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INTERVIEW

Japanese

ヒトリエ

2025年01月号掲載

ヒトリエ

Member:シノダ(Vo/Gt) イガラシ(Ba) ゆーまお(Dr)

Interviewer:石角 友香

曲折という言葉では言い表せないバンド・ストーリーを歩んできたヒトリエが、メジャー・デビュー10周年イヤーの締めくくりにアルバム『Friend Chord』をリリースする。本作には先行シングルの「ジャガーノート」や「オン・ザ・フロントライン」、昨年リリースし大きな話題となったwowakaヴォーカルで作詞作曲による「NOTOK」のシノダ歌唱バージョン、そして3人体制の3作目としてのバンドの特徴も余すことなく表現した新曲を収録。新章に入った印象の強い本作への経緯を訊く。

-2024年はメジャー・デビュー10周年イヤーで、シングル『NOTOK』は周年的な作品だったと思うのですが、アルバムもその意識のもとにあったんですか?

シノダ:10周年のためにいろんなことをやって、これがその締めくくりですね。

-むしろwowaka(Vo/Gt)さんの詩集("wowaka 歌詞集")とかシングルであったりのほうが"10周年"っていう感じはあったのかもしれないですね。

シノダ:思い返せば......ってまだ2024年の出来事なんですけど(笑)、結構大きな楔というか、花火を打ち上げちゃった感じはあるなと思いますね。反響もたくさんいただいたし。作ってるうちは夢中なのでわけ分かんないんですけど、よくよく考えたらすごいことをしたんだな、みたいな自覚がじわじわじわと後から湧いてきたような。

-他のインタビューで"wowakaさんの人間性を感じられた"というようなことをおっしゃっているのを拝見して。だから曲作りの方法もそうなんでしょうけど、その人に会う感じが制作の中にあったのかなと。

シノダ:聴くときもそうなんですけど、演奏するとダイレクトに感じられるんですよ、wowakaが作った曲だなって。俺等は本当にあいつが作った曲を、あいつのために演奏するやつらだったな、みたいな。彼のワンマン・バンドというわけでもなかったんですけど、それでもやっぱり彼が出力するものを最大限に増幅して演奏したい、そうやって集まった集団だったので、それを今一度思い出す感覚がありました。

-なるほど。アルバムは3人体制での3作目ですが、これまでの2作と意識する部分で違ったところがあるとしたらなんですか?

ゆーまお:これまでの2作は、可能な限り作り込んでいたというか。

シノダ:ちょっと作り込みすぎていたというか。それも大事なことではあるんですけど、我々3人以外のいろんな要素を足して足してみたいな感じで、できるだけトゥー・マッチなものを作ろうっていう気概があったんです。 ただ僕は、今回のアルバムに関しては「ジャガーノート」を作り始めたあたりから、こうやってバンドを長らくやってきたし、もっとバンドライクにしたほうがいいんじゃないか? とか、より3人だけの演奏で曲に説得力を持たせるというか、それができるくらいのパワーがあるんじゃないか? というモードになってて。だから3人になってから培ってきた、それぞれの演奏力やクリエイティヴィティだったりをストレートにぶつけるような形で作ってみようかなっていうのはありました。

-今シノダさんがおっしゃった意識は共通してるんですか?

ゆーまお:そうですね。たしかに「ジャガーノート」とか、その後「オン・ザ・フロントライン」をリリースした時点で、バンド色の強いものを作りたいって2人は言ってました。次はもっとバンド・サウンドというか、バンドライクなアルバムを作りたいとずいぶん前から話してて。 だからこうなるのは予測がついてましたし、前作の『PHARMACY』(2022年リリースのアルバム)の終盤に作ってた曲からちょっとスライドしてるような気もします。前のアルバムまではシーケンスとかシンセものが多かったんですけど、このアルバムに関しては俺が作った曲ぐらいだよね。

-イガラシさんも認識としては同じく?

イガラシ:ツアーとかも回りながら繰り返して、会話の中で自然と意識が一緒になってたような気がしますね。あと、とにかくライヴをめちゃくちゃやったっていうのがあって、見てる景色もだいぶ変わってきたというか。コロナ禍が終わってライヴにお客さんが戻ってきたり、中国や台湾、韓国に行ったりするなかで、今見てる景色に合うものが作りたいみたいな気持ちが強くなって、という自然な流れです。

ゆーまお:このアルバムだいぶ違うよね?

シノダ:だいぶ違うことになったというか。ファンが"これこれ! これが欲しいんだよ"っていうのがあるかどうかと言ったら分かんないな。

一同:(笑)

-生身でできることっていうか、3人でやることのユニークさやスリルを感じました。

シノダ:そうですね。いろいろ新しいものを作んなきゃ、みたいな意識もどこかにはあったんですけど、新しい音って何? と探しているうちに、でも最新の音って俺からしたらこの2人の音だよな、こいつらに頼ったほうが早いわ、というのはありましたね(笑)。

-「ジャガーノート」あたりからの変化というのに納得しました。非常にオルタナティヴな印象を受ける曲なので。

シノダ:あー、嬉しいですね。オルタナティヴらしいぜ?

ゆーまお:ありがたいね。

シノダ:前回ぐらいから、もうちょい自分の好きなものを作ってみようかなというのはあったんですけど、今回はそれがだいぶ......自分のフェティシズムみたいな部分に寄りました。

-先行シングル以外の楽曲で早めにできた曲というとどの辺ですか?

イガラシ:1曲目の「耽美歌」は一昨年のツアー("HITORI-ESCAPE TOUR 2023")からもう演奏してたりはしたので。

シノダ:「耽美歌」もそうなんですけど、「ジャガーノート」も最初は(FC限定)ライヴ("HITORI-ATELIER LIVE Vol.3 〜ZANSYO-MI-MAI〜")で発表した曲なんですよね。ライヴで新曲を下ろしていこうっていうムードが一瞬あって。そのときになるべく3人でガン! と演奏できる曲を書こうと思ってこれができたんですけど、でもだからと言ってそこからアルバム全体のコンセプトが決まったというわけでもないっちゃないんですよ。これはこれとして、ですね。

-歌詞にあるように、ミラーボールが煌めくんじゃなくて"焼け焦げる"のが象徴的で。

シノダ:この曲は、実は昔からあった曲で。それこそ3人で最初に作った『REAMP』(2021年リリースのアルバム)のときにいっぱい曲を書いてて、そこで生まれたやつを今一度再構築して肉付けした感じなんです。2020年とか、コロナ禍が始まってそういうムードのなかで書いた曲ではあるので、そのときの苛立ちみたいなものが残り香としてある感じがします。

-アルバム序盤の「耽美歌」、「ジャガーノート」にそうした苛立ちや閉塞感が強いわけですね。3曲目の「Quadrilateral Vase」はどうでしたか?

シノダ:これはイガラシ君の曲ですね。

-この楽曲もオルタナティヴな印象が。

イガラシ:これは制作が進んできた頃にシノダが"シューゲがやりたい"、"シューゲがいい気がする"みたいなこと言ってたから(笑)。で、この曲も作ったのはちょっと前だったんですけど、"じゃあこれはどうですか"と。

シノダ:"今シューゲがキテるぞ"ってね。

ゆーまお:シノダの中でキテただけ。

シノダ:(笑)