の感情表現にして表したいって方が、私が歌う動機としては強いんです。だからしばらくライヴとかも苦手でした。嫌いというか、怖くて。最近ようやくファンの人たちが応援してくれてることに応えたいって気持ちで、前向きにいろいろ取り組めるようになったんですけど。

-話を戻して、「Runaway」ができたときのプロセスをお聞きしたいんですが。

私、大学1年生ぐらいから爽って名前でライヴをやったりとか、オーディションを受けたりするようになって、大学を2年生の途中から4年間休学して、そのまま自主退学したんです。なので同級生の仲のいい子たちと生活が進む時間軸が違って、私の方がポンと学生じゃない枠というか、社会の中に出たって感じなんですね。で、「Runaway」ができた頃は、実際に同級生がいよいよ自分の進路を決めていったり、会社に勤めるようになったりする時期で。新しい何かを生み出すというので、仕事を一生懸命やりすぎてストレスで会社やめちゃったり、体調壊しちゃったりして、周りの子が急に結構げっそり痩せたこともあったんです。

-心配ですね。

そうなったときに私の職業は直接的に手助けをしてあげられないし、それだけの力が私にはないからって考えたら、せめて"頑張ろう"ってなる曲を作って、毎朝会社行くときに自分のスイッチを入れれたり、嫌なことがあってもリセットしようって思って寝れたり、そういう材料になったらいいなという気持ちで作りました。

-仕事が大変そうでもなかなか"辞めちゃいなよ"とは言えない?

言えないですね。私ぐらいの年代の人って大胆な行動をしない人が多くて。まぁ、逆にパイオニア的にすごいことをする人もいるんですけど、どちらかというとすごく我慢してて、しんどいってことは周りに相談できるけど根本的な解決ができなかったり、向き合うことから逃げられる状況じゃなかったりとかっていうのが、私の生活してる範囲だとすごくいっぱいあるなって思いますね。

-じゃあ少なくとも、気持ちの中だけでもしんどいことを乗り越えられるようにという想いを音楽に?

そうですね。例えば誰かが"やめなよ"って言っても、やめるとか違う道に進むとかを決めるのは本人だから。それを全部好きにやりなとは言わないけど、きっかけになって"いや、やっぱりこうしてみよう"っていう決断を持てるように作用したら嬉しいなとは思ってます。

-爽さんにとってのそういう音楽や芸術はありますか?

背中を押してくれたのは......いっぱいありますけどね。あ、でも清 竜人さんが好きで。最初に好きになったのは、『痛いよ』とかと同じ頃に出してる楽曲たちかな。

-シンガー・ソングライターの時期の作品ですね。

そう。私、鍵盤弾きの人は全然ルーツとして辿ってこなかったんですけど、彼のライヴの映像を学生のときに観て、"ピアノのシンガー・ソングライターってかっこいい"と唯一思った人で。その他にもかっこいい人はいっぱいいたんですけど、強さというかえぐられる部分がすごくあったんです。で、そのシンガー・ソングライターっぽい時期の言葉がすごく好きなので、その時期からかな。もちろんそのあとアイドル(清 竜人25)をやっていたときも、やっぱり天才だなと思って聴いてはいたんですけど、涙を流せたり、ゆっくり自分のことを対峙して考えるのに寄り添ってくれるなって印象を受けたりしたのは、シンガー・ソングライターの一面が強いときですかね。

-ジャンルを問わず、いろんな曲を書くところでもシンパシーがあるのでは?

すごく尊敬してます。だから例えば自分が頑張って、いつか"アイドルの曲を書いてほしい"とか言われたらすっごく嬉しいと思うし。作曲とか音楽作りに関しては嫌なことが1個もないので、そういう風にいろんなものを産み落とせるように、経験を積んで自分の技術をもっともっと上げていきたいですね。