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LIVE REPORT

Japanese

Eggs presents TOKYO CALLING 2016 -DAY3-

Skream! マガジン 2016年10月号掲載

忘れらんねえよ

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2016.09.19 @渋谷ライヴハウス11会場

Writer 秦 理絵

東京を拠点とする日本最大規模のサーキット・イベント"TOKYO CALLING"が今年初めてシルバーウィークの3日間、下北沢、新宿、渋谷の3都市で開催された。すでに全国的に有名なサーキット・イベントと言えば、大阪の"MINAMI WHEEL""見放題"、名古屋の"SAKAE SP-RING""でらロックフェスティバル"、福岡の"TENJIN ONTAQ"などがあり、ここ数年のロック・シーンにおける関西勢の躍進に大きく貢献してきたと思う。そんなシーンのムーブメントに後押しされるように誕生したTOKYO CALLING。いずれも老舗のライヴハウスが数多く密集する東京3都市に全国から約300組のバンドが集結して、東京に誕生した新たなムーヴメントを祝福する熱いパフォーマンスを繰り広げた。

あいにく小雨が降りしきる渋谷。TOKYO CALLING最終日の拠点となる渋谷駅の構内には、コインロッカーに荷物を預けるお客さんの姿を多く見掛けた。オープニングは昼の12時。キャパ1,300人を誇る渋谷最大級の会場O-EASTは感覚ピエロからスタートした。 インディーズながらドラマ"ゆとりですがなにか"の主題歌に抜擢される注目度からか、オープニング一発目とは思えない集客だ。"東京がムーヴメントを追い掛けるなんて革命だと思う"。そんな横山直弘(Vo/Gt)の熱弁が、長く歓喜に満ちた1日の始まりを高らかに告げた。前半この会場では、食べ物ネタにへヴィなグルーヴを繰り出す男女混成バンド 打首獄門同好会が"うまい棒"片手のオーディエンスを熱狂させたり、テクニカル且つ複雑なサウンドで独自のロックを提唱するネット・シーン発のヒトリエのステージに熱い視線が注がれたりと、このステージだけでも十分と思わせる強力なアクトが続いた。

O-EASTを中心とした円山町エリアには、4つのO-GROUP(EAST、WEST、Crest、nest)とduo MUSIC EXCHANGEがある。O-EASTと同じ建物の5階にあるO-Crestは、"MURO FESTIVAL"で有名な室清登が店長を務めるハコだ。O-EASTの感覚ピエロが終わったあとに急いで階段を駆け上がると、NECOKICKSのラスト・ソング「1秒先の未来」にギリギリ間に合ったりして、会場の近さに救われる場面が何度かあった。

O-EASTの向かいの建物になるO-WESTでは、ココロオークションを観た。端正なメロディに乗せた上昇志向のポップ・ソングを届けた彼らは、"全国のサーキット・イベントの主催者が集まった夢のようなイベント!"と、粟子真行(Vo/Gt)がTOKYO CALLINGへの熱い想いを口にした。一方、日ごろからロック・シーンのみならずJ-POP界隈へも目配せをした幅広いブッキングが持ち味のduo MUSIC EXCHANGEは個性的なバンドが多かった。餃子の王将とのコラボ・ソング「ギョウザ食べチャイナ」で湧かせたPAN、今年メジャー・デビューしたピアノ・ロックの枠を超え自由なポップ・ミュージックのあり方を模索するHOWL BE QUIETなどをチェック。業界が推す期待の新人をいち早く観られるのもサーキット・イベントの魅力だろう。

センター街に位置する宇田川町エリアにあるのは、そのハコでワンマンを成功させることが新人バンドの登竜門だと言われるCLUB QUATTROだ。全国にチェーン展開するライヴハウスだが、渋谷は広島に並ぶキャパで800人を収容する。いよいよイベントも折り返しとなった夕方17時。ここでエモーショナルなピアノ・ロックを鳴らしたのは、大阪のSHE'S。"(この時間の)裏で友達のテレン(LAMP IN TERREN)がやってるから観れないんですけど......"と、井上竜馬(Key/Vo)は盟友の名前を出したが、この世代のバンドマンの横の繋がりの強さも、またこうしたイベントの副産物だと思う。

そんなCLUB QUATTROの横にあるのがTAKE OFF 7。ここで観た神戸のプププランドが良かった。フォークやガレージ・ロックを消化した泥臭くも脱力系なロックでフロアをじわじわと躍らせた。サーキット・イベントは初見のお客さんが多いため、ライヴが進むごとに会場ができあがっていく場面に遭遇する。会場を出るときに"初めて観たけど良かった"なんて声を耳にすることもよくある。わずか30分ほどの出会いが今後のリスナーの音楽ライフを変える。そういう出会いをあちこちで体験できるのがサーキット・イベントだ。

宇田川町から東急ハンズ方面に向かうと見えてくるトウセン宇田川ビル。ここには1FがStar lounge、2FがTHE GAME、3FがMilkyway、B1FがCHELSEA HOTELという、いずれもキャパシティ300人以下の小さなライヴハウスが入ってる。O-GROUPやQUATTRO周辺とは異なり、ここの出演者ほとんどがインディーズ・バンド。だからこそ信じられないような出会いがある。Star loungeで観た、Yellow Studsはウッド・ベース+ツイン・ギターの5人組で、野村太一(Key/Vo)の渋いヴォーカルが危険な香りを感じさせたし、音大卒のピアノ・ヴォーカル 森彩乃率いるQaijff(読み:クアイフ)の凛とした歌と華麗なバンド・アンサンブルは特筆すべき魅力があった。北九州を拠点に活動するメロコア・バンド、SHIMAもCHELSEA HOTELにクラウド・サーフが続出する熱いパフォーマンスを見せてくれた。

渋谷中を駆け回っていくうちに、気づけばあっと言う間に夕方になっていた。O-EASTを満員にしたドラマチックアラスカは、堅強でストレートな力技でフロアを掌握。ヒジカタナオト(Vo/Gt)がTOKYO CALLINGの第1回に出演できた喜びを伝えると、"自分たちで轍を作っていきたい"と語り掛けた。夜の本気ダンスはMCを担当する鈴鹿秋斗(Dr)がTOKYO CALLINGの略称は"トキョコー"か"コーリング"(※ボーリングのイントネーションで)かと持ち前の話術で笑いをとりながら、変幻自在のグルーヴで観客を踊らせる。型破りなパフォーマンスで湧かせたのは忘れらんねえよ。柴田隆浩(Vo/Gt)がバー・カウンターまでクラウド・サーフで移動してビールを買い、お客さんの頭上で繰り出した演説には大爆笑だった。一方O-WESTでは、名古屋のパンク・シーンで急成長するENTHが高速ビートを連発してオーディエンスとぶつかり合ったかと思えば、大阪発の4人組メロコア・バンド POTのライヴにはTHE SKIPPERSのJAGGER(Vo/Gt)が乱入するなど、イベントは佳境に向けて一段とヒート・アップしていく。

そしてO-EASTのトリを飾ったのはフレデリックだった。ミラーボールが回る狂騒のダンス空間の中で、とびきり癖のあるバンド・サウンドで根こそぎフロアを踊らせた3人。三原康司(Ba/Cho)は"(TOKYO CALLINGを)日本一から世界一にしよう!"と叫び、最後に三原健司(Vo/Gt)は"この「オンリー・ワン」なイベントに捧げます"と、最強のダンス・チューン「オンリーワンダー」へと繋いだ。歓喜と興奮が入り混じる最高のフィナーレ。それは東京の音楽シーンに刻んだ歴史的1日の締めくくりに相応しいアクトだった。

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