THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十八回】
2022年12月号掲載
第二十八回「断罪」
結局は愛されたいだけなのか。自分を見て欲しかっただけなのか。反抗するふりして、寂しいふりをして、実は一番大人に期待していたのは自分だったんじゃないか。今ではあの時の先生の気持ちも理解できる。休日を返上して馴染みのないサッカーの選抜練習へと生徒を連れていかなくてはいけないのだから、その約束を破ったら腹も立つし、そのせいで全く知らない同じ立場の教師に頭を下げなくちゃいけないなんて、そりゃ怒り心頭も納得だ。今となれば、それぞれの立場に立って気持ちを想像し、自分の想いを殺してでも理解し合おうとすることが、結果的に自分を必要としてくれることに繋がってくるとなんとなく分かる。ただあの時は目の前にある世界が全てで、自分の願望や好みや主張のようなものを持つことすらできず、その世界で生きることだけで精一杯だった自分がいた。それくらいガチガチに固められた縮図の中で身を置き、静かに過ごすことがその世界での生き抜き方だと悟っていた。だけど、薄々感じていた罪悪感はやっぱりしっかりと罰となって返ってくる。そう教えてくれたのは、あの先生の怒りがあったからだと思う。だけども、当時の自分にとってサッカーの選抜練習会よりも決闘に行くことが最良の判断だと思っていたのは、僕だけじゃなく部屋に呼ばれた2人も一緒だったはずだ。幼い過ちの中にも、譲れない何かが存在していたのは、きっと大人と子供という対比だけでは片付けられないと今でも思っている。あの指導室から帰されたあと、呼び出された理由が決闘の件がバレた訳ではなかったことに安堵した気持ちと、過ちへの罰、大人への絶望、様々な感情が自分の心の中でしばらく渦巻いていた。
そんな壮絶な事件から二週間ほど経ち、次回の選抜練習会が行われると告げられた。流石にその練習会には参加しなければならないと思っていたが、今回は顧問の引率ではなく、各家庭で遠く離れた練習会場まで来るよう親にも連絡が届いていた。正直、家庭まで含めた活動にしてくれたおかげで、その練習会の重要性を他の選ばれた2人とも共有できて、サッカーに集中できる環境に楽しみは少し増していた。会場に着くと、同じ中学校の仲間2人と、小学校のリーグ戦で戦っていた県南地域の別の中学生も沢山集まっていた。その選抜チームの監督とその日に初めて対面し挨拶をすると、一回目の練習会を休んだ理由も何も聞かずに、初めてプレーを見た時にいいもの持ってると思ってここに来てもらった、と選考理由を伝えてくれた。なんだろうか、学校の先生という枠を超えて、初めて大人に自分自身のプレーを評価してもらった気がして、素直に嬉しくもあり、でもどうしていいか分からない戸惑いもあった。大好きだったサッカーを見失うくらい壮絶な学校生活の中で、またサッカーへの情熱が少しずつ湧き出てくるようだった。集められた20人弱のメンバーの中でキーパーは自分を含めて2人。そのもう1人のキーパーがどんなプレーをするのかとにかく気になった。それぞれが、学校生活のカテゴリーから外れ、一つのチームとして他の県内の地域のチームと戦うとなれば、過去に鎬を削り合った相手でも今は仲間だ。監督が選手たちを集めてトレーニングメニューを伝え練習会は始まった。すると、何人かの選手たちが「どこの中学校?よろしくね。」と気さくに話しかけてきた。不思議なもんだ。全く知らない者同士でも、チームとしてサッカーをやるとなれば自然と会話が生まれてくる。そんな初めての経験に胸が高鳴る。そして、シュート練習の前にもう1人のキーパーがこっちに近づいてきた。こいつ何かが違う。動物的な勘が鋭く反応し、じんわり汗が背中を伝った。
<つづく>
THE BACK HORN
1998年結成。"KYO-MEI"をテーマに、聴く人の心を震わせる音楽を届けていくという意志を掲げる4人組ロック・バンド。2001年、メジャー1stシングル『サニー』をリリース。以降、そのオリジナリティ溢れる楽曲の世界観からクリエイターとのコラボレーションも行う。2018年に結成20周年を迎え、海外公演や日本武道館公演を含むツアーを完遂。2022年4月に13thアルバム『アントロギア』をリリースし、同作を引っ提げたツアーを実施。9月に日比谷公園大音楽堂、10月に大阪城音楽堂でワンマンを開催した。2023年1月からは東名阪にて自主企画"マニアックヘブンVol.15"を行う。
Related Column
- 2025.06.13 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【最終回】
- 2025.04.11 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第四十二回】
- 2025.02.12 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第四十一回】
- 2024.12.27 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第四十回】
- 2024.10.17 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十九回】
- 2024.08.19 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十八回】
- 2024.06.17 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十七回】
- 2024.04.16 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十六回】
- 2024.02.21 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十五回】
- 2023.12.20 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十四回】
- 2023.10.17 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十三回】
- 2023.08.24 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十二回】
- 2023.06.15 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十一回】
- 2023.04.17 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三十回】
- 2023.02.15 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十九回】
- 2022.12.05 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十八回】
- 2022.10.04 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十七回】
- 2022.08.02 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十六回】
- 2022.06.01 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十五回】
- 2022.04.04 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十四回】
- 2022.02.01 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十三回】
- 2021.12.03 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十二回】
- 2021.10.04 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十一回】
- 2021.08.04 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二十回】
- 2021.06.02 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十九回】
- 2021.04.05 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十八回】
- 2021.02.08 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十七回】
- 2020.12.02 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十六回】
- 2020.10.02 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十五回】
- 2020.08.05 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十四回】
- 2020.06.10 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十三回】
- 2020.04.02 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十二回】
- 2020.02.05 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十一回】
- 2019.12.10 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第十回】
- 2019.10.10 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第九回】
- 2019.08.06 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第八回】
- 2019.06.11 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第七回】
- 2019.04.05 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第六回】
- 2019.02.06 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第五回】
- 2018.12.06 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第四回】
- 2018.10.04 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第三回】
- 2018.08.06 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第二回】
- 2018.06.07 Updated
- THE BACK HORN 松田晋二の"宇宙のへその緒"【第一回】
- 2018.04.09 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【最終回】
- 2018.02.08 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十七回】
- 2017.12.14 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十六回】
- 2017.10.13 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十五回】
- 2017.08.09 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十四回】
- 2017.05.31 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十三回】
- 2017.04.13 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十二回】
- 2017.02.10 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十一回】
- 2016.12.16 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第十回】
- 2016.10.21 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第九回】
- 2016.08.15 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第八回】
- 2016.06.09 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第七回】
- 2016.04.13 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第六回】
- 2016.02.16 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第五回】
- 2015.12.13 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第四回】
- 2015.10.15 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第三回】
- 2015.08.22 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第二回】
- 2015.06.12 Updated
- THE BACK HORN 岡峰光舟の「アラフォー戦国時代」【第一回】
LIVE INFO
- 2026.01.18
-
ZAZEN BOYS
CENT
Nikoん
ザ・クロマニヨンズ
キュウソネコカミ
石崎ひゅーい
古墳シスターズ
桃色ドロシー
くるり
フレデリック × 男性ブランコ
NEE
Dear Chambers
Appare!
Rhythmic Toy World
Mega Shinnosuke
SUPER BEAVER
SOMOSOMO
cowolo
長瀬有花
The Cheserasera
レイラ
a flood of circle / ビレッジマンズストア / SIX LOUNGE / w.o.d. ほか
クジラ夜の街
フラワーカンパニーズ
マカロニえんぴつ
東京スカパラダイスオーケストラ
PENGUIN RESEARCH
- 2026.01.19
-
Nikoん
Hakubi / 日食なつこ
下川リヲ(挫・人間)× 和嶋慎治(人間椅子)
- 2026.01.21
-
Nikoん
ドミコ
Halujio
MEN I TRUST
佐々木亮介(a flood of circle)×村松拓(Nothing's Carved In Stone)×蒼山幸子
- 2026.01.23
-
Nikoん
ZAZEN BOYS
YOGEE NEW WAVES
YUTORI-SEDAI
マカロニえんぴつ
ドミコ
a flood of circle
吉井和哉
Chimothy→
Halujio
GRAPEVINE
ねぐせ。
Kroi
- 2026.01.24
-
VII DAYS REASON
"FUKUOKA MUSIC FES.2026 supported by Olive"
TOMOO
フラワーカンパニーズ
Nikoん
CENT
コレサワ
SCOOBIE DO
Mega Shinnosuke
ぜんぶ君のせいだ。
THE BAWDIES
Re:name
ヤバイTシャツ屋さん / 10-FEET / G-FREAK FACTORY / NUBO
AIRFLIP
LACCO TOWER
マカロニえんぴつ
ネクライトーキー
橋本 薫(Helsinki Lambda Club)
夜の本気ダンス
クジラ夜の街
eill
怒髪天
SOMOSOMO
VELTPUNCH
菅田将暉
ねぐせ。
RAY / ポップしなないで / 長瀬有花 / インナージャーニー ほか
- 2026.01.25
-
cowolo
Nikoん
"FUKUOKA MUSIC FES.2026 supported by Olive"
フラワーカンパニーズ
SCOOBIE DO
水曜日のカンパネラ
SPRISE
ぜんぶ君のせいだ
SPECIAL OTHERS
FIVE NEW OLD
くるり
キュウソネコカミ
ZAZEN BOYS
YOGEE NEW WAVES
クジラ夜の街
怒髪天
Appare!
mouse on the keys × Kuniyuki Takahashi
フィロソフィーのダンス
THE BACK HORN
菅田将暉
Chimothy→
- 2026.01.27
-
佐々木亮介(a flood of circle)×村松拓(Nothing's Carved In Stone)×蒼山幸子
吉井和哉
フラワーカンパニーズ
くるり
真山りか(私立恵比寿中学)
Nijiz
ネクライトーキー
- 2026.01.28
-
Nikoん
佐々木亮介(a flood of circle)×村松拓(Nothing's Carved In Stone)×蒼山幸子
KALMA / Maki / オレンジスパイニクラブ / PK shampoo
アーバンギャルド × 戸川 純
山本彩
ザ・クロマニヨンズ
- 2026.01.29
-
Nikoん
佐々木亮介(a flood of circle)×村松拓(Nothing's Carved In Stone)×蒼山幸子
THE LUMINEERS
山本彩
Awesome City Club
- 2026.01.30
-
Nikoん
go!go!vanillas
石崎ひゅーい
MAN WITH A MISSION / THE ORAL CIGARETTES / HEY-SMITH
KiSS KiSS
イイオルタナビ #005(ハク。 / First Love is Never Returned / FIVE NEW OLD)
Panorama Panama Town
East Of Eden
おいしくるメロンパン
MONO NO AWARE
Mirror,Mirror
くるり
NEE
YUTORI-SEDAI
indigo la End
- 2026.01.31
-
キュウソネコカミ
Nikoん
クジラ夜の街
夜の本気ダンス
めいちゃん
the band apart
吉井和哉
Mega Shinnosuke
YOGEE NEW WAVES
石崎ひゅーい
フラワーカンパニーズ
コレサワ
怒髪天
the paddles
cowolo
T.N.T
橋本 薫(Helsinki Lambda Club)
the telephones
マカロニえんぴつ
TOMOO
THE BAWDIES
松永天馬(アーバンギャルド)
NakamuraEmi
くるり
SUPER BEAVER
東京スカパラダイスオーケストラ
indigo la End
RELEASE INFO
- 2026.01.19
- 2026.01.20
- 2026.01.21
- 2026.01.23
- 2026.01.25
- 2026.01.26
- 2026.01.28
- 2026.01.29
- 2026.01.30
- 2026.01.31
- 2026.02.04
- 2026.02.06
- 2026.02.07
- 2026.02.09
- 2026.02.10
- 2026.02.11
FREE MAGAZINE

-
Cover Artists
KULA SHAKER
Skream! 2026年01月号























