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LIVE REPORT

Japanese

Bentham

Skream! マガジン 2016年03月号掲載

2016.02.16 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 沖 さやこ

ツアー開催前にヴォーカル・ギターの小関竜矢が"インディーズ・デビューから約1年の集大成を全力で爆発させる"とコメントしていた通り、終始熱い心意気が迸ったツアー・ファイナルだった。
 
まずステージに登場したのはこの日のゲスト、Halo at 四畳半。スケール感のあるドラムの音色に煌びやかなギターと軽やかなベースが重なり、安定感のある演奏で颯爽と会場をドラマチックに彩る。ヴォーカル・ギターの渡井翔汰は歌詞に"CLUB QUATTRO"や"OMG"という言葉を入れて場を盛り上げ、観客も彼らの紡ぎ出す音に心地よく身を任せていた。3月にリリースするミニ・アルバム『innocentpia』から「春が終わる前に」と「ペイパームーン」を披露するという大盤振る舞いぶり。新曲は既存曲よりもエモーショナルな要素が強く、バンドの新たなフェーズを感じた。渡井が"感謝の気持ちすべてを込めて演奏したいと思います"と告げ、ラストは「シャロン」。彼らの抱える叙情性が天へと高く高く弾け飛んだとき、もっと美しい世界が見られるのではないか――そんな期待が湧き上がった。
 
そして主役、Benthamの登場。1曲目「YUMEMONOGATARI」から気持ちを抑えきれないと言わんばかりに前のめりな演奏を繰り広げる。ギターの須田原生もベースの辻 怜次も積極的に観客を盛り上げ、フロアの空気も一気に華やいだ。ライヴにおいてのサウンドの要は鈴木 敬のドラム。楽曲のスケールを最大限に広げる彼のビートあってこそ、弦楽器隊が映える......と思っていると「タイムオーバー」を演奏し終えたステージに向けて、フロアのあちこちから"敬~!!"という叫び声。女子の声だというのに黄色い声でないところもポイントである。和気あいあいとした空間は、気心知れた友達の集会のようにあたたかい。
 
小関の"もっと前に詰めて楽しんでいこうよ!"という呼びかけで「HEY!!」。軽快なサンバ風のビートも手伝って、バンドの緊張も少し解けたようにも見える。ポップな「ハイルーフ」は気持ちで突っ走るような汗だくのパフォーマンス。彼らはバンドを始めたばかりの中学生のような熱いテンションで突っ走る。正直に言えばBenthamの演奏に粗は多く、若手の中には卓越した演奏力で魅せるバンドが多いので新鮮だった。だが、情熱ゆえの未完成でしか成し得ない美しさを持てるのがロック・バンドの特権だ。がむしゃらに駆け抜ける彼らにヒーローの片鱗が見えた。
 
ミディアム・ナンバー「STORY」でじっくり聴かせると、小関がハンドマイクで歌う「スローモーション」。サビの"グッバイスローモーション"という言葉に合わせてフロアも左右に手を振る。4人の音が一丸となって爆発した「Undulate」は非常に痛快で、ひとつの大きな山場だった。MCでツアーの思い出を振り返り、ライヴは後半戦。辻の太いベースが巧みにドライヴする「クレイジーガール」からキラー・チューンの応酬だ。弦楽器隊が鈴木のもとに集まりイントロを奏でた「手の鳴る方へ」では、小関による"邦ロック、四つ打ちバンドを聴きすぎてコール&レスポンス慣れしたあなたたちに須田がとっておきのコール&レスポンスを届けます"という挑発的な振りから、須田が独特の天然キャラで仕切るコール&レスポンス。観客のテンションも高騰し、それに触発されて小関もフロアに背中から倒れ込んだ。そのままブルージーなギターと力強いドラムが暴れまわる「TONIGHT」になだれ込み、危ういバランス感覚で突っ切るパワーに目を見張る。間髪入れずにラストは「パブリック」。大団円で本編の幕を閉じた。
 
アンコールでは小関が、Benthamがインディーズ・デビューをして1年強になったことを告げると"1年ちょっと前はライヴ告知をしても10人切ってたこともあったんです。その10人のころ来ていた子たちも今日のライヴに来ていることが(ステージの上から)確認できました"と言う。"バンド友達がそれほどいない中で、ドラムもずっとサポートで、メンバーになるのかな?と不安になりながらバンドを続けてきて、それからメンバーになってくれて、仲間ができて先輩ができて......"と感慨深そうに話すと"今年はどんなに汚い手を使ってでも売れようと思ってますので"とフロアを笑わせる。だがその目の輝きは本気だった。"あなたたちの生活の晴れ間になれればと思ってギターを鳴らしております"と言うと力強くギターを鳴らし「アナログマン」を披露。"世界が聴こえなくても/僕が聴かせてあげる"というメッセージを情熱的に歌い上げると、興奮が止められないと言わんばかりの笑顔を浮かべた小関が"本当はこれで終わりだったんですけど、勝手に1曲増やしますね"と言い急遽「FOO FOO」を投下。4人全員が全身で音楽を届ける熱いプレイで魅せ、最後の最後までフロアを笑顔へと導いた。『OMG』制作時からさらに音楽への意識が高まり続けるBentham、勝負はこれからだ。

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