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LIVE REPORT

Japanese

Bentham

Skream! マガジン 2017年12月号掲載

2017.10.21 @赤坂BLITZ

Writer 沖 さやこ

2017年春にメジャー・デビューをしたBentham。全国17ヶ所を回ったツアー"Re: Wonder TOUR 2017"のファイナルとなる東京ワンマン公演は、アンコールでの小関竜矢(Vo/Gt)の"最近本当に音楽が好きになりました"という言葉のとおり、ツアーの充実を存分に感じさせた。

ステージにはドラムを高く上げたステージが設置され、メンバー全員が乗るには十分なスペースが確保されていた。弦楽器隊がドラムの周りに集まり音を重ねていくと、「サテライト」、「手の鳴る方へ」、「Heartbreaker」と初っ端からアッパーな楽曲を届けていく。小関は2曲目の時点で汗だくで、その様子からも体当たりで臨んでいることが伝わった。音に太さがあるのは辻 怜次(Ba)と鈴木 敬(Dr/Cho)によるリズム隊の力が大きい。岩盤のような分厚い低音と感情表現が豊かなドラムスは、Benthamをキャッチーなロックで終わらせないインパクトを作るのだろう。

小関が"ツアーで感じたこと、思ったことを今日1日かけてぶつけていく"と話し、"今日は曲をいっぱいやるから、時間がなくなっちまうなぁ"と「タイムオーバー」に繋げる。観客は歌詞の中の"ワン ツー スリー フォー ファイッ"に合わせて指で数字を作り、「センチメンタル」と「HEY!!」ではメンバーが曲中にある掛け声を用いて華麗に曲を繋ぐ。コール&レスポンスやシンガロングも盛り込んだしっかりと計算された展開は、観客をさりげなく巧みにエスコートするようだ。シャイな観客も安心して自分の気持ちを解放できるあたたかい空気作りが影響してか、フロアは笑顔で華やぐ。「ファンファーレ」ではその曲名どおりエネルギッシュでポジティヴな演奏を届け、「戸惑いは週末の朝に」では直球で熱い想いをぶつけ、その音に観客も聴き入った。

恒例の鈴木がイニシアチブを取るMCタイムではメンバーの体調の話題を主軸にツアーを振り返り、辻が小気味のよい相槌ならぬツッコミを入れながらテンポよく進む。"みんなの目を見て想いを受け取れるライヴハウスは最高"と話した小関が"みんなの生活の晴れ間になりたいと思っています"と語ったあとは「夜明けの歌」と「Sunny」を演奏。この2曲では須田原生(Gt/Cho)が鍵盤を弾き、曲と曲の繋ぎではピアノ・ソロを披露した。なぜインディーズ時代に彼が鍵盤を弾かなかったのかと問いただしたいほどの腕前。音色の変化はライヴ中盤のいいアクセントになっており、繊細なピアノと野太いベースのコントラストはBenthamならではのサウンドスケープだろう。

そのあとは鈴木以外の3人が舞台袖に下がり、鈴木がドラム・ソロを叩き出す。途中から辻が現れてリズム隊で音を奏で、辻はベースでギターのような音を出し、鈴木がコール&レスポンスを行うなど会場を大いに盛り上げる。そのあと小関と須田もステージに現れ、流れを切らすことなく「透明シミュレーション」に繋いだ。赤坂BLITZ規模のライヴハウスでこのような演出をするバンドは近年少なく、まるで日本武道館やさいたまスーパーアリーナにいるような錯覚になる。この日のセットリストや見せ方は、ライヴハウスというよりは大きな会場で映えそうだ。そこからもBenthamがもっと大きなステージを見据えていることが窺えた。「White」ではライヴ・バージョンの長めのアウトロを力強く演奏し、彼らがロック・バンドであるという自負も感じさせる。いいと思うことは全部取り入れ続けてきたバンドならではの、バリエーション豊富なステージ展開だ。そのあとは小関の"俺の声だけ聴いていればいい"という頼もしいMCに見合う熱気でもって「クレイジーガール」、「Chicago」、「パブリック」と畳み掛け、客席からはクラップ、コール&レスポンス、シンガロングが沸き起こる。小関は終盤ギターを置いて最前の柵に足を掛けて観客を煽る。会場が一丸となり一体感を作り上げた。

アンコールでは小関が"『Re: Wonder』は僕らのすべてが詰まっている。これから僕らがどうなりたいか、どこにいきたいかが明確にわかる1枚になった。どうやって前に進んでいくかしっかり見ていてほしい"と力強く語る。「激しい雨」のイントロでは小関がメンバーを、その人となりを交えてひとりひとり絶叫しながら紹介し、メンバー、関係者、観客に感謝を告げる。"次はもっとでっかいところ埋めようぜ。このままじゃ終われない!"という言葉にはかなりの熱がこもっていた。その熱狂の残響から須田のギターが『Re: Wonder』のラストを飾る「クラクション・ラヴ」のイントロを奏で始める。小関もギターを置き、マイク・スタンドに向かって静かに歌い始めた。楽器隊はコーラスで彼の歌を支え、伴奏はギターのみ。4人の肉声でしっとりと充実のツアーを締めくくる。それは浮足立つことなく進んでいくという決意の表れのようでもあった。さらに大きな心躍る世界に走り出すことをステージで示した彼らが今後どんな道を進んでいくのか。この先、Benthamの真価が問われる。


[Setlist]
1. サテライト
2. 手の鳴る方へ
3. Heartbreaker
4. タイムオーバー
5. センチメンタル
6. HEY
7. ファンファーレ
8. 戸惑いは週末の朝に
9. 夜明けの歌
10. Sunny
11. 透明シミュレーション
12. White
13. クレイジーガール
14. Chicago
15. パブリック
en1. 僕から君へ
en2. 激しい雨
en3. クラクション・ラヴ

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